寝室のベッドの上に、三人の人影があった。一人は全裸の妙齢の女――長谷川千里。残る二人はクリントとクリントそっくりの自律人形だ。千里には、どちらが本物かはどうでも良かった。
一人のクリントはベッドに仰向けになり、その上に千里が騎乗位で行為に及んでいた。彼女は必死に躰を上下させながらも、もう一人のクリントの肉棒にしゃぶりついていた。
「じゅるっ…………ふっ、ん…………んいっ…………ぐぽっ……」
――もう、何日経ったのだろう……考えることすら……億劫だ。
「おい、もっと激しくしないと射精できねえぞ」
「わ、分かっている……んあぁ♥」
千里の躰は完全に開発されてしまっていた。騎乗位でどうすれば上手く男を悦ばせることができるか、完全に熟知していた。
彼女は躰を上下させながら、ゆっくり腰をグラインドさせた。それにより、肉棒の凹凸が膣壁のあちこちを擦りあげた。
「ああぁ♥ んんっ、んあぁ♥」
「よし、出すぞ」
「ぅ…………んあぁぁ、ああぁぁ♥」
ビュルル、ビュルルッ――――ビュグビュグ、ドクッビューッ
膣内と口内に、二人の精液が解き放たれた。もう何十回、いや、何百回も経験してきた感覚だった。
「んぃ…………♥ ちゅぷっ……」
口にたっぷり含んだ精液を、千里はすぐには飲み込まなかった。きゅっと唇と結び、頬の筋肉と舌で口内の精液をぐるぐるとかき回した。口中に染み込ませるように、充分に味わうように、長いこと液を泳がせた。
――不味い……のに、もうこの味には慣れてしまった……。
「飲み込んで良いぞ」
「っ…………ごく……きゅっ…………ごきゅ、んく…………♥」
のどごしを確かめるように、精の泥を飲み下していった。千里はしばらく、クリントの精液しか口にしていない。
「もう飽きたって顔だな」
「それは…………当たり前だ……」
「仕方ねぇ、結界をキッチンまで広げてやるか。いや、いっそ部屋中に結界広げるか」
「キッチン、まで…………」
基本的に調教の最中は、寝室、トイレ、そしてバスルームの行き来しか出来なかった。その移動は魔法トンネルを介して行われていた。それを、部屋全体にすると言うことは、かなり魅力的だった。
「キッチンまで広げれば、冷蔵庫の中身にも手を出せるようになる。大丈夫だ、食材も全部時間経過としては数分しかたっていないから、賞味期限については考えなくて良い。勝手に料理で作れば気も紛れんだろ」
そう言ってクリントは、寝室から出て行った。
何を企んでいるのか、やたらと優しかった。
――あいつのことだ……絶対何か仕掛けてくるに決まってる。
しかし、料理で何か別の味を食べられるというのは嬉しかった。基本的にここでは、何も食べなくても空腹になることはなく、栄養摂取も全て魔法で行えている。言ってしまえば何も食べる必要はないが、精液ばかり口にしていると気がおかしくなりそうだった。
千里はクローゼットの部屋着に着替え、久しぶりにリビング、そしてキッチンに足を踏み入れた。
結界内の調教はもう一ヶ月以上に及んでいた。物覚えが悪くなると言う理由から、一応は就寝時間がしっかり確保されていたが、起きてすぐに始まる調教に彼女はもう辟易していた――――うんざりしていると、思おうと意識していた。
――こんなやつの行為……なにも気持ちよくなんかない。調教も……ただ不快なだけ……。外の世界の一時間が、終わるまでの辛抱だ……。
しかし、外の世界ではまだ15分も経過していなかった。
冷蔵庫の中身は、当然ではあるが一ヶ月前の状態のままだった。しかし、どれも新鮮なままだ。
千里は簡単な料理を作ることにした。冷蔵庫の中身を更新できるとは思えないため、食材は大切に使わなければいけない。目に付いたのは、麺をゆでてソースを絡めるだけのカルボナーラにすることにした。刃更のためならば腕によりをかけて作るが、自分のために、しかも、クリントしかいない空間で手の込んだ料理をする気にはならなかった。
麺をゆで終わり、暖めたソースと絡めている最中、、突然後ろから抱きすくめられた。他でもない、クリントだ。
――包丁で刺してやろうか……。
「東城刃更にも、こうやって後ろから抱きすくめられたことあるだろう?」
「っ…………どうして、それを…………」
「料理の最中に男にこうしてもらうのが夢だったんだろう?」
「…………お前にされて嬉しいことなど何もない」
