日本人であるならば成人の日と言う物をご存じであろう。
1999年までは1月15日に定められていたが、現在は1月の第2月曜日に当てられている国民の祝日の事である。
祝日に関する法律で言えば、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」ことを趣旨としている。
その日は各市区町村をあげての祝いの日。成人を迎えた方達は、自分の出身の市区町村から成人式の招待状が届き、それに参加する人が殆どであろう。式の会場内で同級生と再会し語り合い、式が終わって同窓会で盛り上がる事も醍醐味であろう。
今回のお話は成人式に参加した一人の男がある女性と再会するお話である。
成人式の会場についた青年は受付からパンフレットを受け取り、会場の中に入っていく。成人式らしく中は中学校毎に集まれるように立て札があり、そのおかげで自分の出身の中学の仲間と会うことが出来た。
「おう、お前司令か?久しぶりだなー」
「久しぶりだな。でも、俺の事を司令と呼ぶのはいい加減にやめロッテ」
約5年ぶりに会った友人に司令と呼ばれた青年は苦笑いを浮かべる。
彼の司令と言うあだ名は、彼が軍人を操作するゲームが好きだった事に由来している。プレイ自体は下手だが作戦を練るのが上手く、当時チーム組んでいた仲間から密かにそう呼ばれていたのが、とある人物にうっかり漏らしてしまいその人物が学校の皆に広めてしまったのが直接の原因だ。
そのあだ名で学校の友人たちに呼ばれ始めた頃は嫌だったが、段々と受け入れていったので、今は昔を懐かしめるあだ名となっている。
「お前は変わってないなぁ」
「そう言う司令も変わってないな。俺達、ホントに成長したのか?」
余りにも変わって居ないお互いの外見を見て自然と冗談を言いながら笑みを漏らす。お互いにどう見ても変わっている箇所は身長が伸びた位しか発見できないから、余計に笑えてしまう。
「そう言えば、大学生だよな?大学生活はどうよ?」
「んー、ぼちぼちと言った所だな。中の下位か」
「おいおい、有能な司令さんが中の下とか部下が困るぞぉ~?もしかして、色恋沙汰にでもかまけてたか?」
「部下なんか居ねぇし、恋愛なんかも生まれてからずっと出来てねぇわ!!」
「全く、釣れないねー君は」
「おわっ!お前も居たのか」
「うん、居たよ。中学校ごとに集まれるように案内があるから親切だよね」
「つかお前、背が伸びたな」
「えーそうかなぁ?」
背後から別の人物に声をかけられた司令が瞬時に振り向くと、そこに居たのは身長が司令より頭一つ分は大きいのではないかと言う大男であった。
彼は中学生の頃までは背の順で前から二番目位の大きさでいつも背の事で弄られていたのだが、それはもはや過去の話だと言わんばかりに背が伸び、知らぬ間に見下ろす側から見下ろされる側に。彼の成長期は遅かったのである。
背が小さかった故の当時の幼い顔立ちが自分を見下ろす巨人の顔になっているので、何とも言い難い違和感を感じて顔を引きつらせている。
「まぁまぁ、僕の事はどうでもいいでしょ?久しぶり、司令」
「んあぁ、久しぶり……」
司令の身長は高い方の分類故に、自分が見上げる程の大きさは初めてで、態度が同級生に向ける物では無く、子供が大きな大人に向けるような委縮した態度になっている。身長の変化など本人からしたら気づかないモノなので、本当にどうでもいい事なのかも知れないが他の人からはどうしても気になってしまう。事実、彼と先程まで話し込んでいた別の友人も司令と同じように態度が委縮している。
「皆変わらないねぇ~。やっぱり、男なんてそんなに変わらないよねー」
「あ、あぁっ、その通りだよな」
