※この作品はR-18です。

寝る前に読むには長すぎる艦これ噺   作:なぁのいも

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 二年位前に書いた作品を軽く手なおした物です。

 萩風を一目で気に入って、萩風を最終海域で手に入れてから三日位で書いた記憶があります。

 ネチョ薄の通り、夜の描写がちょっとあり。色んなの参考に書きましたが、夜の描写は手を出し始めた当たりなのでお察しください。


※R-18 寄り添ってずっと

 人類は今戦争を起こしている。その相手は同じような人間では無く深海棲艦と言うお伽噺にでも出てきそうな異質な生命体だ。

 

 人類は艦娘と言う兵器を用いて戦争を続けている。その艦娘の指揮を執るのは、艦娘やましてや自立思考AIでも無く人間だ。

 

 だが、人間にも限界という者がある。それは寿命であったり、肉体的理由であったり、精神的な理由であったり、問題を起こしたり。そんな理由で艦娘の指揮がとれなくなった人物だって存在する。

 

 ここから始まる物語は提督をやめた青年の生活に着目した物語だ。彼の新しい生活に起こった変化の物語と出会いの物語───

 

 

 

 

 

 

 

 

 青年は日本の本土から離れた島で第二の人生を送っている。ここは制海権の維持が比較的安定しており漁に困ることもない島だった。そんな島には日本の軍に関連する大きな施設は存在しない。あるのは艦娘達の為の小さな補給基地のみ。

 

 何だかとても平和でこの土地だけ戦争で荒れている世界から切り離されたような、穏やかな環境の離島。

 

 その島に青年は住んでいる。本人曰く、元艦娘達の指揮官らしい。彼が提督をやめた理由としては様々な噂が尾ひれをついて出回っている。

 

 艦娘に暴力を振るったのだの、大きな作戦で失敗を犯した責任をとったのだの、命令違反の常習犯だったのだの、艦娘のハーレムを作り上げ性の宴を毎日起こしていただの、様々な噂がある。

 

 だが、島民達は青年の過去を気にすることなく受け入れた。と言うのも、青年がこの島の出身だったと言うのもあり、皆が青年の人柄を誰よりも理解していたからだ。

 

 青年は自分より他人を優先させる程のお人好しでいつも損な役回りばかり請け負っていた。今回はそれで元に戻れないところに来てしまったのだろうと、馴染みの人間たちは何となく察していたから。

 

 そんな風に故郷で再び暮らしていた青年は、日課である早朝の海岸散歩に出ていた。

 

 昔から太陽が昇り、空が緋色に染まっていく瞬間、僅かなその時が青年は昔から大好きだから。

 

 今はまだ暗いが、後10分もしない内に空は夜の闇を切り開いて、緋色に塗られていくだろう。

 

 砂浜に座り込み、両手に白く染まった息を吹きかけて暖を取りながら。黒から緋色に染まっていく空を眺める。

 

 いつもの習慣だが暗い夜が終わり新しい日が始まるその瞬間には思わず口を開けて魅入られてしまう。

 

 空はまず白くなり続いて絵の具を水に溶かすように緋色に染まり、海とのコントラストが美しい太陽が現れる。

 

 青年は自分の見える空が殆ど白く染まるまで時の移ろいを見届けた後、開いた口を塞いで立ち上がる。青年の口元は知らず知らずの間に緩んでいた。

 

「うん。今日もいい天気になりそうだ」

 

 日課が終わり上機嫌で踵を返して自宅に向かおうとしたその時、先程まで夜の暗さで隠されていた物に気がつく。

 

 砂浜に何か大きな物体が打ちあがっていたのだ。

 

 青年が奇妙に思い近づくと物体の正体に気がつき、砂浜に足を取られないように走りながら物体に近づいた。

 

「おい!大丈夫か?!」

 

 その物体とは少女だった。紫色の髪に所々破れた黒のブレザー。整った可愛らしい顔は所々煤がついて黒く染まっている。

 

 青年は少女の呼吸と脈拍を確認する。どちらも異常は感じられない。どうやら命に別状は無いかもしれない。だが、少女に意識は無く儚い呼吸を繰り返すだけだ。

 

 青年は迷うことなく少女を抱えあげた。

 

「辛抱してくれ、必ず助ける…!!」

 

 青年は全速力で朝日が反射する美しい砂浜を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 島に建てられた一軒家。そこに少女を寝かす。青年はそわそわと落ち着かなさそうに少女の容態を観察していた。この島の医師は現在は別の家に診察に行っており診療所には居なかった。だが、留守を任された看護師がおり少女の容態を診て貰ったのだ。診断の結果、少女は強いダメージによって意識を失ってはいるが命に別状は無いとの事だった。

 

 青年は看護師に礼を言うと少女を背負って自宅へと戻り、布団を敷いて少女を寝かせた。

 

 寝る前に悪いと思ったが煤で汚れた少女の身体を拭き取り、奥深くに押し込んであった彼女のサイズに合いそうな寝間着に着替えさせた。着替えは青年が少女くらいの歳の時に青年が着ていた物だ。サイズも見事に少女にあっていた。

 

 青年は少女の顔をじっと伺う。彼女の意識が戻ることを祈りながら。

 

 そして、その祈りはかなり遅れて通じたらしい。

 

「んぅ…」

 

 少女が静かに声をあげると、堅く閉じられていた瞳がゆっくりと開かれる。

 

 青年は少女が意識を取り戻したことに安堵の息をつく。少女は意識を完全に取り戻すと緩やかに首を動かして周囲を確認する。

 

「調子はどうだ?」

 

 少女は首を動かし、青年に顔を向ける。

 

「あの…あなたは?」

 

 少女としては見知らぬ男性が側にいるのだ。当然の疑問だろう。

 

「俺は智希(ともき)だ。おまえさんはボロボロの状態で砂浜に打ち上がってたんだ。身体はどうだ?」

 

 青年、智希はボロボロだった少女に心配を孕んだ声色で聞く。少女はゆっくりと身体をの調子を確かめる様に起き上がる。少女自身にもなんら不調は感じられない。どうやら身体も大丈夫そうだ。

 

「はい。何ともありませ──」

 

 そこまで言うと少女の表情が固まる。少女の視線は下に向いていた。つまり、彼女は気づいたのだろう。自分の服装が変わっていることに。目の前に智希しかいない。なので、少女の着替えが出来るのは目の前のただ一人。

 

 智希も少女の視線の意味に気がついたのだろう。ばつが悪そうに頬を掻いた。

 

「あっと…。その、すまない。勝手に着替えさせて貰った」

 

 その言葉に少女の顔は赤く染まる。恥ずかしさで口をパクパクと動かし、瞳も潤み始める。

 

「疚しい思いは無かったんだ!!ただ、服がボロボロで寝づらそうだったから──」

 

 智希は急いで着替えさせた経緯を説明しようとしたが、少女は強く目を瞑って手を振るう。

 

「いやああああ!!!」

 

 流れるようなその動作に智希は反応することが出来ず、思いっきり頬を張られてしまう。

 

「ごっへっ!!!」

 

 智希は少女からの強烈な一撃をお見舞いされ、その勢いのまま床に叩きつけられる。智希の身体は重くて鈍く、うまく動いてくれない。

 

 ああ、父さん、母さん、──、俺もそっちに行くよ──

 

「えっ、あっ…、えぇ!大丈夫ですか?!」

 

 少女は自分のしてしまったことに気がつき、智希がピクピクと痙攣して動かない事にも気がつき狼狽える。

 

 智希は緩やかに瞳を閉じて、自分が最期に行くであろう世界への旅立ちの準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に智希が目覚めると後頭部が何か柔らかい感触に包まれていた。

 

 ――あれ?何をしてたんだっけ?

 

 そう思って身体を起きあがらせようとすると今朝に助けたの少女が顔を覗き込んできた。

 

「あの…大丈夫ですか…?」

 

 少女が不安そうな顔で智希に問う。そこで、智希は柔らかい感触の正体に気がついた。

 

 ――ああ、膝枕をされているのか。

 

 パジャマ越しでも少女の太腿の柔らかい感触がしっかりと伝わる。何だか昔に幼なじみとやり合いっこしたことを思い出し、何処か懐かしさを感じるが今は抑える。

 

 今は少女の聞いてきたことに答えるのが先だろう。

 

「大丈夫だ…」

 

 床に手をついて身体を起きあがらせる。少女は無理をなさらずにと言って智希を止めようとするので、これじゃあどっちが怪我人なんだかなとばかりに智希は苦笑いを浮かべる。

 

「何で布団に寝かせなかったんだ?」

 

 他に色々と聞きたいことはあったが、今はこの質問が一番に出てしまった。少女は顔を赤くしてパタパタと手を振る。

 

「あっ、あの、これは、その…」

 

「テンパりすぎて完全に候補から外れてたのか?」

 

「うっ、うぅ…」

 

 恥ずかしそうに俯く少女に智希は苦笑いを浮かべる。あのまま逃げなかったと言うことは自分のことを少しは信用してくれるかなと思うと、少しばかり嬉しくもなる。

 

 あの状況だと完全に智希は変態誘拐魔とされても仕方なかったのだ。それなのに逃げなかったのは、心を開いてくれようとしてるからかもしれないと、智希が希望を持つのも頷ける。

 

 智希が腕を回したり、腰を伸ばしたりして身体の調子を確かめていると、沈黙が支配していた部屋に可愛らしいくぅ~と言う音が鳴り響く。

 

 智希が音の発信源を辿ると、そこには顔を両手で覆った少女がいる。

 

 彼女の空腹を訴える音で、智希はまだ朝食を食べていないことを思い出した。

 

「朝ご飯まだなんだ。良かったら一緒に食べないか?」

 

 少女は飛びつくように顔を上げたが、すぐにその瞳が困惑の色に染まる。

 

「あの…良いのですか?」

 

 散々迷惑をかけているのにこれ以上迷惑をかけたくない。そう言った少女の考えが何となく智希にはわかった。

 

「大丈夫だ。今は独り身でな。誰かが居るのに一緒に食べないなんて寂しくて仕方がないんだ。だから、俺と一緒に食べてくれないか?」

 

 少女の困惑の色は失せ、アメジストのような瞳を緩ませ、笑顔で返答した。

 

「はい。萩風で宜しければご一緒させてください」

 

 智希も少女、萩風の笑顔につられるように笑顔を浮かべる。

 

「おうよ。じゃあ、朝食にしますか」

 

 現時刻は九時近く、朝食と言うには少しばかり遅れた時間だが、腹が減っては何とやら、智希は朝食の準備に取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智希の作った朝食は萩風に絶賛された。智希は

 

 自分で言った通り独り身で、この家に居るのは智希だけだ。朝食を誰かと一緒に食べたのはまだ提督をやっていた頃だろう。誰かと一緒に食べるのは悪くない。独りだと、ふとした瞬間に寂しさを感じてしまうから。

 

 少しばかり機嫌が良くなった智希は鼻歌を歌いながら皿洗いを終えると、リビングに待つ萩風の元に向かう。

 

 萩風には好きなことをしてていいと言ったのだが、彼女はテレビや新聞を読むことすらせずに、ずっと台所にいる智希の背中を眺めていたようでリビングに振り返った瞬間に目が合った。

 

「あっ……」

 

「おいおい。男の背中なんかみて楽しいか?」

 

「いえ…。何かお手伝い出来ることは無いかと思いまして」

 

「いいって、お前さんは怪我人だ。怪我人に何かやらせるほど鬼畜じゃないぞ?」

 

「それでも、お世話になりましたし…」

 

 萩風はとても礼儀正しい少女のようで、お世話になりっぱなしな事に少しばかり罪悪感を感じているようだ。自分を気遣って着替えさせてくれたのに平手打ちをやってしまったことも、その罪悪感に拍車をかけているのだろう。智希の朝食の準備中に気がついたのだが下着はそのままだった。少女とは言え流石に全裸を見ることには智希も罪悪感があり、あくまで服しか変えなかったのだ。

 

 このままでは話が平行線だ。智希は気にするなと言って無理矢理会話を切り上げると本題を進めた。

 

「お前さんの着てた服から思ったんだが、お前さん艦娘か?」

 

「はい。萩風といいます。陽炎型の十七番艦です」

 

 自己紹介をしてませんでしたね、と萩風は照れくさそうにはにかむ。

 

 智希は元提督。陽炎型の艦娘も彼がいた鎮守府にいた。だから、制服が陽炎型の物に似ていると思っていたのだ。彼の読みは当たり。どうやら、彼が居なくなった間に艦娘も増えたようだ。

 

 それが第一の疑問。

 

「で、何であんなにボロボロだったんだ?」

 

 これが第二の疑問。一番気になっていた事でもある。考えられる理由は様々。戦闘中に隊から離れてしまったか、鎮守府から虐めもしくは責任者からの暴力から逃げてきたか、戦闘の続行が不可能と判断されて捨てられたか、他にも候補があるがおおよその理由はこれぐらいだろう。

 

 どれもあって欲しくはない理由だが、萩風は考え込むような動作をとると予想外の答えを返してきた。

 

「…すみません。何でボロボロになったのか記憶が無いです」

 

 彼女は悲しむように視線を伏せる。

 

 ――記憶がない?

