魔界に行く刃更たちを見送った柚希は、いち早く勇者の里へ連絡を取る。
しかし、敵の動きは予想以上に速く、彼女は確実に追い詰められていく。
Ⅰ 変容した日常 ※挿絵
「刃更、私と胡桃は里に連絡を取ってみる。もしかしたら向こうにも何か動きがあるかもしれない。だから、残るとしたら私たち二人だと思う」
野中柚希の提案で刃更、ゼスト、そして万理亜は魔界へ赴いた。それが夜明け頃のこと。
~1月28日~
柚希はまず、父の修哉に連絡を取った。まだあまり大ごとにはしたくないが、彼ならそのことも理解した上で秘密裏に澪の捜索に協力してくれるはずだ。しかし、彼は里で発言力がある人間であるため、里が何か動きを見せた上での澪の失踪につながっているのなら、例え娘相手でも情報を流してくれるとは限らない。
――そうなったら、私たちではどうしようもない……。
そんな柚希の心配はしかし、杞憂となった。
澪の失踪は里でも予想外の事らしかった。長老たちに知られればきっと面倒事になると考え、修哉は澪失踪の情報は自分のところだけにとどめると言った。それでかつ、向こうでも捜索してくれるらしい。大々的にはできないだろうが、それだけでも心強かった。
「それじゃお父さん、今の状況を詳しく話すけど――――」
その時、インターホンが鳴った。
今は平日の午前九時。いつもなら柚希たちは学校に行っている時間で、家には万理亜とゼストしか居ない時間だ。宅急便が来るなんて彼女たちは言っていなかったが……。
「お姉、私が出るよ」
そう言ったのは胡桃だ。頷いて彼女が玄関に向かうのを確認しながら、柚希は電話に戻った。
ここが運命の分かれ目だった。
家の中だからと油断したのだ。その理由は油断して良い材料にはならない。なぜなら澪は、他でもないこの家の中から失踪したのだから。それでもまさか、敵がインターホンを鳴らして入ってくるとはさしもの柚希も思いもよらなかったのだ。
刃更には二人で行動すると言ったはずなのに。
***
電話を終えた後、胡桃が戻ってこないことに気づいた。もう三十分も経過している。
「っ…………」
無性に嫌な予感がして、柚希は玄関に向かった。
玄関は開け放たれたまま誰も居なかった。三和土には胡桃の『霊操術の籠手』が落ちていた。
「胡桃……!」
それを拾おうと手を伸ばした瞬間――世界が暗転した。
「っ――――!」
それは瞬きを一回した程度の短い間で、すぐに明るくなった。場所は変わらず東城家だったが、目の前の籠手だけが消えていた。
――この気配は人よけの魔法……。
柚希は家の外へと出た。家々や空は忠実に再現されているが、ここが結界の中であることはすぐに分かった。
以前刃更と早瀬高志を始めとする勇者の一族が決闘を行った時に使われた結界と同系統のもののようだが、生成している力の源が異質だった。おそらくは、魔族が作った結界だろう。
――きっと、澪をさらった奴ら。
刃更と連絡を取りたかったが、彼は現在魔界に行っている。特殊な魔力が施された刃更の携帯ならば向こうから連絡が可能だが、少なくともこちらからはできない。
――どちらにせよ、結界に阻まれてきっと電波は届かない。どうやら、あの霊操術の籠手を媒介にして結界に引き込まれてしまったみたいね。
「あああぁぁぁあぁあぁ…………」
「っ……」
柚希に近づく無数の人影があった。それらはどう見ても一般市民だった。しかし、瞳は闇のように白目の部分まで真っ黒で、足取りもゾンビ映画さながらふらふらとおぼつかない。
「死体……いや、違う。これは、泥人形?」
少なくとも生命体ではないことは確かだった。それならば、斬っても問題は無い。
柚希は力を解放し、それにより勇者の戦闘服に換装する。全体的に蒼色を基調とし、純白のプリーツスカートと胸元にはスカーフを身につけている。膝から先と肩から指先は防具で固められ、腰には霊刀『咲夜』が携えられている。