「ま、全くだよな!変わらないよな!ははっ」
何度も言うが、身長と言うのは本人が気にしなくて他人が一番気にしてしまう事なのだ。眼鏡をかけてるかどうかの次あたりに気にしてしまう物なのだ。お前はその台詞を言えないだろ、と二人が思ったのは公然の秘密である。
とは言え、身長とか以外に大きな外見の変化が無いのは事実。あるとしたら髪の色を染めただの、ピアスの穴をあけただのその程度の物。男は化粧なんてしないので、大して変わらないモノなのだ。
二人と会話をしながら司令は自分と同じ中学の出身の男達を一瞥する。殆どの人がスーツ姿とは言え変わった点は殆どなく、頭の中にある中学生までの頃のクラスメイト達の像と容易に結びつけられた。
「にしてもさー、女子は全然誰が誰だかわからないよねー」
「その通りだな。俺もずっと居たけど、誰が誰だか声をかけるまで分からなかったぞ」
女子。二人の言葉に促されるように今度はそれぞれの派閥同志で固めている女性達の陣営に目を向ける。
二人の言う通り司令も誰が誰だかわからなかった。それは化粧のせいと言うのもあるが、みな綺麗になっていたからと言う事に他ならない。
ニキビが多かった頬はファンデーションで隠れ、目を引く口許も口紅で艶やかさを増し、眼鏡をかけていた子はコンタクトにしたのか誰も眼鏡をかけておらず、髪型も編み込んだ清楚な物から火山が噴火したかのようなボリューム満点な髪型まで多種多様。
確かに誰が誰だかわからない。声で判別しようにも女子が三人集まれば姦しいと言う通り、やかましくて誰の声が誰から出てるのかもわからない。
「……誰かわからないな」
「でしょー」
余りにも容姿が違うおかげで久しぶりに会いたかった人も誰かわからない。特徴的な髪の色とよくとおる声の持ち主なのだが、会場の喧騒と人混みでその特徴も隠れてしまう。
1000人近くの人が一つの会場に集まっているのだ。誰が誰かわからない状況では人を探す事すらままならない。
「あららー。司令、女の子ばっか目に言ってるよ?そんなに出会いが欲しいのかい?」
「ばっか違うだろ!アイツはあの子を探してるんだよ」
「……!なるほど、なるほどー。そっかーそうだよねー。理解したよ」
友人たちが司令に聞えないようにごにょごにょと内緒話をしているが、今の司令の意識は友人たちに向いていない。
女子をチラリとみて記憶と照合しては違うと判断し切り捨てる。女子は殊更に判断が難しいので、彼の焦燥は増してくばかり。
一人、また一人を違うと判断していると、突如興奮した友人に肩を叩かれる。
「おいおい!見て見ろよ!すげー美人がいるぜ!!」
「いやぁ、こんな田舎にあんな美人さんがいるもんだね」
友人が指を指す方向に目を向ける。
その美人を視界に入れた瞬間に、彼も思わず息を呑んでしまった。
満開になった花畑のように随所に花がちりばめられた花柄の赤い振袖と着物を留める雅な絵柄の黒い帯。シンプルなアップスタイルの狐色の髪は花をあしらった髪飾りで彩られている。唇は薄いリップを縫っているのか光沢を放っていて頬は薄らとファンデーションをしているだけで化粧でめかしこんでいる様には見えないので、元々かなり顔立ちが整っているのだろう。
今まで見たことの無い和服の美女に司令は呑んだ息を感嘆した様に吐き出して釘付けになってしまう。
「お、おい!」
「こっちに来てるよ!」
友人の二人の言葉は相変わらず司令には届いていない。司令の『人を探す』と言う目的も見失っている状態だから仕方ない。
美女がこちらに近づいているのがわかる。その度に彼は自分の心臓の鼓動が強くなっていく事を感じ取る。
あの美女は誰なのだろうか?そればかりが今の彼の思考を支配する。
