その事件の裏で、他の少女たちも悲惨な運命に遭遇していた。
これは、ゼストの転落の物語。
Ⅰ 始まった悪夢 ※挿絵
~1月27日~
ゼストが朝起きると、澪がいなくなっていた。
いつまで立っても起きてこない澪を、万理亜が起こしに行ったところ、部屋がもぬけの空になっていることに気づいたのだ。
すぐに皆の中に緊張が走った。お互い打ち合わせすることなく、迅速に万理亜を初めとした柚希、胡桃、そしてゼストの皆で家中を探し回った。増築したとはいえそこまで広くない家のこと。すぐに探し尽くしてしまい、その異常さに拍車をかけた。
以前、澪がゾルギアの罠にかかり捕らえられたことがあった。その時は母親を人質に取られた万理亜の手引きに加え、まだゾルギアに仕えていたゼストの空間移送の魔法により彼女を誘拐した。
――まさか……ゾルギアがまた……いいえ、あの人は刃更様が討ち取ったはず。
澪は誰にも言わずに、どこか一人いなくなるようなことはしない。
その彼女が失踪したとなれば、何かしらの事件に巻き込まれたと想像することは難しくない。仮に彼女が何者かにさらわれたのだとしたら、目的が何かにより事は急を要する。
――澪様の魔力だけが目的なら彼女の身に危険が及ぶ可能性は少ない……だけど、何かしらの怨恨、または、それに準ずる歪んだ思想が理由だった場合……。
そこまで考えてゼストは、背筋が凍るような感覚に思考を停止せざるを得なかった。それ以上考えたら思わず卒倒しそうだった。
彼女は、自分の親の敵であるはずのゾルギア、その配下のゼストを家族としてこの家に受け入れてくれた。そんな彼女に危険が及ぶことは、身を切られるより苦しかった。
――早く澪様を見つけないと……。
外泊している刃更へは柚希がすぐに連絡を取り、二時間もしないうちに帰ってきた。旅行先はそこまで近くはなかったはずだ。そのことからも、彼があらゆる交通機関を無視して自分の脚で駆けつけたことは明白だった。
「澪がいなくなったって、本当なのか?」
青ざめた刃更が扉を開けてリビングに入ってきた。
そんな様子の彼をゼストは思わず抱きしめてやりたい衝動に駆られたが、今は自分自身ですらまともに立てるか不安だった。
「は、はい……刃更様。朝からどこにもいなくて……そ、それで、澪様と主従契約を結んでいる刃更様なら、居場所が分かるのではないかと思いまして……」
慌てた様子の万理亜。いつも飄々としている彼女だが、さすがにこの状況で平常心ではいられないのだろう。彼女は、澪が刃更と出会う前から彼女のそばに居続けた少女だ。不安はきっとゼストの比ではないだろう。
「ば、刃更様……澪様は一体どこに……」
万理亜を制するように、ゼストは彼女の肩に手を置いた。
この中で、澪を一番心配しているのは間違いなく刃更だ。その彼が、主従契約の位置把握能力を使用していないはずがない。
万理亜もすぐにそのことに気づいたようで、沈痛な面持ちで俯いた。
「何か書き置きは無かったのか?」
「なかった。家中くまなく調べたけど、それらしいものは全く」
柚希が答えた。いつものように静かな口調だったが その額には隠しきれない脂汗が浮かんでいる。
「一体……何が起こっているの……?」
誰も分かるはずがないが、思わず口に出してしまったのだろう。頭を抱えた胡桃がそう漏らした。
ふと、ゼストは昨日の夜のことを思い出した。
「っ……そういえば、夜に物音を聞きました。その時は、誰かがトイレに立ったのかと思ったのですが……」
「トイレ……」
ゼストの言葉を聞くと、すぐに刃更は家のトイレへと向かった。
しかし、そこはすでに探した場所だった。全員がトイレに向かったが、当然おかしな点は何もなかった。
「くそっ……」
「……?」
ゼストは首筋にピリリと走るしびれを感じた。
――魔力の残滓……これは、風呂場?