素早く抜刀し、敵を横一線になぎ払った。想像以上に人形たちはもろく、簡単に一丁両断され泥の欠片となって吹き飛んだ。
「弱すぎる……」
それに違和感を覚えた。一体何の目的で一般人に模した人形を柚希に差し向けたのだろう。その答えはすぐに出た。
――数が多すぎる。これはきっと、時間稼ぎ。
気づけば東城家は数十人――いや、百人以上に囲まれていた。
そして、別の気配にも柚希は気づいていた。ここから少し先、方角で言えば柚希が通う聖ヶ坂学園がある方に、明らかにまがまがしい気配が存在した。
――『敵』は逃げも隠れもしない。私に来てほしいから。だけど、すぐには来てほしくない。
目的は見えないが、敵の意図は見えた。
「それなら、最速で向かうまで」
柚希はもう一度、咲夜を大きく振り抜いた。
***
結果として、敵の気配の出所である学園まで三十分もかかってしまった。普通に歩けば十分程度しかかからないが、どんどん増殖する敵をかいくぐりながらではかなり時間がかかってしまった。
現実の世界ならば数多くの生徒がいるが、もちろん結界内であるため学園の中は無人だった。
常に咲夜を構えながら学園中を歩き回ったが、気配が反響して肝心の敵の居場所が掴めない。間違いなくここにいることは分かるのに。
「ああぁあ…………」
一体だけ泥人形が居た。それは男子生徒の制服を着ていた。
「ここにも……」
柚希は一歩だけ踏み込み、肩口から斜めに刀を振り下ろした。
「っ――――!」
刃が人形に食い込んだ途端、傷口から紫色の霧が吹き出した。とっさに口を塞いだが、少し霧を吸い込んでしまった。それでも刀を何とか振り切り、人形を倒すことはできた。
――今のは……毒?
しかし、これと言った躰の異常は無かった。柚希は気配の出所の捜索を再開した。
二十分ほど探し歩いたころ、異変が訪れた。
ぎゅるるるぅ…………
強烈な腹痛が柚希を襲った。
――さっきの毒の所為……?
腹痛は便意になった。少しでも腹部にお腹を入れたら漏らしてしまいそうなほど激しい便意で、このままでは到底戦える状態ではなかった。
「こんな敵地で……するわけには……」
しばらくすると、便意の波は何とか収まった。嫌な脂汗は額から流れたままだが、まだ我慢できそうだった。
「!」
腹痛と便意に気を取られていたが、後ろに何かの気配を感じた。
とっさに振り向くと、そこには小さな十歳くらいの男の子が立っていた。黒い肌にとがった耳、濃緑色の短髪を携えている。
「やぁ、お姉ちゃん。うんちは我慢したらだめなんだよ?」
「っ…………!」
とっさに腰の咲夜を抜刀しようと手を伸ばした。
「アドミラス、ぶっ飛ばしちゃえ」
ドゴォォォォッ――――――――
全身に激しい衝撃を感じ、柚希の躰は吹き飛んだ。柚希が居たのは四階。柚希はその高さから、いくつもの壁を突き破りながら外へと投げ出された。
「ぐっ――――」
あまりの衝撃で受け身がとれない。
地面にたたきつけられると思ったその時、柚希は水の中に落ちた。
――水……プールね。
柚希は校庭を横断し、反対側のプールに落ちたらしかった。
「お久しぶりです、勇者の少女」
プールサイドに、一人の青年が立っていた。白肌に淡青色の長い髪、紫色の一本角の魔族。
「アドミラス……まさか……」
「まるで死霊でも見たかのような表情ですね。いいえ、私は生きてますよ。以前と変わらず、とはいきませんが」
彼は先の大決闘の際、枢機院からの刺客として現魔王側で参戦してきた魔族だ。かつてはレオハルトの対抗馬として魔王候補として名前が挙がったほどの高位魔族だが、第三の決闘で胡桃を卑劣な手口を使って負けさせ、後にマリアによって倒されたはずだった。
「まずはご挨拶と行きましょうか」
