彼女の格好は、誰もが目を向けるようなおかしなもので……。
これは、ゼストの転落の物語。
~3月18日~
ゼストはウィルダートの街、その繁華街に立っていた。通りには様々な街から観光に来た人々が往来し、道の一番向こう側にはウィルダート城が悠然と存在している。
その大通りの真ん中に、ゼストはメイド服姿で立っていた。その服は、今までとかなりデザインが違っていた。腕の袖は短く、胸元はかなり大きく開いている。少しでも布を引っ張れば双丘がこぼれてしまいそうだ。腹部の裾もサイズが合わないかのように短く、小さなへそが見えてしまっている。スカート丈も尻の肉が少し見えるくらい短い。
その露出の多い扇情的な格好は、かなり悪目立ちをしていた。通る男達は皆ゼストに目を奪われ、女は驚きと侮蔑の瞳を向けた。
「はっ…………はっ…………」
ゼストの息はかなり荒い。顔も上気し、目も少し潤んでいる。
メイド服の胸の部分の生地は薄い作りになっていた。その所為で、双丘の先端がぷっくりと膨らんでいるのがひと目で分かってしまう。さらに乳首にもピアスを付けているため、その盛り上がりも顕著だ。当然のごとく、ブラジャーは付けていない。
「く、クラレンス……も、もういいか? これ以上は……」
『ダメだ。もう少しそこで立ってろ。そんでこの後は少なくとも繁華街を三周は歩くんだ』
頭の中にクラレンスの声が響く。一体どこに居るのかは分からない。
「ほ、本当に……ここは夢の中なんだよな?」
『だから何度も言っているだろう? もし現実でこんなことをしてたら、東城刃更にすぐにでも知られちまうぜ? 別に俺は知られても良いんだが、お前がどうしても嫌だって言うからな』
「そ、それは当然だろう……わ、私の主なのだから……」
『今の主は俺だけどな』
「っ…………」
ゼストはそれを否定できなかった。確かに自分を救ってくれて、そして心と躰を通わせたのは東城刃更だ。そして、彼に忠誠を誓ったのも間違いない。しかし、女としての悦びを彼よりもクラレンスに刻み込まれてしまったのだ。感情では刃更が主だと考えているが、躰はもう完全にクラレンスに堕ちてしまっている。
『そろそろ、歩けよ。言われたとおりのやり方でな』
「…………はい」
どうしてクラレンスがこんなことをさせるのかゼストには分からなかった。自分が恥ずかしがっている姿を見て楽しいというのだろうか。
ジュクッ…………
少なくともゼストに興奮を感じさせるには効果絶大だった。彼女の陰部はすでにトロトロに濡れている。
――あぁ……こんなに多くの人に見られて……夢だと分かってても、躰が火照って……。
ゼストは、スカートの前の裾を両手の指でつまむと、恐る恐る持ち上げた。
その様子を見ていた通行人の中にどよめきが走る。そもそもおかしな格好をしている女がスカートを持ち上げだし、そして下着すらも身につけていない、しかもクリトリスに二つもピアスを付けているのだから、それは当然の反応だった。
――リアルな反応……本当に現実にいるみたい……確かにこれが夢でなければ、私は一生ウィルダートを歩けないな……。
――――ぴちょ
淫裂から密液がしたたり地面に落ちた。
「あぁ…………はっ……恥ずか、しい……」
顔が真っ赤になる。何とか恥ずかしさをこらえ、ゼストは歩き出した。それでも蜜はしたたり続け、ゼストが歩いた後には点々とシミを作った。
『そこの路地に入れ』
「え…………」
ぞわりとした。その路地をゼストは知っていた。以前刃更たちとカフェに来た際、ゼストは彼に迷惑を掛けないように一人路地へと入ったのだ。その時、まるでゴロツキのような出で立ちの市街地担当の警備兵四人に襲われかけた。その場所が、今クラレンスが入るように言った路地だった。
――彼は私の記憶を全て読み取っている。きっとこれもわざと……。
ゼストは逡巡のすえ、その路地へと足を踏み入れた。
『しばらくそこにいろ』
よく分からない命令が聞こえた。しかし、ゼストはそれに素直に従うしかない。
二十分ほどたった頃、路地に入ってくる人影があった。全員同じ制服を着ていて、妙に人数が多い。七人はいた。
「あれ……お前……もしかしてゾルギアのとこの……」
「っ…………!」
それは、ゼストと因縁のある警備兵たちだった。
――またあのときの記憶を使ったのか……前は二人だけだったが、今度は知らない顔もいる。
「痴女がいるってんで仲間呼んで飛んできたんだが、まさかお前とはな」
