今年の一押しだった海風と読者の皆様へとお礼を込めて。この純愛物を。
ウケトレェェェ!!!
突然ですが、皆様初めまして。私は白露型7番艦、通称改白露型の一番艦を務めさせて頂いてる海風と言います。
そして、またまた突然で申し訳ないのですが、海風は提督の事が大好きなんです。好きで好きで大好きで、お慕いしています。
この想いは提督に初めて出会った時から抱いています。着任した時に緊張して挨拶を何度も噛んでしまった時に、提督は優しく私に微笑んで、「大丈夫。落ち着いていってごらん?」と優しく微笑みながら宥めてくれたんです。
他の方からすれば、『そんな些細な理由で』とか、『そんな事で惚れるなんてあなたは誰にでも惚れるんだね』とか、言われてしまいそうですが、そうではありません。提督だから、あの人だからこそ、私の心を射止めたんです。
使い古された表現をしてしまえば、恋とは落ちるもの。どんなことも落ちる時の切欠なんて些細な物なんです。私の切欠は本当に些細な物だと自分でも思います。ですけど、それでいいんです。あの人を思うこの気持ちは本物なのですから。
提督のどんなところが好きなのか?そう聞かれれば困ってしまいます。
その理由は簡単です。沢山好きな所があるからです。
キリッと引き締まった表情が好き、海風の作ったご飯を子供みたいに夢中で食べる提督が好き、皆さんと遊んで汗を流している提督が好き、お昼寝している時の無防備な寝顔が好き、何よりも好きで好きで大好きで愛おしいのは提督が笑っているとき。
好きです。大好きです。お慕いしています。愛しております提督……。
あっ、ごめんなさい!提督の好きな所を語ると、どうしても止まらなくなってしまって……。ですが、これで海風が提督の事が大好きだとわかって頂けると、海風は嬉しいです。
海風は提督の事が好きです。大好きです。
好きで好きで、ずっと提督と共に歩んで行きたい位好きなのですが……、海風の恋のライバルは多いです。途轍もない位の相手が居ます。上は戦艦から下は潜水艦まで、多種多様で色んな魅力を持つ方々が提督の事を慕っています。
わかっています…。皆さんも海風と同じ位、提督の事をお慕いしているのだと。
提督の事を思う気持ちは誰にも負けないと言う自負は勿論あります。ですが、恋の勝負は想いだけでどうにか出来る程、夢物語ではありません。
恋の勝負の決め手となるものは、その人の持つ魅力です。
とても悔しい事ですが……、悔しくて悔しくて涙があふれて来そうですが……海風の魅力は他の人の魅力の中に埋もれてしまうでしょう。
白露姉さんの様な明るさは海風には有りません。時雨姉さんの様な冷静さは海風には有りません。村雨姉さんの様な妖艶さは海風には有りません。夕立姉さんの様な真っ直ぐさは海風には有りません。春雨姉さんの様な愛らしさは海風には有りません。五月雨姉さんの様な無邪気さはありません。山風の様なか弱さは海風には有りません。江風の様な勇敢さは海風には有りません。涼風のような気軽さは海風には有りません。
姉妹達と比べても、こんなにも海風に劣っています。海風が勝てるとすれば、お世話する能力しかありません。ですが、この能力だけで戦おうとしても、戦艦や空母の方々に負けてしまう事は目に見えています。
だから、海風は決めました。海風は提督に選ばれる事はまずありません。だから、提督の事を影に日向に支える事に決めました。
これが海風の愛の形。あなたに寄り添う私の形。
ですから、海風は幸せです。提督の幸せを笑顔を守れる事が、海風にとって一番の幸せなのですから!
