-長野県・山の廃屋-
「さあ、地獄を楽しみな!!」
刀を振りかざし、鬼塚に駆け寄る。途中部下が間に入るがそれは無意味だった。
「はッ!!」
振るう刃が余りにも早く、文の目でさえ捉えられない程だった。そして斬られた者達は悲鳴をあげることなくその場でバチャッ!と文字通り細切れになってただの肉塊になり果てた。
それだけなら良かったのだが、目の前の出来事に恐怖する部下達をさらに追い込むような恐怖が視界に映った。
まるで、いや、そのままの意味で〝殺しを楽しんでいる笑顔〟を見せたのだ。
「り・・・龍、牙・・・さん?」
文も、龍牙の纏う空気と〝笑顔〟で思わず怯えてしまった?
「どうした?もっと楽しもうぜ?折角の殺し合いなんだからよ」
「い、イかれてやがる!!」
「狼狽えてんじゃねぇ!!さっさと撃て!!」
「遅いっての」
恐怖からその場に立ち尽くした鬼塚の部下達をまた切り刻んでいった。
「ぎゃ!!」
「ひいっ!!」
銃や装身具もろとも斬られていく姿は、まるでそれが当然だとでも言うかの様に綺麗に斬れていった。
「この役立たず共が!もういい!俺が直に相手してやるぁ!!」
「ふはははははっ!来いよ、蛸坊主!!!」
龍牙の表情は本当に愉快そうな笑顔だった。鬼塚は特に怯みはしなかったが、ただならぬ雰囲気に違和感を感じていた。
鋭い刃と硬質な塊がぶつかり合い、周囲をも飲み込みそうな殺気が漂っていた。
「龍牙さん・・・うそ、嘘よ、あんな・・・あんな怖い人、龍牙さんじゃない・・・」
目の前の光景を受け入れられない文は、現実を口で拒絶しているが、その目はしっかりと龍牙を捉えている。
「おやおやどうしたの?動きが鈍いよ!」
「ぐぬぅ!!」
余りの勢いに圧される鬼塚だが、大きく拳を振るい吹き飛ばす。
「よっと、何かしたかな?はは!」
直ぐに距離を詰めて再度斬撃の嵐。
「あはははははは!!!」
「んだよテメェは!!」
「何だろうねぇ?---取り敢えずシメてやるよ」
刹那、龍牙の雰囲気が変わる。そして刀を縦に振り下ろす。
この時、鬼塚は何故か動けなかった。
〝あまりにも速い、一瞬よりも速い〟動きについていけなかった。
「ガッ!?」
肋骨ごと斬られた胸部に、龍牙は左手を思いっきり突っ込む。その手には、ドクンドクンと脈打つ心臓が握られていた。
「けじめはつけなきゃならない。悪いが、これで終わりだ!!」
龍牙は思いっきり手に力を入れて、心臓を握り潰す。
潰された瞬間、鬼塚は身体をガクガクと揺さぶり、その後小刻みな痙攣をしながら息絶えた。
「じゃあね」
トドメに空間歪曲で呼び出したS&W製M500リボルバーを構え、頭をぶち抜いた。象でさえ殺せる威力の銃弾が鬼塚の額に丸い穴をあけ、後頭部を粉々に吹き飛ばした。
この光景を見届けていた文は、ただひたすら恐怖していた。
「チッ!結局は役立たずかよ!」
廃屋から離れた山の中を歩く宮田が愚痴を漏らす。
「ま、テストは失敗として、次のサンプルを手に入れるか」
宮田の表情は、何か大きな企みを伺えるように見えた。