学校がない日に澪を捜索する勇者の姉妹は、大量の魔物の気配を察知する。
不本意ながら、柚希は単身で気配の元へと向かうことになってしまう。
~1月31日~
今日は日曜日、学校は休みだ。
土日は一日を澪の捜索に当てられる。しかし、こちらの世界で強いて澪が連れ去られる場所に思い当たるところはなかった。そのため、二人は低級悪魔の気配を虱潰しに辿ることにした。
もちろん分かっていたことだが、何の成果も得られはしなかった。
「やっぱり……私たちも魔界に行きたいね」
二日掛けて澪を探し回った帰り道、電車に乗りながら胡桃が言った。
「その気持ちはよく分かる。だけど、里から何か連絡があったとき、受け取れるのが私たちだけ」
「…………」
胡桃がモヤモヤしているのが柚希には分かった。澪の危機だというのに、自分たちは待つことしか出来ないのだから。
――しかも、クリントたちの言うことが本当なら、澪はきっと魔界に居る。私たちに出来ることはない。
刃更たちに任せるしかない。そして、柚希は胡桃に魔の手が行かないように、耐え忍ぶしかない。電車の中に居るとは限らないが、今もクリントかアドミラスが柚希と胡桃を見張っているのだから。
ゾクッ
嫌な気配が出現した。胡桃も気づいたようだ。
「今私たちが来た方向だね」
「ん……魔物の気配……低級だけど、とても多い」
二人は折り返しの電車に乗るため、次の駅を降りた。
その瞬間だった。二人の近くにも多くの魔物の気配が出現したのだ。そこは商店街だった。
「こんな人気の多い場所で……まだ日も出てるにっ……」
時刻は午後四時。この時期は日が沈むのが早いため、商店街には夕日が差し込んでいる。
「お姉は先に行って。私はこの商店街に潜んでる低級たちを一掃してから向かう」
「……いいえ、私も残る。二人で行動した方が良い」
柚希が先に行くとはつまり、胡桃と別行動をするということ。彼女を一人にするとクリントたちが一体どういう風に動くか分からない。
――彼らの言うことを鵜呑みに出来ない。
「何言ってるのお姉、こっちより向こう側の方が気配の数が多い。商店街は私一人で十分だよ」
胡桃の言い分はもっともだった。それに柚希は言い返すことが出来ない。
――だめ……これ以上ここに残ろうと主張すれば、きっとクリントたちが許さない……。
「分かった。任せる」
柚希は逆回り電車に飛び乗った。
気配をたどった先には、柚希がよく知った建物があった。そこは、かつて刃更と服を買いに来たファッションビルだった。
嫌な予感がした。その予感とは、一連の出来事はクリントたちによるものだということだ。
柚希が一人になったというのにまだ彼らは現れないうえ、そもそもこの二日間彼らは姿を見せていないのだ。
――不気味すぎる……何を考えているの?
柚希は意を決してビルへと入った。夕方とはいえ日曜日だ。ビル内には多くの若者たちがいた。
魔物の気配はビル中に充満していた。
――日が出ている内は低級悪魔の動きは悪い。とはいえ……この人混みの中で暴れでもしたら……。
魔物は本来こちらの世界にはほとんどいない。しかし、まれに魔界との入り口が開かれたときに、こちら側に来てしまうのだ。彼らは明るい場所や人の多い場所には現れない。それでも、力の強い物ならその限りではない。
――つまり、ここに集まっている魔物はそこらの低級とは違う可能性がある。
柚希は気配の現況へと足を速めた。その先には、男性用トイレがあった。
「…………人の気配はない……けど」
それでもためらいがあった。しかし、何度確認しても気配は男性用トイレの中から漂っている。
「ほら、早く入んないと人が来ちゃうよ?」
柚希の背後にクリントが立っていた。どこで手に入れたのか服装は普通の子供のように見える。ただ、黒色の肌と濃緑色の髪が異彩を放つ。
「こっち」
「いっ…………ちょっと……」
クリントは子供とは思えないような強い力で柚希の手を引くと、トイレへと連れ込んだ。柚希の予想通り、中には誰も居なかった。
――これが小便器……変な形……。