まるで、刃更との思い出を馬鹿にされたような気がした。本当に包丁で刺してやろうかと思ったが、ただの包丁が通用するとは思えなかった。
ずぷぷぅ…………
「はぎゅぅ…………んん…………」
下着を着けるのを面倒がってノーパンで料理を作ったことが徒になった。千里は後ろからクリントの肉棒に貫かれてしまった。
「終わるまで待てないのか、お前は……んあっ…………」
ドチュッ――――
「んあぁっぁぁあ!」
膣奥へと一突きで、食材も包丁も手から取りこぼしてしまった。
「待て…………ん、はぁぁっ、んあぁ……」
意識が陰部に集中しているところを狙われた。部屋着の前のボタンが開けられ、胸にクリントの手が差し込まれた。あっという間に右乳房があらわになった。
「く…………んあぁっ、こ、この…………」
クリントの胸への愛撫が始まった。乳房全体を揉みしだき始めたと思ったら、乳輪をなぞるように指を這わせた。
「あぁあ♥ やめ……はぁぁ」
膣内を突かれる激しい快感と、胸を丁寧に責められる甘い快感のダブルパンチが、千里の思考を真っ白にさせる。
カルボナーラがどんどん冷めていくなか、両方の刺激が最高潮に上り詰める。
「あ、あぁぁ、んぎっ、ふぃ、んあぁ♥ はあぅ、ああぁっ」
膣内の男根が大きく膨らんだ瞬間、千里の右乳房を愛撫していた彼の右手の動きに変化が起きた。乳房を強く掴み、乳首の向きをカルボナーラへと向けた。
「い、いやぁ…………その向きは……だめだぁ……ああぁぁぁぁああぁ!」
ビュルルッ、ビュル、ビューッ、ぶじゅるぅ……ビュッ――――
千里の子宮口へと突き付けられた亀頭の先端から精液が吐き出された。それと同時に、千里は絶頂を迎えた。それにより、丁寧に方向が決められた乳首の先端から、白濁とした母乳が吹き出た。噴き出した母乳は、きれいに皿の上のカルボナーラにかかった。
ぴゅるるぅっ、プジュッ…………ブシュゥゥ…………
「はぁぁぁ…………あぁぁ♥ そんなぁ…………」
脚に力が入らなくなり、その場にへたり込んだ。
「隠し味に自分の母乳だ。今度東城刃更に作ってやれば良いじゃないか?」
「…………死ね…………」
「食べたら寝室の来いよ。左胸の母乳も絞ってやるから」
そう言うとクリントは、魔法トンネルでどこかに消えた。
「はぁ…………はっ、はぁ…………」
さすがに自分の母乳がかかったカルボナーラを食べたくはなかった。しかし、試しにと思い一口食べたら、悲しいほど美味しかった。
――くそ……。
久しぶりの味の付いた食べ物だったため、結局は全部平らげてしまった。
皿を洗いながら、深く千里はため息を吐いた。
――早く……東城に会いたい……東城……。
彼に対する思いだけが、今の千里にとって正気を保つ最後の砦だった。
***
それからさらに数日が経過した。
「これは……一体……」
千里は両腕を縛られ、天井から吊し上げられていた。ギリギリつま先が床に付く高さだったため、肩が自分の体重で激しくいたんだ。
「これだよ」
クリントの手には、いわゆる一本鞭があった。グリップ部分と一本だけの鞭からなるものだ。
「SMプレイにも対応できるようにならないとな」
「まさ、か…………」
クリントは一本鞭を振りかぶった。
ビシィィ――――――ィィン
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!」
鞭は強く千里の太ももに打ちつけられた。すぐに皮膚が真っ赤に痛々しく腫れ上がる。
「こんな痛みでも、お前は気持ちよくならないとな。セックスだけじゃなくな」
「はっ…………お前との行為に、気持ちよさなど感じたことは、ない……」
「ははは、まだそんなことが言えるのか。さすがは十神の一人だっただけはある、なぁ!」
ビシィィ――――――ィィン
「んああぁぁぁあぁぁ! や、やめてくれ……こんなの……」
「止めるかよ!」
クリントは何度も鞭を千里の躰にたたきつけた。太ももから、尻、腹部、背中、腕、そして胸。何度も何度も打ちつけた。
ビシィィ――――――ィィン
ビシィィ――――――ィィン
ビシィィ――――――ィィン
全身の皮膚がヒリヒリと痛む。それどころか、衝撃は骨にまで及んでいるのでは無いかと言うほど強かった。鞭と肌がぶつかり合う音と、彼女の叫び声が部屋中に響いた。
――痛すぎる…………こんなの……耐えられない…………!