風呂場はトイレのすぐ隣にあった。この二つの場所は胡桃が探した場所だったためゼストは来ていなかったが、ここまで近づいて初めて、かすかに魔法を使用した痕跡を感じ取れた。
風呂場の中に入ると、すぐに鏡が目に入った。
そこには、自分の姿が映っている。褐色の肌に、純白のショートヘア。魔族特有の黒い角ととがった耳。少し前に万理亜に勧められ計ったときは、身長168cm、体重53kg、バスト89(E)、ウエスト52、ヒップ80だった。
何の変哲も無い自分の姿が映るバスルームだった。しかし、その空間はおかしな気配がわずかに残っていた。
「これは……」
どこかで感じたことのある魔力の気配だった。
――そう昔ではない記憶――確かこれは……ゾルギアに仕えていた頃……。
「どうした、ゼスト?」
「はい、それが、この風呂場から……」
――ドクン
「あれ……」
急にゼストは猛烈な眠気に襲われ、その場に倒れ込んでしまった。
「おい! ゼスト! ゼス――――――――」
刃更の叫び声が次第に遠のいていき、ゼストは深い眠りに落ちた。
それはまさに、悪夢の始まりだった。
***
そこは、いつもと変わりないゼスト達が住む東城家だった。
ゼストはいつのまにか玄関先に立っていた。家の中には全く人の気配はない。
「どうして……私……」
全く思考が追いつかなかった。どうして自分は一人で玄関に立っているのだろう。
――私……そもそも何をしていただろう?
直前までの記憶がゼストにはなかった。最後に覚えているのは、夕食を食べた後に、ゼストを含めた女子五人で最近増築された大浴場に入ったところだった。
――記憶が欠如している……記憶操作の魔法?
しかし、考えているだけでは全く結論は出なかった。不気味だったが、家の中を見て回ることにした。
見て回る、といっても内装はゼストのよく知る東城家そのものだった。違うのは、誰一人見当たらないという点。
最後に刃更の部屋に入ってみるも、やはり誰もいない。
「家自体におかしな点はない。なのに……どうしてこうも違和感が拭えないのだろう?」
「そりゃぁおめえ、ここがお前の夢ん中だからだな」
「!」
刃更のベッド、そこに腰掛ける男がいた。
上半身裸で下には真っ黒いボトムを履いていた。病的なまで肌は白いが、耳はとがり、まぶしいほどの金髪を頭に携えていた。
「魔族っ……!」
とっさにゼストは戦闘態勢に入った。
「おっと待てって、そういきり立たなくてもいいだろうよ。ここは夢ん中なんだ。急いだところで現実の時間に影響しない」
「……」
――ここが夢の中?
にわかには信じられないが、ここが東城家とそっくりに作られた別空間であるということには納得だった。具体的にどこがとはいえないが、全体的に少しずつ違っている気がするのだ。
「それだけ記憶が曖昧なものだってことだな」
「っ……思考を読まれた……」
「そりゃ読めるさ。だって俺、あんたの夢を乗っ取ってんだから。夢とはすなわち過去の経験や記憶。夢の操作はイコールで、精神の蹂躙だ」
「厄介な……」
能力の細部は分からないが、つまるところ現在ゼストは、目の前の男が作り出した結界のようなものの中に閉じ込められているということだろう。
「百歩譲ってお前の言うことが本当だとしよう。なら、どうしてお前は私の夢の中にいる?」
「そりゃぁおめえ、クローディアにあんたの夢に入れって言われたからだよ」
「クローディア……だと?」
ゼストはその名前を知っていた。ゾルギアの配下の一人で、彼に異常なまでに心酔していたサキュバスだ。しかし、彼女はゾルギアの琴線には触れなかったようで、いつも遠方に飛ばされ雑務ばかりしていた。
「クローディアが私に恨みを持ってこんなことをしたのか? 他の皆には手を出してはいないだろうな?」
ゼストは右手に魔力を集中させた。すぐにでも目の前の男を、土魔法で生み出した槍で貫けるようにした。
「俺は出してねえよ。計画の全体は俺にも知らされてねえしな。俺が知らされてんのは、彼女はあんたを母体に選んだって事だけだ」
「母体……?」
何のことなのか分からない。あの女は、この男は、一体何が目的なのか。
「だ、か、ら! 俺の目的はあんたを孕ませることだって」
「…………何?」
言葉の理解が一瞬遅れた。その一瞬で、男はいつの間にかゼストの真後ろに立っていた。
「性感帯は、耳らしいな?」
男はゼストの後ろから、そっと彼女の両耳に触れた。
それだけで、ゼストの脳裏にとある記憶が駆け巡った。
それは、彼女が主と決めた刃更に、自分の躰を蹂躙された記憶。
決して一線を越えることはないが、ゼストは主従契約魔法によりあらゆる快楽を刃更にみ込まれた。その過程で、彼女の性感帯が耳であることを彼が発見し、それ以降これでもかと責められ続けたのだ。
耳から首筋に快感が集中し、背骨から神経を巡って全身を貫く感覚。幾度となく刃更に刻まれた感覚。
それが、男がゼストの耳に触れた瞬間、過去に刻まれた快感が忠実な肉体感覚とともに蘇った。
「はあぁぁ♥ あ、はっ、んあぁぁぁああぁ!」
あっという間に頭はホワイトアウトし、視界のあちこちに火花が散った。
プシャッ――――ポタッ、ポタッ……
ゼストの股から水滴がいくつもこぼれ落ち、足下に小さな水たまりを作った。
立ったまま絶頂し、潮を吹いたのだ。
「あっ……はっ……」
――い、一体…………何が?
