しかし、彼女はすでに壊れていて、最後の一線を踏み外す。
これは、ゼストの転落の物語。
「はっ――――」
意識を失っていたのはほんの一瞬だった。
そして、一気に自分の状況を思い出す。
ゼストは刃更たちと武器盗難の犯人グループのアジトである廃工場を襲撃していたのだ。その作戦の中で、男達を追い詰めたところでゼストは意識を失ったのだ。
彼女はまだ土壁からの落下の最中だった。眼前には地面が迫っている。そして、男たちの下卑た笑い顔も見えた。
「このぉ!」
念のために準備していた魔方陣を展開させた。すると、ゼストの真下の地面が隆起し始めた。
どよめく男達。それもそのはず。
男達の目の前には、巨大なゴーレムが出現していた。ゼストのそのゴーレムの肩に巧く着地した。
ゼストの指示により、ゴーレムは男達を次々となぎ倒していった。
――落ち着いて対処すれば、まだ捕まえられる!
すかさずゼストは、すぐ横の土壁の一部に穴を開けた。その先に、逃げ出した一人の男の後ろ姿が見えた。
「殺しはしない。しっかり話を聞かせてもらう」
魔法で作り出した土の槍を、男めがけて投擲した。槍はまっすぐに飛翔し、男の右足を貫いた。
「うあああぁ!」
たまらず転倒する男。あれではもう走るどころか歩くこともままならないだろう。
視線を目の前に男達に戻すと、ゴーレムが彼ら全員をのしてしまっていた。
「強引になってしまったが、これで作戦終了ですね」
土壁を元に戻すと、刃更とクローディアが立っていた。
「よくやった、ゼスト」
刃更が力強く頷いた。
ゼストはなぜか、その顔を正面から見ることができなかった。
――何か……忘れている……何か、大事なことを……。
男達を尋問したところ、どうやら武器や魔晶石の盗難とは関係ないようだった。しかし、別件で武装蜂起をもくろんでいたことには違いないため、結果としては戦争の火種を消したことになった。
しかしもちろん、澪の手がかりは全くもって掴めていない。
「俺は一度、現世に戻ろうと思う」
その日の夜、刃更がそう切り出した。
「毎日柚希たちと連絡は取っているが、それでも向こうの状況を確認したい。それに、色々と向こうでやっておかないといけないこともある」
澪の休学届はすでに出しているとのことだった。刃更も休学しようと考えていたようだが、それは柚希に止められたのだ。澪を残して日常を送ることはしたくないだろうが、できるだけその日常を自分たちで壊すべきでないというのが、柚希の考えだったのだ。
「刃更さん、確かこの時期、期末テストでしたね……」
万理亜が納得したように頷いた。
「まぁ、それもある。全然勉強なんてしてないし、してる場合じゃないが、受けないとだめだって柚希に強く言われちまってな」
「それでは刃更様。万理亜とゼストをこちらに残すというのはどうでしょう?」
話を聞いていたルキアが発言をした。
「こちらでも澪様の捜索は続けます。そのために、二人の力がとても心強い。そして、人手も多い方が良いでしょう」
「でも……」
刃更が渋る。クローディアはルキアに賛同した。
「澪様のことをよく知るお二人がいらっしゃれば、私たちが気づけない手がかりにも気づけるかもしれません。できることなら、万理亜様とゼスト様には魔界にいていただいた方が捜査がはかどるかと存じます。それに、ここはラムサス様の治めるウィルダートでございます。滅多なことはないかと思います」
「っ……ルキアさんとクローディアさんがそう言うなら、確かにそうなんでしょう……でも」
「私は……」
ゼストは正直、刃更についていきたかった。なぜか、彼から離れてはいけない気がしたのだ。しかし――
「私たちなら大丈夫ですよ、ね、ゼストさん?」
万理亜がゼストの手を取った。
「何かあれは必ず刃更さんにご連絡します。もちろん、無茶はしないですし」
万理亜の口調は作戦前と違って明るいものになっていた。空元気のようにも見えるが、無理をしている風にも見えない。何か吹っ切れたような感じだ。
――作戦中、何かあったのでしょうか?
