彼女は媚薬の疼きとともにホテル街へと足を向け、そして快楽に呑まれる。
少女の耐えがたい衝動と予定された喪失が語られる。
~1月29日~
○○○
時計は深夜十二時をまわり、次の日になっていた。
胡桃は夜道を一人歩いていた。一度も来たことがないはずなのに、道や町並みには見覚えがあった。
それは、十五人分のクローンの胡桃の記憶だ。
――私は私しかいないのに……別の私の記憶があるって変な感じ……まるで、自分の中に別人の人生があるみたい。
「はっ…………んん……」
胡桃はまともに歩けていなかった。足取りはふらふらで、何かに掴まりながらでなければ立つこともできなかった。実際、胡桃は現在、ガードレールにもたれながら何とか前に進んでいた。
――躰が疼く……すごい熱っぽいし……。
胡桃は偽胡桃に強力な媚薬を打たれていた。その効果は依然として胡桃の躰をむしばんでいた。
――この疼きを何とかしないと……どうにかなっちゃいそう……。
『セックスよ』
偽物の胡桃の言葉が頭に何度も再生された。
「ダメよ……それだけは……絶対に――――――あれ?」
胡桃は気づけば寂れたラブホテル街を歩いていた。知らない街であるのはずだが、足は勝手に動き、そしてここへと辿り着いていた。
このラブホテル街は、十五人のクローンの一人が通っていた場所だった。クローンの胡桃たちは、それぞれ示し合わせて別の街で援交活動をしていたようだ。確かに、同じ街に同じ人間が十五人もいればどこかでおかしく思われてしまうだろう。そうならないように気をつけてはいたらしい。
「うっ…………」
胡桃の脳裏にある光景が浮かぶ。友達に連絡を取るような感覚で男性にコンタクトを取り、自分のお菓子をあげる気軽さで躰を売る自分がいた。そして、半ば中毒的に男との行為を楽しんで行っていた。
――違う……こんなの、私じゃない……。
しかし、躰の疼きはその記憶に反応して、さらに増していく。
十五人の胡桃たちはそれぞれ別の顧客を何人も抱えていた。その顧客の情報を今の胡桃は全て知っていた。ネット掲示板への書き込みの仕方も、胡桃たちが使っていたアカウントのIDやパスワードも全て頭に入っていた。
――この端末からでも、掲示板に書き込める……。
胡桃が持っている携帯電話は普段彼女が肌身離さず持っている物だ。しかし、先刻クリントたちに掴まっている間に、偽胡桃に色々操作をされていたようだ。アドレス帳を見ると、十五人の胡桃たちが相手にしていた顧客の連絡先がずらりと並んでいた。
その数――――――――127人。
「こんなに……」
こうして並べられると莫大な人数だ。1人当たり8人から9人の顧客を抱えていたと言うことだ。
――このどれかを選んで電話を掛けるだけで……この疼きを解消できる……。
ゾクッ
「だ、ダメよ……何を考えてるのよ。そんなこと、絶対にしないんだから」
必至に思い浮かぶ思考を遮る。
――偽物はああ言ったけど、オナニーだけでだって解消できるはず……どっちにしろ、薬の効果が切れれば収まるはず……。
ジュクッ…………
「んっ……」
疼きの波が胡桃の子宮を襲った。なんとかそれを目を瞑って耐えきり、自分の姿を改めて確認する。
さすがに勇者の服のまま出歩く訳にいかないため、換装して元の服に戻っている。ゆったりめの水色スウェットに、白いTシャツ姿だ。インターホンで来客を迎える程度ならまだ良いが、真夜中のホテル街を歩くには似つかわしくない格好だ。しかし、だからと言って小脇に抱えた、紙袋に入っている学校の制服を着る方がおかしい。