 

「今までの記憶は?」

 

「よく覚えていません…。私が萩風であることしか…」

 

「所属していた所は覚えているか?」

 

「えっと…確か…─鎮守府だったかと」

 

 彼女の言った鎮守府の名前は智希にとって衝撃的な物だった。彼女の言う鎮守府は、かつて智希が運営を任されていた鎮守府だったからだ。

 

 昔の記憶を漁っても萩風の記憶は無い。だけど、萩風の容姿には一つだけ心当たりがある。だが、彼は自分の中で新しい艦娘が出来たという事でその記憶を押し込めた。

 

「そうか…。軍には知り合いがいるんだ。その知り合いに聞いてみる」

 

「ごめんなさい。何から何まで」

 

「いいって気にするなよ。困ったときはって奴だ。それと午後に医者にきて貰うように言っておく。今日は大人しくしていること。いいな?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 萩風は丁寧に礼をして、感謝の意を示す。智希は自然に萩風の頭に手をおいて微笑む。

 

「怪我人なんだ。それを理由に甘えとけ」

 

 萩風は智希の笑顔に返すように自然と表情を崩した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 萩風に自由にしているように言いつけ、玄関近くに設置してある電話の受話器を手に取り番号を入れる。自分が所属していた場所なのだ番号も住所もよくわかっている。

 

 何回かのコール音を聞いた後、懐かしい声が受話器から聞こえた。

 

『はい、こちら─鎮守府です』

 

 受話器から聞こえたのは大淀の声。

 

「ああ、俺だ。久しぶりだな」

 

『あら、お久しぶりです』

 

 声だけで誰かわかってくれたようで大淀の声が弾む。どうやらまだ覚えていてくれいたようだ、と智希は胸をなで下ろす。

 

「俺の推薦した後輩はどうだ?」

 

『悪くないお方です。皆からの評価も高いですよ。まだまだ駆け出しなので貴方には及びませんが』

 

 智希は自分がやめる前に気に入っていた後輩を推薦し、自分がいた鎮守府に着任させた。大淀の話と声色から判断する限りでは、どうやら問題は無さそうだ。

 

「よかった。俺が推薦した奴なんだ。これからも支えてやってくれ」

 

『わかってます。彼の成長は目に見えてわかるので見ていて飽きませんので。でも、皆また貴方に会いたがっています。良かったら会いに来てあげてくださいね』

 

「善処する。こっらも忙しくてな」

 

 他にも後輩については聞きたいことが溢れ出てくるが、今はその件で電話をしているわけではない。気持ちを切り替えて本題に入る。

 

「それで聞きたいことがあるんだが」

 

『はい。何でしょうか?』

 

「そっちに萩風って言う艦娘はいるか?」

 

『萩風ですか?いえ、その名前の艦娘はまだこちらには居ませんね』

 

 その言葉だけでも衝撃的ではあるが、これから着任する可能性だってある。その可能性についても聞いてみる。

 

「これから着任する予定は?」

 

『最近実装はされたとの通達はありましたが、こちらに着任するとの通達はまだありませんよ』

 

 大淀の言葉に智希は軽く目眩を覚える。いったいどう言うことだ?萩風の言っていた事は嘘だったのか?

 

「…そうか。ありがとう」

 

『急にどうしたのですか?』

 

「軍の情報は結構耳にするからな。新しい艦娘が来ると言うことはあいつが戦果を上げているという事だ。だから、あいつがどの位頑張ってるか遠回しに聞いてみた訳だ」

 

『ふふふ。そう言うことですか。じゃあ、もっと頑張って貰わないといけませんね』

 

「そう言うことだ。宜しく言っておいてくれ」

 

『はい。了解しました。貴方のご来訪をいつでもお待ちしてますから』

 

「んっ。ありがとう」

 

 久しぶりに仲間と会話したからか弾んだ声で礼を言うと、智希は受話器を戻す。

 

 智希の中で疑問がまた一つ出来てしまった。大淀からの情報を整理する為に頭を働かせる。

 

 ――萩風は今の鎮守府にはいない。つまり、今ここにいる彼女は何者だ?本当に萩風なのか?それとも、別の何かなのか?

 

 顎に手を置いて考えながらリビングへと戻る。萩風はリビングで朝のバラエティー番組を見て楽しそうに笑っている。

 

 智希はまだ何も知らない萩風の笑顔に胸が痛む。その理由は二つ。萩風の様子を見るに彼女から嘘をついている気配は感じなかった。つまり、彼女は本気であの鎮守府にいたと思っているのだろう。だから、迷いが生じた。本当のことを伝えるべきかどうかを。

 

 もう一つの迷いは彼にとって個人的な事だ。それは───

 

 そこまで思い詰めて智希は胸から感じるチクリとした痛みを無視する事に決めた。大事なのは彼女を帰るべき場所に返すこと。ここはとある事件が起きてから艦娘に対しての風当たりは強めなのだ。早く彼女をここから離れさせなければ。彼女と――自分のためにも。

 

「萩風」

 

 智希は出来るだけ自然に彼女を呼ぶ。

 

「はい。何でしょうか?」

 

 彼女から送られる視線には期待が込められているのが智希には痛い位にわかった。自分の所属していると思われる場所と連絡が取れたと萩風も察したのだろう。彼女の期待の視線に、胸の痛みが強くなるが静かに唇を噛んで押し殺す。

 

「正直に答えてくれ」

「えっと…、どうしましたか?」

 

 彼女は無意識に可愛らしく首を傾げる。

 

 今から言う言葉は彼女の為だ。だから、躊躇っては行けない。

 

「君の本当の所属は何処なんだ?」

「─鎮守府の筈です。そこに居た筈なんです!!」

 

 萩風は声を荒げて若干興奮気味に答える。彼女は本気でそこにいたと信じている。だけど、彼女には真実を突きつけなければ行けない。それこそ彼女の為に。

 

「知り合いと連絡を取って聞いてみたんだ。お前さんがいた鎮守府にお前さんが居たかどうか。そしたら、お前さんは所属していないと言ってたぞ。それにこれから着任する予定も無いって」

 

 智希から語られた衝撃的な真実に萩風の表情は固まる。彼女の信じていた真実が目の前で否定されたのだ。

 

 萩風は今にも泣きそうな表情で智希に詰め寄る。

 

「そんな…、そんなの嘘です!私はあの場所に居た筈なんです!!」

 

「俺が嘘をつくメリットも無い。俺は萩風の言う鎮守府に連絡を取った。返ってきた答えが、『萩風は居ないし着任する予定も無い』だった。会話の記録も残してある。俺からすれば嘘をついているのはお前さんだ。お前さんこそ何者なんだ」

 

「そんな…。だって私は…あの場所に──」

 

 ――居た筈なのに

 

 彼女は智希にもギリギリ聞こえるか聞こえないかの声でその言葉を絞り出した。

 

 智希からの反論に萩風は何も返せなかった。智希には、彼女が何者なのか皆目検討もつかない。だけど、彼女は本当に自分を萩風だと思っていて、かつて自分が居た鎮守府だと思っている。それが彼女の中での彼女の真実だからだ。

 

 萩風の頬に涙が伝う。智希は彼女の涙を視認してまた強く唇を噛む。だけど、これは真実だ。彼女にも受け止めて貰わなければならない。

 

 とは言え、このままでは後味が悪い。もしかしたらあの鎮守府に居たというのは記憶が混同しているせいなのかもしれない。本当の所属は他にある可能性がある。

 

 智希は萩風の肩に手を置く。萩風は涙を流したまま智希を見上げる。

 

「他の所にも当たってみる。もしかしたら、お前さんの勘違いの可能性もある」

 

「でも、私は──」

 

「お前さんはボロボロの状態だったんだ。そこから復活できたとは言えお前さんの記憶が混同している可能性がある。だから、別の可能性にかけてみよう。いいな?」

 

「はい…」

 

 萩風は納得しきれない表情で頷く。今の彼女の気持ちが汲み取れないほど智希は冷徹でもないが、彼女に関しての情報が少なすぎる。今の智希にとって萩風は信用しきれる相手とも言えない。だけど、傷ついた彼女を放って置くことだけはできない。

 

「悪いな…。対して何もできなくて」

 

「いえ…。何もできない私に変わって行動してくれてます。だから、あなたを恨んだりすることはしません」

 

「すまない…」

 

「謝らないでください。ねっ?」

 

 萩風は涙を堪えて笑顔を作る。どこからどう見ても無理をしている笑顔だ。智希の胸の痛みは尚更強くなる。

 

「すまない…」

 

 謝るなと言われてもなお、おわれのない罪悪感から智希は萩風に謝り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智希が萩風に昼食を振る舞ってるうちに午後になると、数少ないこの島の医者が萩風の診断に訪れてくれた。医者は智希と幼なじみであり、彼と同じように軍を辞めてこの島に戻ってきた人物で、何処までも彼と共にあった人物だ。

 

 医者は萩風の検診を終えると異常なしと診断結果を下した。

 

「うん。問題ないかな。でも、暫くは安静にしててね。もしかしたら、異常が見つかるかもしれないし」

 

「はい。ありがとうございました」

 

 診断が無事に終わり、萩風は医者に丁寧に頭をさげる。

 

「そこまで丁寧にしなくてもいいよ。これが私のお仕事だしね」

 

 医者は照れくさそうに笑ういながら、道具を鞄に収納し始める。

 

「でも、君はこの島でみない子だね?何処から来たのかな?」

 

 医者は一見すると無邪気な笑みを浮かべているが、長いつき合いである智希は医者の本意に気がついていた。これはこの医者の意地悪な笑みなのだ。

 

 医者は智希の居た鎮守府に常駐医師だったのだ。艦娘の診断なども行っていたから彼女が何者であるか気がついたのだろう。萩風はおろおろと狼狽え助けを求める視線を智希に送っている。

 

「彼女は萩風(しゅうか)だ。俺の遠い親戚で頼まれたからしばらく預かっている」

 

「はっ、はい!しばらくの間、宜しくお願いします!!」

 