さすがに柚希も男子トイレに入るのは初めてだった。
「柚希お姉ちゃん、ここでおしっこしてよ」
「っ…………何を言っているの?」
「言ったとおり、そこの小便器でおしっこをするんだ。男がするように、立ったまんまね」
そう言ってクリントはビデオカメラを柚希に向けた。
「今はそんなことしてる場合じゃ……」
「もう分かってるよね。今ここに控えさせている魔物は僕が仕向けた物だ。君があまりにも聞き分けがないことを言うなら、大量の死人が出ちゃうよ?」
「…………」
――そういうこと……。
「一つ聞きたい」
「ふ~ん、何かな?」
「そのカメラの記録、一体どうするつもり?」
「それは君次第」
ニコニコしているクリントの笑顔に、不気味さしか感じなかった。
彼は妙にこっちの文化に精通してて、ビデオカメラという文明の利器すらも使いこなしている。それならインターネットに詳しくてもおかしくはない。
『この映像、全世界に流しちゃうんだからね』
あの言葉は、決して嘘ではないということだ。
「くっ…………」
屈辱的だった。しかし、ここで悔しがる顔を見せてはいけないと思った。
柚希は淡々とした表情で小便器の前に立った。
動きやすいように、今日はタイトジーンズに白いパーカー姿だ。女である彼女が立ったままするには、ある程度履いているものを下げる必要だある。
「おしっこがかかっちゃったら大変だから、下は全部脱いじゃった方が良いよ。僕が預かっててあげる」
クリントは手を差し出した。
――全部脱げってこと……。
無言で柚希はジーンズを脱ぎ始めた。スルスルと布と肌が擦れる音が誰も居ないトイレに響く。脱いだものをきれいに畳み、クリントに差し出す。
「ふふふ、温かいね。走ってたからかな?」
「っ――――」
それを無視し、次は白と水色の縞模様ショーツを、出来るだけ小さい動作で下げ、脚を抜いた。それもたたんで渡す。
「うわ、もっと温かい。それに……」
クリントはそれを自分の鼻へと持って行った。
「ちょっと汗臭い。残念、濡れてはいないや」
――濡れるわけない。
それらの発言全てスルーし、柚希は小便器へと向き直る。緊張からか、少し遠いところにある尿意を引き起こそうと意識する。
「もっと腰を突き出さないとダメだよ。それにもっとおまんこを広げた方が良い。方向が定まらないからね」
「っ…………」
激しい葛藤の末、柚希は言われたとおりに従う。指先でそっと左右の肉に触れ、ぐっと引き延ばす。それにより、敏感な部分に空気に触れる感触が生まれる。
――最悪……。
顔が熱くなる。無表情を意識するが、それでも耳が真っ赤になる。
――…………あ……来る……。
ようやく尿道から熱が湧き上がる。ちょうどその時だった。
「な……何をしているんだ⁉」
「え…………?」
トイレの入り口に、二十代くらいの男性が立っていた。驚いた顔で柚希を見ている。
――ひ、人が入ってきて……!
気づけばクリントは姿を消していた。これでは一人で男性用トイレに忍び込んで、おしっこをする変態女にしか見えないだろう。
「ち、ちが……これは――――」
一度湧き上がった勢いを、止めることは出来なかった。
ジョロジョロジョロ――――シャアァァァ
勢いよく放尿が開始されてしまった。黄色い滴が列をなし、放物線を描いて小便器へたたきつけられていく。
「あ、と、とまって……み、見ないで……ああぁ……」
「ま、マジかよ……」
呆然とその様子を見ている男の表情は、良い物が見れたと思っているのか少し笑っている。
柚希は完全に油断していて、足下が弱くなっていた。
――――コッ
両の膝裏に軽い衝撃が走った。
「え?」
俗に言う「膝カックン」というものだったのだろう。それを、柚希は見事に受けてしまった。犯人は明確――クリント以外にいない。
膝を折ってしまった結果、腰の位置が一気に低くなる。それによりどうなるか。
放尿の向きがおかしくなり、黄色の雨が白いパーカーへと降り注いだ。
「あ…………だ、だめ……」
シャァァァ…………ポタポタ…………
柚希は自分の尿塗れになってしまっていた。