アドミラスの躰の輪郭が突然歪みだした。ゆらゆらと揺らめき、急激に縮み始めたかと思うと、全く別の形を形成した。それは、大型の鳥のようだった。鋭いくちばしとかぎ爪、全長三メートル以上はある両翼、そして、アドミラスの面影を唯一残す一本角。
「っ……変身⁉」
巨鳥は飛び立つと、まっすぐ柚希へと向かってきた。
「っ――――ふっ!」
鳥に向かって刀を振り上げた。しかし、鳥は飛びながら回転し、巧く斬撃の軌道を躱した。そして、飛ぶ方向を変えてプールの中へと飛び込んだ。
水の中に巨鳥は、またもやその輪郭を変え始めた。今度は何倍にも膨らみ、枝分かれを始めた。
「なっ――――」
それはまるで軟体動物の触手だった。柚希の手首ほどの太さのそれらは無数に柚希の躰を絡め取っていき、水中へと引きずり込んだ。
「がぼっ――――ぐぅ……」
たまらず大量の水を呑み込んでしまう。
――全部切り落として――――!
そう思い刀を握る力を強めると、突如柚希は水から出された。手足をがちがちに縛られ、躰の至るところにも触手が回っていた。これでは咲夜を振るえない。
「ふふふ、捕まえましたよ」
「くそっ……」
無数の触手が収束するその先に、アドミラスの上半身があった。
「以前はこんな力、持って居なかったはず」
「そうですね、持っていませんでしたよ、こんな悪趣味な力。あの戦いの時、私は死にかけた。いや、ほぼ死んだと言っても良いくらいだった。しかし、生命の炎がかき消える直前、私は拾われ、21の魔界の生物と融合することで生きながらえた。生かされてしまったんです」
「生かされて……しまった」
思わず柚希はその言葉をなぞった。
――だって、まるでそれじゃ……。
「へぇ、それじゃまるで、僕に生かされたことが迷惑みたいな言い草じゃないか。ねえ、アドミラス?」
「!」
アドミラスの表情が凍った。彼が振り向いた先を見ると、プールサイドの反対側に先ほどの少年が立っていた。
「クリント……様」
少年はにこやかに笑っている。しかし、とても穏やかな雰囲気には感じられなかった。
「せっかく僕のお人形にしてあげたって言うのに、君は不満なんだね。ふ~ん」
「い、いいえ、そんなことはありません。生かしてもらえて私は、とても幸福でございます」
「そう? それならいいや。僕がご主人様、君は下僕、忘れないでね。主従契約魔法もあるんだから」
「わ、分かっております」
アドミラスは目を伏せ頷いた。
「それはそうと、お姉ちゃん。改めて自己紹介をするよ。僕の名前はクリント。こう見えて立派なインキュバスだよ」
「インキュバス……澪と胡桃を連れ去ったのはあなた?」
柚希は拘束されながらも冷静に尋ねた。
クリントはおかしそうに笑った。顔だけ見れば無邪気な子供だが、彼がただの子供でないことはもう間違いない。
「胡桃お姉ちゃんをさらったのは確かに僕。だけど澪お姉ちゃんの方は僕じゃないよ。あの子をさらったのは僕の姉ちゃんさ。それと、大けがをしてまだ実体を持ってないお兄ちゃんもいるんだ。皆お母さんが違うから全然似てないんだけどね」
ゆっくりと歩きながら、クリントはプールを回ってきた。
「僕たちは皆、お姉ちゃんの意思で動いてるんだ。お兄ちゃんはすごく不本意そうだけど、彼は姉ちゃんに命を救われて逆らえないからね。僕は楽しかったら何でも良いからお姉ちゃんに従って動いてるだけ」
「…………」
柚希には今ひとつ理解できない話がされていた。今の段階で分かるのは、少なくとも彼の仲間があと二人はいるということだった。そして、その一人がこの騒動の首謀者らしい。
「この結界もお姉ちゃんに作り方を教えてもらったんだ。お姉ちゃんは結界作りが得意だからね。ちなみにお兄ちゃんは夢を介しての記憶操作が得意。そして僕は、見ての通り、お人形を作るのが得意なんだ。柚希お姉ちゃんを動けなくしてるそこの男も、僕のお人形ね」