 萩風はなんとか智希の話にあわせ頭を下げる。医者は顎に手を置いて、成る程成る程と呟く。その様子を見て、智希は『コイツは嘘をつくのは無理か』と内心諦めた。

 

「そっかー。この島何もないしつまらないと思うから頑張って退屈凌ぎを探すといいよ」

 

「はい。アドバイス感謝します」

 

「まぁ、異常があったらまた連絡してよ」

 

 医者は道具を仕舞い終わると、軽く礼をしながら立ち上がる。

 

 萩風は立ち上がる医者に何度もお礼の言葉をかけた。

 

 良いから良いからと困った様に言いながら医者は廊下に向かおうとしたが、部屋を出る寸前にまた智希達の方に振り返った。

 

「あっ、そうだ。ともちゃん、今度の飲み会の事で話をしたいけどいいかな」

 

 医者は人差し指を胸元にたてながら智希に言う。智希は飲み会と言われて一瞬首を捻りそうになったが、医者の動作を見て判断した。長い付き合いだから、その動作の意味がわかる。

 

 ――ああ、内緒話がしたいのだと。

 

「わかった。買い物があるから店に着くまでに纏まった内容で話してくれ」

 

「無茶言うなぁ…。まぁ頑張って纏めるけどさ」

 

「悪い萩風。ちょっと買い出しに行ってくるからお留守番をお願いできるか?」

 

「はい。どうぞごゆっくり」

 

 萩風に見送られ、智希達は家から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智希の家から離れた頃合いに医者は重々しく口を開いた。

 

「あの子、艦娘だよね?」

 

「ああ、陽炎型の萩風だって言ってた」

 

「で、元の所属してる所との連絡はついたの?」

 

「ああ、ついたさ。俺たちがいたあの場所だ」

 

 医者は驚きで目を見開く。だが、智希の雰囲気からはこのままハッピーで終われないことをどことなく悟った。

 

「…どうだったの?」

 

「向こうの大淀から直接聞いたそしたらなんて返ってきたと思う?萩風は所属してないし着任する予定も無い、だ」

 

「私達が居た鎮守府なんて初めて聞くような所だったよね。あの子が嘘をついているなんて思えないし…」

 

 医者は顎に手を置いて考え込む。医者から見ても萩風は嘘をついているように思えなかった。それと自分たちの居た場所はまさに知る人ぞ知る場所だった。それを萩風がピンポイントで言ったと言うことは本当に所属していたとしか思えなかったからだ。

 

 智希は頭に手を置くと朝方言ったとおりいい天気と言えるくらいに晴天の空を仰ぐ。空には雲一つなく、自分たちの悩み何か馬鹿らしいと言うかのように澄み渡っていて思わず息を漏らしてしまう。

 

「全く困ったもんだよなー。一応他の所にも確認している途中だ。彼女の所属がわかりしだい本州に送る予定」

 

「ふーん。すぐには送らないんだね」

 

「あの状態で戻しても彼女は納得できないだろう。それに、正体がわからないんだ。不確定要素を送りつけて迷惑をかけたくない」

 

「で、その間は君の家に住み込ませる予定なの?」

 

「そんな所だ。さっき言ったように遠い親戚と言うことにしとくし、艦娘であることも隠して貰う」

 

「そうだねぇ。ここの皆は艦娘に対して厳しめだしね」

 

 しかめっ面が崩れない智希に対して、医者はあははと気の抜けた笑い声をあげる。

 

 その笑い方が悩む智希の癪に障ったのか、医者は智希からの手刀を頭に食らう。先程までの気の抜けた笑いは何処へやら、医者の目は涙目に変わった。

 

「痛いなー。何すんだよー」

 

「人がシリアスな雰囲気出してるのに気の抜けた笑みなんか浮かべるからだろ」

 

「まぁ、空気は読めてなかったけどさぁ。そこまでしなくても…」

 

「うるさい」

 

「仕方ないから許してあげるよ。でもさ、彼女似てるよね。『あの子』にさ」

 

 医者の言う『あの子』と言う言葉。その言葉を耳にした瞬間、同じペースの歩みを止めてしまった。

 

 医者は気づいてしまった。迂闊な事を言ってしまった事を。

 

「それは──」

 

 智希は重く絞り出すように口を開く。

 

「俺達が鎮守府に居たときに匿ってた奴の事か?」

 

「いや、その──」

 

 慌てて医者は取り繕うとするがもう遅い。

 

 智希は睨みつける様に、忌々しそうに、それ以上に息苦しそうに、言葉を振り絞る。

 

「それとも……死んだ『アイツ』の事か?」

 

 智希の言葉に医者は逃げるように視線を動かすが、智希に睨まれ観念したように智希に答える。

 

「…どっちもだよ」

 

「そうか。お前もそう思うか…」

 

 智希は疲れたように息をつきながら、何かに思いを馳せる様に腕組みをして考え込む。

 

「その…ごめん。迂闊な事を言って」

 

 医者は申し訳なさそうに、頭を掻きながら視線を逸らす。

 

「気にするな。未だに引きずってる俺が気持ち悪いだけだ」

 

「そんな事無いって…。でもさ、あの子は早くここから離した方がいいよ。あの子の為にもってこともあるけどさ。何よりもさ、ともちゃんの為に、だよ」

 

「わかってる…。わかってるさ…」

 

 二人はいつの間にか医者の診療所にまで来てしまった。医者もまだまだ仕事がある。これ以上は話すことは出来ない。

 

「じゃあねともちゃん」

 

「じゃあな。今度俺の店に来たとき無料にしてやるよ」

 

「じゃあ、それを診療代の代わりにしてあげるよ」

 

 医者は笑みを浮かべると小さく手を振りながら診療所の中に消えていった。

 

 智希も小さく手を振って医者を見送ると、また腕を組んで考え込む。

 

 萩風が何者かであるか、萩風のこれからの事、軍からの連絡がいつ来るのか。

 

 智希がやらないといけないことは沢山ある。

 

「はぁ…。面倒は嫌だってのに」

 

 萩風に買い出しに行くと言い訳をしたのだ。嘘だとばれない為にも何かを買って帰るべきだろう。取り敢えず、萩風の為にジュースでも買うことに決め、智希は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智希が買い物を終え家に帰った頃には日が暮れ始め、空は澄み切った青色から炎の様なオレンジへと変わってしまった。

 

「ただいまー」

 

 適当な調子で言いながら、靴を揃えて脱ぎ廊下を歩く。

 

 萩風はどうしてるか?結構待たせたよなぁ…。と考えていると何やらスパイスの香りが漂っているのがわかった。その香りがなんの香りかは簡単にわかった。カレーだ。日本人にとって馴染み深い料理であるカレーの匂いだ。

 

 その匂いに誘われるようにふらりふらりと台所まで歩く。そこには大きめのエプロンをつけて鍋をお玉でかき混ぜてる萩風の姿があった。

 

 萩風は智希の気配に気がついて振り返り可憐な笑みを浮かべる。

 

「お帰りなさい」

 

 智希は予想外の展開に少しの間固まってしまった。

 

「あぁ…その……ただいま」

 

 智希にとっては、ただいまと言ったのは久しぶりだった。この家は自分の生家だが、もうこの家には智希しか居ない。だから、何だか身体が温かくなるような、萩風にお帰りと言われたのは初めてなのに何故か懐かしいような、そんな錯覚に陥りそうになってしまった。まるで、過去に皆でやってたおままごとの記憶が呼び覚まされるようで。

 

 萩風はコンロの火を止めるとパタパタと軽快な足音を鳴らして智希に接近した。

 

「お世話になってばかりではいけないと思ってお夕食を作ってみました!もうすぐでご飯も炊きあがりますので居間でまっててくださいね」

「そこまでしなくてもいいのに…」

 

 智希は疲れたように息をつく。怪我人だからゆっくりしてろと朝に萩風に言った筈なのだが、彼女はゆっくりすることなくこうしてご飯を作ってしまったようだ。作ってしまった以上捨てろとも言えない。それに萩風のカレーの匂いは何とも食欲をそそる匂いだ。むしろ、捨てるなんてもったいないと断言できる。

 

「お世話になったので少しでも恩返しが出来ればと思いまして。あの…ご迷惑でしたか?」

 

 萩風の表情が怒られそうな子供のように曇る。智希はそんなつもりはないと伝えるために緩い笑みを浮かべて優しく萩風の頭に手を置く。

 

「いや、ご飯を作る手間が省けた。それにこんなにもおいしそうで、いい匂いなんだ。これを迷惑だなんて勿体ないこと言うつもりは無いさ」

 

 これは智希の本心だ。寧ろ、今すぐ食べてみたくて我慢できるかわからないのだ。

 

 智希の言葉で萩風の不安が完全に取り除かれたらしく萩風は花が咲くような笑みを浮かべる。

 

「はい!楽しみにしててくださいね」

 

 萩風の笑顔に送られ智希は冷蔵庫に買ってきた飲み物等を入ると、食器だけは出してあげておき、後は居間で待つことにした。

 

 暫くすると、炊飯ジャーから電子音が鳴りご飯が炊きあがりった事を知らされた。

 

 お皿にご飯を盛りつけてカレーをかけて居間にいる智希に手渡す。

 

「はい、どうぞ。萩風特製の根菜カレーです」

 

 萩風は智希に手渡すと、自分の分をよそう為に台所に戻る。

 

 萩風の野菜カレーはごぼうに蓮根、自然薯と蒟蒻と健康に気を使った具材たち。

 

 萩風は自分の分をよそい終わると智希とは向かい側の位置に座る。男の智希と比べて萩風のカレーの盛りつけ量は少くなく何だか可愛らしい。

 

「さぁ、食べましょう。智希さんのカレーは大盛りにしてあります」

 

 どうやら男である事を考慮して、智希の分を大盛りにしてくれたようだ。萩風の優しい心遣いに智希は感謝する。

 

「ありがとう。じゃあ」

 

「「いただきます」」

 

 二人は一度手を合わせすと、スプーンを手に取ってご飯をカレーに絡ませてから口に運んだ。

 

「うんまっ!!」

 

 萩風特製の根菜カレーを食べた智希から発せられた一言目がそれだった。

 よく煮込まれていて野菜にカレーの味が染みわたっていてなおかつそれぞれの食感は残っている。ピリ辛ではあったが野菜カレーという事で辛さもアクセントに近く味は殆どマイルドだ。文句なしの一品だった。

 

 萩風のカレーで食欲に火がついたのか智希はカレーを一気にかきこんだ。

 

 智希の豪快な食べっぷりに萩風の口許が緩む。

 

「そんなに慌てなくても大丈夫です。お代わりもちゃんと用意してありますから」

 

「んむ。じゃあ、沢山食べないとな!」

 

 萩風もスプーンですくってカレーを口に含む。確かに美味しく出来てる。彼女の中でも会心の出来と言える物だ。

 

 智希はまるで子供の様にカレーを頬張り続ける。萩風はそんな智希を温かく見守りながら自分の分を食べる。

 

 会話こそ少なかったが、二人の間には居心地の悪い空気は漂う事は無く、団欒とした雰囲気が漂い続けてていた。

 

「ごちそうさまでした」

「はい。お粗末様でした」

 

 智希はカレーを二回お代わりし、萩風も嬉々とした顔つきでお代わりの注文を受け取ってカレーを食べる智希を嬉しそうに眺め続け、お互いに満足する形で夕食を終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事の片付けも終え、入浴もすませると夜も更けたので二人は眠る事にした。

 

 智希は相手は年頃の少女という事で萩風を気遣い別々の部屋で寝ようとしたのだが、その提案は萩風から拒否された。

 

 その理由は、

 

「夜は何だか怖いんです…。お願いですから一緒にいてくれませんか?」

 