――こんな姿を……知らない男の人に見られるなんて……。
「や、やべ……」
男はおもむろに携帯端末を取り出した。
「っ……と、撮っちゃ――――」
思わず柚希は目を瞑った。無防備な彼女に向かって、カメラのシャッター音が――――――
浴びせられはしなかった。
「へ…………?」
いつの間にか男性はいなくなっていた。携帯まで取り出して、そのままいなくなったのだろうか。
――これは……人除けの結界の気配。さっきの人、結界に追い出されたのか……。
『無料で見られるのはここまでってやつだね。さぁ、君は元々の目的を全うすれば良いよ』
どこからともなくクリントの声が聞こえた。図らずも、彼に危機を救われた形になった。その危機を作り出したのが彼なので、全く感謝する気持ちにはなれないが。
「元々の目的……?」
その意味はすぐに分かった。魔物の気配が移動していた。さっきまでのような漠然としたものではなく、はっきとした気配だ。
「どこまで私を馬鹿にするつもり……」
すぐに駆けつけたいが、今の姿は自身の尿に汚れてしまっている。
――脱ぐしかない……。
柚希は汚れてしまったパーカーを脱ぎ、隣りの女性用トイレ、その一番奥の個室に隠した。クリントに預けたジーンズとショーツは、彼と一緒に行方が知れない。それに加え、白地にピンク色のフリルが付いたブラジャーにも、自身の尿が染みてしまっていた。
――うぅ、気持ち悪い……。
さすがにそれを身につけたままなのも嫌だった。だから、柚希はその場で全裸にならざるを得なかった。
「今はとりあえず……」
勇者の力を解放し、柚希は戦闘服に身を包んだ。
――帰るときも勇者の服のままになるけど、裸のまま出歩くよりはましか。
柚希は咲夜を抜刀し、気配の方へと駆け出した。
男性服の売り場で、無数の異形が徘徊していた。力は大して強くなく、柚希はそれらを一分足らずで一掃した。
「これで全部……本当に……?」
魔物の気配はなくなった。しかし、嫌な気配はずっと漂ったままだった。結界も解かれないままであるため、クリントたちがまだ何かを企んでいるのは明らかだった。
「いい警戒ですね。しかし、もう遅いですよ」
「っ…………!」
突然足首が締めつけられる感覚が現れた。脚にはいつの間にかぬるぬるとした触手が巻き付いていた。触手は途中で透明になり見えなくなっていて、まるで宙から触手が生えているようだ。
「一体いつ……」
「絡みついたことにも気づかせない、これも21の魔獣の能力ですよ。そしてほら、見てご覧なさい」
「な……」
切り伏せたはずの魔物たちが全て蘇っていた。いや、蘇っただけではない。全てが元の形を変容させ、まるで人のような形を取っている。
――クリントの人形……!
「この――――くっ!」
右脚の他に左腕にも触手が絡みついていた。これではその場から動くことが出来ず、刀も片手でしか振るえない。
「――――――――!」
咆哮する人形たち、それらが一斉に柚希に飛びかかってきた。不利な体勢でしか咲夜を振るえないため、二、三体を斬っただけで人形に取り押さえられてしまった。
「や、止め――――」
ドゴッ
人形のこぶしが柚希の腹部にめり込んだ。
「はぐ――――」
その攻撃で大きな隙が出来てしまった。別の人形たちのこぶしが、手のひらが、爪が、牙が、次々に柚希に降りかかる。
「っ――――はぁぁぁぁぁ!」
咲夜をきらめかせた。片手しか使えないとは言え、柚希は歴戦の勇者だ。これくらいの敵をなぎ払うことは難しくない。
目にもとまらない早さで、全ての人形の四肢と首を切り飛ばした。
「はっ…………はっ……」
柚希の服はボロボロになっていた。マントは半分ほど千切られ、胸元と腹部の布地は大きく破れ、桜色の二つの蕾と控えめなへそがあらわになってしまっている。スカートの端は大きく裂け、白い下着まで見えている。大きな怪我はないが、かすり傷もいくつも出来ていて出血してる。
「お疲れのようですね」
アドミラスの声が聞こえる。触手はまだ脚と腕に絡みついたままだ。
「何のつもり……?」