「何、お前たちこの女知ってんの?」「マジかよ」「てかゾルギアってあの?」「あいつの元で腰振ってたメスだよ、噂になってたろ?」
口々に喋り合う男達。全員がゼストの躰を舐め回すように見ている。
「こんな格好でうろついてるってことは、男あさりでもしようってのか?」
リーダー格の一人が一歩前に出た。
「そんなわけ……」
『ゼスト、今から俺の言う通りの言葉を言え』
「っ――――」
頭の中にクラレンスの声が響く。それは信じられないような内容だった。
――恥ずかしすぎる……でも……。
どうせここは夢の中の世界だという思考がゼストの中にあった。その考えが、彼女を思い切らせた。
「そうだ……私はセックス大好きな淫乱なメス犬なんだ。誰でも良いから相手がほしくて、こんな格好をして街を歩いてたんだ」
ゼストはメイド服のミニスカートのホックを外し、ストンと足下に落とし、腹部の裾を持ち上げた。
「!」
下着を着けず、クリトリスに二つのピアスを付けているのがあらわになる。それに加え、下腹部には子宮をかたどった入れ墨が入れてあるのも丸わかりだ。
「見てくれ……こんなにぐしょぐしょになってる」
自分で淫裂に指を入れ、くちゅくちゅと蜜の音を立ててみせる。ポタリポタリと滴ってもいる。
「っ…………やべぇな。前よりビッチになってんじゃねえか。今日はあのいけ好かない王子様はいないのか?」
「っ…………刃更様は……」
必死に考えないようにしていた彼のことが、脳裏をよぎる。
ジョロロロロ…………
ゼストは失禁していた。
――お、おかしい……夢の中まで……主従契約魔法の書き換えが起きてる……?
その感覚は、もう何度も経験したそれだった。
刃更に対する罪悪感から生じる催淫の呪い、それを生じさせないようにクラレンスに掛けられた記憶操作による失禁だ。
「おい……こいつ漏らしてんぞ!」「うれションってやつじゃね?」
どよめく男達。しかし、それはすぐに歓喜の声に変わる。
「俺が一番乗りだ!」
リーダー格の男がゼストに襲いかかった。彼女の腰を抱いて壁に押しつけた後、正面から肉棒で貫いた。
ズチュッ――――
男の肉棒はいとも簡単に入った。
「はぎぃ――――」
「うおぉぉ、お偉いさんたちとやりまっくってるだろうからユルユルまんこかと思ってたけど、すげぇ締め付けだぜ!」
男はゼストの髪を掴み上げた。
「前はあの男に散々な目に合わされたからな、お前にはその分償ってもらわねえとな」
以前の憤りを全てぶつけるような強引な肉棒の抽送が開始された。
「あ、んぃ、ふぁ、ぐっ、ひぃ、あぁん、はっ……」
すぐに快感が生じ始める。膣壁に肉棒のカリ部分がこすりつけられる。
「こっちにも回してくださいよ」
別の男がゼストを引き剥がす。それによりペニスが抜ける。
「あっ…………ん…………」
ゼストは思わず残念そうな声を出してしまった。
「本当に淫乱だな。ほら銜えろ」
地面に座らせると、その男は局部をあらわにした。
――汗とこびりついた精液の臭い……クラレンスのとも違う……。
ゼストは一気に肉棒を口に含んだ。舌でペニス全体に唾液を塗りたくり、空気を混ぜながら唇で締めつけ、顔を前後させる。泡立たせて音を鳴らせることも忘れない。全てクラレンスに仕込まれた性技だ。
「すげぇうまいな、こいつのフェラ」「この人数だ。もっと相手しろよ」「こっちも出来んだろ」
別の男達が次々と欲根を取り出すと、ゼストの顔の前につきだした。
「さすがに人が多いな……」「順番どうする?」「ここは先輩に譲れよ」
「あ……こんなに……♥」
ゼストは夢の中で分身した十人のクラレンスに犯される日々を過ごしていた。そのため、七人を一度に相手にすることは彼女には造作もなかった。
「お前……良かったら下になってくれ。それとそっちの人、左側に立ってくれないか。そっちは――――」
メイド服の胸元を引き下げて胸を出しながら、次々と男達に言葉を掛けていくゼスト。妙にテキパキと指示をする彼女に、男達は戸惑いながらそれに従っていく。
「ふあぁ…………♥」
その結果、ゼストは下で寝そべる男に貫かれながら腰を上下させ、正面に立たせた男の肉棒を胸を挟ませた。左右には二人ずつ男を配置させ、全てをフェラチオと手コキで裁いていく。
「最後の方、後ろから私の脇におちんちんを差し込んでくれないか。大丈夫だ、脇の楽しませ方も心得ている」
「お……おぉ」