 彼女は今にも泣いてしまいそうな表情で懇願してきたからだ。そんな彼女を拒否する事は智希には出来ず、彼女と一緒の部屋で寝る事を受け入れた。その時に浮かべた彼女の安堵の表情はとても儚く、それこそ夜の闇に紛れて消えてしまいそうなくらいに不安に包まれていたのだと察した。

 

 布団を二つ敷き終り、萩風が布団に潜り込んだ事を確認してから寝室の照明を落とした。

 

 智希も布団に潜り込み、瞼を閉じて本日の活動を終えようとしたしたタイミングで萩風の方から声をかけられた。

 

「あの迷惑でなければですけど…。手を繋いで貰ってもいいですか?」

 

 智希にとって彼女の提案は不思議な物だった。萩風の様な年頃の少女からは絶対に提案してこないような物だったからだ。智希は思わず首を傾げる。

 

「どうしてだ?」

「一人だと思ってしまうと怖いんです。だから、誰かの温かさを感じる事で少しでも安らげるかなって。その……ご迷惑でしたら申し訳ないです……」

 

 萩風はそう言うが、彼女の瞳が若干の潤みを帯びている事が暗い闇の中でも目を惹く。智希は無言で隣の萩風の布団に手を潜り込ませ萩風の手を探し当て掴む。萩風の手は智希の想像より小さく、智希の手の中にすっぽりと納まってしまった。

 

 それに萩風の手はまるで極寒の地にいたかのように冷たく震えていたが、智希が握った事でその震えが収まった。

 

 萩風は突然手を握られた事に身体をピクリと反応させて驚いていたが、誰の手かわかった様で安心しきった様に笑みを浮かべる。

 

「ありがとうございます」

 

 智希には彼女の微笑みが過去の思い出と重なり、胸が痛くなる。そして、逃げるように瞼を降ろした。

 

「明日は早いんだ。そろそろ寝るぞ?」

 

「はい。おやすみなさい」

 

 彼女の体力が余程低下していたのか、彼女より早く目を瞑った智希よりも早く寝着いたようですぅすぅと言う可愛らしい寝息が聞こえて来た。

 

 智希は一度瞼を持ち上げると彼女の頭に手を置いて撫でる。すると、彼女の寝顔が緩み柔らかい笑顔になる。その笑顔が、智希の中の過去の思い出と重なる前に逃げるように瞳を閉じる。

 

「おやすみ」

 

 真夜中に蔓延る睡魔に誘われるように智希も眠りの世界へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このような経緯から、奇妙な出会い方をした萩風と智希の長い生活が始まったのだった。

 

 二人は数週間と言う長い時間を共に過ごすことになった。

 

 智希の始まりは、萩風を起こさないように朝早く起き、萩風と出会った時と同じように浜辺で日の出を拝む事から始まる。

 そして、港に戻ってきた漁師たちから新鮮な魚を買い、続けて朝一に収穫された野菜を買い込みダンボールいっぱいに詰めて持って帰る。

 

 智希が帰るころ萩風も起き始めパジャマの上にエプロンをつけた姿で朝食を作る。

 智希も食器を出したり飲み物を用意したり食器を出したりして萩風を手伝う。

 

 そして、二人一緒に朝食を食べる。

 

「「いただきます」」

 

 智希は萩風の作る朝食を絶賛し、萩風も笑顔を浮かべながら朝食を食べる。

 

 朝食を終え、片付けも終えると、二人は着替え、今度は智希の準備に取り掛かる。

 

 智希はこの島で小さな食事処を切り盛りしている。殆どの客は島の住民だが、この島には観光客や宿泊客、更にテイクアウトで注文する客もいるので大繁盛とは言えないが、普通に生活していくには困らないくらいには儲かっている。この店は智希の父が始めた店で島に戻った智希は母からこの店を継いだのだ。

 

 萩風はそのままゆっくりしている―――事は無く智希の手伝いをしている。野菜の皮むきや魚をおろしたりと様々な手伝いをする。カレーを作った時からわかっていたのだが彼女は結構料理上手である。

 

 昼頃はこの店の開店時間だ。少しずつ客が入ってくる時間帯だ。

 

 開店して間もなく客が入って来た。本日のお客様第一号は萩風が世話になった医者だった。

 

「いらっしゃい」

「いらっしゃいませ」

 

 萩風は医者におしぼりと温かいお茶を差し出す。店の開店時間になっても萩風は智希の傍で手伝いを続けている。彼女曰く、恩返しもできるし、これが一番楽しいからとの事。その理由に智希は思わず苦笑いを浮かべた事を覚えている。それが楽しいのならそれでいいかと彼女の手伝いを受け入れたのだ。

 

「やあ、ともちゃん久しぶりー。ちゃーんと来たよ」

 

「おうよ。早く食べてとっとと帰れ」

 

「酷い言い草だなぁ…。いいもん迷惑になる位食い荒らすし」

 

「医者なんだから健康に気を使えっての」

 

「わかってるよ。ちゃんと加減するってば」

 

 軽口をかわしあうと、医者は壁に張られたメニューから注文を決めようとするが、期間限定目メニューなる物がある事に気が付いた。それは――

 

「特製根菜カレー?」

 

 そう。今までは野菜や魚を中心とした定食メニューが多かったこの店にカレーがあったのだ。

 

「はい。私が作ったカレーを振る舞って見た所、好評だったのでメニューにしてみたんです」

 

 台所から顔を覗かせた萩風が自慢するように語る。

 

「成程ね~。ともちゃんのご飯も食べ飽きたし、偶には変化も必要だよねー」

 

「うるせーっての。この前のアレ、撤回してもいいんだぞ?」

 

「そうしたら、ともちゃんは私の診察費踏み倒した事になるけどね~。それはそれで困るし撤回しないでね。というわけで特製根菜カレーをくださーいと」

「はい。ただ今お持ちします!!」

 

 萩風は厨房にある鍋の一つのふたを外しかき混ぜながら温める。カレーの匂いが厨房に広がり、その匂いは僅かだが客席にまで届いた。

 

 医者は白衣を脱ぎその匂いに誘われるように厨房に足を踏み入れる。

 

「関係者以外立ち入り禁止だぞ」

 

「まあまあお堅いことは言わずにね」

 

 自然な動作で厨房に侵入しようとする医者を止めようとするが、こういう事は良くあるようで、智希は半分あきらめている状態だ。

 

 智希と医者は真剣に鍋の中を見ながらかき混ぜている萩風を微笑ましそうに見つめる。

 

 予めカレー作ってあるので後は温めるだけだがもう少しだけ時間がかかりそうだ。

 

 その内に医者は智希にある事の進展を聞いてみる事にした。

 

 智希の肩を叩き、胸元に人差し指をたてる事で内緒話である事を仕種で伝える。医者は声のボリュームを下げて話した。

 

「で、あの子の配属されてた場所はわかったの」

「…進展なしだ」

 

 方々に細かく連絡を取ってはいるが依然として萩風の所属先については不明なまま。それどころか更に不安要素となる情報が流れ込んでいた。それは萩風が最近現れた深海棲艦の駆逐水鬼と似ていると言った情報だ。

 

 だが、その情報は智希達は誰よりも早く掴んでいた。それこそ、世界で一番早くと言えるほど。

 

 医者が二人程萩風と似ていると評した一人は駆逐水鬼の事だった。智希達は駆逐水鬼の事をよく知っていた。それこそ、駆逐水鬼と呼ばれる前からと言っても過言では無い。

 

 智希はこの事は敢えて言わなかった。何故なら医者にはもうわかり切っていると思ったからだ。

 

「その事はあの子に言ったの?」

 

「言ってるさ」

 

「嘘をついても為にならないって言うのがともちゃんだもんね」

 

「わかってるさ。だけど、その度に嘘をつくべきか迷う時もあるさ」

 

「いいんだよそれで。そして傷ついた萩風ちゃんをころっとオトせれば完璧さ」

 

「よく言う。お前本当に医者か」

 

「立派なお医者様だよ。いいじゃん。ともちゃん提督をやってた頃も不思議と女っ気無かったし」

 

「うるさい。俺にそんな資格は無い」

 

「いいじゃん。あの子いいお嫁さんになりそうだし」

 

「だから――」

 

 またもや拒絶の言葉を言いそうになった智希の言葉を医者は智希と肩を組むことで無理矢理遮った。

 

「後ろばっか向いてちゃ駄目だよ。私達は前に進める様になったんだし、これからも前に進まないと、ね」

 

 智希は何か言いたそうな表情ではあったが、その言葉飲み込み変わりに小さく口許を緩ませた。

 

「…その通りだな」

 

「じゃあ、頑張って前にすすんでみよーう」

 

「ああ、ありがとう」

 

 医者は真っ白い歯をみせて笑うと智希の背を大きな音が鳴るくらい強く叩いて厨房から離れいく。

 

「大丈夫だよ。皆ロリコンとか思わないし」

 

「残念ながら、今の所萩風の事はそういう対象で見てないぞ」

 

「ああ、悲しい。我が友の春はいつ訪れる事やら」

 

「うるせー」

 

 医者は気の抜けた笑いをうかべながら厨房から離れ、自分の席に戻ると間もなくして萩風のカレーが運ばれてきた。

 

「お待たせしました。特製の根菜カレーです」

 

 萩風は医者に丁寧に礼をしてから厨房へと戻って行こうとしたが、次のお客が訪れた。

 

「いらっしゃい」

 

「いらっしゃいませ」

 

「おう!来たぜ!!」

 

 やって来たのはこの島で一番漁師歴が長く智希がおやっさんと呼んでいる人物だった。

 

 おやっさんはどっしりと勢いよく椅子に座ると、萩風からおしぼりとお茶を受け取った。

 

「おう、ありがとよ嬢ちゃん」

 

「いえ、いつもお魚をとって貰ってますから」

 

「がははは!!嬢ちゃんの為ならおっさんは何匹でも釣ってくるぞ?だから――」

 

「おやっさん。そこから下ネタに続けるならおかみさんに言いつけますよ?」

 

「おっと、いけねぇ!旦那から引き離す事なんて男気ねぇ真似はしねぇよ。だから母ちゃんに言うのは止めてくれぇ」

 

 この食事処に漂う雰囲気はとても和やかで、皆この雰囲気が大好きで智希の店にやってくる。勿論、料理が美味という事はあるのだが、何よりも皆がこの場所にある雰囲気が好きなのだ。

 

 いつもの様なやり取りを微笑ましそうに見つめる中、萩風がお盆で顔を隠して顔が赤く染まっている事に医者は気が付いた。

 

 智希とおやっさんがくだらない日常会話を続けている中、医者は手招きで萩風を引き寄せる。医者からの手招きに気が付いた萩風はお盆で顔を隠すのを止め、少しばかり赤みの引いた顔で医者に近づいた。

 

「この島には慣れたかな?」

 

「ええ、智希さんや皆さんのおかげで。この島は何だかとても温かい場所ですね」

 

「それは良かったよ。いい退屈しのぎも見つけたようだしね」

 

「退屈しのぎでは無く、恩返しのつもりですけど…」

 

「まぁ、楽しんでい様で何よりかな。ね、若奥様?」

 

「そ、そんな奥様だなんて」

 

 萩風は医者に顔を見られないように顔をお盆で覆い隠している。だが、萩風は顔を隠すのが下手で耳だけが微妙にお盆から見えており真っ赤に染まっていた。医者は意地悪な笑みを浮かべながら萩風の耳元に近づき一つの言葉を投下してみる。これから行うのは好奇心溢れるドクターの実験。

 

「彼、いい男だと思わない?」

 

 萩風はその言葉を聞き取ると一目散に厨房に逃げて行った。

 

