※この作品はR-18です。

新妹魔王の淫らな転落   作:戸隠ヒガラ

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終章 色欲の復活

 一体どこから間違ったのか、どこから歯車が狂ったのか。

 

 それを考え出せばきりが無いが、はやり決定的だったのは、東城刃更が澪たちから離れたことだろう。それさえ無ければ、クローディアが澪たちに近づく隙はなかっただろうし、彼女たちが悲惨な目に合うことも無かった。だからといって、全てが刃更の所為であるとすることは出来ないし、彼が澪たちから離れて行っていたことも、大局的には澪たちを守るために行っていたことだ。

 

 しかし、それが完全に裏目に出たのだ。

 これにより一番後悔の念に駆られることになるのは、東城刃更ではなく長谷川千里であるのは、また別の物語で語られることだ。

 

 ともかく、澪たちにとってはどうしようもないことだった。彼女たちが別段弱かったわけでも無い。全ては、起こるはずのない不運の所為だ。

 

 

 これはそういう物語だ。

 

 

 その不運の一端に、この物語で終止符が打たれることになる。

 

 

 ~259日・10月20日~

 

 

「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙、あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙、はあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙、あ゙ぁん」

 

 澪は一ヶ月もの間、コピーされたウィルダート城に閉じ込められていた。食料には困らなかったが、話す相手も無く、死にそうなほど退屈な時間が過ぎた。

 普段なら見て回れない広大な城の探検も、三日もすれば終わってしまった。他にこれと言ってすることが無い。

 

 だから彼女は、一日中自慰行為に耽った。どういう原理なのか、窓の外には昼夜があるようで、時間感覚はなくさずに済んだ。そして、自慰行為をしていれば、気づけば長時間を潰すことが出来て、いつの間にか疲れ果てて眠った。

 

 意識が麻痺するような退屈。感覚が麻痺するような自慰への没頭。

 

 城にあるもので快感を得られるものを探し出しては、自分の膣内へと差し込んだ。

 現在、澪は食料庫にあった根野菜を膣に入れてかき回していた。

 

 ――このにんじんみたいなのがちょうど良い。こっちの大根みたいなのはかなりきついな……。

 

 ずっと独りだった。

 

 だからこそ、どんどん思考が悪い方向へと向かっていく。

 もしかして、このままクローディアは来ないのでは無いか。ずっとこのまま、誰とも会うことも出来ずに自慰行為を繰り返していくだけなのだろうか。

 

「い、イックウゥゥゥゥ――――――!!!」

 

 ビクビクッ――――――プシュッ

 

 躰が大きく震えるほどの絶頂を迎えながら、澪は潮を吹いた。しかし、彼女が満たされることは無かった。

 

「はぁ…………セックス…………したい。誰でも良いから……おちんちん欲しいぃ……」

 

 愚かな考えは澪の精神を浸食していき、さらに歪ませていた。

 

 

「そんなにしたいなら、これ以上無い相手を紹介してやるよ」

 

 

「っ……クローディア」

 

 部屋の入り口に深紫色の長い髪の女がそこには立っていた。待ちわびた相手だった。

 

 

「全ての始まりを見せてやろう」

 

 

 その瞬間、澪の視界が暗転した。

 

 

 ***

 

 

 目を開けると、目の前には懐かしい光景が広がっていた。

 

 そこは、私立聖ヶ坂学園の校庭だった。空間に満ちる気配から、どうやらすでにここは人除けの結界内であることが分かった。

 それにもかかわらず、思わず澪の頬に涙が伝って流れた。

 

 ――もう、見ることは無いと思っていたのに……。

 

 離れたところに見える校舎に、かつては毎日のように通っていた。これからも変わらず、通えると思っていた。ある日その日常は奪われてしまい、自分の持っていたものをあますことなくかすめ取られてしまった。この景色も、奪われた物の一つだった。

 

 

「澪…………」

 

「っ…………!」

 

 振り向いた先の光景に、澪は言葉を失った。

 そこには、大きな魔方陣が地面に描かれていた。その魔方陣を取り囲むように4人の少女が全裸で立っていた。

 

「皆…………」

 

 

 澪の護衛役であるサキュバスのマリア。

 

 

 クラスメイトにして勇者の野中柚希。

 

 

 その妹である野中胡桃。

 

 

 元ゾルギアの配下のゼスト。

 

 

 実に九ヶ月ぶりの再会だった。

 

「無事……とは言われへんね」

 

 柚希はなんとも微妙な表情で澪を見た。そんな彼女のお腹は、大きく膨らんでいた。

 

「柚希……それ……」

 

「うん、アドミラスの子供や。今、七ヶ月」

 

 七ヶ月の割りに、澪が臨月の時よりも膨らみが大きい気がした。

 

「3人入っとる」

 

「っ…………そう」

 

 次に澪は、隣のマリアを見た。

 

「久しぶりです、澪様……」

 

 彼女の子供っぽい躰も、お腹が大きく膨らんでいた。

 

「私は八ヶ月です。柚希さんより一ヶ月先輩ですね」

 

 そんなことを、気まずそうにしながらもハキハキと言ってのける彼女は、はやりこの九ヶ月で歪んでしまったようだ。

 

 そして、今度は胡桃を見遣る。彼女のお腹は膨らんではいなかった。その代わり、2人の赤ん坊を抱えている。その赤ん坊は、2人とも少し小さいようだった。

 