簡単に心が折れてしまいそうだった。しかし、鞭打ち回数が50回を超えたころだった。
ビシィィ――――――ィィン
「ああぁぁあぁぁ!」
ピュルッ――――――ブジュゥゥッ
ミミズ腫れが至る所に浮かぶ乳房、その先端の乳首から白濁した母乳が吹き出た。
「っ………………なっ…………はっ…………」
千里はひやりとした。今、自分の躰に起こったことが信じられなかった。
「今、イッたな?」
「っ……い、いや……違う。そんなことはない……私は……」
確かに痛みしかなかった。そのはずだった。しかし、千里の躰は確かに絶頂を迎えた。母乳というオーガズムの証明を示しながら。
「イッたな⁉」
ビシィィ――――――ィィン
「はあぁぁぁぁっ――――――!」
プシュッ……プシャァァァ
今度は潮を噴いた。こうなってはもうごまかしようがなかった。
千里は、鞭を打たれることで絶頂してしまっていた。
「思ったより早かったな。100や200は鞭打つ必要があると踏んでたんだが……元々お前は、Mの素質があったってこったな」
「そんなことはない…………私は……Mなんかじゃ……」
ビシィィ――――――ィィン
千里の言葉を遮るように、クリントは鞭を彼女の背中に打ちつけた。
「いぎいぃぃぃぃぃぃ♥♥♥」
背中をのけぞらせるほど、豪快な絶頂を迎えた。その顔は、クリントに子宮を責められた時と同じように緩んでしまっていた。
「そうだな、これからしばらくはこっちの方向で調教してやろう。ドM淫乱にしてやるよ」
ビシィィ――――――ィィン
「んあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙あ゙ぁ゙♥♥♥」
プシュゥ――――――――ジョロジョロジョロジョロ……
絶頂とともに千里は失禁し、黄色い尿を床にぶちまけた。
開花した千里のマゾヒスト性は、徐々にその規模を増大させていく。
***
千里は奇妙な格好をしていた。
脚を大きく広げた状態でしゃがみ、両手を縛られた状態で頭の後ろに回していた。当たり前のように全裸である他に、彼女はアイマスクで目隠しをされていた。
「お願いだ…………トイレに、行かせてくれ。もう、限界なんだ……」
千里は目の前にいるはずのクリントに、必至にトイレに行かせてもらえるように懇願していた。トイレとは小ではなく、大の方だった。
「だったら、お前のしてもらいたいことを口にするんだな」
クリントの手には、相変わらず一本鞭が握られていた。それを弄ぶように、くるくると回している。
「っ…………だから、言っているだろう……私は……トイレに……」
「そうじゃないだろう? 今まで俺様は、お前に何をしてきた?」
千里は全身に鞭の跡が赤く残っていた。何日も鞭をされ続けた結果だ。
「………………」
――本当に……その言葉を言えと……?
千里にはクリントが何を求めているのか分かっていた。それを想像しただけで、千里の乳首は今までにないほどに硬くなり、淫裂からはとろりと蜜が滴り、フローリングの床に垂れていた。
「今更常人ぶるのか? この俺様にその手は効かない。一体何日一緒にいると思っているんだ」
「っ…………」
――いやだ、言いたくない……でも、このままこの男の前で脱糞など……。
千里は言うしかなかった。その言葉を――――彼女にとって、本当にしてもらいたいことを。
「……………………叩いてくれ」
「あ?」
震える声。しかし、自分の欲求はもう分かっていた。
「その鞭で、私をもっと、叩いてくれ…………痛いのが…………いいんだ。だから……」
それが千里の欲求だった。それを簡単に口にできたのは、彼に肉棒で犯されるよりも刃更に対する裏切り要素が少ないような気がしたからだ。しかし、確かに千里は、鞭で叩かれなくなったことで妙なストレスが生じていたのだ。それは明らかに、「痛み」の物足りなさだった。
クリントによるSM調教は、実に1ヶ月に及んでいた。その間で、千里は完全に目覚めてしまっていた。痛みが快感に変わる、その充足感に。
「私は言った……だから、早くトイレに……」
「まずはご褒美だ」
クリントは、無防備な千里の淫裂に向かって、鞭を強く打ちつけた。どこよりも敏感な女性器への激痛が、千里を貫いた。
「んあ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁ♥♥♥!!!」