「うお?!どうした萩風?顔真っ赤だぞ?」

 

 智希は萩風が驚異的な速さで戻ってきた来たので驚いて萩風の顔を見たがその顔は真っ赤だった。

 

「いいいいいえ!何でもないでひゅ!!」

 

 萩風は上手く舌が動かず変な言葉を発してしまった。智希は訳がわからず首をひねっているが、医者とおやっさんだけは楽しそうにその光景を見ている。

 

「うーむ。これは脈ありかもよーともちゃんに萩風ちゃん」

 

 医者は笑みを浮かべながらカレーを口に含む。本日のカレーは大分甘口なのか、甘さをかなり感じ取れた。

 

 何故か上機嫌の医者が帰った後も客足は途切れることなく、昼休憩も挟みながら夜まで営業を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 営業が終わると余り物で自分達の夕食を作る。

 

 智希は本日の夕食のメインである余った魚で作ったムニエルを皿に盛りつけ居間に持って行く。

 

 テーブルには食器や萩風が作った副菜が既に並べてある。当の萩風はと言うと昼頃から智希の顔を見るたび何故か俯く。今も智希が居間にやってくるのを確認すると俯いた。

 

 智希は自分に不備があったのかもしれないと原因を聞いたり探ってみたりはしているが進展は無し。もはやお手上げ状態だ。

 

 智希は座り込むと降参だとばかりに息をつく。

 

「なぁ、萩風?」

 

「…何でしょう?」

 

 相変わらず俯いていてその表情を伺うことは出来ない。

 

「何か萩風の嫌な事をしちゃったか?」

 

 彼は不安そうな声で萩風に問う。これで答えてくれないならもう完全にお手上げだ。

 

「そんなことは無いです!」

 

 そんな彼の不安を察したのか萩風は声を大にして否定する。

 

 その時に思わず顔を上げてしまい、彼の顔を見てしまう。彼の顔は隠しきれない不安が表れており萩風の胸を締め付ける。

 

 この島に萩風が来てから数週間は経っており萩風はその時間の殆どを智希と共に過ごしていた。だが、萩風はここまで不安を表に出した彼の顔を見たことが無かった。

 

 智希は萩風から心配だった事を否定されるも確信が得れず表情が晴れることはない。

 

 萩風が智希と顔を合わせられなかった理由、それは昼間に医者に言われたことが引き金となった事は確かである。

 

 智希は萩風の贔屓目からみても良い男と言える人物だった。よく萩風の事を見ていてくれるし、よく世話も焼いてくれる。何より共にいて楽しい時間を提供してくれる。そんな心安らげる人物と言うのが、萩風にとっての智希と言う存在だった。

 

 だが、その思いはあの医者の言葉である思いに変化しようとしていた。彼の事を変に意識してまい。彼の顔を見る度に胸が高鳴っている事を自覚しつつあった。彼の顔を見るのが恥ずかしい、だけどずっと見ていたい、相反する想いが萩風の中で渦巻いていた。その想いの正体がなんなのか萩風は結論を出せてはいない。だけど、智希の表情が酷く自分を締め付けている事はわかっていた。

 

「いや、嘘は言わなくてもい──」

 

「嘘じゃないです!!」

 

 萩風の言葉に確信を得れず弱音のようにこぼした言葉を萩風は強く否定する。

 

 智希は口を引き締め萩風の様子をジッと見守る。智希が自分の言葉を待ってくれていると察した萩風は、頭の中で伝えたい言葉を繋げ少しずつ声にした。

 

「智希さんと一緒の日々はとても楽しいです。私の鎮守府に戻ってみたいと言う気持ちはあります。ですけど、今はそれ以上に智希さんと共に過ごしたい思いで溢れてます」

 

 智希は黙って萩風の言葉に耳を傾ける。萩風の言葉は智希にとって衝撃的ではあったが、萩風の言葉を遮らないよう黙り込み彼女から視線を逸らさない。

 

「ですけど、最近智希さんといると胸が痛くて、だけど、とても温かくて、それでお昼にきた漁師さんに妻って呼ばれたとき、恥ずかしかったけど嬉しくて…。それにお医者さんに言われたんです。智希さんは良い男性の人でしょって」

 

「あのお節介野郎め…」

 

「その言葉を言われたときから胸の痛みが強くなって顔も真っ赤になっちゃって…智希さんにそんな顔を見せたくなくて…」

 

 萩風は自分の目頭が熱くなって行くことを感じた。自分の中から出てしまいそうな物を抑えるために萩風は強く手に力を込める。

 

「だけど、智希さんを嫌っている訳ではありません…。でも、でも──」

 

 そこで萩風が堪えていた涙の滴がこぼれ落ちてしまった。

 

 ああ、駄目なのに。これじゃあ本当に嫌われてしまう。

 

 涙を手で拭って押しとどめようと試みるが涙は止まってくれない。涙が出てしまったせいで声もうまく出すことが出来ない。このままではいけない。これ以上智希に心配をかける訳にはいけない。だが、涙は止まってくれない。

 

 負の悪循環に陥りそうになったその時、彼女は背中から温かい温もりを感じた。

 

 萩風は涙を流しながら背後に振り向く。顔を向けると、そこには自分を抱きすくめる智希がいた。

 

 智希は萩風の頭に手を置くと、優しく頭をなで上げる。萩風の涙は突然の出来事と背中から感じる安心できる体温にいつの間にかとまっていた。

 

 智希は萩風と向き合うのを恐れていた節があった。それは萩風が彼の過去の人物と重なると言う事と、萩風がいつかいなくなる可能性があることをしっかりと理解していたからだ。

 

 だけど、それすらも彼の本心を隠すための言い訳であることを智希は自覚した。

 

 萩風もたどたどしくも胸の内を語ってくれたのだ。今度は智希が胸の内を語る番だろう。

 

「ありがとう。萩風がそこまで俺との生活を楽しんでくているとは思っていなかった。俺も萩風との毎日は楽しく感じてた。だから、怖く思うときもあった。萩風との別れが。正直な話、俺は萩風が居なくなったら寂しい。だけど、いつかは送り出す時が来るかもしれない」

 

「智希さん…」

 

「萩風には悪いがこう思うときもある。ずっとこの時を過ごしてみたいと。萩風と一緒の時をずっと過ごしてみたいと」

 

 智希からの本心からの言葉を萩風は受け止める。彼からの言葉に萩風は大きな幸福感を感じていた。彼の言葉の一つ一つが萩風の心に温かく染み渡る。

 

「私は──」

 

 智希の言葉に報いるため萩風は言葉を発しようとしたが智希に強く抱きすくめられ妨害されてしまった。

 

「無理に結論を出さなくていい。じっくり考えて萩風の結論を聞かせてくれ」

 

 萩風は自分の中にある大きな感情に対しての結論がまだ出せてはいない。智希はその事を察して、萩風の言葉を無理にとめさせた。

 

 萩風は智希の手を一端どかすと、智希と向き合う形になって正面から智希の胸板に顔をうずめるように抱きついた。

 

「私の答え、出してみせます。だから、待っていてくれますか?」

 

 智希は萩風の頭を強く抱きしめ、萩風を強く自分の身体で包み込んだ。

 

「んっ、待っているよ」

 

 智希の優しい返事を受けて顔を上げると、彼女はいつも智希に見せるような可憐な笑みを浮かべた。智希は自分の顔が熱くなっている事を察したがそれを誤魔化す様に萩風の柔らかい髪に顔を埋める様にして逃げる。使っているシャンプーだって同じ、だけど彼女の優しい香りが自然と智希の中に入っていく。萩風の中にも彼の匂いが入り込んでくる。自分が安心できる心地よい物だ。

 二人は何も言わず互いのぬくもりを共有するかのように強く強く抱きしめ合い続けた。

 

 抱擁を解くと、智希は照れくさそうな笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、そろそろご飯にしようか?」

 

 それは彼なりの誤魔化し方だった。

 

「はい。一杯泣いたらお腹も空いてきちゃいました」

 

 萩風はくすりと笑みを浮かべて、彼の提案に賛成した。その提案に賛成はしたが萩風は彼の上から退こうとはしない。どうした事かと困っていると、萩風が振り返ってこんな提案をしてきた。

 

「あの…よかったら食べさせてくれませんか?」

「何だか甘えん坊だな」

 

「女の子の涙を見た罰ですよ」

 

「はいはい。わーたっよ」

 

 すっかり冷めてしまった料理を箸で摘み、萩風の口許に運ぶ。萩風はその料理を味わい冷めてしまっても美味しいと絶賛する。

 

 萩風は智希を椅子の様にして寄りかかる体制を続け、一つの箸で互いに食べさせあいながら食事を終えた。その光景は下手なバカップルですらやらないような物だったのは言うまでも無いだろう。

 

 その日の夜はいつもの様に手を繋いで眠りについた。

 

 今語られたのは彼らの日常とその変化が訪れた時の事である。

 

 だが、変化とは必ずしも一つでは無い。ここから、彼らの間にもう一つ変化が起きる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、更に何日か経過したある日の事だ。

 

 この日は、萩風は医者の元に来ていた。と言うのも自分に異常が無いかの経過報告をするため、と言うのは半分建前。本当は一番智希と縁のある人物である医者から智希の事を知るためである。智希の事を知ろうとしても、智希は自分の事を語ってくれない。萩風から聞いてみてもうまく流されてしまう。

 

 だから、智希と縁のある人物たちから智希の事についての情報を集めていた。その中でも進んで協力してくれたのがこの医者と言うわけだ。医者は暇な時を萩風に伝え、萩風はその時に診療所を訪れている。萩風にとって目の前の医者は色々な意味で頭があがらない人物だ。

 

 いつもの様に談笑を交えつつ、智希について語っていると、医者は突如萩風の事を試すような視線で見つめる。視線の変化に気が付いた萩風は思わず息を呑む。

 

「萩風ちゃん、君はともちゃんの事をどう思ってるのかな?」

 

 萩風が智希の過去話をして貰うように頼まれたときから察してはいたが、萩風の口から想いを直接聞いてみたかったのだ。

 

 その言葉を聞くと萩風は頬を熟れた林檎の様に赤く染めあげたが、迷いのない瞳で自分の想いを言った。

 

「好きです。私は智希さんが好きなんです」

 

「君の居た鎮守府に戻るのと、ともちゃんと過ごすのどっちがいい?」

 

 医者としては意地悪な質問をしたつもりだったが、萩風の想いは医者が思う以上に強い物だった。

 

「智希さんと過ごしていたいです。それこそ、ずっと」

 

 萩風は医者の質問にそう言って即答した。

 

 萩風の覚悟を認めた医者は優しく微笑みながらうなづいた。

 

「そこまで言うなんてね。すっかりともちゃんにゾッコンだね」

 

「えっと…その…はい…」

 

 医者からの言葉に萩風は顔を真っ赤にして俯きながらも頷く。萩風の様子に医者も満足しきった顔をしている。

 

「じゃあ、恋する乙女な萩風ちゃんに耳寄りな情報を伝えるよ。彼、結構強がりな所があるから中々隙を見せないよね。だけど、そんな彼が心細く感じる時があるんだ。その時なら彼から色んな話をしてくれると思うよ。僕たちじゃ話せる事は限られてるからね」

 

「その時とはどんな時ですか?」

 

 医者は視線はゆっくりと窓に視線を移す。窓から見える空模様は、晴れ渡った青空ではあったが、遠くには黒い雲が漂っていた。

 

 萩風も医者に習うように窓からの景色を見てみるが、医者が何をみようとしているのかはまではわからなかった。

 

「まぁ、もしかしたら今日にもその場面が来るかもしれないね」

 