「双子なんだけど、早産でね。ちょっと未熟なの。やっぱり、途中まで薬やってたのがまずかったみたい。でも、こうやって産まれてきてくれて嬉しいんだ」

 

 胡桃はすやすや眠る赤ん坊を揺らしながら、疲れたように微笑んだ。

 

「うぅ…………」

 

「ゼスト?」

 

 ゼストもお腹が大きかった。大きさを見るに、臨月のようだ。どうやら陣痛に表情を歪ませているようだ。

 

「さぁ、見事に孕んじまった5人のビッチが勢揃いだ。これは眺めが良いね」

 

 澪の真後ろにクローディアが立っていた。振り向いて飛びかかりたい衝動に駆られたが、どういうわけか足が地面に張り付いたように動けなかった。クローディアの魔法だろうか。他の皆も同様だった。

 

「ふふふ、確かに面白い眺めだね。全員僕のお人形にしてあげたいよ」

 

 十歳くらいの緑色の髪の少年魔族が、柚希の後ろにから顔を覗かせた。

 

「止めておくれよ、クリント。あなたのものはあなたで自由にしていいからさ」

 

「は~い」

 

 ――あの子も、クローディアの仲間?

 

「早く終わらせちまえよ。早く俺はゼストを抱きてぇ」

 

「クラレンス……♥」

 

 ゼストの陰から出てきたのは、金髪の青年魔族だった。名前はクラレンスというらしい。なぜか、ゼストはその青年に愛おしそうなまなざしを向けている。

 

「それじゃまず、観客を増やそうじゃぁないか」

 

 そう言ってクローディアは、手を叩いた。その途端、魔方陣が光りだし、中央になにやら黒い影が盛り上がり始めた。それは人影だった。しかも二人いる。

 

「っ…………これは……」

 

 

 

 

「あぁぁ…………中で出てるよぉ、刃更兄ちゃん♥」

 

 

 光が消え、二人の姿がはっきり見えた。

 それは、全裸の胡桃を組み敷く制服姿の刃更だった。二人は性器で繋がり、ちょうど刃更が胡桃の膣内に射精している場面だった。

 

「え……?」

 

 澪は赤ん坊を抱える方の胡桃を見た。確かにそこにいる。

 

 ――胡桃が、二人……? っていうか、なんで刃更が胡桃とセックスしてんのよ……。

 

 当の胡桃は、冷えた目で二人目の自分を見ていた。

 

「ウソ……だろう…………なんだ、これは……」

 

 刃更も事態が飲み込めないようだった。説明して欲しいのはこっちの方だというのに。

 

「み、澪……澪か……? 皆も……なんだよ、それ……」

 

 どんどん青ざめていく刃更。刃更に抱かれていた胡桃は、そそくさと全員の視界から外れた。

 

「刃更……」

 

 久しぶりの再会。しかし、それがこんな場面では、澪は素直に喜べなかった。

 刃更が澪の存在を見留め、立ち上がろうとした。

 

「おっとあんたはそこにいな」

 

「ぐっ……」

 

 刃更は魔方陣の中央に倒れ込んだ。魔法による念力で動けないようだった。

 

「く、クローディアさん……まさか、あんたが今回の件の黒幕だったのか?」

 

「久しぶりだね、刃更『殿』。実に七ヶ月ぶりだ。まぁ、あんたからしたら一時間しか体感では経過してないんだっけね」

 

「な、七ヶ月……だと? 何を言っている⁉ くそ……こんな魔法……」

 

 刃更が力尽くで立ち上がろうとしたとその時、クリントが飛び上がった。その手には、巨大な槍も握られ、うつ伏せで倒れる刃更を背中から貫いた。

 

「がああぁぁぁあぁ!」

 

 クリントは刃更を貫いた槍の上に器用に乗っていた。

 

「これは特殊な魔法石が練り込まれてる槍なんだよ。これで儀式の準備は完了だ」

 

「こんな程度――――何だと……」

 

 刃更の顔に驚愕の色が浮かんだ。

 

「あぁ、東城刃更。今お前は魔剣ブリュンヒルドを具現化できねぇぞ。なぜなら、『具現化の仕方』の記憶を封じてるからな」

 

 クラレンスがだるそうにそう言った。

 

「何だと……⁉」

 

「さて、始めようか」

 

 クローディアが両手を重ね合わせた。それと同時に、魔方陣が青く輝き始めた。

 

「っ…………ぐあああぁぁぁ!」

 

「刃更……」

 

 澪は事が進む様をただ見つめるしか出来なかった。魔法を使う事も出来ない自分に、そもそも何が出来るとも思えなかったし、他の少女達も一切手出しをしなかった。

 

 そのうち、刃更に刺さる槍も強く輝き始め、その先端から青い光が生まれ出た。それは見たことのあるガラス玉に変化し、クリントの手のひらの中に握り込まれた。地面の魔方陣は消え去った。

 

「『無次元の執行』(バニシング・シフト)もーらい♪」

 

「何を……」

 

「東城刃更、お前の万物を消し去る能力だけが不確定要素だった。だからこそ、こうしてその能力を取り出したわけ。クリント」

 

「はいよ、お姉ちゃん」

 

 クリントは青いガラス玉に変化した刃更の能力をクローディアに放り投げた。

 

