-龍牙の家・周辺-
「ぐぬぬぬぅぅ・・・!」
鬼塚は、呼び掛けに反応が無い事に苛立っていた。
「ど、どうしますか?」
「っるっせぇぞッ!!」
「ひっ!す、すいません!!」
ここまで鬼塚が射命丸文に固執するのは、言うまでもなく、私利私欲の為だ。
彼女の〝存在〟は、間違い無く〝世界〟でさえ動かしかねない。故にそれを我が物にする事で私腹を肥やすネタとして扱う考えだ。
金に変えることや、その容姿から奴隷の様に扱う等と、良からぬ悪行ばかり思案していた。
しかしそれが、捕らぬ狸の皮算用だと、思い知らさせられる事になる。
目の前の家の車庫のものと思われるシャッターが開き始める。
「てめぇら構えろッ!!」
すぐに指示を出すが、無駄である事に気付くのに時間は掛からなかった。
「なにぃ!?」
車庫から現れたのは、龍牙の駆る機動砲システム搭載ストライカーだった。
シルエットが確認できた直後、間髪無しに機動砲が正面に向けて火を噴いた。
その先にあった鬼塚陣営の車両が一台、足下を砲撃され衝撃で横転する。
「ぐッ!!クソッ!!撃て!撃てぇ!!」
鬼塚の号令で、一斉に射撃が開始される。しかし、通常のライフル弾はおろか、グレネード弾でさえ傷付く事無く、ストライカーは何事も無かったかの様に発進、逃走を始める。
「追えぇ!!ぜってぇに逃がすんじゃねぇぞッ!!」
鬼塚達も、全員が車に乗り後を追う。
(逃がさねぇ!絶対に逃がす訳にはいかねえ!!)
鬼塚の野心は完全に剥き出しになっていた。
◇
-東京と山梨の間・山間の車道-
ブロロロロ!!っとディーゼルエンジン特有の力強いエンジン音を轟かせながら、龍牙達の乗るストライカーが車道を走っていた。
上部にあった機動砲の姿が無く、ニュートラルなシルエットに戻っていた。
「みんな大丈夫?」
「まあ、大丈夫と言えば大丈夫だけど・・・」
「何だか色々揺れたり大きな音が聞こえたり・・・」
「何だかスリリングね♪」
「わ・・・わたしは・・・もう・・・うぷっ!」
「わぁーー!!文ちゃん待って!龍牙!ビニール無い?!ビニール!!」
「ちょっ!待って!え~っと、あった!はい!!」
車内では、蓮子、メリー、紫の順に声が聞こえたが、文に限ってマジやばヘルプ!な状況だった。辛うじてリバーシングする事は無かった。
鬼塚達に追われている事もあり停車する訳にはいかず、龍牙は極力穏便な運転に心掛けた。
「今は一段落しているけど、追っ手が来たときにはまた飛ばすからね」
「また・・・ですか・・・」
完全に絶望しきった顔をした。乗り物そのものに耐性の無い文には文字通り生き地獄だ。
ふと龍牙は何かを思い出したかの様に紫に質問をする。
「ところで紫、境界を操って文だけでも幻想郷に連れて行けないのかな?」
「残念だけど、通り道に使えるほどの大きさの隙間は、今朝位しかタイミングが無かったのよ。スキマそのものは操作出来ても、幻想郷と外の世界を繋ぐことは難しいの」
「そっか・・・紫、1つ良いかな?」
「何かしら?」
「幻想郷と外の世界を跨いで存在する博霊神社に行けば、なんとか成るかな?」
「そうね、可能性はあるわ」
「場所は判るよね、案内して貰って良いかな?」
「いいわ。先ずは---」
ガシャァン!!
「きゃあッ!!」
「ぐッ!!追いつかれたのか!?」
紫が口を開いた直後、車体が揺れた。爆発による揺れだ。
鬼塚達の追っ手がRPG7を放ったのだ。
「車体ダメージ・・・気にする事も無いな」
撃ち込まれたのは通常の榴弾頭だった為、爆発によるダメージはほぼ皆無だ。
被弾した箇所が少し爆炎の
「くっ!何か使えるアセンブリは・・・こいつだ!」
タッチ端末から再び設計図を展開、武装を選択した。
再びストライカー上部中央に光の輪郭が現れ、光が消えて武装が現れる。
チョイスしたのは左右に並べた2機のブローニングM2キャリバー50だ。
展開が完了してすぐに後方へ狙いを定め---
「掃射---開始!」
ドッドッドッ!!っと2つの銃口が同時に火を噴き始めた。
後方の追跡車両は瞬く間に蜂の巣となりながら変形、爆発して、コントロールを失い、車道から脱線、地形に沿って火だるまになり転がり落ちた。
「まだ来るのか!飛ばすよ!」
アクセルを少し踏み込み、速度を上げる。その間、他に近寄る追跡車両を薙払いながら。
◇
-山梨県・山中・休憩用駐車場-
鬼塚の追跡を振り切り、今は道中の休憩用に存在する駐車場に寄っていた。
文は蓮子の付き添いのもとトイレに。メリーは龍牙に頼まれ備え付けの自動販売機で飲み物を買いに行った
「紫、状況はかなり面倒な方向に転がっている。博霊神社はこの山梨、そして長野のどこかの山中にあるって事でいいんだね?」
「ええ、そうよ。最終的な道案内はするけど、まずはさっきの連中が付いて来ない事が割と重要よ。幻想郷の存在を無闇にさらさせたくないわ。加えて、あんな奴らを入れたくないから」
「幻想郷を創った1人だもんね」
「ええ」
「龍牙、戻ったわよ」
「お、ありがとうメリー」
「龍牙、こっちも終わったよ」
「すみません皆さん、迷惑をお掛けして」
「仕方ないよ、誰だって苦手なのはあるし」
「・・・後5分くらいね、追っ手が来てるわ。行くなら今すぐにしないと拙いわよ龍牙」
「了解。さあみんな乗って、出発するよ。・・・さて、それじゃ探しに行きますか。博霊神社を」
全員が乗り込み、ストライカーは再び走り始めた。