左脇に差し込まれた肉棒を、ゼストはほどよい力加減で挟み込みしごいていく。脇を締めたまま肘から上を小刻みに動かし、別の肉棒を奉仕する。口の方でも一本を銜えて高ぶらせ、飽きさせないようにすかさず別の肉棒に銜え変える。
「じゅぷぅっ……ふぷ、んん~♥ はふっ……」
腰の律動にも緩急を付けて、決してどの男も飽きさせない。
「やば……こいつどんだけテク持ってんだよ」「うおぉ、もう出そう」「七人相手にこれはすごすぎだろ……」
――あぁ……私の躰で皆が悦んでいる…………でも……。
全身で快楽を受け取るゼスト。そして、膣の中で暴れ回る肉棒も、確かに彼女に快感を与えてくれた。しかし、どうしてもクラレンスのものと比べてしまう。男のそれはクラレンスよりも二回りほど小さかった。
――男によってこんなに違うのだな……。
前の夢でゼストを犯した二人のものの大きさを確かめてみる。
――あれ……こんなに小さかったか? なんか前と大きさが違う……まぁ、いいか。
男達の欲根が一斉に限界を迎えるのが分かった。
「はぁっ、んぐ、じゅぷぷ……ん♥ んぁ、皆……一緒にイカせてやるっ――――」
男達も歓喜の雄叫びを上げていく。
ビュルルルルッ、ビューッ、ビュググッ
七人が同時に精を吐き出した。大量の白濁液がゼストの全身を汚していく。純白の髪を、褐色の顔を、胸を、両手を、脇を、そして膣内を。ドロドロと粘着質なミルクは、むせかえるような臭い放っている。
――すごい……こんなに沢山……。
ビクビクビク――――
たまらずゼストは絶頂を迎えた。肩をふるわせ、下腹部がきゅんと甘い疼きを覚える。
「エロすぎだろこのメス」「そうだ、全員でこのメス、誰が孕ませるか勝負しね?」「それいいな」「――――」
口々に兵士たちが好き勝手に言った。
「あ……ええっと…………」
思わずゼストは言葉に詰まった。その間にも彼らはどの順番でゼストと本番をするか話し合っていく。
――夢の世界で私は妊娠していることになっている……いくら彼らが私を犯しても……私がこれ以上孕むことはない……。
そこに妙な申し訳なさがあった。その思考がすでに狂っていることにゼスト自身は気づかない。
「そこまでだ」
パンパン、と手を叩きながら、路地裏に入ってくる男がいた。それはクラレンスだった。
「え…………どうして……」
「あぁ? なんだお前、こいつの知り合いか?」
リーダー格の男が怪訝な顔をした。
「それともお前も参加したいってとこか?」
「いいや、見てるのは面白いが、自分がやるならやっぱ乱交じゃない方が好みだな」
「へぇ、それじゃ何の用? 見たところ、兵士じゃなさそうだが」
「俺は――――」
クラレンスは俊敏な動きで男達に近づくと、瞬く間に全員を見えない力で吹き飛ばした。
「「ぐああぁぁぁ!」」
ひっくり返る男たち。呆然としているゼストを立たせ、クラレンスは後ろから羽交い締めにした。
「く、クラレンス……何を……?」
「いつっ……な、何のつもりだ! 独り占めするってのか」「調子乗ってんじゃねえぞ」「妙な魔法使いやがって……覚悟は出来てんだろうな!」
リーダー格の男が立ち上がろうとした。
「動くな」
パシュッ――――
その男の首が、支えを失ったかのようにゴロンと地面に転がった。遅れておびただしい量の鮮血が吹き出る。
「え…………」
何が起こったのか分からない兵士たち。
――すごい洗練された風魔法……。
「言っただろう、動くな」
本能的な恐怖を感じたのか、兵士たちは無言で何度も頷いた。
空気が静まる。
「お前……何をしている……ここはお前の夢の中なのだろう……? わざわざこんなこと……」
「ははっ、ゼスト。悪いがそれは嘘だ」
「…………なに?」
――嘘、嘘とはどういうことだ?
そもそも話しについて行けていない男達を無視して、困惑するゼストにクラレンスは言い放つ。まるで、引導を渡すかのように。
「今居るのは夢じゃない。ここは現実のウィルダートの街で、ついさっきまでお前は、本当に街を歩いていたんだ。そして、本当にこの男達に犯されてたんだ」
「っ…………そんな……そんな……」
「きっとお前の痴態は、城の者にあっという間に知れ渡るだろうな」
「そ、そんなことになったら……刃更様にも……」
クラレンスはゼストの耳元に口を近づけた。
「二つ良いことを教えてやる。一つ目、例えどんなにお前が痴態をさらしても、もうあの少年には絶対に情報は届かない。向こうの世界に居るからってだけじゃねえ。理由は勝手に考えな」
――絶対に……届かない……どういうことだ?