なので提督……、そんなに深刻な顔をしないでください……。
海風は提督が困った様な表情や深刻な顔をしているのが嫌いです。勿論、提督の事は嫌いでは無いのですが、提督が苦しそうにしているのが嫌いなのです。
あなたの痛みは私の痛み。だから、海風の胸の奥もズキズキと痛んでしまいます。
なんでも提督は榛名さんから告白を受けたそうです。
榛名さんはとても素晴らしい人です。大人の魅力と家事炊事の能力も抜群な素晴らしい女性です。提督に相応しいお方であると言えるでしょう。
ですが、榛名さんに告白された提督は、困ったような苦々しい表情を浮かべています。
あぁ、いつだってそうです。提督は私に告白されたと相談してくださるのですが、いつだって苦しそうに報告するんです。
先程も言ったように、提督の痛みは海風の痛みです。それに、海風は陰に日向に提督の事を支えると決めたのです。
……やる事は、決まってます。
榛名さんは悪くありません。ですが、これも提督の笑顔を取り戻す為です。榛名さんも提督が苦しむ事を望んでは無いでしょうから―――
翌日の事です。榛名さんは『不幸な事故』に合い、搬送された病院で亡くなった様です。
まことに悲しい事です。まさか、榛名さんが『偶々』訪れた倉庫の廃材たちが崩れてしまったようです。そのせいで榛名さんは廃材に押しつぶされ貫かれたそうです。救助にだって廃材の撤去に時間を要したせいで、榛名さんは助かるかわからないと救出作業が終わった時点で言われてしまってました。
救急隊員さんが言っていた通りに榛名さんは助かりませんでした。
本当に残念な事です。海風も仲間を失った事に胸が痛むばかりです。
榛名さんが亡くなった事を提督に告げると、提督はひさしを下げて表情を隠した後に、『そうか』と短く告げました。提督も海風と同じ気持ちなのでしょう。ですが、この気持ちは共有できても嬉しくありません。悲しみは分かち合って分割する物。二人で同じ悲しみを得ても意味がありません。
本当だったら提督の事を抱きしめて、その悲しみを和らげてあげたい気持ちでいっぱいですがそうはいきません。私には提督を抱きしめる資格などありませんから……。
提督はひさしをあげると、ふっと小さく微笑んだ後にキリリと引き締まった表情を浮べます。
「榛名の遺体はこちらで引き取ろう。葬儀の手配も式の手配もこっちで行おう。3日は葬儀の為の休暇とする。手続きするから手伝ってくれないか?この鎮守府ではよくある事だしな。良くも悪くも互いに手慣れたものだろう?」
「はい…。榛名さんの事は残念ですが、榛名さんの事を送り出すのも私達の出来る最後の事ですから。式の方式はいつも通りで宜しいですか?」
「一応、金剛……いや、比叡と霧島にも聞いてくれ」
「わかりました。後で、ご希望を伺っておきますね」
金剛さんは半年前に戦闘中の不注意で亡くなってます。だから、今の金剛さんは榛名さんの事をまだ詳しく知りません。だから、比叡さんと霧島さんに聞く様におっしゃったのですね。提督は本当に部下想いなお方です。亡くなっていった私達の仲間の事もよく覚えてくださるのですから。
提督は一度小さく息をつくと、再び笑みを浮べます。その笑みからは幾らか暗さも感じ取れましたが、昨日までの苦しさはもう見えません。笑顔も浮かべている内に明るさを増してって。ほら、私の大好きな提督の笑顔になりました。
私は小さく心の中で安堵します。提督の笑顔を守る事が出来たのですから。
「全く、オンボロ施設の改修の予算を回さないからこうなるんだ」
「今は施設の拡張と改修の為の予算申請は通りにくい様ですし、仕方ないですよ」
そうです。改修する為のお金が無いから不幸な事故は生まれてくるんです。榛名さんの件は是非ともその教訓として、施設の改修に予算を回してくださると榛名さんも浮かばれる事でしょう。
かくして、事故や不注意で仲間が無くなる事はよくありますが、海風は相変わらず幸せです。提督が笑顔を浮かべてくださるだけで海風は幸せです。
好きです。好きで、好きで好きで、好きで好きで好きで好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで、大好きです。愛しております。心から深くお慕いしております提督。
だから、狂ったあなたが壊れてしまわないように、海風は壊れたように陰に日向に支えさせて頂きます。
愛しています提督。
これからも――ずっと――――
俺はとある鎮守府を任されている提督だ。
なんの変哲もない。普通の提督だ。
強いて特別な事を言うならば、俺は海風に思慕を募らせているという事か。
海風の事は大好きだ。好きで大好きで愛している。
彼女の好きな所をあげればキリがない。
海風の整った顔が好きだ、海風のスタイルの良い体つきが好きだ、海風が妹達に向ける慈愛の表情が好きだ、海風が甲斐甲斐しくお世話してくれることが好きだ、何よりも海風が自分に微笑みかけてくれる事が好きだ。
だけど、俺は知った。知ってしまった。海風の浮べる本当に好きな表情を!