「これもエンターテインメントらしいですよ」
「何を……」
ニュルニュル――――
別の触手が宙から発生した。それは見事に柚希の死角から伸び、彼女の残りの足と腕を絡め取った。
「うぅ――――」
開脚した状態で宙づりにされる柚希。唯一無傷のショーツがあらわになる。
「無様ですね、勇者の少女」
四方八方から触手が伸び、アドミラスが一体どこから見ているのか分からない。少なくとも柚希の下着が見える位置にいるのは分かる。
湿った触手の一本が、柚希のショーツの中へと入り込んできた。
「ひっ…………やめ……」
ビリッ
薄い布はいとも簡単に千切れてしまった。髪と同じ色の水色の控えめな陰毛と、ピンク色の淫裂が丸見えになってしまう。
ビリビリッ――――
大きく残った布の部分も触手はことごとく破いていく。穴だらけの勇者服は着ていても大事な部分が一切隠されなく、全裸も同然だった。
「良い眺めですね。ですが、今回のメインはこっちではありません」
新たな触手が無数に出現した。それは皆、柚希の胸へとうごめきながら伸びると、その双丘をまさぐり始めた。
「んっ……ひぃ、あぁ……」
絶妙な力加減でいやらしく触手は動いた。肉塊を縛り上げては緩め、いびつに形を変えていく。
――触手も……粘液も、生暖かくて……。
人間ではあり得ない動きで胸を責め立てられる。時々強引に、そして器用に乳首をねじり上げてくる。
――何か……躰が熱く……。
「っ…………この感じ……媚薬…………?」
柚希の淫裂の間からは、玉のような蜜が分泌されていた。触手の一本がそれにふれ、陰部全体に塗りたくっていく。
「や…………ん、むぅ……」
触手の粘液が触れた場所から、無性に熱を帯び始めた。その熱は次第に躰の芯へと伝わり、ねっとりと甘ったるい疼きへと変わっていった。
「分かりますか? クリント様に改造を施されたこの軟体の躰は、結構何でも出来るんですよ、悪趣味ですが」
シュルシュルッ
「ふぃぁ――――――!」
完全に意識から外していた臀部に触手が巻き付いた。
尻は柚希の性感帯で有り、それだけで快楽の天井へと突き上げられた。躰の支えが弱いためか、いつも以上にビクビクと全身が大きく震えた。粘液に混じって彼女自身の汗、そしてトロトロとした蜜も陰部から飛び散る。
「ふぁっ……んん――――くっ……んむぅ――――」
躰の反応はかなり大きいが、柚希は唇をかみしめ、必死に声を出さないようにした。
「そんなに声を出したくないのなら、私直々に塞いであげますよ」
触手の一本の先端が変形し始めた。それはまるで、男性器のような先端をしている。その触手は柚希の顔の元へと伸びていき、ピンク色の唇の間へと割り入った。
「んんん~~~~~~!」
――うそ……奥に……入って……。
触手は口の中でしばらくうごめくと、喉の方へと入り込んだ。
「おぇ…………おぅ……」
途端に息が出来なくなる。喉の奥に異物が入ったことで、嘔吐感が柚希を襲う。しかし、喉を塞がれたことで何かを吐き出すことも出来ない。口の端からよだれと触手の粘液がこぼれる。
「ふふふ、こんな姿でもフェラというのは良い物ですね。いや、この場合はイラマチオというべきですかね」
「っ……!」
――ってことは、この触手は……アドミラスのっ……。
触手の抽送が始められた。
「ん、じゅぷぅ、ジュル、んぷ――んく、ふっ……ジュボボッ」
――息が……もう、限界…………。
喉の奥で触手が膨らんだ。次の瞬間――――
ドブドブッ、ビュルルルッ、ドクッ
「ん――――――!」
触手の先端から大量の精鋭が吐き出された。それらはまっすぐに柚希の胃へと注ぎ込まれていく。
「おぶ、ん、おえ……んんっ」
普段の射精と異なり、その勢いはまるでホースから水が出ているようだった。胃はあっという間に一杯になるが、口が塞がれているため逆流することも出来ない。そのため、胃はどんどん膨らみ、まるで妊婦のように腹部が張っていった。
ジュボッ……
触手がようやく抜き取られた。
「うぇっぷ……おぇ……」
喉の奥から湧き上がる精臭、今までに感じたことのない満腹感。
