※タイトル間違えました。当初は夜の予定で書こうとしてたので!ごめんなさい!
寒い時に暖をとろうとするのは人間の本能である。
人間は遥か昔から火を起こして暖をとったり、障壁を作る事によって熱を逃がさず寒い風を通さないようにして凍えるような季節を乗り越えてきたのである。
現代は防寒具と言う暖を取る為の物は発達したが、やはり寒さと言う物は感じるし、切り離すことは出来ない。特に師走の季節ともなると、手や足の指先が寒さに敏感になってくる頃合いだ。
そんなこんなで、今は誰もが凍える朝の時間帯なのだ。暖房器具をオンにしていない、或いはオンにしていても暖房器具は全然効いておらず、寒さは払いのけられない。
鎮守府の廊下でで提督は朝の冷たさに寒さに耐え切れない両手を擦り合わせ、何とか暖をとって震える両手を落ち着かせようとしている。
「さ、さびぃー!!」
館内の中ですら10度を下回る気温で、吐息も白銀に実体化している。顔を包む朝の冷たい空気はまだ我慢できる。問題は指先だ。何にも包まれてい提督の素手は真っ赤に変色していて痛々しい。朝の時間で暖房が一番効いているのは食堂。寒さで震える体を何とか従えて、温かな楽園へと向かっている最中なのだ。
真っ白に塗り替えられた息を吐いて何とか両手を暖めながら歩いていると、前方になんとも暖かそうな首周りの少女が居る事に気が付いた。黒い制服に真っ白なマフラーで首元を覆い、長いクリーム色の髪で背中を隠している少女。皆おなじみ、元祖わんこ系艦娘事夕立である。
ここでもう一度冒頭の言葉を思い出してほしい。『寒い時に暖をとろうとするのは人間の本能である』と言う言葉を。
暖を取る為に鎮守府内で火を起こすのか?それは出来ない。鎮守府が紅蓮の炎にBurnning!されてしまう。
では、新しく壁を作って熱を逃がさないようにするのか?それは短期間に出来る事では無いし、何より壁の中が暖まって無いと意味をなさない。
ならばどうするか?
その答えは、とても簡単な事だ。
――提督は夕立の背後に息を止め、気配を隠しながら忍び寄ると、その凍えた両手を
暖かいものからその暖かさを分けて貰えればいいのだ。
――夕立の背中に突っ込んだ!
「うぴゃあっ!?」
今まで聞いた事が無いような悲鳴をあげて夕立が仰け反る。
恐らく朝の訓練の帰りだったのだろう夕立の背中は若干汗ばんではいるが、運動によって出来た熱はしっかり保持されているので何ともぬくぬくとしている。
殆どの人が幼い時にやった事があるだろう。寒い時に他人の背中に両手を突っ込む行為を。その被害者が夕立で加害者が提督だ。あれ、すんごい暖かいけど、やられた方は本当にびっくりするよね?
「はぁ…。暖かい」
提督はやっと得れた暖に、顔が蕩けそうな位に顔を緩ませているが、やられた方の夕立はたまったものじゃないとばかりに提督から飛び退き、提督に向き直る。
「て、提督さん!すごく冷たい!」
ぽいをつけていない事に、提督の手がどれくらい冷たいか推し量れることだろう。わかりやすく言うと、氷を背中に突っ込まれたのと同じ位冷たかったのだ。
「そういう事はよくないっぽい!!」
「あーすまんすまん。もう手が冷たくて限界だったんだ」
背中に手を入れられると言うセクハラとして訴えたら勝てるかも知れない行為をされたが、別にその行為には夕立は怒っていない。冷たい手を突っ込まれるのが純粋に嫌だったと言う雰囲気に夕立の無邪気さと言うか、純粋さを察するものである。
対する提督は謝罪の言葉と弁明こそ並べるが、ヘラヘラと笑うだけで反省の色は見えはしない。
夕立は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の提督を除かなければならぬと決意した。別に夕立は怒ってないけど、そんな雰囲気をだしているのは察してあげて欲しい。
態度でわからぬのなら、同じ思いをさせればいいのだ。
まさに報復の連鎖!ここになんとも平和な報復の連鎖が今始まろうとしていた!
夕立は一気に距離を詰める。そして、下から提督の服を掬い上げるようにして侵入を試みる。
「なにしやがるんでぃ!」
しかし、そんな単純な手は提督も読んでいる。夕立の手を左手で払いのけ、右手の指先を伸ばしきり夕立の背に再び入れるように突く。
だが、戦闘態勢(仮)に入った夕立は咄嗟に身を捻って躱した事でその手は空を切り、夕立は今度は提督の左に回り込んで、再び下から侵入する為に手を伸ばす。先程から夕立が下からしか出来ないのはリーチの差であり、そのため攻め方もシンプルな物となってしまう。
だから、対策もしやすい。提督は右足を軸に反時計回りに半回転し、夕立の反撃に迎撃の構えを取る。
互いに引かぬ攻防。意地とプライドと同害報復と暖かさと後なんか愛とか憎しみとか運命をかけた多分そんな感じの戦い。
ある時は互いに詰め、ある時は後退し、互いに攻めと受けを繰り返し争う。
しかし、この戦いの決着はあっさりとつく。ついてしまう。
この決着の要因も簡単な事。
方やつい先ほどまで体を動かしてた少女。方や先ほどまで寒さに凍えていた成人男性。
何とも呆気ない要因となるが、提督の足は寒さに凍えていて正常に機能していない。なので、夕立の攻撃を仰け反って交わした時に踏ん張り切れずに、背中から地面についてしまったのだ。
「ぬお!?」
間抜けな声を出しながら倒れる提督。歴戦の戦士である夕立がその隙を見逃す筈がない。
「隙ありっぽい!」
提督が大勢を立て直す前に夕立はヘッドスライディングをするかのように提督の服に体ごと突っ込んだのだ。
予想だにしてなかった大胆な夕立の行動に提督はポカンと口を開けてしまった。
そんな提督の事などつゆ知らず、提督の服の中でもぞもぞと動き中を模索しながら襟から顔を出した。
「ばぁー!驚いたっぽい?」
そう満面の笑みで言う夕立に釣られて、提督も自然と笑みを零す。
「あぁ、びっくりしたよ。夕立は暖かいな」
「むっ!目的を果たせなかったぽい。でも、何だかどうでもよくなったっぽい」
元々は提督にも同じように、冷たさを味合わせる予定だったが、身体を動かしたせいでどうでもよくなってしまった。
夕立は提督の首筋に鼻先を埋める。それなりに激しい運動をしたせいか汗が現在進行形で噴き出ている最中だ。
「提督さん汗臭いっぽい」
「…無理矢理俺を動かしたせいだろう」
夕立は提督の首に頬を当てて、まるでマーキングするように首筋の硬い感触を楽しむ。
「うん、そうね。だけど、それ以上に暖かいよ」
「あぁ、そうだな。暖かいな。全く…」
夕立の頭に手を置いて少し乱暴に髪を撫でる。
心地よい温もりに挟まれて、夕立は堪能するように目を細めた。
因みにこの光景を青葉に激写され、『野獣と化した夕立!!』と言う見出しと共に夕方の掲示板に張り出してしまったので、夕立の夜戦訓練の的を青葉が務める事になったのであった。