予期せぬ絶頂に全く頭が回らない。
「今、あんたが過去に感じたことのある感覚を呼び出した。ここじゃぁ、あんたの記憶は俺の思うがままだ。まぁ安心しな。消したり書き換えたりってのは俺の領分じゃねえから、そのやり方ではあんたを洗脳できねえよ」
「はっ……このぉ……!」
停止しかける頭を必死に回転させ、ゼストは振り返った。後ろにいるはずの男に土の槍を食らわそうとしたのだ。
しかし、振り返った瞬間、ゼストは背中に柔らかい感触を受けて倒れ込んでいた。いつのまにか刃更のベッドに仰向けになっていた。
――――え?
今度こそ何が起きたのか理解できない。一瞬前まで立ってたはずだ。それなの――。
「ここは俺が操作する夢。あんたの行動や感覚、そして時間さえも俺の自由なんだよ。ほらよ」
男が指を鳴らした。その途端、ゼストの衣服がショーツを残して消え去った。
「なっ……」
ゼストはとっさに前を隠そうとした。しかし、手足が全く動かなかった。縛られているわけではない。まるで、四肢の筋肉の主導権が自分にないかのようだった。
「み、見るな!」
男にあられもない姿を見られ、顔が沸騰するように上気する。
――刃更様以外に裸を見られるなんて……。
それだけで、彼に対する背信行為をしたような気がした。本来ならそこで、ゼストにかけられた主従契約魔法が発動するはずだった。しかし――
「どうして、呪いが発動しない……?」
「夢ん中だからな。ここであんたがどんな感情を抱いても実際に呪いが発動することはねえ。ま、その感情を抱いたまま目覚めたら発動するだろうが、それは心配いらねえよ」
男は身動きがとれないゼストの腰の上にまたがった。
「や、やめろ! 離れてくれっ……」
「あぁっと、言い忘れてた。俺の名前はクラレンス。世に有名なインキュバスってやつだ」
「インキュ……バス、だと……」
夢魔の種族の一つで、女性型をサキュバス、男性型をインキュバスという。インキュバスは女性の夢に入り込み、その女性の子宮に精液を注いで妊娠させると……。
「まさか、本当に私を……」
「だからそう言ってんだろ? まぁ、下準備は必要だが……それより今は楽しもうぜ? せっかくこんなエロい躰持ってんだから」
クラレンスが己の肉棒をあらわにした。
「っ……やめろ! み、そんなもの――――」
すぐに気づいた。クラレンスのそれは、東城刃更のそれと全く同じサイズ、同じ形だった。
「どう、して……」
「あぁ、あんたの脳内にある男性器のイメージが強すぎるんだな。確かにこれは、俺んじゃねえな。ま、あんたを犯すにはこれで十分か」
そう言ってクラレンスは、ゼストの豊満な双丘を掴むと、自分の肉棒を挟み込んだ。
恐ろしいほどの熱量を持った異物が、胸の間をこすり上げる。
シュッ……シュッ……
「い、いやぁ……私を胸を、そんなことに使わないでくれ……」
「いいじゃねえか、あの小僧のはやっただろう?」
「っ……」
確かにゼストは、俗に言うパイズリを刃更のもので行った経験があった。しかし、その記憶はゼストや刃更との間に共有されるものであって、他の男に知られるのはとてつもなく嫌だった。
シュッ、シュッ、シュッ――――
男の律動が早くなっていく。そのたびに甘い熱が自分の胸に生まれ始めたことに気づいた。それは、男のものを自分の胸を気持ちよくしているという優越感だった。
「そんなはず……」
「その感情も今はあの小僧との記憶だ。ま、すぐに俺ので上書きしてやるがな!」
クラレンスの欲の先から、ヌメヌメとした液体がこぼれだした。それにより、胸との摩擦を和らげていく。
「いや……き、汚い! お願いだ……もう……」
――これ以上はダメだ……私の躰は、刃更様のものなのに……!
思いっきり押しのけたい。それなのに、躰は全く言うことをきかなかった。
「それじゃ、一発目だ」
「っ…………まさか……」
悪寒が走った。視界のすぐ下で近づいたり遠のいたりする亀頭。その先から、ゼストを汚す液体がもうすぐ射出される。
「やああぁぁ! は、離れてくれ! それは……」
「なんだ? 躰が汚れるのが嫌なのか? 仕方ねえな」
渋々といった感じに、クラレンスはゼストの胸から手を離した。
――出すのを、諦めてくれた…………?