美女は司令に近づくと、ふんわりと花開くような笑みを浮かべる。
その瞬間、司令は心臓を握りつぶされたような感覚に陥る。心臓から送られる血液たちは固まった司令を再起動させようと、次から次へと酸素を体を巡らせる。新陳代謝が高まったせいか顔に熱がこもっていくのがわかる。それと同時に仕事を再会した司令の脳みそが、美女の笑顔と記憶にあった少女の笑顔を重ね始める。
「久しぶりね司令!」
手毬が弾む様に軽やかで、けれど脳内の奥底まで行き渡るようなよく通るような声。
その声の持ち主は小学校から中学校までずっと同じクラスという数奇な縁を共にした『探し人』で、自分が司令と呼ばれる原因を作った人物に他ならない。
「…………」
「ちょっと、何か反応しなさいよ」
だけど、彼の記憶にある少女と今目の前にいる美女は異なっている。顔立ちは確かに整っていて男子たちからは人気であったが、彼女は可愛いと言う分類の少女だった。
その少女が今はどうだ?幼さは完全になりを潜め、美しさが際立っている。まるで、女神のような完成された美を目の前にして、今にも昏倒しそうな位だ。
「話聞いてる?司令?司令ったら!もう私無視するなんてどういうつもり!?」
目の前の美女が司令に訴える様に抗議の視線を向ける。彼女の口から出る強気の口調は、完全に彼の記憶の中にあるものと一致していて、頭は目の前の美女が『探し人』であるとやっと結論付ける。
「……ああ、ごめん。久しぶりだな陽炎」
「やっと反応した。久しぶりね司令」
小さく膨らまていた頬の空気を解放すると探し人、陽炎は花の様な笑顔を浮かべる。
陽炎は小学校から中学校の頃までずっとクラスメイトだと言う不思議な縁のあった人物だった。その縁で、小学校と中学校の頃では互いの同性の友達より遊んでいたし気の置けない親友の様な仲だった。だが、この縁は高校生になる前に断たれてしまう。それは、互いの進学先が別の学校だったから。それからは学校が違う事から疎遠になってしまい、結局は今日まで会う事は無かった。
「なによぼーとしちゃって。もしかして私に見惚れてたのかしら?」
口許をニタリと歪めてからかうように陽炎は聞いてくる。
陽炎の一挙手一投足にドキリと心臓が反応してしまう彼には取り繕うと言うごまかしの選択肢は出来ない。
「あぁ、その……昔は可愛かったよなぁって」
「……なぁに、今は可愛くないって言いたいの?」
明らかに陽炎の声は不機嫌に低くなり、睨みつける様に目を細める。それは怒るだろう。今、彼から出た言葉は彼女の魅力を損なう発言なのだから。
「違う…!違うんだ…!今は可愛いって言うよりその……」
「その、何よ?」
「……綺麗になったよ陽炎は」
彼から綺麗と言われるのは想定外だったのか、顔を赤くしたのは陽炎の方だ。司令の事を見つめながら、空気を求める魚のように口を動かす。
彼はそれ以上の言葉を重ねることが出来ない。薄い茶褐色の彼女の瞳に囚われてしまったから。
そのまま数秒間、互いに見つめ合っていると、また陽炎が微笑む。
「ありがとう。最高の褒め言葉よ」
ほんのりと赤い肌色になった陽炎の可憐な笑顔にまた司令は息を詰まらせる。先程から心臓を握られているような息苦しさであったのが、今度は肺まで捕まれている様で段々と息苦しくなる。
はたまた二人は見つめ合っていたのだが、居た堪れなくなったのか陽炎が話を切り上げて来た。
「じゃ、じゃあ、他の友達の所に行くから!また、後でね!」
片目をパチリと閉じ、ウィンクを司令に送ると足早に陽炎は去っていく。
纏め上げて露わになった彼女の耳は季節外れの紅葉の様に深紅に染まっていたのだが、石造の様に固まっていた司令は気づく事は無かった。