しかし少なくとも、この空気でゼストは彼に付いていきたいとは言えなくなっていた。だから、やむを得なく――
「私も万理亜様と同意見でございます。私たちは私たちで、魔界で澪様の捜索を続けたいです」
「そうか……二人がそう言うならそうしよう」
こうして刃更は、ゼストと万理亜を魔界に残して柚希たちの元に戻ることになった。
***
ゼストはその晩、夢を見た。
何もない暗闇の中、自分がただ一人だっている夢だ。
そこで彼女は、ひたすら誰かを待っている。
――誰を……。
待ち焦がれた。早く来てほしい。そして――
――そして……何なのだろう……。
分からないまま夢は続いた。
永遠にも思える夢だった。
「………………ほしい……」
思わず出た自分の声は消え入るようだった。
その夢を、ゼストは一週間も見続けた。
~3月11日~
まだ夜が明けない頃、ゼストは目を覚ました。
そこは何の変哲も無い、ウィルダート城で彼女があてがわれた部屋だ。もちろんゼスト以外誰もいない。
――目覚めてしまった……トイレかな……?
確かに尿意はあったがまだ我慢できないほどではなかったため、それで目覚めたとするには違和感があった。しかし、何か物音がしたというわけでもない。
グチュッ……
「っ――――!」
ゼストは、自分の淫裂に指を入れていた。すでにそこは蜜でトロトロになっていて、ベッドシーツを濡らしていた。
――今日も寝ぼけてこんなことを……なんてはしたないっ……。
ゼストは刃更がいなくなってから毎晩、気づけば自慰行為にふけっていた。それは決まって寝ているときで、下腹部の違和感に気づいて目が覚める。
急いで指を引き抜こうとした。しかし、手は勝手に陰部をいじり続ける。すでに歯止めが利かないほどに、躰はほてっていた。
刃更がいないだけでこれほど切なくなるのだろうか。ゼストは疑問に思った。もちろん、彼との行為を思い浮かべて眠れない夜を過ごしたのは数知れない。しかし、こうも無意識に自慰行為に没頭したことはなかった。しかも、寝ぼけてだ。
「んあ♥ ……ん、くっ……はっ♥」
考えている間にも指の動きは激しさを増し、どんどん己を高ぶらせていった。
「あぁ……ふっ、くふぅ♥ んあ♥」
――こうなったら、速く達してしまった方がいい……今日も澪様の捜索をしなければならないのに……。
そして、限界は予想より早く訪れた。
ビクビクビク――――
「んんん~~~~~♥」
全身に電撃が走り、腰が何度も跳ねた。
「ふぅっ……ん、か……はぁ……♥」
決して意識して思い浮かべたわけではない。しかし、ごく自然に脳裏に浮かび、ごく自然に口に出た。
「んん……また……おちんちんがほしいな……♥」
――――⁉
言ってしまってから気づいた。今の自分の発言は絶対におかしい。ゼストは処女だ。誰の男の味も知らない。しかし、彼女は確かにまたと言った。
――何を言って……。
ドクン
その瞬間――――ゼストは全てを思い出した。
この一ヶ月間、自分が見てきた『悪夢』の全て。それらがフラッシュバックした。
「なっ………………」
夢とはいえ、処女を奪われて妊娠させられたこと。
監禁されて散々犯され続けたこと。
――ドクッ
途端に、ゼストの中に刃更に対する背徳感が生まれた。しかし、クラレンスにより感情と行動が連結されている彼女には、主従契約魔法は発動しない。
シャアァァ…………
尿道が緩んで尿が漏れ始めた。
「はぁ…………んんっ!」
しかし、ゼストの指は止まらない。愛液と尿が指の律動で、あちこりに飛び散った。
記憶が全て思い出されて衝撃を受け、失禁により頭が真っ白になるも、ゼストは自慰が止められなかった。一回達しただけでは、その疼きは解消されないのだ。
「あっ、あぁ……ほしい……あれが……」
実質ゼストは毎晩犯されていた。さらに、クラレンスの夢の時間操作により、体感としては本当に一ヶ月間、朝から晩までセックスしていたようなものだった。
その間に、ゼストはクラレンスにより躰の芯に快楽を刻まれていた。
だからこそ、たった一週間犯されないだけで、ゼストの躰は我慢の限界だった。
そして――――ついに最後の言葉を言ってしまう。
「クラレンスの…………あれが……、おちんちんが、ほしいんだ。あれがないと……満足できない躰になってしまっているんだ……」