そんな安堵もつかの間、彼はゼストの頭を掴み上げると、彼女の口に爆発寸前の肉棒を突き入れた。
「んんん⁉――――――――」
ビュルル、ビュクッ、ビュググッ
「あっ……おご、おえ……ん……」
ドロドロとした液体が、口の中を蹂躙していく。唇を、歯を、舌を、そして、喉を、異臭を放ちながら広がる。
「噛むなよ、あと吐くな」
四肢と同じように、顎にも力が入らなかった。
「んんっ、んん……!」
ビューッ、ビュクン、びゅるるるぅ
まだ射精の勢いは収まることなく、クラレンスはさらに彼女の口にぴったりと腰を密着させた。男の陰毛が鼻に入り、すさまじい嫌悪感が走る。
――く、くるし……い……。
「ん……ごくっ……んん……うっ、ごくっ、んくっ……」
もうゼストには、精液を飲むしか選択肢は残されていなかった。吐き出したいほどの苦味と、喉に引っかかる粘性。それらがゼストの口と食道を犯していった。刃更と同じ味であったが、その時には感じなかった不快感が吐き気とともに襲ってきた。
ボロボロと涙が溢れてきた。刃更以外のそれが入ることは無いと思っていた自分の口内、それがいとも簡単に、目の前の男に蹂躙されてしまった。姿かたちが刃更のものだと言われても、目の前にいるのは刃更ではなくクラレンスなのだ。到底割り切れるものではない。
――どうして、こんなこと……。
五分ほどして射精が終わると、ようやくクラレンスはゼストの口から肉棒を抜いた。
「あっ……こほっ、げほっ……おぇ……」
目をうつろに開き、放心するゼスト。自分の身に起きたことがまだ信じられなかった。
「んじゃ、本命行きますか」
男の言葉はゼストに耳には入っていなかった。だから、彼女にとってそれは、あまりにも唐突だった。
――――ズブブッ、ブチッ……ズブゥ……。
下腹部に痛みが走り、猛烈な異物感が襲った。
「え………………?」
恐る恐る自分の躰を見下ろした。さっきまで口に入っていた肉棒が基部しか見えない。ショーツが横にずらされ、先端が自分の女性器の中へと消えていた。
「う、そ……うそだ……そんな……」
「やべえ、気持ちよすぎる!」
クラレンスは驚愕するゼストを無視し、思うがままに肉棒を打ちつけた。
ドチュッ、ズゥチッ――ブチュッ、ズチュッ
彼が抽送を繰り返す度、膨らんだ欲根が彼女の最奥にぶち当たった。
「あ……はっ、い、痛いっ……くっ、が、ああぁ――やらぁっ!」
――私の処女が……そんな……でも……でもっ……。
この感触が刃更のものだと思えば、まだギリギリのところで耐えられた。いつか迎えることを待ち望む刃更との行為の痛みだと自分を納得させられた。しかも、これはあくまで夢なのだ。こんなこと、現実の躰に影響するはずがない。
――取り乱すな……向こうのペースにこれ以上持って行かれるわけには行かない。
必死に破瓜の痛みをこらえ、唇をかみしめた。何か反応をしてもいけない。
「何やら色々考えてるみたいだが、一つ訂正してもらおうか。今あんたを犯してるちんぽ、すでに俺のだぜ?」
「……な」
見れば、確かに先ほどより明らかに大きさを増していた。体内に入れられているため気づくのが遅れたのだ。
「あの小僧もなかなかの巨根で絶倫だが、インキュバスの俺とはさすがに比較にならねえよ」
「そんな……そんなそんな……」
辛うじて耐えていた精神が、ガラガラと音を立てて崩壊していく。
「あ、あぁ……いや、いやああぁあ! ぬ、抜いてくれぇ!」
「今更抜くかよ! おら、常人じゃ届かねえ場所に入れんぞ!」
クラレンスがゼストの女性器に腰を密着させた。
ボキュッ―――――
「おぐっ……」
肉棒が、普通なら入ることがないゼストの子宮の中に侵入した。まだ何者も侵入を許していなかった狭い子宮は、ぎちぎちに男のものを包み込んだ。
「はっ……あ、が……かはっ……」
――息が、できない……。
「いきなり子宮姦はハードルが高すぎて、快感を感じるどころじゃないか。まぁそのうち馴染むさ。さて、記念すべき初種付けといきますか」
「たっ……! ら、らめらぁ! そ、それらけはぁ!」
ズチュゥッ――
「ほぐぅっ――――」
ゼストの口から下品な叫び声が漏れた。