 萩風は医者の真意がわからず、首を捻ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の営業はいつもより早く終わった。それもその筈、悪天候がこの島を襲っているのだ。客がこないという事で智希が早く営業を終わらせる判断をしたのだ。窓を大きい雨粒がパチパチと叩き、雷鳴が轟く程の悪天候だった。

 

 その日の夕食はいつもより多く余った食材を使って二人で作り豪勢な物となり、萩風は満足して食事を終えた。

 

 だが、悪天候が訪れているからか心なしか智希の様子が落ち着かない様にも感じていた。

 

「どうかしました?」

「何でもない…」

 

 心配になって度々そう言うが、何でもないと返されてしまい萩風が行動することを許してくれない。

 

 今思えば雨の日の智希は何処か落ち着きの無いところがあった気もした。普通の雨くらいの時は、ちょっとした変化で気のせいと思えるものだった。だけど、今回は違う。萩風が智希と長い時間を過ごした事で、智希の変化に機敏になった事もあるが、目に見えて様子がおかしい。

 

 智希と会話をしようとしても智希は空返事を繰り返すだけで話題が広がらない。

 

 おかしな様子の智希だったが、突如行動を起こした。それは、萩風が真っ暗な寝室に入ろうとした時だった。突如背後から智希に抱きしめられたのだ。

 

 突如抱きつかれ萩風は一瞬だけ硬直するが、智希の身体が僅かに震えていることを感じた。まるで、萩風が離れることを恐れるように。彼の手に優しく自分の手を重ねる。まるで、自分がここにいると智希にわかって貰えるように。

 

 僅かな時間お互いに何も語ることはしなかったが、智希の方から口を開いた。

 

「俺の事を知りたいって言ってくれてた…よな?」

 

「はい。貴方の事をもっと私は知りたいです」

 

「だったら、昔話を聞いてくれないか。俺の話を聞いて欲しい。今は全部吐き出して楽になってしまいたいんだ」

 

 その声は普段聞くことが出来ないくらいに弱々しく、何かを恐れている事を感じさせる声だった。

 

「はい。お願いします。貴方の事を知るために」

 

 萩風は重ねた手に力を込めてお願いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 萩風達は寝室で向かい合う形となった。

 

 智希は話を聞いて貰う為に何度も口を開こうとしたがすぐにまた閉じてしまう。どうやら、まだ彼の中で葛藤があるらしい。だが、瞳の色で萩風には彼の覚悟が決まっている事はわかっていた。

 

「大丈夫。私はここにいますから。私は待っていますから」

 

 萩風は彼が自分から言えるように急かすことはせず、待っていると伝えた。

 

「ありがとう」

 

 萩風の言葉で覚悟を固める事が出来、萩風に自分の過去を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この島で生まれ育ったこと。

 

 自分の幼馴染には医者ともう一人の幼馴染の女の子、『秋香(しゅうか)』が居た事。小学校まではこの島で過ごし、中学からは本州の中学校の寮で過ごしていた事。深海棲艦との戦争している時世ではあったが、楽しい中学校生活を友や幼馴染と過ごしていた事。中学時代からに秋香と恋仲になった事。

 そこから高校に上がるまでは智希にとって順風満帆と言える人生だったのだ。

 

 だが、そんな楽しい人生を送っていた智希にとある事件が起きた。

 

 それは、学校が休みの時に島に帰る計画をしていた日の事だった。智希の父親が智希と幼馴染を迎える為に直接船を出し、本州まで迎えに来てくれたのだ。

 迎えに来てくれたのはありがたかったが、その予定の時間には智希も医者も急な用事が入ってしまいその時間に行くことは出来なくなった。智希の父と秋香は日の入り前まで待ってはいたが、先に帰って皆でやるパーティーの準備をする為に先に戻る事にしたのだ。

 

 だが、それこそが智希の人生を狂わせる事となった。二人が乗っていた船は島に帰る事が出来なかったのだ。二人の乗った船が深海棲艦に襲われ船は大破したからだった。

 

 天気は悪天候となりながらも捜索が行われ、智希の父は四肢が弾け飛んだ無残な死体として発見されたが、秋香は死体は愚か痕跡さえも残っていなかった。

 その海域は艦娘達の哨戒が行われていたが、何故深海棲艦がその海域にいたのかは不明。何処かの司令部が取りのがした深海棲艦が襲ったという事で捜査が行われたが結論はわからずじまいだった。島民が艦娘に対する風当たりが強いのはこの事件のせいである。

 

 愛する者を二人も失った智希は深海棲艦の存在を許せず、深海棲艦に復讐する事を決意し、智希の意志に同調した医者も智希の復讐に加わる事になった。

 

 二人は士官学校へ進学し、智希は直接目的を果たすことに出来る艦娘運用の部に進み、医者は智希のサポートの為軍医の道を進むことを決めた。

 復讐を原動力に二人は躍進し、智希は艦娘達の司令官になる事を認められ、医者は彼の勤務先に配属される事になった。

 

 彼は戦果を上げ続け、大躍進を続けたが、階級や戦果に興味は無く、深海棲艦を滅ぼす事を優先としていた。復讐に身を捧げていた彼だが無理な出撃はする事は一度もせず、医者も艦娘達の精神的なケアを行う事で艦娘達からの深い信頼を得ることが出来、復讐は順調に進みつつあった。

 

 だがそんな彼らのもとに傷ついた幼い深海棲艦が流れついた。それこそ、後に駆逐水鬼と呼ばれる個体の幼体と言うべき存在だった。

 ある日の夜、突然目が覚め何かに操られるように砂浜に向かった智希は駆逐水鬼を発見したのだ。その姿を見てしまった時、彼には膨大な殺意が湧き出た。だから、その心の赴くままに駆逐水鬼を殺そうとした。だが、出来なかった。何故なら、駆逐水鬼の容姿が智希が好きだった少女『秋香』にそっくりだったからだ。髪や肌の色も違ったが、智希には『秋香』の姿と重なって見えてしまった。

 その事を意識してしまった瞬間彼の中にある何かが駆逐水鬼を殺すことを恐れ殺すことを止めてしまった。それだけでなく、智希は医者と共に駆逐水鬼の傷が癒えるまで誰にもばれない様に匿う事にしてしまった。医者も駆逐水鬼の中に幼馴染の姿を重ねてしまったらしく、智希に協力する事にしたのだ。

 

 駆逐水鬼も最初は怯えていたが二人に心を開くようになり、特に智希によく懐いた。

 いつの日か敵であり復讐の対象であった深海棲艦と共に過ごすことが智希にとって心地の良い事となっていた。

 駆逐水鬼は夜を怖がった。だから、艦娘達に隠れてこっそりと駆逐水鬼と寝た日もあったし、誰も起きない時間に二人で早起きし日の出を見る事が日課と化していた。

 

 そんな日々も終わりを告げる日がやってきた。それは艦娘達の噂だった。提督が謎の少女と共にいた。あれは深海棲艦かもしれない。

 

 その噂を耳にし、駆逐水鬼の傷も治っていた事がわかっていても尚匿っていたのだが限界だと悟り、親友である医者と相談し、駆逐水鬼を解放することにした。

 駆逐水鬼は智希と別れる事を拒否した。それこそ子供の様に駄々を捏ねて涙を流しながら、智希も別れるのが辛かった。涙こそ流さなかったが、またもや『秋香』と別れる事になると思ってしまうほどに。

 

 だけど、それでも智希は駆逐水鬼を説得し、いつもの様に日の出を拝んだ後に別れる事を決めた。別れの日は、駆逐水鬼から何度もお礼を言われながら、智希達は駆逐水鬼と別れた。

 

 駆逐水鬼は泣いていた。泣いていたが智希達には自分たちの事を恨んで無い事が不思議とわかった。

 智希は駆逐水鬼が視界に移る間は涙を流さなかったが、駆逐水鬼が居なくなった瞬間に涙を流した。駆逐水鬼がいる時から涙を流していた、医者は小さくなった彼の背中に手を置いて、彼に聞いた。まだ復讐を続けれるのか、と。智希の中にあった復讐の炎は何時の間にか失せてしまった。本当に果たしたかったのは復讐では無く、愛する者にもう一度会いたかっただけだったのかも知れないと、いつの日か彼は思っていた。

 彼の復讐の業火は何時の日か灯火となり消えて行ってしまったのだ。彼から復讐を止める事を宣言されると、医者も静かに頷いて彼の意見に賛成した。

 

 それから数日もしないうちに、智希は気に入っていた後輩を後釜に推薦し、彼らは惜しまれながら退役した。

 

 提督としての責務は放る形になってしまったが、彼らにはもはや復讐を動力として戦う事が出来なくなってしまったのだ。これ以上戦えない人物が居ても荷物になるだけだ。何より、智希達にはゆっくりとこれからの自分達について考える時間が必要だった。自分達のこれからの事を。

 

 智希達は島に戻り、それぞれの家業を継ぐことにした。智希の母は、智希が復讐を止めて戻ってきた事に喜んでいた。智希までいなくなったらどうすればいいだと同時に怒られもしたが。母は智希が戻って一年後に急病で亡くなった。最後の顔はとても安らかな顔だった。

 

 家族全員に先立たれ一人で半年近くの時を過ごした時、砂浜で少女を発見した。その少女は、『秋香』と『駆逐水鬼』の両者の面影を宿していた。

 その少女こそが萩風だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智希が自らの過去を話し終えると、窓を叩いていた強い雨の音も止んだ。まるで彼の中の重荷が取り払われた事を示すかのように。

 

 萩風は静かに智希の近くにまで回り込むと、彼の顔を萩風の胸に埋めさせるように抱き留めた。

 

「ありがとうございました。それと、辛かったですよね」

 

 彼の経緯、それは萩風の想像をはるかに凌駕する物だった。彼が艦娘の指揮をしていたのは医者から聞かされていたのだが、経緯や詳しい事は教えられなかった。萩風も彼が自分で言ってくれるまで待っていた。

 彼は自らの悲惨な過去を包み隠さず萩風に暴露した。萩風の心の中では、彼が話してくれたことの嬉しさと話させてしまった事に僅かな後悔が生まれていた。

 

「だから、私で良ければ貴方の感情を受け止めます。辛かった事を全部私にぶつけてください」

「なんで…?」

 

 どうして、萩風がこんなにも優しくしてくれるのかが智希にはわからなかった。だから、萩風は笑顔で彼に自分の中で出た答えを伝えた。

 

「智希さん、貴方の事が好きだからです」

 

 そう。それが彼女の中で出た結論だった。彼女は智希の事が好き。だからもっと知りたいし、苦しければその想いを分かち合いたい、喜ぶときは一緒に喜びたい。全ての時を彼と共に居たい。その思いが彼女の中の全てだった。

 

「貴方の事が好きだから、貴方の全てを受け止めたいんです」

 

 溢れる思いが強すぎて、その言葉しか口には出なかったが、それだけでも彼女の温かさが彼の心の中に響き渡った。

 

「こんな俺の事をか?」

「こんな、じゃないです。貴方だからいいんです。貴方だから私が好きになったんですよ」

 

 貴方の想いはどうですか?萩風にそう聞かれると、彼は萩風と向かい合う形になり、自らの想いを伝える。

 

「俺も萩風の事が好きだ。『秋香』と『駆逐水鬼』の代わりだって思ったことは無い。それだけは嘘じゃない。何時の間にか優しくて、世話焼きな萩風の事が好きになってた」

「それは…本当ですか」

「知ってるだろ?こんな時に嘘はつかない。俺は萩風の事が好きなんだ」

 

 彼の言葉に萩風の胸の内に温かさが溢れ、彼の胸に飛びついた。

 