クリントはアドミラスを指さした。彼はそれを目を伏せたまま受け入れている。
「胡桃はどこ?」
「……ま、確かに気になるよね。アドミラス、見せてあげて」
「はっ」
アドミラスが校庭へと手のひらを向けた。手が紫色に輝き出すと、校庭の中央に同色の十字架が現れた。そこには、遠くて少し見えにくいが確かに胡桃が磔にされていた。彼女は部屋着のままだった。
「胡桃! この――――」
柚希が思わず逃れようともがいた途端、触手の締めつけが強まった。腹部や胸、股、そして尻に触手が食い込んだ。
「んくっ……うぅ、ふあっ……」
わざとなのか、アドミラスは絶妙な強さで締めつけてくる。その所為で声が漏れてしまう。
――あそこに……触手が……。
「動かないことですよ。逃げられるはずはないのですから」
「っ…………!」
「大丈夫、気絶しているだけだよ」
校庭に向いているクリントに、柚希は荒れた呼吸を落ち着けながら尋ねた。
「……あなたたちの目的は何?」
「お~しえない。ていうか、お姉ちゃんの目的は知らされてないんだよね。僕は僕で、面白いと思うやり方で言われたことをやるだけなんだ」
クリントが軽く指を鳴らした。その瞬間、柚希の周囲に大きな魔方陣が出現した。
「これは……?」
首に熱を感じていた。柚希の首にはいつのまにか主従契約の文様が浮かび上がっていた。それは次第に形を変え、全く別の模様に変化していった。
「ははは、本当にできた。お姉ちゃんはやっぱりこういう小手先の魔法が得意だね」
「な、何をしたの……!」
「君に掛けられた主従契約魔法を別の契約魔法に上書きしたんだ。本当はお姉ちゃんが澪お姉ちゃんにしたみたいに色んな効果を付与したかったんだけど、僕はそこまで器用じゃないからね。まぁ少なくとも、これで君と東城刃更との間に掛けられた主従契約魔法は無力化された。これでいくら君を犯しても催淫で悶え死ぬことはない。安心だね」
――契約を、無効化……。
柚希の主従契約魔法は、もともと澪に対する対抗心から結んだものだ。それでも、この魔法が刃更との絆とさらに深い物にしてくれたのは間違いなく、確実に柚希自身を強くしてくれたものだ。それを、無力化された。柚希はまるで、自分の心の一部をもぎ取られたような気持ちになった。
しかも、話によれば澪も同じ事をされたようだ。これで刃更の追跡ができない理由が判明した。しかし、だからといって到底喜べる状態ではない。しかも今、クリントの目的の一つが垣間見えた。
――犯す……つまりはそういうこと……。
「私の躰は全部刃更のもの。犯すくらいなら殺せばいい……殺さないのなら、今すぐ舌を噛んで自害する」
「死なれちゃ困るよ。柚希お姉ちゃんにかけた魔法は、処女を失った瞬間に僕のお人形になるって言うものだからさ~。でも、柚希お姉ちゃん、もし君が死んだら、胡桃お姉ちゃんを陵辱することになるよ。そして、僕のお人形にしちゃう。君は、それでもいいんだね?」
「っ……胡桃には……」
「ふふふ、ここであの子に手を出すなって言うのは、あまりにも都合が良すぎるよね? だからさ、ゲームをしようよ」
「…………ゲーム?」
「柚希お姉ちゃんが勝てば、君と胡桃お姉ちゃんの二人の貞操……つまりは処女を守れる。その代わり負ければ、二人とも純潔はなくなっちゃう」
クリントは柚希に近づき、変容した首の模様に触れた。
「ルールは簡単。僕たちは君を、処女を奪う以外の方法で陵辱する。つまりは堕としにかかるってこと。それで、君が自分から処女を僕たちに捧げることを望めば僕たちの勝ち。最後まで耐え抜けば君の勝ち。期間はそうだな、東城刃更が澪お姉ちゃんを見つけるまで」
「…………」