 ――私の魔力だけで無く、刃更の能力までも奪い取るなんて……。

 

「つくづく哀れな男だね。自分が囲っていた女達は皆他の男に寝取られちまってる上、肝心の自分の切り札の能力も奪い取られたんだ。哀れみすら感じるよ。まぁ、全て私の計画通りなんだけど」

 

「そん、な…………ウソだ……そんな……澪……皆も……ウソだって……言ってくれよ……」

 

 信じられない様子の刃更だが、澪たちは一切否定の言葉を言わない。

 

 ――そうか、皆も色んな目に合ったのね……。

 

「さぁ、本日のメインイベントだ」

 

 クローディアはお腹を押さえるゼストの元へと歩み寄ると、指をパチンとならした。その音が合図となり、地面が鈍く光り出した。そして、じわじわと地面へと沈み込み始めた。

 

「おい、ゼストをどうするつもりだ!」

 

 刃更が叫ぶ。必死な彼の様子が、澪には無性に滑稽に見えてきた。もうすでに彼がどうこう言っても意味の無い段階まで来ているというのに、それでも彼はまるでゼストが自分の物であるように振る舞うのが、どうにも哀れだったのだ。

 

 ――見ただけで分かる。ゼストの心は、もう刃更に向けられていない。

 

 叫ぶ刃更を面白そうに見てクローディアは、半笑いをしながら説明をした。

 

「時間の流れを操作した結界に入るだけさ。効果としては、あんたを七ヶ月閉じ込めたものとは効果が逆。つまり、あんたが神族の女と契約に使った物と同じということさ」

 

「どうして……それを……」

 

 その効果とは、結界の時間の流れを何千倍にも早くするという物だ。現実での1秒は、結界内ではさらにもっと長い時間になる。

 

「そんなことはどうでも良い。ちょっと待ってな」

 

 そう言いながら、クローディアとゼストは地面の光へと吸い込まれていった。

 その直後、実質10秒ほど経過したころ、すぐに二人は逆再生のように地面から浮かび上がってきた。ゼストは地面に倒れ込んでいる。彼女のお腹は元の状態に戻り、その代わり両腕に赤ん坊を抱えていた。赤ん坊はまだゼストとへその緒で繋がっていた。

 

「無事、出産だ」

 

「ゼスト……」

 

 結界の中でゼストは出産をしたというのだ。時間の流れを操作した空間で、現実世界で出産に要した時間を大幅に短縮したのだ。

 

 肝心のゼストは、疲れ切ったのか眠っていた。

 澪は出産の苦労を先日経験したため、その気持ちがよく分かった。

 

「クラレンス、次はあんたの番だ」

 

「…………あいよ」

 

 クラレンスは赤ん坊を抱えたままのゼストを、お姫様抱っこで持ち上げた。そのまま移動し、赤ん坊ごとゼストを刃更の目の前に置いた。

 

 クリントも赤ん坊に歩み寄った。その手には、彼の体躯より一回りほど大きく膨らんだ袋が抱えられていた。その中には、五つの色違いの水晶が入れられていた。

 

「それは……」

 

「それはこの5人の女達につけた首輪を通して集められたエネルギー、その結晶体さ。エネルギーの源は、こいつ達自身の性的興奮。つまり、犯されて犯されまくって、快楽に溺れれば溺れるほど、この結晶は大きくなる。それだけ、エネルギーも大量になる」

 

 ――あれが、以前クローディアが言っていた首輪によるもの……

 

 

 朱色が澪。

 

 

 桃色がマリア。

 

 

 水色が柚希。

 

 

 群青色が胡桃。

 

 

 銀色がゼスト。

 

 

 それらは一個一個大きさは少しずつ異なり、どれも抱えるほど大きかった。特に大きかったのは、朱色の水晶だった。

 

 ――つまり、私が一番快楽に溺れたって事……。

 

 妙な気恥ずかしさがあったが、当然だという気がしたので何も言えなかった。

 

 クリントは赤ん坊の周りにその五本の水晶を丁寧に突き立てていった。五芒星を描いたときにちょうど赤ん坊が中心に来るような形だった。

 

 そして、クラレンスが眠っているゼストの額に人さし指を当て、目を閉じた。

 一瞬の静寂が訪れる。

 

「何を……」

 

「夢の中に入っているんだよ」

 

 クリントが澪の問いに答えた。

 

「お兄ちゃんは相手の夢の中に入り、夢の世界の主導権を握ることが出来るんだ。そして、その中で夢の主の躰に起きたことは、現実の世界にも反映させられる」

 

「それで……ゼストに何を……」

 

「まだ分からないかい? 見てみなよ。その赤ちゃん、まだゼストお姉ちゃんとへその緒で繋がっているだろう? この状態だと、ゼストお姉ちゃんの精神から赤ん坊の精神へお兄ちゃんは入り込むことが出来るんだ。お兄ちゃんが人の夢に入るには、性的な心の隙を作る必要があるんだけど、当然赤ちゃんにそんなのあるわけない。その打開策が、母体を通して入り込むっていうことなのさ」

 

 ――つまり、赤ん坊の夢の中に、さっきの男は入り込んだってこと? 一体、何のために……。

 

「言ったでしょ? 入り込めさえすれば、夢に干渉できる。夢に干渉できれば、現実の躰に干渉できる」

 