「ありがとう…ございます…」

 

 萩風は彼の胸の中で喜びの涙を流した。彼も萩風の頭を抱きしめながら、静かに涙を流した。

 

「こっちこそ、ありがとう。俺の事をわかってくれようとしてくれて」

「私こそ。こんな我儘な私を好きになってくれてありがとうございます」

 

 萩風は彼の胸から顔を離し、彼は萩風の肩に手を置く形で互いに向き合う形になる。二人の瞳には相手の姿しか映っていない。涙で潤んでぼやける視界の中でもお互いの姿ははっきりと見て取れた。

 どちらともなく目を瞑り、お互いに顔を引き寄せあう。

 

 薄暗い寝室の中、悪天候を運んだ雲の隙間から漏れた月明かりが二つの影を照らし、その影は重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お互いが離れて行くと、萩風が自分を支える力が緩んでしまった。どうやら緊張感が解けたらしい。

 だが、彼の力は込められたままだ。

 

「わっ!?」

 

 そのまま萩風を押し倒すような形となった。

 

「す、すまん!」

 

 彼は慌てながら謝るが、対する萩風は何処か妖艶に微笑んで智希の頬に手を添える。

 

「貴方が望むのなら萩風は何をされても構いません」

 

 それは萩風なりの誘いの言葉。彼に対する愛が溢れすぎて、彼に受け止めて欲しいと言う彼女の気持ちだった。

 

 彼は萩風の笑顔に魅かれる様に、ごくりと生唾を飲み込む。

 

「いいのか?」

「大丈夫だから、来てください」

 

 萩風の同意を得ると、智希は萩風の吸い付くような頬に手を添えた。萩風の頬は赤く、その熱で手が火傷しそうな位だ。だが、今はその熱さですら心地の良く感じる。

 

 彼らはゆっくりと瞳を閉じて、また唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人はそのまま唇を重ねていたが萩風が彼の背中を優しく叩いた。どうやら、息が苦しくなったようだ。

 

 萩風の意志をくみ取り、彼は一度口を離した。萩風の唇はテラテラと光り、智希を惹きつける色気を感じさせれる。

 

「少しだけでいいから口を開けてくれるか?」

 

 彼の要望通り萩風は少しだけ口を開く。彼は萩風の可憐な唇に吸いつくように口付けた。小さく舌を出し彼女の唇を舐める。それが彼なりの合図のつもりだった。彼はそのまま僅かに空いた隙間から自分の舌を萩風の小さい口内に差し込んだ。

 

「むう…ふぅ…」

 

 彼の舌が萩風の口内を蹂躙する。萩風の丸い歯をなぞり、舌の裏を舐め、獲物を逃がさないように萩風の舌を絡め取る。そのまま隙を見せないように自分の唾液を流し込み萩風に飲み込ませる。

 

 萩風は彼から唾液を味わい、幸せそうな笑みを浮かべる。何も味がせず不快感しか感じなさそうな唾液だが、萩風はその唾液に何処か優しい味を見出していた。

 

 萩風は彼の頬に手を添えてお返しとばかりに自分の唾液を彼に送る。上手く送れず二人の繋がった口から萩風の液体がこぼれてしまうが、それでも彼は少しでも多くの唾液を受け取り、よく味わって飲みこんだ。萩風から送られた唾液はとても甘く、その味をまた味わうことを強請るように、彼は萩風の口内にある自らの舌を激しく動かす。

 

 やがて、互いに息が続かなくなりどちらからともなく唇を離す。二人の会いだには粘着性のある銀色の橋が架かるが、支える力が無いその橋は萩風の胸元へと落ちていった。

 

 彼は萩風の服を優しく握る。

 

「大丈夫か?」

 

 次に移りたいのだと察した萩風は火照った顔で頷いた。

 

 彼は優しく萩風の服を脱がすと萩風の扇状的な紫の下着に包まれた年頃の少女にしては発育の良い双丘が露わになる。萩風は恥ずかしそうに胸を手で隠しているうちに彼は萩風のズボンまで脱がし、月明かりを反射する真っ白で適度な肉付きの太腿が露わになった。

 

「私一人はその…恥ずかしいです…。だから、貴方も脱いでくれますか?」

 

 萩風の言葉に従い彼は荒々しく服を脱ぎ捨て、トランクスだけの姿になる。

 

 彼の裸体は中々に筋肉質で浅黒い肌は月明かりで更に黒く見え、萩風に逞しさを感じさせた。

 

 萩風はもう一度彼と唇を重ねる。その隙に彼は萩風の背後に手を回し、萩風のブラをはぎ取ってしまった。

 

「もう。私は逃げませんよ?」

 

 萩風はやんちゃな子供を宥めるように言う。

 

「ごめん。その…余りにも綺麗だったから…」

「あっ…その…ばか…」

 

 だが、彼からは思わぬ反撃を喰らい、逆に萩風が恥ずかしい想いをする事になった。

 

 確かに恥ずかしさも感じた。だが、同時に大きな喜びもあった。萩風は高鳴る胸の鼓動をわかって貰えるように、彼の手をつかんで自分の胸に導く。手のひらから感じる萩風の胸はとても柔らかく、温かく心地の良い物だった。

 

 彼はゆっくりと萩風の胸の感触を確かめるように揉み込んだ。

 

「んっ…」

 

 胸から来る刺激に萩風は官能の声をあげる。彼は両手を萩風の双丘にあてがい、確かめるように優しく指を動かした。

 

「あっ…ん…もう少し…激しくても…」

 

 彼は萩風の要望を受けて、確かめるような動きは止め、自分の指を胸の中に埋めるように激しく動かした。

 

「あっ!」

 

 萩風の声は大きく更に色っぽくなり、彼の興奮を煽った。

 

 彼の手の中にある萩風の乳首が堅くなり指を押し返すように主張してきた。彼は萩風の身体が望むことに応える様に指を乳首にあてがい優しく触れた。

 

「やっ…んぅ…!」

 

 萩風は一瞬だけ拒否するような声を出しかけたが、その声は自分の声にかき消されてしまう。

 

「気持ちいいか?」

「んんっ!何だか、あっ!ふわふわした気持ちで、やっ!恥ずかしい、ですっ!」

「恥ずかしがらなくて良い。萩風の全部が見たいんだ。だから、全部を見せてくれ」

 

 彼は萩風の乳首を強く摘まむ。一つ一つの愛撫に萩風は可愛く喘ぐ。萩風の乱れる姿が、彼には愛しくて堪らない。

 

 彼は萩風を落ち着かせるように萩風のお腹を撫でる。萩風は彼の手の合わせるように息を整える。

 

 だが、彼の中の火は点き、今も尚燃えさかっているのだ。

 

 萩風が呼吸を整え終える寸前の所で、彼は萩風の乳首を口に含んだ。

 

「あっ…!」

 

 そのまま休む隙を与えないかのように彼は、萩風の乳首を舐める。

 

「ひゃっ…!」

 

 その声が余りにも可愛くて、彼はそのまま舐めたり、噛んだり、吸ったりを繰り返す。

 

 萩風の乳首の感触は心地よく、いくら味わっても飽きを感じさせない。舌で感じる堅さ、何処か感じる優しいミルクの様な味わい。そのすべてが彼を引きつけた。

 

 萩風は自然に彼の頭を抱きしめた。まるでもっとやって欲しいと強請るかのように。彼は胸を吸う勢いを更に強める。その度に萩風の声はどんどん艶めかしい物となる。

 

 だが、それで彼は終わらなかった。萩風がもっと乱れる姿が彼は見たかった。だから、彼は萩風の最期の砦である下の下着に空いた右手を滑り込ませた。

 

「あっ!!」

 

 萩風の膣内に指が進入した時、萩風は一際大きな声をあげた。萩風の中はとても温かくて粘液で濡れそぼっていた。彼女の中は彼の指を優しく受け入れた。彼の指は粘液の恩恵を受けて、萩風の中をかき乱す様に動いた。

 

「ひゃん!!やっ!あっ!!」

 

 萩風の反応は彼の想像以上の物だった。想像以上の乱れっぷりに気をよくした彼は、彼女の秘芯に触れる。萩風の身体は襲い来る快感の波に耐えるように震えている。だが、その抵抗は殆ど無意味に等しいものだ。彼女の声の大きさと、乱れ方かたから彼は萩風の絶頂が近いことを感じた。

 

 ならば、このまま登りつめて貰うのみ。彼は胸を吸う力をいっそう強くし、同時に彼女の中で激しく指を動かす。

 

「んんっ!!ダメ!!何かが」

「良いんだ。そのままその気持ちに身を委ねるんだ」

 

 彼は止めとばかりに彼女の乳首を甘噛みし、秘芯を摘まんだ。

 

 

「私…私…あっ!!あああああ!!!!」

 

 萩風は彼の言葉と強烈な快感の波状攻撃により、絶頂に達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は萩風が達したことを感じ取ると一端愛撫を止めて萩風の呼吸が落ち着くまで待った。

 

 強烈な絶頂感で萩風は動けないでいたが、呼吸を整えると彼の首に腕を回して唇を重ねた。

 

 彼女は嬉しそうに微笑むと最期の懇願をした。

 

「来てください」

「今は避妊具は無いぞ。それでもいいのか?」

 

 それは彼女のことを思っての最期の警告と言える言葉だった。

 

「もう。そんな無粋な話はしないでくださいそれに。貴方との子供なら私は構いません」

 

 彼は萩風からの言葉に呆気にとられた表情を浮かべてしまったが、彼女の表情と語気から彼女が本気であることを悟る。

 

 彼の中に止めるという選択肢はもはや無くい。

 

「ありがとう」

 

 不安を吹き飛ばしてくれた萩風に礼を言いながら唇を重ね萩風の中に自らをあてがい挿入する。萩風の中は固く閉じられていて、彼のことを歓迎しているとは言い難い。

 

「くうぅ…」

 

 萩風の身体は成熟しきってはいない。成人男性のモノは大きく萩風に痛みを感じさせる。だが、その痛みより彼と一つになれる幸福感の方が強く、いくらか痛みも和らいでく感覚がある。

 

 彼のモノが萩風の固い壁にぶつかった。その先にあるのは萩風の純潔の証だ。その証を彼は今から破るのだ。

 

「行くぞ?」

 

 彼の宣言を受けて、これから来るであろう痛みに耐えるため彼の首に強く腕を回す。

 

「きて…!」

 

 彼女の懇願を受けて、彼は萩風の純潔の証を破る。

 

「っ!!!」

 

 想像以上の痛みに耐えるため萩風は彼の方に噛みついてしまう。それこそ、彼の肩の薄皮を破り肉から血を染み出すほど強く噛みつく。

 

 彼は彼女の奥にまで突き入れると、肩に感じる痛みを堪え一つになったまま動かず、萩風の頭を撫でる。

 

 二人の感じていた痛みは段々と無くなり、一つになれた幸福感が二人の心を包んでいく。

 

 萩風は痛みになれると、彼の肩から口を離し、彼と見つめ合う形になる。彼女の綺麗なアメジストの瞳からは涙がこぼれている。

 

「痛かったか?ごめ─――

 」

「違うんです。私、嬉しいんです。貴方と一つになれたことが」

 

 萩風の言葉に彼の中から愛しさが溢れる。彼女の涙、口周りについた彼女の血を優しく吸い取り、彼女と唇を重ねる。更に舌を潜り込ませて、彼女の中に残っていた彼の血をすべて吸い取り、代わりに唾液の交換を行う。

 

 血液混じりの唾液を飲み干すと、彼は萩風に優しく微笑んだ。

 

「動くぞ?平気か」

 

「はい。来てください」

 

