箱庭学園二年十三組・セクハラ男子のハーレム 作:セクハラエリート万歳
今日は終業式。明日から夏休みだ。
いよいよ、今日、旦那が仕掛けるというわけだ。さぁ、はたしてどうなることか。
とりあえず、終業式で挨拶を務めるべく、他の生徒会役員と共にステージの側に立っているめだかの顔色を見たが、別段変化はない。俺がこっちについたことは知っているはずだ。俺に興味がないというのは絶対にありえないから、動揺を表に出していないだけか、それとも俺を止めるために策略でも張り巡らせてんのか。
どっちでもいいか。どうせ、今のところあいつにできることなんざ何もねえ。まぁ、さっきから視線をあちこちに動かしてるから俺のことを探してるんだろうな。それ以上に何の意味があるのかは分からねえが。
『ねぇ、性ちゃん』
「あ、はい。どうしたんすか? 旦那」
旦那に小声で話しかけられたので、俺も小声で返す。俺が、今、いるのはステージ裏の舞台袖だ。ちなみに俺自身が工作しているため、生徒会役員たちには誰一人として気付かれていない。とはいえ、万が一ということもあるので極力声は抑えてるがな。
『この場面で言うのは気が引けるんだけどさ。めだかちゃんに
「はい?」
俺は思わずきょとんとしてしまった。生徒会長に
『別に生徒会長にそこまでこだわりがあるわけでもないしね。それに僕よりも君の方がこの学校を台無しにする方法を心得てるでしょ? 昨日、君が見せてくれた覚悟の答えだとでも思ってよ』
意外だったが、そこまで言われて断る理由はない。まぁ、旦那には旦那の考えがあるんだろうし、ここは素直に応じておくか。
「了解っす。務め、しっかり果たさせていただきます」
『うん。応援してるよ。頑張って』
相変わらず空々しい台詞だ。ここまで来ると何か裏があるんじゃないかと勘ぐりたくなるが、裏なんざありまくりに決まってるからその勘ぐりに何の意味もねえ。俺は水増ししまくった
そこで時間になり、開会の挨拶をするべく、めだかが登壇する。ここだ。このタイミングでいよいよ革命が始まる。
俺は無拍子でめだかの背後に立つと、挨拶をするために口を開いためだかの肩を抱く。同時にマイクの主導権を奪うと、めだかの肩から手を離して口を開く。
『よぅ。愛しい愛しい我が恋人たちよ。元気か?』
我ながら適当にもほどがある出だしだが、問題ない。この次からが本命なんだからな。
横目に見ると江迎ちゃんと志布志ちゃんが呆気にとられてるが、旦那に何やら言われて頷いている。何を言われたのかは知らねえが、いいことだと信じよう。
「性。貴様、一体、どこにいた!?」
「ん? 旦那んとこだけど」
「やはり…… ! やはり、本当だったのか! 貴様が球磨川についたという情報は!」
「当然だろ。忘れたのかよ。中学ん時からてめえが旦那を下すまでの間、俺は旦那の下についてたんだぜ?」
挑戦的な笑みを浮かべて言ってやると、めだかが固まり悔しそうな表情になる。女のそういう顔を見るのは好きじゃねえんだが、背に腹はかえられねえ。ここは心を鬼にしていこうじゃねえか。
『早速だが本題に入るぜ。めだか。俺は副会長の不在を理由として学校則の第45条、第三項に則っててめえに
俺は署名状を突きつけながら、そう言い放つ。これで後戻りできない。正真正銘今から、俺が生徒会長だ。
「ふざけるな! そんな揚げ足取りみたいな理由で生徒の過半数の署名が集まるわけがない! こんなもの、どうせ捏造に……」
いつの間にか登壇してたプリンスが俺の手から署名状をひったくる。だが、残念だがどれほど喚いたところでそいつを崩すことはできねえ。何せ、その署名状に書いてある生徒たちは理事長が直々にこの学園にいると認めた生徒なんだからな。ひったくった件については、めだかに免じて許してやるとしよう。
「名ばかりの署名を集めて過半数か。らしくないな、性」
『おいおい。そいつは言いがかりってもんだよ、めだかちゃん。名ばかりだろうとこの箱庭学園の誇るべき生徒だぜ。差別するなよ』
舞台袖から出てきた旦那がめだかの言葉に反論し、めだかは押し黙る。理由はどうあれ、ここに書いてある名前がこの学園の生徒であるという事実は変えられない。つまり、めだかに為す術などどこにもないのだ。
俺はだめ押しとばかりに追い打ちをかけることにする。
「そういうわけだ。めだかだけじゃねえ。喜界島ちゃんも野郎二匹も腕章をこっちに渡せ。野郎二匹はともかく、めだかや喜界島ちゃんを引きずり落とすのは心が痛むが、知ってんだろ? 解任請求者は行事の運営なんかに支障をきたさねえよぉ、次の選挙まで暫定的に会長を務めないといけねえ。つまり、今、この瞬間からこの俺が生徒会長だ。あぁ、メンバーならすでに揃ってるから安心しろよ。なぁ、皆さん方」
俺の呼びかけに答えて、旦那だけでなく江迎ちゃん、志布志ちゃん、半袖の三人も俺の後ろに立つ。半袖の姿を見た瞬間、めだかは得心のいった表情をする。まぁ、そりゃあそうだわな。転校したての
『さてとっと。面倒この上ねえが、一応生徒会長を名乗るなら、マニフェストの一つも提示しとかねえと、てめえらも不安だよな。仕方ねえ。一回しか言わねえから、聞き漏らすなよ』