「現実の……躰……」

 

「つまり、こういうことだ」

 

 いつのまにか目を開けたクラレンスが、澪に言った。

 変化はすぐに訪れた。

 

 五つの水晶が強く光り出した。その光は、中心にいる赤ん坊へと集まっていく。

 

「夢の中で、赤ん坊の時間を一気に進めた」

 

「進めた……ですって?」

 

「あぁ、ゼストを犯したときも、躰の時間を早めて生理周期を調整して犯した。それと同じ事を、この赤ん坊にもしたんだ。おおよそ、20年」

 

「20年分、夢の中の赤ん坊の時間を進めた? そんなことが……」

 

「それが、俺の能力で出来るんだよ。だが、あまりに夢の躰が現実の躰と乖離していると、反映させたときに負担が大きくなる。特に急速成長なんて躰がついて行けるはずが無い」

 

「…………つまり、その子が急速成長するためエネルギー、それがうちたちのこの九ヶ月間の快楽から変換されたエネルギー」

 

 事態の把握が少し早かったのは柚希だった。

 

「理解が早くて助かる。見てみろ」

 

 こうして話している間にも、赤ん坊はみるみる成長していった。五色の水晶からエネルギーを吸い続け、自分の糧としていく。水晶が半分以下の大きさになった頃、赤ん坊はクリントの見た目の年齢を超した。

 

 その様子を、刃更も絶句しながら見ていた。彼は全く事態に感情が追いついて行っていないようだった。理解が追いつかないのでは無く、感情の整理が付かないのだ。

 

 ――当然……か。

 

 一瞬だけ刃更の方を見て、すぐに赤ん坊へと視線を戻すと、すでに赤ん坊は一人の青年へと成長していた。

 

「もうへその緒も切って良いな」

 

 そう言いながら、クラレンスは手でへその緒を千切り、ゼストを抱えてその場から離れた。

 結果、うつ伏せで倒れた状態の全裸の褐色肌の青年だけが刃更の目の前に残された。

 

 ――ゾルギアを生き返らせるって言ってたけど……でも、これがその方法……? これじゃ、ただゼストの子供を大きくしただけじゃない。

 

 澪の頭に疑問がうかんだ。

 次に動き始めたのは見た目が少年のクリントだった。

 

「アドミラス、出ておいで」

 

 ――アドミラス……?

 

 澪はその名前に聞き覚えがあった。案の定、クリントの背後に急に出現した男は、以前魔界での大決闘の際、胡桃と戦闘を繰り広げた男だった。

 

 ――胡桃とマリアに倒されたはず……生きてたのね……。

 

「アレお願いね」

 

「はっ」

 

 恭しく頭を下げると、アドミラスの背中から二本の長い触手が伸び始めた。

 

「っ…………!」

 

 あまりの気持ち悪さに、澪は息を呑んだ。うねうねとうごめくそれは、確かにアドミラスの背中から生えていた。以前にあんなものを使っていたことは見たことない。

 

「お姉ちゃん、アレ出してよ」

 

「待っておくれ」

 

 今度はクローディアが、何も無い空間から何かを取り出した。それはガラスで作られた大きな球体だった。そして、その中には――――

 

 

 

 

「脳…………みそ…………?」

 

 

「そうさ。これは、ゾルギア様の脳さ」

 

「な…………!」

 

 ここでようやく、刃更が彼女の言葉に反応した。

 

「覚えているだろう、東城刃更。お前の目の前でゾルギア様は殺されたんだから。もちろん、それで確実にあの方は死んだ。しかし、脳みそは運良く破壊されずに残った。だから、脳みそが完全に壊れる前に私が回収したのさ。ゾルギア様の睾丸と一緒にね」

 

「睾丸だと⁉」

 

 アドミラスがクローディアからガラス球体に入れられた脳を受け取ると、それを持って倒れている青年へと近づいた。

 

「そう…………そういうこと」

 

 今度納得したようにつぶやいたのは、胡桃だった。刃更と行為に及んでいた方ではなく、澪たちと同じように動けないようにされている方の胡桃だ。

 

「どういうこと?」

 

「アドミラスは……触手を介して二者の記憶を共有させることが出来るの。私と、さっきまでいた偽物の私は、それによって記憶を共有させられた」

 

「補足すると、それにはある程度二者の間に遺伝子的に等しいか近縁であることが条件なんだ。そうじゃないと、記憶に拒絶反応が出て頭が壊れちゃうから。臓器と一緒さ」

 

 説明を引き継ぐようにしゃべり出したのはクリントだった。

 

「そのため、ゾルギアの脳と記憶を共有させるためには、ゾルギアとある程度遺伝子的に近い躰を選ばないといけなかった。ね、お兄ちゃん」

 

 クリントは笑顔でクラレンスに続きを説明するように促した。うんざりしたように、彼は話し出す。

 

「俺は以前まで、躰を実体化出来ないほど弱っていた。だからこそ、ゾルギアの睾丸を一時的に埋め込むには最適な存在だった。そうしてゾルギアの睾丸を躰に埋め込まれた俺は、その状態でゼストを犯して孕ませた」

 

 澪ははっと気づいた。

 