――携帯はあるけど財布はないし……どうやって過ごせば……。
躰の疼き以外にも問題は山積みだった。里に連絡を取れないということは里に帰ることも許されないということ。家に戻って財布を取りに帰ることもできない。普通に寝食にも困るレベルだった。
――…………援交すれば、その心配も無くなる……。
ふとよぎった考えに、胡桃は戦慄する。こんな格好の少女をどこかが雇ってくれる場所があるとは思えない。援交は、そんな彼女が生きるためのお金を稼ぐもっとも手っ取り早い方法だった。そして、そのための環境は全て整っている。
「いや……ダメよ……。だからって……」
ズクンッ――――――
「はうっ……」
もう何度目か分からない疼きの大波が胡桃を襲う。妙に自分の心音が大きく聞こえた。息も荒く、意識も少し朦朧としてきた。
「あれ、もしかして胡桃ちゃんじゃないか?」
突然後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこにはスーツ姿の三十代ほどの男性が立っていた。かなり細身の色白だ。
胡桃はその顔と名前を知っていた。確か、十一番目のクローンの胡桃の顧客だ。
名前は、
「イノサキさん……こんばんわ」
胡桃としては初めて会う相手だが、記憶としては何度もあって躰を売った相手だった。
「こんなところで会うなんて、偶然だね」
「そ、そう、ですね……イノサキさん、なんだか少し不機嫌そう」
――な、何を言っているんだろう、私。
思わず口を次いで出てしまった。援交を繰り返してきたクローンの胡桃の習慣が染みついてしまっているのだろう。顧客相手の状態を読み取り、機嫌を取るように会話を進める、そんな習慣が。
「はは、よく分かったね、さすが胡桃ちゃんだ。どうだい、今から」
「い、今からですか?」
今から――その先に続く言葉を、胡桃は容易に想像できた。
「す、すいません、今は……」
ズクッ…………
「ん……♥」
「どうしたんだい? 具合があまり良くないのか? そういえば、いつもと雰囲気が違うような」
「そ、そんなことは……」
『セックスよ』
偽胡桃の声がまたよぎる。
――そ、それは……。
「なぁ、ダメか? いつもより奮発するよ?」
そう言って猪崎は財布から万札を取り出し、それを胡桃に握らせた。
「ろ、六万円……こんな……」
「良いだろう?」
猪崎は胡桃の耳元で囁いてきた。それは彼の癖であり合図だった。これ以上彼の機嫌を損ねることをすればやっかいなことになる。
「は、はい…………」
その恐ろしさを知っている胡桃は、頷くしか出来なかった。いや、正確には、その恐怖はあくまで最後の後押しでしかなかった。
胡桃は、ほんのわずかでも期待してしまったのだ。この疼きを解消してくれる、男とのセックスに。
胡桃は猪崎と二人で近くのラブホテルに移動した。
***
シュルシュルと背後で猪崎が服を脱ぐ音がする。
胡桃はそれを振り向けず、かたまったまま立っていた。ドクンドクンと緊張で心臓が高鳴る。
――何流されてきてるのよ……私は、刃更と以外しない……しないんだから……。
しかし、事は着実に進んでしまっている。
「今日は本番だけで良いよ」
「ほ、本番……ですか」
胡桃が設定してきた料金として、手コキや脇コキは五千円、口での奉仕は七千円、本番はゴム有りで一万五千円、ゴム無しで二万円、アナルはゴム有りで一万円、ゴム無しで一万五千円だ。
六万円をもらって本番だけで良いということは、つまり前か後ろかは置いておいて、少なくとも三回はしなければならない。