といっても、そこまで真剣にマニフェストを考える必要はねえ。要は目的さえ達成できりゃいいんだ。昨日、旦那が話半分に言ってたのをそのまま真似しても問題ないくらいだ。
とはいえ、そのまま言うのも気が引けるから、やっぱりここは自分流にアレンジするかね。どうせ、何言おうが旦那は文句言わねえだろうし。それなら……。
『まずは授業及び部活動の廃止。それから、女子学生の私服登校の容認。男女の会話の防止。男子学生の登校に対する厳罰化。
とりあえず、こんなところか。旦那の言ってたマニフェストをパクった上でいろいろ変えた形だが、これなら女子に対する不利益はひとまずねえはずだ。最後の永久留年のくだりが思いっきり怪しいけどよ。まぁ、不純異性交遊についてはとうの昔に実現しちまってるが、
『あぁ。こんな形でめだかや喜界島ちゃんから生徒会役員の座を奪っちまったことに多少なりとも心を痛めてるってのは本心だ。その
そう言って右手の拳を握って掲げると一人を除いて女子たちは一斉に歓声を上げる。野郎どもが何か絶望した顔してるが知ったことではない。ちなみに歓声を上げてないのは俺の昔の知り合いで凡人の実の母親だ。つっても、現時点で言うことは何もないけどな。
「ふざけんなよ……」
「あ?」
「いい加減にしやがれ! 球磨川に屈した挙句にめだかちゃんから生徒会長の座を奪いやがって! 何がしたいんだよ! てめえは!」
旦那に屈したというのに言い返したいことがないわけではないが、それよりも聞いてみたいことがある。この場面だからこそ、尋ねたいことだ。
「ふん。何がしたいか……。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。とうの昔に失望されている。めだかにとってとっくに不要と判断されたお前がめだかの側について何の意味がある? てめえの方こそ何がしてえんだ?」
「…… っ!」
凡人は俺の言葉に絶句する。旦那を除いて野郎に興味は持つことなどないと思っていたが、さすがにここまで意味不明だと多少は興味も出るというものだ。幼少の頃は二人ともそこそこ深い付き合いをしていたらしいが、中学の頃を契機に二人の関係は一気に破綻した。その原因は他でもないこの俺だが。
つまり、凡人にめだかに無理にでもつきまとう理由などない。いや、それ以前にめだかが凡人と付き合う理由がない。実際、めだかが凡人を煙たがっているところをこの数年で何度も目撃している。
そんなこいつが何で未だにめだかに近付くのか。それに微塵も興味がないと言えば嘘になる。もっとも、知れなきゃ知れないで構わないとも思ってるけどな。
せっかくだから、尋ねてみた。その程度のことだ。あの程度の無礼を看過する程度には興味はあるが、どうしても知りたいわけではない。知れれば、それはそれで面白そうってだけの話だ。
だが、案の定と呼ぶべきか、俺の問いに凡人は答えない。いや、答えられないと言うべきか。
「だんまりか。まぁ、何でもいいけどよ。俺は今は旦那の目的さえ達成できりゃそれでいい。そう。生徒会則第17条をもってしてな」
「「!」」
俺の言葉でめだかとプリンスはこちらの目的が分かったらしい。生徒総会を任意で設けて十三組どもを含む全校生徒を集めるという条文をな。
これで正真正銘の詰みだ。思ったよりあっけなかったが、半袖がつけば、こんなもんか。
「ん?」
そこでめだかが天を仰いでいることに気付く。何だ? 傍目には敗北を受け入れているように見えるが、俺には分かる。こいつはまだ諦めたわけじゃない。ここから、起死回生の策でもあるってんのか?
『黒箱塾、塾則第百九十五項。塾頭解任請求ニ関スル項目』
「あん?」
俺は思わず気の抜けた声を出しちまう。めだかはこちらをしっかりと見据えて、その項目について説明しはじめる。
要は箱庭学園の前身である黒箱塾において、塾頭――現在の生徒会長に対するリコールを宣言した場合、現行生徒会と新生徒会による決闘で次の生徒会長を決めるという物だ。
決闘ねぇ……。
「正気か? 確かに、今、ざっと確かめたところそいつが適用された事例は過去に三度ある。一度も適用されたことのないこちらの校則に比べりゃ、いくらか分があるかもしれねえが、俺たちと果たし合いをして本気で無事ですむと思ってんのか?」
「当然だ。私は箱庭学園の生徒会長なのだからな」
それに小さくため息をつく。やれやれ。本当に勇ましい生徒会長だ。だけど、これで確かめたいことは知れたな。
俺が虜にした女は、そいつに何もせずにこちらが敵対行動をとれば、きちんと対峙してくる。つっても、こいつが特殊なだけなのかもしれねえけどよ。
「どうします? 旦那」
『仕方ない。原則同士が対立した場合の判断は現生徒会長に委ねられるのが原則。リコールを宣言してしまった以上、僕らはめだかちゃんに従うしかないんだ』
「分かりました。ま、この辺りもお前にとっては織り込み済みだったんだろ? 半袖」
俺の問いかけに半袖は答えない。まぁ、どっちでもいいんだけどな。
「異存はないようだな。ならば規定に基づき、たった今この瞬間から新生徒会と現生徒会の決闘を開始する」
めだかは一拍置いて改めて宣言する。
生徒会戦挙の開幕だと。
さて、さっきはああ言ったが正直こっちに勝ち目は薄い。何せ、
まぁ、どうにでもなるか。