 ゾルギアの睾丸の中にあるのは、もちろんゾルギアの精子だ。それを、クラレンスのペニスを通してゼストの体内へと注ぎ込まれ、そして彼女の卵子と受精した。

 そうして産まれた子供は、ゼストとゾルギアの子供であると言っても過言では無い。つまり、その子供は半分、ゾルギアの遺伝子を受け継いでいる。

 

 

 遺伝子的に、近縁である。

 

 

 だからこそ、アドミラスの記憶共有が可能なのだ。

 

 アドミラスの触手の一本が倒れた青年のこめかみに突き刺さり、もう一本はガラス球体の中に脳みそへと突き刺さった。

 記憶共有が始まったのだ。

 

 青年の方は、躰は大人でも脳みそ自体は生まれたての赤子だ。そんな脳に、何かしらの記憶があるとは思えない。

 それに対して、クローディアが保管していたゾルギアの脳は、彼自身の記憶の塊だ。

 

 その二者が記憶共有するということが、一体どういうことを意味するのか。

 

 赤子のようなまっさらな脳に、ゾルギアの記憶が流しこまれる。それにより、まだ未形成の人格や性格が、記憶により上塗りされる。もちろん、もともとの赤ん坊の人格もいくらか残るかも知れないが、そんなものは微々たるものだろう。

 

 

 結果、ゾルギアの記憶や人格の全て受け継いだ、二十歳の青年のできあがりだ。

 

 

「これが…………ゾルギアの復活の、真の意味……」

 

 死者蘇生なんて神に背くようなことをしたわけではない。

 ただ単に、ゾルギアと同じ記憶や考え方をする人間を、少し手荒な方法で生み出したに過ぎない。それは確かに別人なのだろうが、記憶や考え方が全く同じ人間を、本当にただの別人であるなんて誰が言えるだろうか。

 

 あたりの気温が一気に下がったような気がした。

 

 

 

 

 

 

「気分が良いな」

 

 

 

 

 低い声で、青年が突然に声を発した。彼はゆっくりと立ち上がった。その顔は、まさにゾルギアを若くしたような顔立ちだった。

 

 張り詰めたような空気が辺りを呑み込んだ。神経がピリピリするような緊張感、心がかき立てられるようなざわめき、それらをその場にいた全員が感じた。

 

 

 ドクン――――

 

 

 心臓が強く跳ねた。本当にゾルギアが復活してしまったのだ。しかも、事態は前よりかなり深刻だ。

 

「よくやってくれた、クローディア。脳になっていた間でも、外の様子は十全に分かっておったぞ」

 

 ゆっくりと、それでも悠々と喋るその様は、まさにゾルギアそのものだ。

 

「ありがたきお言葉です」

 

「それにしても、成瀬澪。お前は随分と醜い体になったな」

 

「ゾル――――」

 

「ゾルギア! お前……」

 

 澪の言葉を遮るように、刃更が叫んだ。

 

「ジン・トージョーの息子よ、お前も久しいな。随分とお前はみすぼらしくなったな。守ると豪語しておった女達は全て他の男に孕まされ、要の無次元シフトも奪われた。あまつさえ刀も握れない。本当に、見ていて気分が良い」

 

「貴様ぁ!」

 

「ゾルギア様、これを」

 

 そう言ってクローディアは、三つのガラス玉をゾルギアに渡した。

 

 一つ目はウィルベルトの魔力。

 二つ目は澪の魔力。

 そして、三つ目は、刃更の万物を無に消し去る能力だ。

 

 ゾルギアはそれら全てを受け取ると、一つ一つ握りつぶしていった。

 壊したのではない。

 中に封じ込められた力を、自分の物として吸収したのだ。

 

「おう……ただでさえ若い躰で力がみなぎっているというのに、強力な力が一度に三つも我が物に出来るとは。笑いが止まらないな。全盛期の私をも凌駕するほどだ」

 

「そんな……」

 

「くそぉ!」

 

 ゾルギアは澪の魔力や刃更の能力のみならず、魔界で誰もが恐れる前魔王ウィルベルトの魔力すらも手にしたのだ。しかも、若く強靱な躰も得た。明らかに、かつて刃更が戦ったときの何十倍も強くなっている。

 

「っ…………!」

 

 そこで澪は気づいた。他の少女達も、同じようにゾルギアの同じ部分に目を奪われているようだ。

 

 ゾルギアの股間の男性器が、かなり大きく膨らんでいた。それは、あのノルベールよりも太くて長かった。

 

「さすがに、産まれてから一度も射精していないと、欲求のたまり方は尋常では無いな」

 

 

 ジュン…………

 

 

 澪は下腹部の熱に気づいた。

 その肉棒に犯されたい。そう躰は本能的に望んでいた。

 

「澪……どうしたんだ?」

 

「え?」

 

 刃更に言われて初めて気づいた。彼女は気づかないうちに地面にへたり込み、失禁してしまっていた。

 柚希たちもそんな澪に驚いているようだ。

 

「ゾルギアのオスの気に当てられたんだね。へえ、澪お姉ちゃん、今日排卵してるんだ」

 

「っ……!」

 

「当然、この私が、今日排卵するように薬を調合したんだからね」

 

 クリントの言葉にクローディアが自信満々に答えた。

 

「澪、お前の躰はずいぶんを様変わりをしたようだが、その性根は変わっていないようだな。男の躰を求めるいやしい躰。それは昔からだったな」

 