「あんたの生理周期を早めた。だから、今あんたの胎内には、卵子が出来上がっているころだろうな。そこに俺の元気な精子を泳がせたらどうなる?」
「ら、卵子…………そんな、ダメ、ダメだ! はっ、んん――私の、らん、しは……刃更様のぉ――――」
「今から俺んだ。あんたはこれから、刃更とかいう小僧のベッドの上で、クラレンス様の子を孕むんだ」
ゼストの耳元で男が囁いた。
――そうだ、ここは、刃更様のお部屋――そんなとこで、私は……。
「いやあぁぁあ、そ、そんなことしたら、もう刃更様にお仕えできなくなる! 私の全ては、彼のものなのにぃ……!」
ゼストはすでに、ここが夢の中であることを忘れていた。
彼女にとっては本当に、親愛なる主人の部屋で、別の男の子供を孕ませられようとしているのだ。
「お願いだ! それ以外なら何をしても良い! だから、子供だけは……卵子だけはぁ……」
「主人を裏切って悪い女だなぁ、ゼスト」
「――――――――!」
ドピュッ――――ビュルルッ、ビュググッ、ビューッビューッ、ぶちゅうっ
子宮はすでに肉棒で満たされていた。そこにおびただしい量の精液が注ぎ込まれるとどうなるか。ドクンドクンと精液が吐き出されるのと同時に、ゼストの腹部はじわじわと膨らんでいった。膣いっぱいに竿がはまっているため、結合部から精液が逆流することもできないのだ。
「あ……………はっ………」
精液が卵管を這い回り、できたての卵子に一斉に群がる。到底ゼストの卵子はそれらを退けられるはずもなく、あえなくその一つを受け入れた。
――プチ
本来分かるはずのない受精の音が、ゼストには聞こえた気がした。
「あぁ……刃更様の……」
――申し訳ありません、刃更様……私には、あなたのお近くにお仕えする資格が、もうありません……。
「最――――高!」
クラレンスは恍惚の表情で、ゼストの中に精を吐き続けた。
それは、彼女が意識を手放してもずっと続いていた。
「悪い夢を見たな」
***
ゼストは刃更の部屋で目覚めた。目の前には、刃更を初めとした柚希たちがのぞき込んでいた。
「大丈夫か、ゼスト⁉ 急に倒れたんだぞ!」
「ゼスト、具合が悪いの?」
「え…………?」
記憶をたどってみる。
――確か、今朝になって澪様がいなくなっていることに気づいて……刃更様が帰ってきて……それから……。
ゼストは、自分が昏倒した瞬間を思い出せなかった。何か考え事をしていた気がした。
それから、何か嫌な夢を見ていた気がする。何だっただろうか。
「何も……分かりません。躰に異変もありませんし……」
「そ、そうか……特に変わったことはないんだな? 良かった」
刃更が何気なく、ゼストの頭をなでた。
「っ――――!」
ゼストはその行為に、思わず泣き出しそうだった。どうしてこんなにも、懐かしい思いをするのか分からなかった。
「あ……」
シャァァァァ…………
「え?」
「ゼ、ゼスト?」
さすがの柚希も驚いた様子だった。
ゼストは失禁していた。黄色いシミが刃更の白いベッドシーツに広がっていく。
「も、申し訳ございません! 私、なんてことをっ……はうぅ♥」
その瞬間、刃更への罪悪感から主従契約魔法の呪いが発動してしまう。首元に契約印が浮かび上がった。
「っ……気にするな。すぐ楽にしてやるから」
刃更は優しくゼストに囁いた。
その後は柚希たち嫌な顔一つせずに後片付けをしてくれた。その間にゼストは刃更に慰めてもらった。もちろん、一線を越えるものではない。
「はあぁぁっ♥ ば、刃更様ぁ!」
彼に胸を揉まれ、部屋にゼストの嬌声が響く。
――どうして、私はおしっこを漏らしてしまったのだろう……。
刃更にしてもらっている間も、ゼストはその考えが忘れられなかった。
彼に頭を撫でてもらったとき感じた感情は、どう考えても安堵だった。
――私は、なににおびえていたのだろう……。
「きっと、嫌な夢でも見たんだろう。大丈夫だ。澪は俺が絶対に探し出してみせる」
ゼストを安心させるため、刃更はそう言った。
そうだ。きっとそうなのだろう。
悪い夢を見たのだ。
しかし、ゼストの悪夢のような現実は、これからも続くことになる。