「そして二つ目――――」
クラレンスはゼストの服の裾をまくって腹部をさらして見せた。そこには子宮型の入れ墨がある。
「ここ……膨らんでんだろ」
もう囁くような声ではなく、普通の話し声の音量になった。目の前の男達にも聞こえている。
「…………?」
ゼストは自分の下腹部を見下ろした。確かに彼女のお腹は少し膨らんでいた。しかし、毎日自分の躰を見ているからこそ気づけるような些細な膨らみだった。
「あぁ…………私は、夢の中で……お前に、は、孕まされた……だから、こうしてお腹が膨らんで……」
「だが、ここは夢じゃない」
「っ…………!」
「夢の中の身体状態は、現実でも引き継がれてんだよ。俺が実体化したあの日から」
思考が巧く回らない。まるで、これ以上考えれば、すでに引き返せないことを自覚してしまうことを分かっているかのように。
「お前は夢だけじゃなく、現実でもとっくに妊娠してんだ。時期は夢ん中から引き継がれてる。孕んだのは俺が夢の中でお前の処女を奪ったあの日」
ゼストにとってかなり覚えている日だった。あれは、ちょうど澪が失踪した夜が明けた日のことだ。
「せいぜい、妊娠三ヶ月ってとこだな」
「そんな……」
「おい、お前ら!」
クラレンスは今度、恐怖で縮み上がる兵士たちに叫んだ。
「このゼストってメスは、レイプされたその日に孕んだ。そして、街でこんな格好をして歩き回るほど淫乱なメスに成り下がった。このことを城中の人間に触れ回ってもいいぜ!」
「く、クラレンスっ――――」
「さぁ、そこで転がってる男の後を追いたくなかったら、さっさと失せろ」
「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!」
スイッチが入ったように、兵士たちは路地裏から逃げ出していった。残ったのは物言わぬ兵士の惨殺死体と、二人の男女だけだった。
***
名目上、ゼストはウィルダート城では賓客という扱いになっている。それは、彼女が元魔王の娘の澪の仲間であり、ルキアの招待で来ているという理由があるからだ。
しかし、城の人間のゼストを見る目は一変してしまった。
その日の夕方、ゼストが精液にまみれ、露出の多いメイド服のまま城に戻ると、まるで汚物でも見るかのような視線が彼女に注がれた。
すれ違う人全てから睨まれ、または無視された。ゼストに向けられる嫌悪と軽蔑の感情が、むき出しの刃のごとく彼女の心を傷つけた。
――もう……伝わってしまったのか……。
ジュクッ…………
その視線で、ゼストの下腹部は熱を帯び始めていた。
――クラレンスはああ言ったが、これで刃更様に伝わらないはずがない……これで、私はもう……あの方の元には帰れない……。
――――ゾクッ
廊下を歩きながら、ゼストは刃更の罪悪感から失禁してしまった。
ジョロジョロ……シャアァァァ
豪華な絨毯に、ゼストの黄色い聖水がぶちまけられた。
「きゃぁっ! 汚い!」
ちょうどすれ違ったメイドの少女が、その様を目撃してしまった。彼女は怯えたようにゼストを見ると、踵を返してどこかに走って行った。
「汚いってよ、ゼスト」
いつの間にか、目の前にはクラレンスが立っていた。どうやって城に入ってきたのだろう。それに、この現れ方にゼストは見覚えがあった。しかし、その思考を深く掘り下げる気にはならなかった。
「クラレンス……」
「お前を受け入れられるのは、もう俺しかいない」
クラレンスは他の男の精液で汚れたゼストにかまうことなくキスをした。
「んちゅっ…………ふっ♥」
舌が入れられ、お互いの唾液の交換が行われる。廊下に嫌らしい水音が小さく響く。
――もう……私には何も残っていない……この男、しか……。
「いや……お前と、お前の子供が……」
「ゼスト、そのことなんだが……」
クラレンスが珍しく、言葉に詰まっていた。その様子に強い違和感を覚え、不安になった。
「お前の腹ん中にいる子供……」
クラレンスはそっと耳打ちをした。
その瞬間ゼストは、今まで感じていた疑問に、大方の答えが示されたような気がした。
――あぁ……そうか、だから、色が違ったのか。
「かまわないよ」
「あぁ?」
ゼストはまっすぐクラレンスの瞳を見た。いつも堂々としている彼の瞳、その中にわずかな憂いがあった。
「このお腹の中の子供を産んだらで良い……その後で良い」
――だから。
クラレンスの首にゼストは抱きついた。そして、その胸板に顔を埋めた。
「その時こそ、お前の子供を……私に孕ませてくれ」