 ゾルギアは口角を上げながら、澪の躰を舐めるように眺めた。

 

「っ……そんなこと……」

 

 しかし、澪は自身の心の内の変化に気づいていた。

 

 今の今まで、ゾルギアには養父母を殺した憎き敵としか思っていなかった。それなのに、彼の男性器を間近で目の当たりにした途端、その感情がどこかに消し飛んだ。

 

「澪、こんな奴の言葉を聞くな!」

 

 刃更が叫んでいる。しかし、澪の頭は妙にぼーっとしていた。ゾルギアの声だけがはっきりと浮き出て聞こえた。

 

「他のお姉ちゃんたちはすでに妊娠していたり、まだ生理が回復していないために、ゾルギアのオスとしての真の優勢さに気づかないんだろうね。だけど、澪お姉ちゃんだけは違う。この中で一番快楽に溺れ、出産を経て生理も回復し、現在卵子を抱えている君だけがね」

 

 ――私は……ゾルギアのおちんちんを見て、アレに犯されたいと思っているんだ……そして、その遺伝子を受け入れたいとも思っている……。

 

 それは、強い男の遺伝子を求める、女としての本能的な欲求だった。

 澪はふらつく足に鞭を打って立ち上がると、ゾルギアの元へと歩み寄っていった。

 

「止めるんだ、澪! 今すぐ逃げるんだ。まだ……まだ、やり直せる!」

 

「無理だよ、お兄ちゃん」

 

 やり直せる、なんて無責任な言葉だろう。

 澪は、刃更を『お兄ちゃん』と呼んだ。それは、かつて彼女は刃更に行為を求める際の合図だった。それを、この場面であえて言った。それは、もう刃更だけを特別扱いする理由が無くなったことを意味している。

 

「私はもう、手遅れなの。本当はお兄ちゃんに処女をあげたかったって、ずっと考えてた。でもさ、処女ってそういうものじゃないの。何千人とセックスしてるうちに、そんなことってどうでも良い事だと思えてきたの」

 

 また一歩と、また一歩とゾルギアに近づいていく澪。

 

「セックスって、気持ちよかったらそれでいいの。それだけなの」

 

 ――ごめんね、刃更。私、こっちの方がいいみたい。

 

「澪……」

 

「だ、そうだ、東城刃更。さぁ、澪」

 

 ゾルギアが手を大きく広げた。その胸に、澪は抱きついた。

 途端に、ゾルギアの体臭が鼻に入り込んでくる。オスの臭いが強烈なその臭いに、澪は夢中になってしまっていた。

 すぐに澪はかがみ込み、ゾルギアの肉棒にしゃぶりついた。

 

 

「んじゅっ……じゅぶじゅぶっ…………んちゅっ♥」

 

 

 一ヶ月ぶりの男性器の強烈な臭いに、澪は打ち震えた。

 

 ――これだ……これが、欲しかった……。

 

 

「んん♥ んん~~~~~~~♥♥♥」

 

 

 

 

 ビクビクビクン――――

 

 

 澪は肉棒を銜えただけで絶頂してしまっていた。

 彼女の絶頂のハードルはかなり低くなっているとは言え、フェラチオだけでオーガズムを迎えるのは初めてだった。

 

 ――入れる前から、もう私の躰、ゾルギアに敗北してる……

 

 あっという間に陰部が湿り気を帯び、大量の愛液が滴る。

 

「澪…………そんな……」

 

 ゾルギアの性器に夢中でしゃぶりつく澪を、刃更は青ざめた顔で見ていた。彼は魔法で動けない上地面に槍で打ちつけられているが、おそらく自由に躰が動かせてもショックで全く動けなかっただろう。

 

「あのウィルベルトの娘が、私のイチモツを銜えておる。なんとも絶景かな」

 

 ――すごい……ノルベールみたいに真珠を入れているわけじゃないのに……天然でごつごつしてて、反り上がってて……こんなのに突かれたら私……どうなっちゃうんだろう。

 

 気づけば、柚希や胡桃、マリアにゼストも、それぞれセックスを始めていた。

 柚希と胡桃はアドミラスと、マリアは突然現れた見知らぬ三人の巨漢魔族と、ゼストはクラレンスと、それぞれ行為を自由に始めていた。

 

「何だよ……何なんだよ……」

 

 刃更は額を地面にこすりつけていた。何度も何度も、自分の無力を嘆くように。

 

「澪、お前の口から、何をして欲しいか言うんだ」

 

「分かりました」

 

 もうかつてのようなためらいは微塵も無い。

 

 言葉使いはラギー商会で学んだ。

 

 奉仕の仕方はノルベール邸で覚えた。

 

 人間牧場では、どんなプレイでも平気な耐性が付いた。

 

 もう澪に、怖いことは無かった。

 

「ゾルギア様。私のおまんこ、黒くて緩くなっちゃってるけど、どうぞあなたの極太おちんちんを突っ込んでかき回してください。今、私の子宮には生まれたての卵子がふわふわ浮いてます。それを、ゾルギア様の大量のザーメンで陵辱してください。そして、二回目の妊娠を経験させてください♥」

 

 ゾルギアはその場に腰を降ろし、その上に澪を座らせた。

 

 

 

 

 ズブブゥッ……ゴリゴリュゥ

 

 

 肉棒の凹凸が、澪の膣壁を擦り上げながら奥へ奥へと突き入れられた。

 