ゴポゴポッ……
喉の奥から精液が逆流してくるのが分かった。
――ダメ……吐く…………。
「吐いたらダメですよ、勇者の少女。一滴でもこぼしたら…………」
「っ――――――!」
アドミラスの声が妙に脳に響いてきた。
咄嗟に柚希は口を閉めた。しかし、湧き上がる激流は止まらない。
「んぐっ……ん、ん……」
喉の奥から吹き上がった精液を、柚希は必死に口の外の出さないようにした。そのため頬がぷくっと膨らむ。鼻からも精液がこぼれる。
「っ…………ん、んぅ……んぐ、ごく…………」
何とか口元で流れをせき止め、少しずつ呑み込め胃へと押し流していく。
――うぅ、酷い臭い……舌や歯にもへばりついて……。
すさまじい嘔吐感に耐え、何とか口まで上がっていた精液を全て飲み下した。
「はっ…………うっ……は…………」
鼻から垂れそうな精液を、首を反らすことで落ちないようにする。
ズズッ…………
つんと鼻に痛みが走る。臭いもきつい。
――でも……こぼせない……。
何とか柚希は、体内の精液をこぼさずに済んだ。
「素晴らしい! これが姉妹愛というものでしょうか。健気ですね」
「っ…………はっ……」
ベシャッ――――
ようやく柚希は触手から解放され、床にたたきつけられた。
「ぅくっ……ひぅ……はっ、はっ……」
「そろそろ結界が消えるようです。今日はここまでですね」
――終わ…………た?
「安心しているようですが、これからあなたはどうするのですか?」
「…………なんのこと?」
「いやですね、着てきた服はクリント様に没収され、勇者の服はこの有様。これからあなたは、一体どうやって家まで帰るのでしょうと思いまして」
「っ…………」
ようやくこの地獄が終わる安堵感に気を取られて思い至っていなかった。現在柚希は帰るため服がないのだ。
「ま、私には関係ないことですが、このまま放置もあまりにも可哀想ですかね」
そう言って彼は懐から何かを取り出した。それは柚希の財布だった。アドミラスはその中から二、三枚の札を抜き取り、柚希の目の前に放り投げた。全て声援札だ。
「慈悲ですよ、感謝なさい。それでは私は先に失礼しますよ」
「あ、アドミラス、待って――――」
次の瞬間には、人除けの結界は解かれてしまっていた。アドミラスは消え、周囲に沢山の人の気配が戻ってくる。
現在の柚希は、隠すべきところが一切隠せていないボロボロの服を着ていて、しかも腹部は妊婦のように膨らんでいる。異臭すらも放っているだろう。
「くっ…………!」
ここは幸い服売り場だった。柚希は咄嗟に札を握りしめ、すぐわきの棚にかかっている服をひっつかみ、フィッティングルームへと駆け込んだ。勇者としての身体能力をフルに使っての行動だったため、一般人にまともに見られることなく身を隠せた。
――何とか……目撃はされてない……?
急いで手に取ったため、何の服か確認していなかった。何とかアドミラスが渡した金額で間に合う価格の服だったが――
「うわ…………これは……」
柚希は、覚悟を決めるしかなかった。
***
服の代金を払い、柚希は店を出た。商品を着たままの支払いであったため、店員から白い目で見られてしまった。いや、そもそも、別の意味で白い目で見られていた。
柚希が戦っていたのは男性服の売り場、しかも、大きいサイズの売り場だった。手に取った服は幸運にもトップスだったが、しかし、生地は薄手だった。
ブラジャーを付けていないために乳首の部分は膨らんでいるし、腹部も精液で張っているため端から見たらまるで妊婦のようなシルエットだ。下には何も履いていないが、大きいサイズのためか何とか陰部は隠れた。しかし、それも気休め程度だ。少しでもかがめば全てが見えてしまう。
――走って帰りたい……。
でも、今走れば絶対に胃の中にたまった精液は逆流してしまうだろう。さっきフィッティングルームに駆け込んだ際もすでに吐きそうだった。しかも、持ってきた財布はアドミラスが持ったままだ。来ていたパーカーは結界とともに消えてしまったため、柚希は服を着ることも出来ないし、もちろん電車に乗るお金も持っていない。携帯もパーカーを一緒に消えてしまっているため、胡桃に連絡を取ることも出来ない。