「君はこの勝負で純血以外を汚されるけど、勝てば自分だけでなく妹の処女も守れる。ただし、このことを他の人に、特に東城刃更に言えば、その瞬間に胡桃お姉ちゃんは中古品になる。僕たちのさじ加減次第では、女性として再起不能にしてやってもいい。だってルールを破ったペナルティなんだもの。それくらいはしないと」
「外道……」
――でも、私が刃更以外に犯されることを望むわけがないから、簡単な話、刃更を信じて待っていればいいってだけ。それさえできれば……。
もちろん、相手が本当にそのルールを破らないという保証はない。しかし、それを現時点で言い出してもきりが無い。
全ては自分にかかっている。それならば話は早い。ここはゲームに乗って、こちらも相手の隙を突くことを考えれば良い。一方的にやられ続けることは、柚希の性分ではなかった。
「分かった。そのゲーム、受けて立つ」
「アドミラス、始めて良いよ」
柚希は話に乗った途端、クリントがそう命じた。
「はっ」
柚希はプールサイド上げられた。しかし、変わらず触手で身動きがとれないままで、仰向けの状態で宙ぶらりんになっている。。
彼女を縛り上げる触手は、アドミラスの両腕が変化したものだった。いつの間にか下半身は普通の人のそれに戻り、欲望を示す肉棒があらわになっている。
「っ…………」
男の勃起したそれを、刃更以外で初めて目にした。
アドミラスは触手で柚希の水色のショーツを破り捨てた。その瞬間、背筋に寒気を覚える。
「しょ、処女は奪わないはずっ……!」
「奪いませんよ、何も穴は、女性器だけではないでしょう?」
そう言って柚希の脚を広げると、アドミラスは彼女の下腹部を押さえた。
ぎゅるるるぅぅ……
「ひっ……」
状況に飲まれて忘れかけていたが、柚希は今便意を催している。最初以来大きな便意の波は訪れていなかったが、お腹を刺激されたことでそれが蘇ってしまった。
「や、やめ……」
「クリント様の毒が効いているみたいですね。これには、括約筋の弛緩作用もあるのですよ」
「括約筋……」
「つまり、慣らすことなく使えるって事です」
――使える……何を……?
「こういうことです」
ズブウゥッ――――
アドミラスは、柚希の菊門に肉棒を突き入れた。
「ひぐっ……か……」
「アナルヴァージン、いただきましたよ、勇者の少女」
大きな異物感をお腹の中に感じた。本来なら激しい痛みが彼女を襲うはずだが、括約筋が毒によりわずかに弛緩している今、簡単に肉棒を呑み込んだ。
「これはサービスね、インキュバスの洗礼だよ」
クリントが柚希の顔をのぞき込んだ。視線が交錯する。
「っ――――――――」
急に全身が熱を帯び始めた。鼓動が加速し、下腹部が無性に切なくなる。
「さ、催淫……!」
「それじゃアドミラス、勝手にやっててよ。僕もう疲れちゃったから」
「分かりました、クリント様」
アドミラスの肩口から出ている二本の触手の下から、本来の人の腕が生えた。見た目はもうすでに人間離れしてしまっていて、かなり化け物じみている。
くにゅっ……
その両腕で、アドミラスは柚希の尻を鷲づかみにした。
「っ――――んあああぁあぁぁぁ!」
途端に、全身に電撃が走ったかのように痺れた。背筋が何度も震え、男を知らない淫裂から潮が噴き出した。
柚希の性感帯は尻だ。だからこそ、催淫状態のまま揉まれただけで絶頂してしまったのだ。
――こいつ……私の弱点を……。
ぎゅるるぅ……ギュルッ……
「んぐ……」
絶頂の甘い痺れと同時に、便意が柚希を襲う。全く別種の感覚に、半ば柚希の脳内は麻痺しつつあった。
「ふふふ、他の男の女を犯すというのは良いですね。私も色んな女を相手にしてきましたが、あなたはなかなか魅力的だ。早く堕として前穴の味も確かめたいですね」
畳みかけるように、アドミラスが抽送を開始した。
カリが直腸の壁をひっかき、さらに快感と便意を呼び起こしていく。
「はぎっ、ん……が、んあ……」
――ダメ、声を出しては……私は、刃更以外じゃ感じない!