「ゴムは……」
「分かってるだろう?」
「そ、そうでしたね」
猪崎はゴム有りを絶対に注文しない。それは胡桃の記憶通りだった。そして、彼は行為前に胡桃がシャワーを浴びることを嫌う。胡桃の臭いが薄くなるから、だそうだ。
――気持ち悪い……どうして、私……こんな人と……。
「胡桃ちゃんは服を脱がないのかい」
猪崎はかたまったままの胡桃に問いかける。
「あ、え、ええっと…………」
「あぁ、そうか。僕を気遣ってくれたのか。確かに……そうだな。それじゃ、一万円プラスして特殊プレイをお願いしよう」
「っ…………」
肩が思わず震える。確かに、特殊プレイは料金をプラスしてすることが出来る。料金はプレイにより変動するが、一万円ものプラスをする特殊プレイはそうそうない。
「特殊プレイ……ってことは……」
「何回かやっただろう? 強姦プレイさ」
ゾクッ――――
その言葉に、背筋が凍る感じがした。
『それだけは嫌』
そう断ろうとして振り返った瞬間、胡桃はベッドに引き倒された。
「強引に行くから、悪く思わないでね。しっかりお金は払うからさ」
「い、いやあぁぁ、は、離して!」
「おう、迫真だね。いいよ、すごいそそる!」
猪崎は胡桃のスウェットを引きずり下ろした。それにより、純白のショーツがあらわになる。
「なんだ、胡桃ちゃん、もうこんなぐしょぐしょに濡らしているのかい? 強姦プレイを期待していたのかい?」
「そ、そんなことない! は、離して! あ、あんたとなんて、したくない!」
「ふふふ、でもしちゃう」
猪崎は胡桃の股間に顔を埋めた。彼の舌がショーツ越しに陰部に触れ、愛液を舐め取っていく。必死に抵抗しようとしたが、媚薬によりほとんど胡桃に抵抗する力は残っていなかった。ここまで来るのにほぼ体力を消費しきってしまっていた。
「あぁ、胡桃ちゃんのおまんこおいしい……はっ……」
「いやぁ、あぁ、な、舐めないで……ああ、ん、はあぁっ♥」
媚薬だけでなくクローンの胡桃の記憶の所為で、本来の胡桃の躰にも影響し、いつもよりかなり感じやすくなっていた。
――気持ちよくなんてない……気持ち悪さしかない……気持ち悪いんだから……。
ビクビクビクッ――――
「んあぁぁぁ、ああぁぁっ!」
胡桃は背中をのけぞらせるほど激しく快楽の天井へと打ち上げられた。猪崎の愛撫が始まってから一分程度しか経っていない。
「いつもよりイクの早いね。いじめ甲斐がある」
「あっ……はっ…………ん、はっ…………」
快感の電撃が脳を貫き、思考が吹き飛ぶ。だから、胡桃はショーツが猪崎に丁寧に脱がされていることに気づかなかった。
ぺちょっ……
ぐしょぐしょのショーツが床に投げ捨てられた音で、胡桃は自分のさせられている格好に戦慄した。
胡桃は下半身を丸出しのまま大きく両脚を広げ、仰向けにひっくり返されていた。
「あれ、胡桃ちゃん、陰毛剃っちゃったのかい? 僕はある方が好きなんだけど、まぁいいか」
胡桃の陰部には毛の一本も生えていない。それは、胡桃が毎日しっかり処理しているからだ。しかし、クローンの胡桃は剃ることをしなかった。猪崎には本物と偽物の区別がつかないため、いつもは生やしている陰毛を今日の胡桃は剃っているのだと勘違いしているのだ。
――いや……見ないで……。
「いつも思うけど、ほんとに胡桃ちゃんのおまんこってきれいだよね。何人もの男のおちんちんを呑み込んでいるとは思えないほどきれいだ。まるで処女まんこだ」