「望んでしまったな」
その瞬間、ゼストの躰がうっすらと光り始めた。
「な、なにが起きて……」
光は次第に大きくなり、ゼストの躰から離れていった。部屋の中央に移動した光は大きな塊を作り、そして人の形を作り始めた。
輪郭がはっきりと浮かび上がり、ついに光の中から一人の男が出現した。
「久しぶりだな、ゼスト」
それは全裸姿のクラレンスだった。今まで夢でしか姿を現さなかった彼が、とうとう現実でゼストの前に現れたのだ。
「お前……」
「俺は今まで、あんたの夢の中でしか動けなかった。迂闊に顕現すると、実体が消えちまうからな」
クラレンスはベッドに座るゼストに近づいた。
「存在としては俺はあんたの夢そのものだった。だが、インキュバスである俺はあんたの生み出したエロい衝動を吸収して、ほとんどの力を取り戻せた。あとは、あんたが望むだけで実体を取り戻せた」
「私が……望む……そんなこと、あるはず……」
「まだ、言い訳すんのか?」
クラレンスがゼストの耳に手を触れた。彼女は、たったそれだけで生殺与奪を握られたような気になった。それほど、自分の性感帯の威力を知っているのだ。
「ゼスト、なぁゼスト。あんたのクリトリスや乳首に付いてるピアス、それは俺が付けさせたよな? そして、子宮の入れ墨も俺が入れさせたよな? 俺はあんたの耳以外の弱点を知り尽くしている。膣のどこを擦れば一番よがるのかも、胸が一番感じる力加減も、何もかも……」
ジュクッ……
ゼストの陰部は、待ちきれないとばかりにぐしょぐしょになっていた。
――ダメだ……もう逃げられない……私の躰は、本当に――――
ゼストはベッドの上で部屋着を脱ぎ捨てて一糸まとわぬ姿になると、、足をM字に広げて見せた。そして、クリトリスの下の淫裂に二本の指をあてがい、くぱっと押し広げた。
「お願いだ……クラレンス。お前のおちんちん……私に突っ込んでくれ。でないと私、おかしくなってしまいそうなんだ。私の躰はもう、お前のものになってしまっているんだ……」
「よく言った、ゼスト」
クラレンスはすでにそそりたった肉棒を彼女の陰部に触れさせた。
「あんたの処女、本当に奪っちまうぜ」
「………………頼む」
ズブブゥッ――――――ブチブチッ
「~~~~~~!」
処女膜が強引に突き破られ、あっという間に子宮口にキスをした。
「あ、あぁ♥ ……はっ、か……ひぎっ……」
結合部から破瓜の鮮血が一筋流れ落ちた。夢ではない、現実の処女喪失だ。
――申し訳ありません、刃更様……あなたに捧げる処女を、失ってしまいました……しかし、もう私は……。
「あぁ……太い……クラレンスのおちんちんが……私の中に……」
「夢の中よりずっと名器じゃないか……ゼスト」
クラレンスが抽送を開始した。処女の膣内は到底クラレンスの肉棒を全て飲み込めるほどの広さを持っておらず、肉壺を無理矢理押し広げて突き進んだ。
「あがっ……こ、擦られ、る……♥ んんんんっ♥」
的確にゼストの弱点を責める男の律動に、彼女は何度も絶頂していた。
「ひっ、あぁ、ん、はっ、ふぃぁ♥ んあぁ♥」
――気持ちよすぎる……これはっ……。
「いいのか? そんなに声を上げて。もしかしたら、城内に響いちまってるかもしれねえぞ?」
「あぁっ、そ、それは……ダメだ、でも、ひぐっ、はぁ♥ 我慢、できにゃい♥」
「そうか、じゃぁとことん、聞いてもらおうじゃねえか」
クラレンスはゼストとつながったまま彼女の躰を抱き上げた。そして、窓へと移動すると、窓を開け放った。
「っ…………これは」
窓からは城の中庭が一望できた。中庭はぐるりと一周、城の窓が並んでいる。夜も徐々に明けてきていて朝早くから活動を開始しているためか、点々と明かりが付いていた。
クラレンスはゼストの脚を抱え、躰の正面を窓の外へと向けさせた。もし誰かが気づけば、間違いなく二人の結合部が丸見えになる。
「この体勢は、はっ、んくっ、見られて、しまう♥」
「こういうの好きだろ? 日常的にパンツ履かないで町を歩き回って、股間を濡らしてんだから」
「そ、そりぇは……クラレンスが命令したから――――あぐうぅ♥」
ゼストの下品な声が中庭中に響き渡った。
――ほ、本当に……誰かに見られてしまう……!
