-山梨県山中-
博霊神社を目的地に定め、ストライカーを走らせる龍牙達一行。
鬼塚の追っ手から逃れるように速度を速めつつも、文が体調を必要以上に悪くしないように慎重に運転する。
「龍牙、追っ手は?」
「今の所は無いよ。けど、この道路沿いに走っている武装車両が2台ある。だけどこの速度なら追い付かれないよ。寧ろ少しづつ離していってる」
龍牙は衛星カメラをモニターしながら現状を伝える。
現在走っている舗装路は、入り組んだ山間部を走っており、視界に捉えるには相当近付く必要があり、現在の距離時差は約7分程を維持している。呼吸を整えるには充分な距離だ。
「紫、取り敢えず大まかな道案内をお願いしたいんだけど、最初に何処へ向かえばいい?」
「まずは長野県に向かってちょうだい。そこからなら誘導しやすいわ」
「長野、か・・・」
鬼塚の拠点は間違い無く存在する上に、情報網も敷かれているだろう。状況打破の為のいえど、ストライカーをチョイスしたのはある意味間違いだったな。
「・・・!しまった!」
龍牙はモニターに映し出されている衛星カメラが、この先の道の警察の検問を捉えた。
「どうしたの龍牙?」
「この先、警察の検問がある。なんたってまた---」
ここで、龍牙の思考が1つの疑問を抱いた。
---何故、こんな山奥に検問が?
そして、連鎖的に次々と疑問が浮かぶ。
---何故、今の時期に検問してるんだ?
---今までは、検問が敷かれる交通安全期間は来月のはず。
---パトカーも、片側車線を遮るかの様に横向きに停めてある。
---何より、まず本当に警察なのか?
龍牙の思考は残念な事に当たりだった。
彼等は警察では無く、鬼塚の配下の連中なのだ。
「紫、ちょっといいかな?」
「あら、何かしら?」
「この先に検問があるんだけど、気付かれずに突破するのは非常に厳しい。かと言って後ろには追っ手がいる。そこで相談なんだけど、紫のスキマはこの車両は通れるかな?」
「ええ、可能よ。・・・と言いたいけれど、今は下手には使えないわ。幻想郷に入る為にとっておかないと」
「じゃあ仕方無い、強行突破しますか。文、悪いけどまた揺れるからね」
「ひ~ん」
アクセルを踏み込み、少し速度を上げる。
◇
-山梨県山中・待ち伏せポイント-
「あ~ダリぃなぁ」
「全くだ。金の為とは言ってもこれはな」
「つーかホントに来んのかな?金もくれんのかな?」
「判んねぇよ---って来た!」
パトカーの中にいる警官服の4人の男達が喋りながら待ち続け、遂に
「おし、準備しろ!手筈通りにな!」
「了解」
運転席のリーダー格の男の指示で助手席の男が誘導棒を持って外に出る。
残りの3人は外から見えない足元等で、FN・P-90をコッキングして準備を整える。
だいぶ近付いた所で、外に出た男が誘導棒を上げて、注意を引こうとする。が、一向にストライカーは速度を落とさない。寧ろ加速してきた。
「おいおいおい!」
「冗談だろ!」
「ヤベェ逃げろ!逃げろ!!」
余りに威圧的な加速に、危機回避本能が働く。
パトカーのエンジンをかけて、すぐに動ける様にして、外に出た男もすぐに避けられるように道路脇に近寄る。
そして、男達の読みは当たり---
「のわああぁぁぁッ!!」
「ヒイィィッ!!」
ストライカーが減速する事無く検問ポイントを突破、そのままの速度で遠ざかって行った。
幸いにも犠牲者は無かったが、今まで味わった事の無い恐怖に震えて誰一人動けずにいた。
◇
-検問ポイント突破後・龍牙一行-
「ふぅ~何とか突破成功だな」
目を変化させた龍牙が1つ溜め息を漏らした。
先程の検問ポイントの男達が威圧的な恐怖に震えたのは、言うまでも無く龍牙の
「文、大丈夫?」
「はい、まあなんとか・・・」
「大丈夫よ龍牙、こっちは私達が面倒見るから」
「龍牙は運転に集中してて」
「りょーかい」
メリーと蓮子が面倒をみてくれていると分かり少し安心した。
◇
-長野県山中-
「しつこいなぁ!もーッ!!」
突然ながら追われていた。
検問ポイント突破後、数十分程で長野県に入るも、間もなく鬼塚陣に囲まれこの惨状。
特に心配の必要は無いが、ドンパチ色々撃ち込まれている。
「龍牙、振り切れないの!?」
「無理だって!」
「武器とかあるでしょ!吹っ飛ばしなさいよ!」
「相手は人間!B.O.W.じゃ無いんだから無闇に殺せないって!」
「じゃあ私がやる!!」
「はあ?!!」
蓮子の文字通り爆弾発言に驚く龍牙だが、蓮子の表情は今にも泣きそうながら至って真面目で本気だった。
「・・・わかった、どうにかするよ」
「ありがとう。・・・ごめん」
「いいよ、気にしないで」
蓮子の意思を察し、龍牙は操縦を怠らない様にしながら策を練る。
そして、1つの道路標識が目に映る。
《この先落石注意》
「!これだ!!」
すぐに、操作パネルのアセンブリを展開し、武装を選択、対戦車6連ミサイルを上部に展開。
目の前に右カーブが現れ、同時に20メートル近い岩壁も確認出来た。
ミサイルを岩壁の中心に狙いを定める。
そして残り15メートル地点で一斉発射。バックブラスト(無反動設計のロケットやミサイルによく見られる現象。後方爆風。狭い屋内で使うと自分が死に、屋外では後ろの味方を吹き飛ばす危険な現象)ですぐ後ろにいた車両がその風圧でフロント部を小さく歪ませながらバランスを崩し、土壁に激突した。
放たれたミサイルは狙い通り岩壁の真ん中に直撃。爆炎と轟音に一帯が呑まれ、岩壁が崩壊し始めた。
「おい!停まれ!!」
「うわあぁぁ!!」
「嘘だろッ!!」
追っ手は目の前の光景に驚き、恐怖した。
一方で龍牙のストライカーは難なく通過しきっていた。
◇
-長野県・???ー
「ここが・・・」
「そう、博霊神社よ」
追っ手を振り切って間もなく、霧がかかり、GPSがエラーを起こし、それでも紫の言う通りに進んで行き、霧が晴れた先に目的地である博霊神社に到着した。
「ぱっと見普通だね。当たり前だけど」
「そうね---!龍牙君、急ぎましょう。追っ手が来たわ。それも大物よ」
「鬼塚、か」
確かに強く大きい邪念を感じる。このままだと拙い。
「このままこの車両で鳥居を目掛けて突っ走って。後は私が何とかするから」
「判った。行くよ、3人とも!」
「オッケイ!」
「いいわよ!」
「はい!」
「それじゃあお願い、龍牙君」
「了解!」
アクセルを踏み込み、一気に加速する。
ふと、鳥居の奥、神社の前に神主と思わしき壮年の男性の姿が見えた。
とても穏やかな感じで、まるで客人を迎えるかの様な笑顔と雰囲気だった。
「大丈夫よ。そのまま」
「うん、分かった」
減速する事無くアクセルを踏み込め続ける。
そして、鳥居の前の3段程しか無い階段に前輪が当たり、車体が跳ね、鳥居を通過する寸前に、まるで澄んだ
「幻想郷へようこそ。御剣龍牙君」
誰に話す訳でもなく、神主は歓迎の言葉を綴った。