「むう…………」
柚希は唇をかみしめ、何とか漏れる声を我慢しようとした。
――――――ぎゅるるるっ!
今までで一番大きな便意の波が訪れた。その瞬間を見計らったかのように、アドミラスは力一杯肉棒を打ちつけた。
「はぎゅ――――――」
「記念すべき、体内への初射精といきますか」
「っ…………!」
――出されたくない……でも、私が我慢すれば……!
柚希の頬に、一筋の涙がこぼれた。
――これが……最後の涙。出すならいくらでも出せば良い……私は、それでも負けない。
柚希は目を瞑り、それを受け入れた。
ビュルルルルッ、ビューッ、ドクドクッ……ビュググッ
体内に自分以外の熱が流れてきた。催淫の所為か、それすらも魅惑的な快感へと変換されていく。
――耐えて……耐えて……。
すさまじい量の精液が吐き出され続けた。出来るだけ表情を殺し、柚希は射精が終わるまで耐えきった。
しかし――――――
ぎゅるるるうぅっ――――
大量の精液は、浣腸液として便意にとどめを刺すことになった。さらに追い討ちを掛けるように、アドミラスは肉棒をアナルから抜くと、触手で柚希の下腹部を締めつけ始めた。
「あぁぁ、や、やめて……そ、それは……かっ――――」
「無様に垂れ流しなさい」
ブリブリブリブリッ、ブリュッ、ブッ、ブバッ……ブリブリッ
ほぼ限界まで来ていたそれらが、勢いよくぶちまけられた。初めは褐色塊の中に白濁液も混じっていたが、次第に柚希の排泄物だけになった。
ブブッ、ブリブリ――――ブッ
「あぁ……止まら……ない」
次々とひねり出されるそれらと、空気が漏れ出る破裂音に、顔から火が出るような思いだった。人前で脱糞をする羞恥から逃避するため、柚希の脳は考えることを放棄していた。便意が収まるまで、排泄の欲求に忠実になった。
「よほど溜めていたのですね。すごい量だ。それにひどい臭い。無様ですね、勇者の少女」
「あぁ……くっ……」
排泄は断続的に十分近く続いた。
「これはほんのご挨拶ですよ、勇者の少女」
柚希は過大なストレスからか、意識を失ってしまった。。
***
べちゃ……
柚希は奇妙な落下音で目を覚ました。
場所はまだ高校のプールサイドだった。しかし、プールには水は張っていない。落下音は、自分の大便が水のないプールのそこに落ちた音だった。
今は一月下旬、本来ならプールに水が張られていないのが普通だ。そのことが意味することは――――
「っ……結界が解けてる!」
自分の排泄物はプールサイドに垂れ流されたままだった。つまり、行為の途中から結界は解かれていたのだ。
――片付けないと……!