千里は豪快に絶頂をした。母乳を振り乱し、派手に啼き叫んだ。
躰の痙攣は、我慢していた便意を呼び起こした。
ぶりぶりぃ……ぶりゅぅ、ブブブ…………ぶりぶりゅるぅ――――
脚を広げてしゃがんだまま、千里は脱糞をした。クリントの前だけではしたくないと思っていた行為を、自分から望んだ鞭打ちによりしてしまった。
「あが…………はぁぁ♥ はあ…………んぁ、あ゙ぁ゙…………」
千里は完全に、淫乱なMへと変貌してしまっていた。その様を、クリントは満足そうに見ていた。
「そろそろこの調教はおしまいだな。さて、次はどんなことをしてやろうか。時間はまだまだあるぜ」
クリントはだらしなく開けられた千里の口に、指を入れて自分の方へと向かせた。
とろんとした千里の瞳は、焦点が定まらないままクリントを見ていた。
***
状態保存と時間操作の魔法がかけられた結界が、千里のマンションの部屋全体にかけられたことで、行動範囲は格段に広まった。調教の合間に掃除や洗濯はしていて、ベッドシーツも毎日取り替えていた。しかし、今千里はベッドに横になる気にならなかった。全裸のまま寝室の隅に座り込み、虚空を呆然と見ていた。SMプレイの調教は数日前に終わり、肌に鞭の後は残っていなかった。
結界内の調教は始まってから、もう三ヶ月が過ぎていた。食材も全て食べ尽くし、味に関して気を紛らわせることが出来なくなった。終始クリントと二人で顔をつきあわし、ほとんど彼と同棲生活をしているようなものだった。ひたすらに、様々な方法で彼に犯される日々。ここまで来ては、もう彼としていないプレイはないようなものだった。
ブピィッ………………
彼女の女性器は大きく口を開けたまま広がり、胎内に入りきらない精液が噴き出して床を汚した。最近はずっと膣内と子宮にクリントの精液が入ったまま過ごしている。かき出してもすぐに次の精液が注ぎ込まれてしまうため、途中から馬鹿らしくなって止めたのだ。
「まだ寝てねぇのか? そろそろ寝る時間だろ」
いつのまにかクリントは千里の前に立っていた。
「…………眠れないだけだ」
「吐き気があるからか?」
「っ………………!」
千里は咄嗟に、自分のお腹に触れた。彼女の下腹部は、以前よりわずかに膨らんでいた。もちろん、太ったわけではない。
「まぁ、当然だろうな」
「違う……私は決して、…………お前の子など妊娠したわけではない」
「へぇ、お前、孕んでんの? 俺様は何も言ってねぇんだが?」
「っ…………!」
完全に自白させられる形になった。
千里は妊娠していた。危険日に調教が開始されたことを考えれば、妊娠三ヶ月だろう。
しかし、千里は必死に首を振る。
「これは……太っただけだ。決して……」
「でもお前、生理来てねえだろう」
「それは……」
それは確かだった。千里はこの結界内に閉じ込められてから、生理用品を使用していない。この三ヶ月の間、1度もだ。
突然クリントが千里を押し倒して、両手を頭の上で拘束し、彼女に馬乗りになった。
「っ…………」
「確かに、言われてみれば少し膨らんでいる気もするな」
千里の下腹部は、それこと言われて初めて気づく程度ではあったが、確かに以前より膨らみを帯びていた。
「違う…………太っただけ…………」
「そういえば、さっきトイレで調教したとき、お前漏らしただろう? その尿にこんなものを使ってみたんだ。人間の作る道具は便利だな」
そう言ってクリントが見せてきたのは、妊娠検査薬だった。一見体温計のようなその見た目の胴体には二つの窓が付いていて、それぞれには二本の線が浮かび上がっていた。
「陽性だったぜ」
「っ………………違う……そんなの、当てにならない……信じられるものか」
何度も千里は首を振った。その拍子に躰が揺れ、再び淫裂から精液が溢れ出した。
「まぁ、結界を出ればそれはなかったことになる。気にすんな。お前の純潔は守られてるよ。例え、どんなにボテ腹になろうともな」
クリントは笑いながら部屋を出て行った。
「違う……違うぞ、東城……私は、お前を裏切ってなどいない。ここから出さえすれば……」
千里はその場に蹲った。そして、静かに肩を震わせた。彼女の精神は限界に近づいていた。
外の時間は、45分が経過していた。あと15分。