柚希は家までの道を歩いて帰るしかなかった。おそらく1時間以上はかかるだろう。
――視線が痛い……。
当然、柚希には好奇の目が向けられた。大方の人は一瞬彼女の服装の異常さに目を見開き、すぐに反らした。しかし三人に一人の男性は、何かの撮影かと考えるのかじっくりと彼女を眺めていた。
――死にたい……。
スリッ――――
「ひぐっ……」
アドミラスの粘液の媚薬作用はまだとれていなかった。そのため、乳首が服と擦れ、歩くたびに気持ちよくなってしまう。さっき乳首を重点的にいじられた所為もあるだろう。
柚希が歩く後には、水滴が落ちた妙な後が点々と残った。
それでも何とか人気の無い裏道を選びながら、柚希は家へと戻ったのだった。幸い家の鍵は開いていた。胡桃はすでに帰ってきているようだ。なんて不用心だろうと思ったが、それでも今はそれがありがたかった。
ひっそりと柚希は家の中に入り、急いで自室にこもった。
「あれ、お姉、帰ったの? 魔物はどうだった?」
扉の向こうで胡桃の声がした。
「っ…………な、なんでもなかった。たまたま魔物同士が共鳴しあって集まっただけだったみたい」
「そう、多分こっちもそう。そういえば、何でお姉、部屋にこもってるの?」
「そ、それは……そ、それより、玄関の鍵が開いていた。不用心」
「え、そうだった⁉ ご、ごめん、お姉。しっかり確認したと――――」
扉越しに交わされる会話。その間に柚希は、こっそりと着替えをしていた。体型が出来るだけ隠れる服を選び、媚薬の疼きを何とか我慢した。
その日は結局、全くもって食欲がわかず、そのままベッドに入った。
しかし、いつまで経っても媚薬の効果は消えなかった。いつまで経っても、張ったお腹の奥から熱が湧き上がり続ける。
「まさか……」
「ようやく気づきましたか」
ベッドに横になる柚希に、いつのまにかアドミラスはまたがっていた。神出鬼没にもほどがある。
「あの姿の時の私の精液は、メスを発情させるんです。それを大量に飲み干したあなたは、おそらく明日の朝までその疼きは消えないでしょう」
「そ、そんな……」
アドミラスは柚希の部屋着の上から、胸に触れた。彼女が一番感じる絶妙な力加減だ。
「ふっ…………んん……あぁ♥」
「効果が切れるまで、慰めてあげましょうか?」
柚希の耳元で、アドミラスはそっと囁いた。
「………………………………………………………勝手にすれば良い。ひぅん♥
わ、私からは………………絶対に、求めない」
柚希はぷいと視線をそらした。抵抗の意思を示しながらも、その顔は快楽に歪みつつあった。
「強情ですね、勇者の少女。では――――」
アドミラスは柚希の腰に手を回した。
「勝手にさせてもらいます。悪いですが、今日は寝かせませんよ」
柚希はキスをされ、同時に尻への愛撫も始まる。
「んんん~~~~~~♥」
絶頂しながら、柚希はこれからされる事への大きな絶望を感じた。その中に、ほんの少しの期待を抱いたことに、まだ彼女自身は気づかない。
***
柚希の部屋で繰り広げられる痴態を、その場でカメラを回しながら見ているクリントは、片手間に携帯端末を確認していた。それは柚希が使いこなせていない、本来なら彼女自身の物で、結界から彼が回収したものだった。
「おっ、あちこちでツイートされてる。あぁあ、顔までしっかり撮られてるな。これならさっきの人間にも撮らせてやっても良かったかも」
端末の画面には、異様なほど腹部が膨れ、だぶだぶな服を着て顔を真っ赤にして歩く柚希の姿が映っていた。
「ホームページも閲覧数急増してるし、一週間もあれば身バレしちゃうかもな」
クリントの姿は、目の前でアドミラスの責めに乱れている柚希には見えていない。そんな彼女に向かって、聞こえていないことも自覚しながら、彼は謝ってみせる。
「ごめんね、柚希お姉ちゃん。僕、すっごく嘘つきなんだ」
クリントは笑った。それは、無邪気な悪魔のような笑顔だった。