まるでもなにも、今の胡桃は処女だ。冷静に見ればまだその違和感に気づけたかも知れないが、猪崎はすでにスイッチが入っていた。胡桃が恐れていた、スイッチが。
「入れるよ、胡桃ちゃん!」
「ま、待って……待って、お願――――――」
ズップウゥッ――――――ブチッ
勢いよく入れられた肉棒により、胡桃の処女膜は簡単に散った。肉棒は膣壁をゴリゴリ擦りながら、子宮口へと衝突した。
「はひゅ、んあ…………あ、あ……」
――痛みが……ない……。
間違いなく胡桃は処女であったが、疼きが最高潮に達していた彼女は破瓜の痛みを凌駕し、快感を強烈に感じていた。
「あ、熱い……固い……ものが…………入ってる」
――ごめんね、刃更兄ちゃん……私、本当に、処女じゃなくなっちゃった……。
次々と涙がこぼれてきた。処女を守れなかった悔しさ、そして、本気で抵抗しようと思えば逃げられたかも知れないのに、記憶の快楽に負けてしまった自分の、淫乱さに。
――違う……全部、記憶の所為なんだから……私は、私は……。
「あぁ……すごい締めつけ、だ!」
ズチュッ
「はあぁっ!」
これでもかと肉棒の先端が胡桃の子宮を突き上げた。いや、猪崎は胡桃にのしかかるように挿入したため、突き上げると言うより突き降ろすようだった。男の全体重が、胡桃の小さな子宮にかかる。
「あ、ぎ……か…………」
息が出来なかった。しかし、それすらも彼女に快楽を感じさせる要因の一つでしかなかった。
猪崎は快楽に圧倒されている胡桃にキスをした。ニンニクとタバコの臭いがする口臭と唾液が、胡桃の口の中へと入ってきた。
――く、臭い……よくこれでキスしようと思ったわね……。
胡桃の嫌悪にも気づかない猪崎は、舌を絡める濃密な接吻を執拗にしてくる。口の中が男の唾液で一杯になり、鼻を悪臭が突き抜ける。
「んちゅぅ…………ふっ、ん……」
――吐きそう……おえっ………。
「んん、んっ、ふぎゅ、ん!」
キスに気を取られていて、肉棒の抽送に意表を突かれた。
「は、はっ……この、あの女、不倫なんかしやがって……」
ボキュッ、ずちゅっ、ズチッ、ズブブッ
激しい腰の律動をしながら、猪崎は何かブツブツとつぶやき始めた。
「俺がどんな思いで働いてると思ってるんだ……なのにあいつは……あいつはあぁ!」
言葉にどんどん熱が入り、行為にも強引さが増していった。
「あ、あっ、せ、せめて……や、やさ、しく……いぎっ、んあっ!」
「むかつくんだよ、僕の口が臭いとか、セックスが強引だとか! 僕が稼いでんだからどうだって良いだろう、そんなこと! おらっ!」
「ああぁぁっ!」
猪崎は完全にプライベートな鬱憤を胡桃との行為にぶつけていた。
「僕はこんなにもあいつを愛してるってのに、それをあいつは分かってない!」
何度も何度も強く奥を突かれ、胡桃の思考と理性は完全に吹き飛んでいた。
「あ゙ぁ゙ぁ、あ、はがっ、いぎっ、はっ」
「大人しく僕の子を孕んでれば良いんだよ、お前はあぁ!」
男が全力で肉棒を、胡桃の子宮にたたき込んだ瞬間、その欲望が爆発した。
ビュクッ、ビューッ、ビューッ、ビュルン、ドクドクッ
胡桃の子を宿す小さな袋に、男の容赦ない精液の濁流が注ぎ込まれた。同時に胡桃自身も脚を振り乱すほど絶頂していた。
「あぁ、あっ♥ な、中に……熱い、精液が…………こんなに……はっ♥」
――刃更兄ちゃん……じゃない……のに、どうして、こんなに気持ちいいのよぉ……♥
「まだだぁ……もっと僕を楽しませてくれよ」
――う、嘘……ま、まだ……するっていうの……。
ゾクゾクッ――――――ゾクゾクゾクゾクッ!