「あぎい゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙♥」

 

 肉棒のただの一突きで、澪は母乳を激しく振り乱しながら絶頂した。肩をふるわせ、背中をのけぞらせた。

 

「あが……はぅ……ひぃうん♥ い、イッちゃった……♥ 入れられただけにゃのにぃ……♥」

 

「全然緩くはないぞ。むしろ、私のものを呑み込むにはちょうど良いくらいだ。今まで散々色んな男のものを呑み込んできたようだが、これからは私のものしか入れたくなくなるように調教してやる」

 

 ゾルギアは澪の胸を強く鷲づかみにした。

 

「っ…………んぎぃん♥ あぁ……♥」

 

 ゾルギアは的確だった。

 澪の弱点である胸を、彼女が最も感じやすい力加減で、もっとも感じやすい箇所に刺激を与えたのだ。

 

 ――そんな……こんなの……初めて……。

 

 

 ドチュッ

 

 

「ふぃぐぅっ♥♥♥」

 

 腰をさらに一度上下させた。腰使いが巧いのもある。持っているものがすごいことも当然あるだろう。しかし、それだけでは説明の付かないほど、澪はゾルギアの行為に呑み込まれた。

 

 ――そうか、私……ゾルギアと躰の相性がこれ以上無く良いんだ。

 

 何十人、何百人、何千人と、あまたの男たちとセックスを繰り返してきた澪だったが、これほど躰の相性が良いことは今までになかった。

 

「しゅごい♥ こりぇ、壊れちゃううぅぅぅぅ♥」

 

「あぁ、狂い壊れろ!」

 

 彼の肉棒が、余裕で澪の子宮口をこじ開け、中へと侵入していた。抽送は全てが子宮内で行われ、嵐のような快楽が吹き荒れた。それはバチバチと快感の火花を巻き込み、彼女の精神を食い破った。

 すでに、澪の意識の中に刃更のことはどこにも無かった。

 

「澪! 澪! 目を覚ますんだ、澪!」

 

 しかし、彼の叫びは一切澪の耳に届かず、ひたすらゾルギアとの行為に没頭していた。

 

 そしてついに、ゾルギアの腰の律動に力が入り始めた。肌と肌がぶつかり合う乾いた音。結合部で泡立つ大量の愛液。飛び散る澪の母乳と唾液。

 

 それらと重なるように、他の少女達の嬌声も鳴り響く。

 

「あっぁぁ、ぁ、あぎ、んがぃ♥ あ゙ぁ゙あ゙! はぐぅ、んあぁ、ら、らめっ♥ つ、つよしゅぎぃ♥」

 

 激しいピストン。その一つ一つが爆弾のような刺激が全身を貫いた。ゾルギアの肉棒は澪の子宮を破壊せんばかりに押しつぶすたび、彼女の脳はとろけていくようだった。

 

「澪、出すぞ!」

 

 ――出される! 出してくれる!

 

 澪はゾルギアの射精感を促すように、腰をグラインドさせた。横の動きに対して、ゾルギアの上下の律動が重なりあう。

 

「んあぁ♥ ふにゃ、んぎっ♥ んふ、あぎゅん♥ ああぁ、はぁっ、おうぅん♥」

 

 理性は無く、歯止めも利かず、ただただ本能的な欲望をさらす獣のような声が、澪の口からこぼれた。

 

 今までに聞いたことの無い澪の声に、刃更は呆然とするばかりだ。

 

 そして、ついにその時が訪れる。

 

 

 全てを決定づける、トドメの一撃。

 

 

 

 

 その欲望の全てが――――――澪の子宮へとぶちまけられた。

 

 

 

 

 どぶぶぅぅっ、ビュルルルルッ、ビューッ、ビューッ、

 

 

 ブジュルッ、どぶぅ、ドクドクッ

 

 

 ビュルン、ビュルビュル……ビュルルッ、ドクドクッ

 

 

 

 

「あ゙あ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁ、ふああぁぁっ、あ゙あ゙ぁ゙ぁんあ゙ぁ、ぁ゙あ゙ぁぁあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙!!!!!」

 

 

 

 

 産まれてから一度も体外に出されたことがない大量の精液が、危険日の澪の子宮へと吐き出された。

 

 たった一度で、妊娠確実な射精。

 ノルベールの時のように、何日もかけてダメ押しをするまでもない。

 

 自分の卵子がゾルギアの精子と出会ったことが容易に想像できた。

 

「んぎゅぅぅぅん♥ はぁぁあぁ♥♥ だ、だしゃれちゃったぁ♥ ははは♥ こんにゃに……ぜったい、妊娠しちゃったよぉ♥ ばしゃらのじゃなくて……ぞるぎぁしゃまの……子供ぉ……♥」

 

 脳内の神経に一気に大量の快楽信号が入力され、あらゆる思考が崩壊した。

 

「あぎ………………」

 

 ふっと、澪は気を失った。あまりの快楽の激流に、脳がキャパシティオーバーを起こしたのだ。その間にも、彼女の子宮内にゾルギアの射精が続けられていた。

 

 他の少女達も皆気絶していた。そして、いつのまにか刃更も静かになっていた。

 地面に何度も頭をたたきつけ、声も出さずに泣いていた。

 

「哀れだな、ジン・トージョーの息子」

 