ゾクゾク――――
背筋に甘い感覚が走った。
「どうした? 急に中が締まったぞ?」
「ひ……はっ、だって……興奮してしまって……♥」
ゼストはたかが外れてしまい、すでに自分の感情に正直になってしまっていた。
「それじゃ、中出しされながらイッて啼き叫べ」
「は―――――――」
何度も経験したクラレンスの限界のサイン――――急激に肉棒が熱を帯び始めて膨らんだのだ。
――来る……来る……!
肉棒がゼストの子宮口を割り開き、その奥へと侵入したその時だった。
「ゼスト、あんたは俺の女だ」
「っ――――――――!」
ビュルルッ、ビュググッ、ビュクン、ドクドクッ、ビューッビューッ――――ブチュッ
「あああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ♥」
欲望の奔流がゼストの体内で暴れ回った。そしてゼストも、今までで一番激しく乱れ、絶頂した。
ゼストの叫び声は中庭どころか、城中に響き渡っていた。
さすがに不審に思ったのか、ポツポツと窓に明かりが灯っていった。その一つの窓が開かれた瞬間、クラレンスは窓を閉めてゼストごとベッドに倒れ込んだ。
「あ……かはっ♥ あぁ……はん♥ い……」
ゼストは恍惚の表情で絶頂の余韻に浸っていた。
その彼女の唇に、クラレンスが強引にキスをして、舌を差し込んだ。
唾液が泡立つ淫靡が水音が鳴る。
その時、部屋の扉が開かれた。
「っ…………」
一気にゼストは現実に引き戻された。不審に思った誰かが入ってきたのだろうか。
「よう」
クラレンスはゼストを押し倒したまま、珍客に挨拶をした。それは、昨日の一緒に澪の捜索をしていたクローディアだった。
「どうやら、母体は完成したようだね、クラレンス」
「何だ? これからだって言うのに邪魔しに来たのか? 俺とお前の契約じゃ、あとは俺の好きにしていいんだろ?」
不機嫌そうにクラレンスは彼女に言った。
「別に邪魔をしようって訳じゃない。無事に完全体を取り戻せたあんたと敵対しようってほど、私は暇じゃないしね。睾丸も自分のものになったじゃないか、良かったね」
「…………」
クラレンスの睾丸はすでに黒くなく、彼自身の肌と同じ色をしていた。以前と形も違っている。
ジャラッ……
クローディアの手には鎖が握られていた。その鎖は彼女の後ろへと続き、廊下で四つん這いになっている女の首とつながっていた。
「っ…………ルキア、様……」
ゼストは驚愕した。クローディアの後ろにいた女は、メイド服姿のルキアだったのだ。
「それ、あんたのペットか?」
クラレンスが大して興味なさそうに言った。
「ん? まぁ、そんなところさ」
クローディアはルキアの腹を軽く蹴り上げた。
「うっ……お、お止めください、クローディア様。お腹の中には…………」
消え入るような声だった。
「分かってるさ、全く……そんなに大事かねぇ。まぁいい……クラレンス、今日はあんたに、現状報告だけをしにきたのさ」
「へぇ? それじゃ、計画は順調って事か?」
「あぁ、成瀬澪に続いて万理亜と野中胡桃の運命も決定した。あとは一人……野中柚希だけだ」
――え……今、何と……?
「向こうの世界で厄介だって言ってたやついただろう? 神族の女だ。そっちはどうなったんだ?」
「あれは今の私たちで手に負える存在ではない。だから今しばらくはおとなしくしてもらっている」
「そうかいそうかい、俺はゼストにしか興味無いんで、そっちはそっちでやってくれ」
クラレンスはゼストの胸を揉み始めた。
「あぁっ! ま、待ってくれ……皆に一体、何を――――んひぃぃぃ♥」
クラレンスの責めでゼストは胸だけで絶頂してしまった。それにより、頭の真っ白になる。
「ま、殺さない程度にやってくれさね。母体が全ての要なんだから」
そう言ってクローディアは、部屋の扉を閉めようとした。
「はぅ…………あぁ♥ ま、待って…………んんっ」
ゼストの言葉も無情に遮られ、扉はゆっくりと閉められた。
もう彼女たちの転落は、止まらない。