~39日目・3月4日~
澪が朝起きると、部屋の扉がノックがされた。
全裸のまま迎えると、そこにはグライペルが立っていた。
「ノルベール様がお取り寄せになった『生命の鐘』でございます。注文は随分前よりされていましたが、なかなか手に入らないものであるため先ほど届きました。魔力を込めると近くに存在する生命の数だけ鐘の音を鳴らす魔具でございます。身籠もっている女が使えば、二つ以上その音を響かせます」
「…………そう」
グライペルが部屋を後にした後、片手に収まるその小さな鐘を見つめた。
「いわゆる、妊娠検査薬みたいなものってわけ……」
しかし、魔力が必要となると澪の場合簡単ではない。ノルベールは澪が魔法を使えることを知ってはいるが、その代償のことは知らない。知っていたとして、彼が気にするとは思えないが。
「ま、いいか」
すぐに澪は決めた。迷い一つ無かった。
手に少しだけ魔力を込めた。
ズクッ――――
すぐにクローディアの呪いが発動し、甘い疼きが下腹部に生まれる。考えてみれば久しぶりな感覚だった。
――後でノルベール様に子宮に出してもらおう……。
すぐに生命の鐘が光を帯び始め、小さく震えた。
カーン――――――
一度乾いた鐘が鳴る。
――きれいな音……これは私の分かな。
そして――――
――――――――――――――カーン
二度目の鐘の音が鳴った。
一応部屋の外を確認するが、グライペルはとうに居なくなっていた。澪の部屋は屋敷の端に位置し、隣りは物置だし。向かい側は窓になっていて部屋はない。つまり、この部屋の周囲に澪以外の人は居ない。
「…………ふぅ」
――そっか……私、妊娠しちゃったんだ。そりゃ、危険日にあれだけ中に出されたらそうだよね。
下腹部をさすってみる。別にいつもと違った感じはないし、生理が来ないことが分かるほど日にちも経っていない。
「そうだ……早くノルベール様の部屋に行って起こしてあげないと……」
――今日は最初から挿入しよっかな。早いうちに子宮に出してもらって催淫を解除しないと、奉仕がおろそかになっちゃう……。
そう考えながら澪は鐘をベッドに投げ捨て、髪をツインテールに結って部屋を出た。
澪はもうすでに、刃更の元に帰ることを諦めていた。
「ふふふ……いい気味」
窓の外で、廊下を歩く澪を見つめる女の影があった。
「成瀬澪の運命は決定した。エネルギーも順調に集まって、母体の方ももうすぐ堕ちる。計画は完璧……」
女は――クローディアは森の中へと踵を返した。
「全てはあの方、我が主ゾルギア様の復活のために」