「おうおうこれは!」
「お熱いねー!」
黙って聞いてた友人二人がはやし立てるが、陽炎の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない司令には馬の耳に念仏といった感じで何も届いていなかった。
「ん……」
「お、目が覚めた?飲み過ぎたのよまったく……」
司令の目が覚めると、懐かしいが馴染みが無いインテリアと陽炎の姿があった。
ズキズキと痛む頭を片手で抑え、寝かされていたソファに手をついて上半身を緩く持ち上げる。
「ここは……?」
「私の家よ。飲みすぎて酔いつぶれたから介抱してたの」
司令は陽炎からこうなった経緯の説明を受け、自分に残ってる記憶とも照らし合わせる。
成人式が無事終わり同窓会に移った。あの後、成人式中は女友達と共にいた陽炎が後でと言ったのは、この同窓会で話そうと言ったかったのだろう。
しかし、同窓会中は司令と陽炎が話すことは無かった。何故なら、司令が友人に煽られて一気飲みを繰り返した結果酔いつぶれてしまったのだ。
陽炎が司令と話そうとした時には、苦笑いを浮かべる彼の友人たちと酔いつぶれて眠る司令の姿が。
同窓会が終わり二次会に移ろうとしたときに、陽炎は司令を家まで送ると言って一緒に抜け出し、今に至るという訳だ。
「なんで、陽炎の家なんだ?俺の家にお袋ぐらいなら居た筈なんだが……」
「べ、別に私の家の方が近かったからよ。少しでも早く具合を治して欲しかっただけ。深い意味は無いわ」
陽炎は司令から目を逸らしながら理由を早口に述べる。
司令は痛む頭で、同窓会の会場からなら俺の家の方が近かったのでは?と思ったが、頭が痛んで正確な地図を思い浮かべれなかったのでやめた。
再び額を抑える司令を見かねた陽炎がコップに入れた水を差しだす。
「はい。どうぞ」
「……ありがとう」
コップに入った温い水で喉を潤しながら、改めて陽炎を見つめる。服装は振袖からだるっとしたパーカーとスウェットと言う部屋着に。メイクも落ちては居たがどんな服装であれ彼女の美貌は失われる事が無かった。
改めて陽炎は綺麗だと、彼は思った。下ろされた髪は昔より短めになっていたり、肌は日焼けが残ったような小麦色の肌から粉雪のような白さへと変わっているが、それが女性的な魅力を更に際立たせている。それに、振袖では解らなかったが、豊かになった二つの山の主張が強くなったことから、身体の方も成長していたことがよくわかる。
「……綺麗だな」
「そーお?……ありがとう」
彼から突如飛び出た言葉をそっぽを向きながら陽炎は受け止める。顔を俯かせて歪み始める唇を彼に見せないようにしながら。
「ねぇ?」
「……なんだ?」
「今、彼女とかいるの?」
「居ねぇよ」
「そっ」
そっけない返事とは裏腹に、陽炎はソファに四つん這いの姿勢で上がる。司令が逃げないように手足を使って閉じ込める様に。
「陽炎?」
突然の行動に疑問符を浮かべるが、抵抗しようとは彼は全く思わなかった。それは、彼の心が再び陽炎の瞳に閉じ込められたからに他ならない。
陽炎は彼の目線と同じ高さまで移動すると、じっと彼を真剣な眼差しで見つめる。
「ねぇ」
「なんだ?」
「今、私も恋人がいないの」
「……何年前から?」
もう隠すことはしなくていいだろう。司令はずっと陽炎に恋焦がれていた。それは初恋と言う物だった。疎遠となってから新しい出会いは幾らかあったが、恋に発展する事は無かった。
「生まれてからよ。馬鹿な事を言わせないでちょうだい」
対する陽炎も司令と同じ。陽炎も司令に恋をしていた。彼と同じように出会いこそあれ、恋へと昇華することは無かった。
「そうか……じゃあ、俺と同じだ」