それは自分がやってしまったミス――――の筈だった。
海風に想いを伝える覚悟を決めようとしていた時だった。自分は別の艦娘から告白を受けたのだ。
その相手は大和。当時、この鎮守府に着任していた中で最強の艦娘。
俺は大和に告白を受けたことをうっかりと漏らしてしまった。本当に口が滑ったのだ。言うつもりは無かった。海風の事を傷つけたくなかったから。
急いで大和からの告白を断ると弁明しようとした。だけど、その弁明は口にする事が無かった。何故なら、海風の表情が美しかったから。
口を滑らせたときに自分がどのような表情を浮かべていたのか知る事は出来ない。だけど、彼女の浮かべていた表情はわかる。海風は何も表情を浮かべて無かった。
いつ、どんな時も穏やかな表情を浮かべている海風の表情が完全に消えたのだ。顔からは表情筋によって出来るしわが一切なくなり、眼はまん丸に見開かれて、彼女がいつも瞳に浮かべている穏やかな光も失せていた。
普通なら気味が悪いだの、不気味だという感想が生まれるのかもしれない。
だが俺は彼女の浮かべる無の表情に酷く心を惹かれたのだ。光すら網膜にとおしているかわからない彼女の瞳がただ自分の姿を映している事に心を強奪されてしまった。
その表情に見惚れすぎてしまい、大和の告白を断ると海風に言えないまま、その日は海風を帰してしまった。
俺はその日の残りを断ると言えなかった後悔とあの『無の表情』を浮かべる海風の事が忘れられずに悶々と過ごした。
だが、太陽はそんな俺を待ってはくれず朝になった。
その朝一番にこんな報告を受けた。
『大和の弾薬庫が引火し、大和が自壊した』と。
驚きを隠せないまま茫然と執務室で原因の報告を待っていると、海風がやってきてくれた。
『大和さんの弾薬庫が引火して重体になっているようです』と悲しげに俺に言ったのだ。
その報告だけなら、受け流していたかもしれない。だけど、それだけではなかった。何故なら海風は今まで見たことが無い位の満面の笑みでそれを伝えてきたのだから。
そんな表情を浮べられたら叱るのが当たり前なのかもしれない。仲間の死を笑うなど何様なのだと激昂するのが当たり前の筈。
だけど、俺は海風の今まで見たことが無い笑顔に全てを奪われた。瞳、言葉、心、その全てを持ってかれた。
人の中にある全ての不安や邪念を拭ってもみる事が出来ない笑顔。その笑顔に心底惚れてしまった。
その瞬間、大和の死はどうでもよくなった。代わりに海風の笑顔をずっと見ていたと言う衝動に襲われた。
この時の事件が犯人が誰かと言う事は俺がよく知ってる。だけど、俺は全てを見なかった事にし、黙認し、海風にとって不利な事実を隠滅した。
好きな人の一番素敵な笑顔を守る為だ。当たり前の事だろう。
またあの笑顔をみたくて同じような事を互いに何度か繰り返している内に、海風の愛の形に気が付いた。
俺を支えると言う事で愛を形にし幸福としているのだ。俺の笑顔を守ろうとしているのだ。
だから、海風のあの笑顔は幸福を守りきれたと言う達成感から出た笑顔なのだろう。
俺が告白されたと海風に言った時、とても酷い表情を浮かべていたのだろう。だから、海風は動いた俺を守る為に。
それは、酷く歪んでいて、壊れた愛の形だと思うのだろう――受け止める側が普通の感性を持っていたとしたらの話だが。
その事に気づいた瞬間、俺は嬉しくてたまらなかった。海風からの深い愛を感じたから。俺にとってそれは純愛としか思えなかったから。
だから、俺は海風があの時のような笑顔を見せてくれたとき、とびっきりの笑顔で返すことを決めた。部下が死んだと言う建前上、笑顔を浮かべるのは申し訳ないが、それでもはっきりと笑顔を浮かべる。否、身体が笑顔を浮べたがるのだ。愛してくれてありがとう海風と。
海風のこの笑顔は、海風に想いを伝えた瞬間に見れなくなってしまうのだろう。だから、俺は想いを伝える事は一旦諦める事にした。
でも、心配はいらない。海風は俺を支えると言う形で愛を示してくれてるし、俺も海風の事を傍に置いて離れる時間を少なくしようとしている。
俺達は確かに愛し合っている。海風も心の奥底ではわかっているのだろう。俺が海風の事を愛してやまない事に。
海風は壊れている。愛に壊れている。
俺は狂っている。愛に狂っている。
だからこそ、愛し合っていると確かに言えるのだ。
俺は海風が大好きだ。好きで、好きで好きで、好きで好きで好きで好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで、大好きだ。愛している。いつも海風の事を想っている。
だから、これから先も壊れたように俺を支えて欲しい。俺の傍でずっとずっと。海風の愛に狂った俺を支えておくれ。
愛してるよ海風。
これからも――ずっと――――
今年の最後だから言っておきます。これからは自分を自分で少しは推すようにしました。だから言います。
評価とご感想をお待ちしております!!
では、よいお年を!!