 ゾルギアは気絶した澪を放置し、刃更へと歩み寄った。

 

「お前にはもう、何も残ってはおらん。このまま後悔や憎しみに歪む醜い生涯を過ごすだろう。どうだ? どうせなら、この私に殺されてみるのは」

 

 刃更は何も答えない。聞こえているのかも不明だ。

 

「…………それが、お前の答えか」

 

 ゾルギアは手を刃更へと向けた。その手には、巨大な火炎が生まれ出た。

 

「せめて、澪の魔力で殺してやろう。愛した女の力で殺されるのだ、本望であろう?」

 

 

 ゾルギアの炎が一層大きく燃え上がり、そしてついに、刃更へと向かって飛んだ。

 

 全てを奪われた彼の頭上に、引導を渡すように炎が降り注いだ。

 そして、彼に直撃するその時――――

 

 

 

 

 

 

「させるかぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 ゾルギアの放った炎を、何者かが弾き飛ばしたのだ。

 

「お前は……誰だ?」

 

 刃更をかばうように立っていたのは、金色の長髪の女だった。

 

「お前は、神族の……」

 

 クローディアがその女を見てつぶやいた。

 その通り、刃更を間一髪で守ったのは、長谷川千里だった。

 

「そうか、お前が噂の……確か、結界に閉じ込められていたのでは無かったのか」

 

「私は東城を守るためにこの力を使える。最初結界に閉じ込められた時は、刃更に危険が無かったために力が使えなかったが、今は違う。この子を害する存在は、一欠片も残らないと思うんだな!」

 

 ゾルギアを力強く睨み付ける長谷川。その姿は、かつて十神と呼ばれたアフレイアのものだ。神々しいまでに美しく、気高かった。

 

「………………ここは引くとしよう」

 

 ゾルギアは千里から視線を外し、振り返った。

 

「何のつもりだ」

 

「言ったであろう。引く、と。別にそこの小僧を殺すことに何の意味もありはしない。十神とぶつかるリスクを考えれば、わざわざ小僧を襲おうとは思わない」

 

「このまま、逃がすと思っているのか⁉」

 

「いいのか? ここで私たちを追ってきたら、そこで倒れている男がどうなるか分からないぞ。その男、精神にかかる付加が膨大すぎて、半分崩壊しているぞ」

 

「っ…………東城!」

 

 刃更の安否を確かめるように、千里は彼に駆け寄った。

 

「それにしても、お前は今後の良い余興になりそうだ。ここで手を出してはもったいない」

 

「私に何かをして、無事に済むとは思うな。私をそこの少女達と一緒にしてもらっては困るぞ」

 

「そうか……まぁ、また縁があれば会おうぞ」

 

 辺りの人除けの魔法が消え去った。それと同時に、ゾルギアや他の魔族達、そして、澪たちまでもが姿を消した。

 

 残ったのは、日が傾いた空が見下ろすただの学園の校庭、その中央にいる刃更と千里だけだった。

 

「東城……」

 

 千里はいつのまにか気を失っている刃更を抱きしめた。

 

 

 

 

 こうして、澪たちは刃更の前から姿を消した。

 別れの言葉すら一つも無く。ただ自分たちが、すでに刃更を主人としていないことを示しただけで去って行った。

 

「東城、私は、絶対にお前を裏切らない。最後の最後まで、近くにいてお前を守ってやる」

 

 千里はそうつぶやいた。

 

 どこから始まったのかすでに分からなくなっている澪たちの悲劇は、このようにして幕を閉じた。

 

 最終的には、彼女達自身が判断し、選んだ道だ。

 それは酷く歪み、一人の少年を深く傷つける結果に終わったのだった。

 

 そして、彼に残ったのは長谷川千里だけだった。

 しかし、この後に彼女を襲う様々な悲劇を考えれば、刃更を守るというその言葉が守られることが決してないということが分かった。

 

 

 

 

 

 

 次は、千里の転落が待ち受けている。

 

 

 

 




これでようやく、澪編は一段落です。

ひとまずここまで書き終えられたのは、ひとえに皆様のたくさんのお気に入り登録や感想のおかげです。エロは各所ちりばめたつもりですが、伏線回収のためにやたらとキャラが多く、会話も多くなってもしかしたら読みにくいかも知れません。申し訳ないです。

それでもここまで読んでくれた方々全てに感謝をします。ありがとうございます。

と、それっぽい締めの言葉を並べていますが、澪編のアフターストリーが無いとは言っていないわけで……つまりはまだ澪編の投稿は、自分が満足するまでは続きます。きっとストーリーとか大して無いエロエロ物語だろうと思います。
他のヒロイン達の物語も終わってませんし、まだ回収していない伏線もたくさんあります。こんな話の伏線、どれだけ気にして読んでいる人がいるか知れませんが。

そして、多くの期待の声をいただいた長谷川千里編も次回開始します。この澪編終章直後の時系列の物語です。おわかりかと思いますが、彼女も見事に転落させるつもりです。

明日明後日には無理だとは思いますが、来週中に他のヒロインの話と一緒に投稿できればと思って追います。

それでは、ここまで読んでいただき、重ねてお礼申し上げます。
暇があって、その時間をこの酷い物語を読むのに浪費しようという気になったときが、もしあなたに来ればこれからも読んでいただきたいです。

よろしくお願いします。
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