「嘘よ。司令はモテる筈よ?あんたは鈍感だから気づいて無いかもしれないけど。私、ずっとアピールしてたつもりだったのよ?」
「俺もずっとアピールしてたんだけどな…。陽炎はずっとモテてたから、高校生になったら恋人が出来てると思ってた」
「そうやって言いたいのは私も同じよ」
同じ気持ちを持ちながらも最後に想いを伝えられなかったのは、思春期特有の羞恥心と、互いに自分は相応しくない、自分には高嶺の存在と言う決めつけの気持ちがあったから。
「でも、俺は陽炎を信じてるから」
「うん。私も司令を信じてるわ」
だから、互いに親友と言うもっとも居心地のいい場所に納まろうとして離れていた。自分には我儘を叶える力は無いと思っていたから。
「なぁ、一つ言いたいんだけど?」
「なあに?」
「俺、陽炎の事が――」
その先の言葉は陽炎から口を塞がれた事で封じられる。
「私から言っていい?」
司令は口を抑えられたままながらも穏やかに頷く。
「ずっと、あなたの事が好きでした。どんな時も結局あなたの事を忘れられなかった。それは、あなたに焦がれて日に日に想いが強くなっていったから。会えなかった期間、とても胸が痛かった。会いたいと何度も思ったけど、あなたに好きな人が出来たと思ったら怖かったから会えなかった。今日、あなたに会えて私は自分の想いを強く実感しました。私はずっとあなたの事が好きなんだって。だから、私をあなたの恋人にしてください!」
陽炎は彼の口を塞ぐ手を離す。彼は陽炎の背中に腕を回すと包み込むように抱きしめ、陽炎と一緒に答え合わせを始める。
「俺もずっと陽炎の事が好きでした。陽炎の事を想うと今も昔も胸の中が一杯になって張り裂けそうで。でもあの頃は気恥ずかしくて言う事が出来なかった。本当にバカだと思う。その事をずっと引きずっていたのだから。久しぶりに陽炎に会った時、嬉しくて心臓が止まりそうになった。だから、そこで実感したんだ。ずっと陽炎の事が好きなままだったんだって、だから俺を君の恋人にしてください!」
彼からの告白を最後まで聞き取った陽炎は、行動を返事で示すかのように彼の事を力一杯に抱きしめる。もう二度と離さないと言う様に。
子供の頃からあった気恥ずかしさや諦めの壁は何時の間に無くなっていった。それは彼らが大人になり思春期を抜けたと言う事や、我儘を叶えることのできる力を手に入れたからという事に他ならない。
子供から大人になると言う事は、少しずつ自分と向き合うと言う事。あの時、諦めてしまった二人は五年と言う長い歳月をかけて、自分の想いを受け止め、認め、我儘を叶えることが出来たのだ。好きな人と恋をしていきたいと言う我儘を。
「ねぇ?」
「うん?」
「私の両親。明日の夜まで帰って来ないの」
「深い意味やっぱりあるのかよ」
「し、仕方ないでしょ!これ以上長く我慢はしたくないもの!」
「奇遇だな。俺もこれ以上は我慢したくない」
「やっぱり気が合うわね私達」
「気が合いすぎて互いに14年我慢するハメになったがな」
「ふふっ、その通りね」
皮肉交じりのやり取りですら、今の二人には愛しささえ感じ取れる。
二人はソファの狭いスペースの中に隣り合ってに寝そべる形になると、どちらからともなく唇を重ねる。
初めてのキスはレモンの味と言うが、我慢の堰が崩壊した二人にはもはやそんなものは関係ない。互いの存在を確かめるように何度も何度も口づけを交わす。
「これからは」
「ずっと一緒ね」
陽炎は彼の手を自分の頬に持っていくと、熱で潤んだ瞳で彼を見つめる。司令は陽炎の期待に応える様に唇を重ねながら、彼女の服に手をかける。
この後二人の行く先は、天へと昇っていく月のみが知る事だろう。