今のがまだ続く、そう分かった瞬間、嫌がる思考とは別に、躰は芯から震えた。まるで、これからまだまだ刻まれる快楽に悦び振るえているようだ。
――違う……私は望んでなんかない。私は、私は……。
ズッブゥッ
「はあぁぁぁぁぁあぁ♥」
料金的には、あと二回は続く。そのことに、胡桃は打ち震えていた。その理由が、絶望感だけではないことに、すでに彼女は気づいていた。
***
胡桃はシャワーを浴びていた。
昨夜はずっと猪崎に侵され続け、朝に目を覚ますと追加分とホテル代のお金がベッドの脇に置かれて、彼はいなくなっていた。
テーブルには書き置きが残っていた。
『楽しかったよ。もし妊娠しちゃったらしっかり認知してあげるから。その時は愛人契約を結ぼう』
胡桃はそれをビリビリに破り捨てた。
愛人契約とは、クローンの胡桃が援交の延長として儲けた仕組みだ。月に十五万をもらうことで、その相手と恋人関係を結ぶというものだ。クローンは現在、合計で三人の男性と愛人契約を結んでいた。つまり、それは同時に、胡桃が結んでいる愛人契約の人数でもある。
記憶では分かっていたが、いざ自分のクローンが行っていたことの恐ろしさに、胡桃は震えていた。気分転換がしたくて、とりあえず躰を洗っていた。
その最中、胡桃は涙が止まらなかった。次から次へと涙がこぼれては、シャワーのお湯に流さた。
完全に汚れてしまった自分、そして、それを心のどこかで楽しんでいた自分に、嫌気がさした。
ひとまず胡桃はチェックアウトをしてホテルを後にした。フロントの人と会話をしなくて良いというのは救いだった。
●●●
クリント様の目によれば、素体となった胡桃は早速処女を失ったようだった。クリントは無数の人形を素体の胡桃の周囲に配置し、常に監視しているのだ。
――無様ね……。
十五番目の胡桃はそんな感想しか抱かなかった。
その日、胡桃ははずっとネットカフェの個室に引きこもっていたらしい。おそらく何も考えたくなく、誰とも話したくなかったのだろう。それができるだけのお金は十分に持っていておかしくはない。
「あぁあ、処女失っちゃったんだね」
その日の夕方、偽胡桃は胡桃の泊まるネットカフェの個室を訪ねた。家にいる柚希には買い物だと嘘をついた。その嘘に気づけるほど、今の柚希にも余裕はない。
「どうやって……ここを……」
「クリント様の目から逃れることは出来ないのよ。それはいいわ。あんた、躰に異変はない? 例えば、無性に喉が渇く感覚とか」
「っ…………それは……」
図星を突かれてて胡桃は動揺する。
「それは私が昨晩注射した薬の禁断症状ってやつ。その渇きは、普通に水を飲んだくらいじゃ絶対に潤わない。潤わせるには、この薬が必要」
そう言って偽胡桃は、胡桃に褐色の小瓶と小型の特殊注射器を見せてやる。
「逆に、これがなければその渇きはどんどん増していく。どう? この媚薬、私から買わない?」
「買う……そんな危ない薬……誰が……」
「でも、これがないとその乾きは直らない。この媚薬、気持ちよかったでしょう? 多分、これがないセックスは物足りないわ。まぁ、そのことは私たちと記憶を共有したあんたなら分かってると思うけど」
「っ…………それは……」
――本当なら一回くらいの使用で禁断症状は出ない。でも、十五人ものこの薬の依存者の記憶を持ったあんたなら、簡単に禁断症状が出てもおかしくない。いや、正確には、禁断症状が出ている錯覚をしているに過ぎないんだけどね。
「大丈夫、少しずつ使っていれば脳が壊れることはない安全な薬よ。ね? 買った方が得だと思うよ。一瓶で三万円、それで一週間は持つ。これからの儲けを考えれば、別に高額ってほどじゃないでしょう?」
「そ、それは…………」
目の前の胡桃は葛藤しているようだった。
――ふふふ、単純ね。
「ねぇ、中出し、気持ちよかったでしょう?」
「っ…………そ、そんなことっ――――」
「それを、もっと楽しめるのよ。良いことだと思わない?」
偽胡桃は知っている。自分のことなら、何でもだ。
だから、例え本物の自分だとしても、この話に首を縦に振らないわけがないことを、当然のように予想できた。
胡桃はその場で十分以上考え込んでいた。そして結局は、涙を流しながら小さく頷いた。
「まいどあり。大丈夫、刃更が澪を見付ければ終わる生活だから、今のうちに楽しめば良いよ」
偽胡桃は、心にも思っていないことを言った。
***
その日から、胡桃の援交生活が始まった。
禁断症状から逃れるために媚薬を服用し、媚薬による躰の疼きを解消するために男とセックスし、セックスすることで得たお金で媚薬を買う、そんな負のスパイラルの生活が。
次は柚希編を投稿予定です。
今週中だといいな(他人事かよ)