「おい、そこに誰か居るのか?」
すうっと背筋が凍る。
下から男性の声がした。もしかしたら、プールに誰か居ることに気づいた先生か誰かが様子を見に来たのかもしれない。声は柚希の間近から聞こえたが、プールは校庭よりかなり高い位置に作られているため、向こうから中に誰がいるかは見えていない。柚希がプール際に倒れていたことも幸いした。
――見られるわけには行かない……。
勇者の姿を見られることもそうだが、この状況では一般人に柚希が脱糞したことを知られてしまう。
「っ…………!」
柚希は現場を散らかしたまま、男の居る場所の反対側からプールを離れた。
人目を気にしつつ、柚希は屋根伝いで急いで家に戻った。家に帰るとすぐに風呂場へ駆け込んで体を洗った。
「いっ…………」
さすがにアナルがひりひりした。もう出す物がないのか、放屁一つさえ出ない。
恥ずかしくて耳まで熱い。さっきまでの出来事を思い出すだけで死にたくなった。
――でも……私が耐えれば、胡桃は助かる。刃更が澪を見つければ、この状況からも脱却できる。
風呂場の鏡には、自分の躰が映し出されている。まぶしいほど白い肌をしている。少し前に万理亜は計ってもらったときは、身長158 cm、体重51.2 kg、バスト79のCカップ、ウエスト58、ヒップ87だった。
そして、首筋には見たことのない文様が浮かんでいる。刃更との契約印とは全く別の形をしている。これが、これから柚希を縛る新たな契約印だ。
「大丈夫、刃更。私、できるよ」
「お姉、シャワー浴びてるの?」
「⁉」
思わず柚希は裸のまま風呂場から飛び出した。
「うわ、お、お姉、どうしたの?」
「胡桃、大丈夫⁉」
人質に取られていたはずの胡桃は、脱衣所に何気なく立っていた。部屋着を着て、驚いた様子で柚希を見た。
「大丈夫って? 居なくなってたのはお姉の方じゃん。お父さんとの電話は終わったの?」
「え…………?」
「さっきのインターホン、どうやらいたずらだったみたいで誰も居なかったの……もう何だってのよ。はぁ、それは別にいいわ。ほら、躰拭いたら澪を探しに行かなきゃ。刃更たちにばっかり任せてはいられないもの」
まるで話がかみ合わなかった。しかし、柚希はそれよりも、別に視線を奪われていた。
胡桃の首筋に、さっきまで自分の首に浮かんでいたものと同じ模様が浮かび上がっていた。
「そのままじゃ風邪引くわよ、お姉。それじゃ、準備できたら一緒に捜索開始しましょう」
胡桃はきびすを返し、脱衣所を出て行った。
「何が……どうなって……」
「僕もいくらかなら、記憶の封じ込めができるんだ」
「!」
いつのまにか、風呂場にはクリントが立っていた。相変わらず無邪気に笑っている。
「胡桃お姉ちゃんは何にも知らない。柚希お姉ちゃんが一体どんな目に合ったのかもね。大丈夫、首の模様は君にしか見えない」
彼は柚希に近づくと、お湯で濡れたままの彼女の尻に手を回した。
「っ…………」
「君は誰に悟られることなく日常を送るんだ。学校にも行った方が良いね。もちろん、澪お姉ちゃんを探しても良い。まぁ、君たちには見つけられないだろうけど。でも、もし君が日常を逸脱するようなおかしな行動を取れば――――――」
クリントは手に持っていた、小型のビデオカメラの画面を柚希に見せた。
『あぁ……止まら……ない』
『よほど溜めていたのですね。すごい量だ。それにひどい臭い。無様ですね、勇者の少女』
その画面には、先ほどの柚希の痴態が映し出されていた。
「この映像、全世界に流しちゃうんだからね、ふふふ」
柚希は、足下がガラガラと崩れ落ちていく感覚に襲われた。
――大丈夫、大丈夫……だから刃更、お願い……早く――――
早く澪を見つけて……。
クリントは、尻に伸ばした手を股へと持って行き、菊門の周りを指でなぞった。
「よろしくね、柚希お姉ちゃん」
柚希の地獄が、この日から始まった。
はたして、彼女は一体、いつまで耐えきることができるだろう。