 萩風の許しを得ると、彼は腰を動かし、萩風の中にあった自身を突き入れる。

 

「ひゃうっ!!」

 

 萩風の中は彼を満足させるために優しく動く。まだだ、まだこんなモノじゃない。

 

 彼は同時に空いた手で萩風の胸を揉んだり乳首を摘まんだりを繰り返す。

 

「ひゃうう!!」

 

 萩風の分泌液は更に増え、中の締めつけも更に強いものとなり、彼の絶頂を高める。萩風も身体のあちこちの愛撫により絶頂に達しそうになっている。

 

「ぐぅ!行くぞ!!」

 

「きて!きてぇぇぇ!!」

 

 これで最後だと言わんばかりに、一際大きく強く腰を打ちつけた。

 

「おおおおお!!!!」

 

 その瞬間、彼に蓄積された快感がすべて解放され、萩風の中に精液として流れ込む。

 

「あああああ!!!」

 

 萩風は彼の温かい精液を余すことなく受け入れる。

 

 彼が自身をゆっくりと抜くと、萩風の力が静かに抜けて倦怠感に包まれる。

 

 暗く、黒く染まっていく意識の中、唇に優しい温かさを感じ取り、幸福感に包まれながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人が結ばれてから更に日が過ぎたある日のこと。

 

 朝も早く、まだ日も昇らない時間帯に萩風は智希に起こされ、智希に手を引かれながら萩風は砂浜に向かう。

 

 智希に促され砂浜に座り込む。砂浜から見える空は少しずつ青色に染まって行く。それから間もなくして、太陽が今日の空を彩る。海は光りを反射して、水面が宝石の様な白い光りを発する。雲一つなく、何時になく最高の空だ。

 

「わあっ!凄い綺麗です!!」

 

 智希のお気に入りの朝の景色を萩風は満面の笑みを浮かべて絶賛する。萩風が喜んでくれたことに彼も嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「智希さんはいつもこの景色を見るために早起きを?」

 

「ああ。日の出は好きだからな。早起きさせては悪いと思って、一人で来てた」

 

 この瞬間が好きだった。今も昔も。

 

「もう。私にも教えてくださいよ」

 

「この景色は一人で見たかったんだ」

 

 医者も『秋香』も『駆逐水鬼』もこの日の出の瞬間が好きだった。

 だが、大切だった皆は自分から離れていった。だから、この景色は一人でみる事に決めていた。

 

「だけど、二人で見ても良いと思う条件が一つだけあった」

 

 そう。この日の出は大切な人と見る大切な景色。だから、今度は――

 

「一番大切な人とこの景色を見たいと思ったんだ」

 

 そう。今度は一番大切な人とこの景色を見る。それは条件と言うより、彼の望みだった。

 

「だから、さ。萩風、毎日早起きしてさ俺と一緒にこの景色を見てくれないか?」

 

 それは、彼が心から言った本心である意味でプロポーズともとれる言葉。とは言え、彼はプロポーズのつもりで言ってる。智希はそれ程までに本気で萩風との将来を考えていたから。

 

 言葉の真意をくみ取り、萩風は瞳に涙が浮かぶが萩風は太陽の輝きにも負けないくらいの笑顔で返した。

 

「はい。私でよければずっとこの景色を貴方の傍で見たいです」

 

 溢れる想いが止まらなかった。萩風は彼の胸に飛び込んだ。智希は若干よろめきながら萩風を受け止めると優しく萩風の身体を抱きしめた。

 

「ありがとう萩風」

「ありがとうございます智希さん」

 

 萩風は顔を上げると瞳を閉じた。それが何を催促するものかわからない彼ではない。

 

 彼も瞳を閉じて、ゆっくりと彼女の唇に近づく。

 

 祝福するような優しい太陽の光で作られた二つの影が柔らかく重なり、一つの影となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日のうちに本州の知り合いの元を訪れ、萩風の艤装の解体処理を行い、萩風は艦娘では無くなった。

 

 名前はどうしようかと悩んだが、萩風(しゅうか)のままにすることにした。その名前のままにすることに智希は罪悪感を覚えていたが、萩風が気に入った名前だと言って彼を説得した。

 

 その後は、折角本州に来たという事で、萩風と共に観光をしながら、本物の結婚指輪を作って貰うことにした。

 

 智希が本州に居た頃は復讐一辺倒だったため本州の事を互いによく知らず、楽しみ尽くした旅となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから更に時が流れて数年後、智希の店の看板娘だった萩風も綺麗に成長し、この島で結婚式を挙げ皆に祝福された。

 

 艦娘だとばれないように萩風の出自を偽った結果、結構悲惨な経緯を送って智希と結婚したことになったので、色々と大変な事にもなったのだがその事は一端置くことにする。

 

 何はともあれ、現在の二人は食堂を営みながら結婚後に生まれた一人娘の子育てをしている状態だ。

 

「やっほー、来たよともちゃん」

 

 本日のお客は智希の幼なじみの医者がお客様第一号である。

 

「おう。とっとと食って早く帰れ」

 

「相変わらずぞんざいだねぇ。君が病気しても診てあげないよ」

 

「わかった。好きな物を食べてから帰れ」

 

「好きな物を食べられないお店なんて嫌だよともちゃん」

 

 厨房にいる智希と軽口を交わしながら医者は席につく。

 

「お疲れさまです」

 

 萩風が労いの言葉をかけながら冷えた水をテーブルの上に置く。

 

「どーぞー」

 

 続けて二人の間に授かった娘まだ三歳の娘が、本日のお勧めが書かれたメニュー表を医者に手渡す。

 

 萩風も本格的に働ける様になり、メニューのレパートリーが増え壁に貼るだけでは収まらなくなったので、今ではその日のお勧めだけをメニュー表を書いてお客さんに手渡している。

 

「うん。ありがとう」

 

 二人の娘は医者がメニューを受け取り萩風譲りのアジサイ色の髪を撫でる。娘は礼儀正しく小さく頭を垂れると機嫌が良さそうに軽やかで小さな歩幅で厨房へと戻って行った。

 

 医者は暫しメニュー表と睨めっこをすると、一つのメニューを指さした。

 

「じゃあ、これにするかな」

 

 医者が指さしたメニューは特製カレーだ。

 

 このメニューは萩風と智希が様々な改良を加え健康にも気遣ったメニューだ。

 

「はい。少しお待ちくださいね」

「あっ、萩風ちゃん」

 

 メニューを受け取ると萩風は、厨房に戻ろうととしたのだが、医者は一端引き留める。

 

 萩風は何か追加があるのかとおもって振り返るが、件の医者は笑顔を浮かべていた。

 

「君たちは良い夫婦だね」

 

 医者からの言葉を受けて、萩風の顔は真っ赤な夕焼けの様に染まるが昔みたいにお盆で顔を隠すことはせず、満面の笑みを浮かべる。

 

「はい。これからも良い夫婦であり続けますね」

 

 萩風は上機嫌で厨房に戻っていった。萩風が照れるかと思って言った言葉だが完全にしてやられてしまった。それでも医者は楽しそうに気の抜けた笑みを浮かべていた。

 

 程なくして出来立ての特製カレーが萩風と二人の娘から運ばれて、医者は笑顔で礼を述べながら受け取る。

 

 カレーは昔以上に食欲を湧かせる匂いを発している。

 

 医者は手を合わせ、頂きますと言ってからスプーンを手にとって、カレーを頬張る。

 

「うんうん。美味しいね」

 

 二人が試行錯誤を重ねて作ったカレーからは、辛さも感じさせながらも、昔以上に優しい甘さを感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回の作品の世界の登場人物の簡易的な説明を。

 まずは智希から。

 元々はトモキを予定していたのですけど、何かチャラそうで嫌だったので却下し、いい感じの漢字を割り当てました(激ウマギャグ)

 今回の主人公は復讐を止めてゆっくりと復讐以外の人生を歩もうとしてた感じですかね。


 過去の経緯は内容の通り。恋人と家族を殺されて深海棲艦絶対殺すマン化した人物ですが、ひょんな出会いから復讐以外の道を辿ることにした感じです。
結構色々と割り切って今の生活を送っていた為、萩風を死んだ恋人の生まれ変わりとかは思って無く、最初から萩風として見てました。ただ、やっぱり面影は重なるので苦悩は下ますが。

 深海棲艦絶対殺すマン化時も鎮守府事態は普通の運営(余所から見てもホワイトでもブラ鎮でも無い)と言った感じです。理由は、目の前の深海棲艦を無理矢理倒すよりも、確実な状態で確実に滅ぼすのが彼らの方針だったからと言う設定だからですね。彼自身も艦娘のケアも上手かったので普通に艦娘から好かれてました。彼らとしては、艦娘達を知らずに自分達の復讐の駒としてたことに罪悪感があったからと言うこともあります。

 物語の序盤でお人好しと言ったのは、結局は優しさを捨てきれなかったと言った意味合いが強かったと言った感じですかね。後の経緯は物語の通りですね。末永くお幸せに爆発してください。


 お次は今回のメインの萩風ですね。

 萩風には元々やってみたかった死んだ恋人が別の存在として表れるとかそんなことをやってみたかったからですね。

 上とかで死んだ恋人がーとか言ってますけど、それが真実かは皆様の判断にお任せします。そういう風に想像して貰うために萩風には、うっ、頭が的な事はしないで貰いました。私としては、恋人が甦ったと言うより、恋人の身体を借りて、別の誰かとなったと思ってますけどね。とは言え、そこの設定は元々してないので、好きなように補完して頂いて構いません。


 萩風は可愛いですよ。あの癒しボイスとか、通常の可愛らしいポーズとか中破でみれる年以上に色っぽいあの下着とか、とにかく最高です。萩風可愛い!!世界一可愛いよ!!(尚、初婚は瑞鳳と無事に終えた模様)

 とりあえず文章で表現しきれない位です。萩風は可愛いマジ天使とわかってくれれば私は満足です。

 この作品で萩風の良さを出せたかはわかりませんが、萩風好きの同志が増える事を祈ります。

 とにかく、萩風は可愛い事だけはわかっててください。ついでに駆逐水鬼の頭を撫で撫でして、「もっとやって?」とねだられたいです。

 最後は医者です。秋香とおやっさんは少しだけしか出てないので何も言いません。一応、当初の設定ではおやっさんは秋香の父親だったのですが、この事は読まなかったことにして構いません。お話中にそう言う描写も無いので。

 そんな訳で医者です。

 医者は恋愛ゲームで言う、親友や悪友ポジですね。この医者が居ないと物語が成り立たないくらい重要なお方となって貰いました。

 今回のお話はオリキャラとの会話を少なめにする予定でしたが、智希と医者の絡みが楽しすぎて結局やってしまいました。とは言え、今思うとこれも物語に感情移入しやすくする要素になれたかと思っています。

 医者も復讐に参加してはいましたが、絶対殺すマンだった智希ほどでは無く、智希が暴走しすぎたら止めるような感じで付き添ってた感じですかね。

 本編でも悪戯仲間と言うよりは、ちょっと心配性な幼馴染と言った風に書きました。
因みに性別は敢えて設定していませんが、私的にはこの医者は女性で序盤で出て来た看護師と結婚しているという脳内設定です。まぁ、看護師は本州で知り合って恋仲になった人なので島の地理に詳しくなく、彼女がよく回診に行ってると言った感じですかね。

 性別とかも気にして一人称も私にしてましたし、『看護師』と言う言葉を用いたのも、皆さんの想像する医者の性別を思い浮かべて貰うためですね。

 何となく原文よりいくらか省略したのを書いておきました。
 
 では、ご読了ありがとうございました。

 次回も期待せずお待ちくださいませ。
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