***
「あぁ、はぁ…………♥ んあぁっ♥ はぎゅ♥ あぁあ♥」
ベッドの上で、千里に覆い被さるようにクリントが腰を動かしていた。彼の巨漢に華奢な彼女の躰が軋む。
ビュルルルルッ、ビュグンビュググ…………ドクッ…………
「はぁぁぁあぁ……あっ、あぁ……中にぃ…………出てる……」
「お前の膣、大分緩くなった。まぁ、四ヶ月間も四六時中犯してればこうもなるか」
ぶびゅっ…………
肉棒が引き抜かれた淫裂から、精液が逆流し溢れだした。
千里のお腹はさらに膨らみを増していた。胸も以前より大きくなっていた。完全に妊婦の体型だった。
「は…………はぁ………………」
千里は無意識に、膨らんだお腹をさすっていた。
「なんだ? まさか俺様の子が愛おしくなったか?」
「………………そんな、こと、は…………」
千里の反応はかなり薄かった。否定の言葉すら力がこもっていなかった。思考すらも放棄しているようだった。
「まぁ、約束通り、調教は一時間だ。おめでとう、千里。俺様の調教はこれで終わりだ。たった今、一時間が経過したところだ」
「…………おわ、り…………?」
一瞬彼女は、その言葉の意味を理解できないようだった。
「その言葉の通り、結界の外で一時間が経ったってことだ。結界内では、125日が経過したが」
――125日…………そうか。そういえば、期限付きの調教、だったな…………。
放心した状態の千里を無視し、クリントは指を鳴らした。
「それじゃ、結界を解くぞ」
パチンと音が鳴った瞬間、辺りが光に包まれた。酷くあっさりとした調教の幕切れだった。
~10月28日~
目を覚ますと千里は、自分の寝室のベッドの上に横たわっていた。
「………………?」
妙な感覚だった。突然自分の躰が別の躰にすり替わったような違和感があった。ベッド横のテーブルに置いたデジタル時計を見ると、そこには『10/28 21:24』とあった。
「そうだ……まだ、十月末だったんだ……」
125日、約4ヶ月間が過ぎていた。しかし、実際は一時間しか経過していない。10月28日は、昼間に普通に出勤をして、鬼山に口を汚されて、その後刃更のお見舞いに行き、疲れて帰宅したのだ。それから、たった一時間しか過ぎていない。
自分のお腹をさすっても、そこには膨らみは何もなかった。当然だ。結界に入る前は妊娠どころか、純潔すら失っていないのだから。
「忘れてた……」
――何を…………?
不意に口をついて出た言葉に、千里は驚いた。そして、その事実に驚愕した。
「ち、違う…………そんなことはない。私は、終わるのを待っていたんだから……あの、地獄のような日々を…………」
千里は失念していたのだ。クリントに調教される日々に、終わりがあることを。意識を快楽に完全に任せ、徐々に膨らむ腹部に思いをはせていたのだ。
「良かった。終わって……良かった……妊娠が、なかったことになって……良かったんだ。これで、東城に会える」
自分に言い聞かせるように千里は何度もつぶやいた。
視界の隅のカレンダーに気づいた。10月29日、つまり明日の土曜日のところに、出勤という文字が書き込まれていた。
――そうだ、仕事が溜まってるから、休日出勤する予定にしてたんだった。
四ヶ月前に自分の予定を何とか思い出した。
「もう…………寝よう…………全部、夢だったんだ。なかったんだ」
そこで漸く、自分が刃更の『心』の断片を集めるために、沢山の男達と行為に及ばなければいけないことを思い出した。
「結局、クリントから何の情報も聴いていない…………くそっ」
千里は布団を頭から被り、蹲った。
そこに、クリントが現れる様子はなかった。
「殺す……絶対に、殺してやる…………」
クチュッ…………
気を紛らわせるように、千里は陰部に手を伸ばした。
――一回イッたら寝よう……全部、忘れよう……。
結局千里は、十回以上絶頂を繰り返すまで自慰行為に耽り、そのまま朝を迎えた。
毎日投稿週間六日目です
と言うことで千里さんの長い一時間のお話でした。
千里さんはクリント陵辱編と学園編の交互で基本進んでいきますが、今回の前後編はどちらもクリントとの絡みでしたね。つまり、次回は学園編です。
明日こそ澪編です。ゾルギアに堕ちた澪がどんな道を歩むのか。もし機会がありましたら、そちらも読んでもらえたら嬉しいです。