「くっ、ひっひっ……。ふひひひひ……」
平日。
少し早い夏の到来を伝える、日光ぎらつく真っ昼間。
もう嫌というほど長い付き合いになる小学校。
無駄にでかい学舎の、無駄に広い教室の席。
そこで皇啓太は助平むき出しの気色悪いニヤケ面を浮かべていた。
ニタニタ、ニマニマと。
世間一般的な男子小学生のものとは遥かにかけはなれた、『ボクは変態です』と言わんばかりの不審者主張の激しいものすんごい面相。
ただいま算数の授業の真っ最中だとか、周りのクラスメイトから「なにこいつキモッ」「とうとう頭イカれたか」的な軽蔑・哀れみの含む視線砲撃などおかまいなしに。幸せ100%のショッキングピンクオーラを盛大に振り撒いて、啓太はだらしなく笑っていた。
……まあ仕方がないのかもしれない。
今の啓太の人生はこれまでのそれは全く比較にならないほどに充実し、きらびやかな薔薇色で満ちているのだから。
(あー、早くおウチに帰りたいなァー)
昨晩のリアスとの情事を鮮明に思い出しながら……、啓太は心の底からそう切望した。
あの日。
『二次元の女の子とエッチなことできちゃうぞノート』を拾ったあの日。
『ノート』でリアス・グレモリーを召喚し、華々しい童貞卒業式を決行したあの日からもう一週間。
あれからというもの、啓太はリアス相手に毎晩毎晩盛りまくっていた。
学校から帰ったら即行でベッドイン。
本人の意思など完全に無視し、裸にひんむいて押し倒し、濃厚なスペルマを彼女の中へと注ぎ込む毎日。
休日のときはさらに酷かった。
私室で、居間で、風呂場で。まるで発情した犬っころの如く、一日中ヤってヤってヤりまくったのだ。
何回射精しても衰え知らずな自分のムスコには、我ながら全くもって感服する。
(ホント信じられないなー。夢でも見てるみたい)
まさしく薔薇色の聖なる性活を振り返りつつ、啓太は椅子の背もたれに思いきり身をゆだねる。
実際、とうてい信じられないことだ。
ついこの前までの惨めで無様ないじめられっ子でしかなかった自分が、今となっては年上で悪魔属性なデカパイ女子高生と―――あのリアス・グレモリーとのセックス漬けな毎日を謳歌しているのだ。
本来ならば、自分のような子供なんかでは釣り合わない存在の美女。……というより普通なら手の届くどころか、接触することすら叶わない二次元の非現実的存在。その彼女をこうして好きなようにレイプし、弄ぶことができている。
全くもって嘘みたいな本当の話である。
それもこれもみーんなみーんな、こいつのおかげと言っていい。
あふれるニヤケを何とか抑えつけながら、机の上にて置かれてある『二次元の女の子とエッチなことできちゃうぞノート』を手に取った。
この『ノート』。二次元の女の子たちをこの現世に招く魔法の道具。
一度呼び出したら元の世界に返せないなどの少々めんどい制約があるみたいだが、十分にすごいチートな『ノート』。
全てはこの素敵な『ノート』による賜物だ。
これさえあれば二次元の女の子といつでも対面できる。これさえあれば二次元の女の子にいくらでもエロいことができる。
これさえあれば―――。
「なにニヤついてんだよ、エロザル」
そうして幸せな考えを膨らませていた最中。
聞き慣れた憎たらしい女子の声が、真横よりいきなりふりかかってきた。
「………」
至福の妄想タイムの邪魔をされた啓太は内心イラッとしつつも、声の発生源―――自分の隣りの席へと目線を移す。
そこにいるのは毎度お馴染みのアイツだ。
パツキンに染めたセミロング。若干つり目がちなきつい眼差し。日本人にしてはやたらと白い肌。
このクラス、いや学校におけるカーストで上位に入る女子生徒が一人。その名は西園寺茜。
啓太にとって忌々しき天敵である彼女は、膝組みしながらこちらに思いきり眼を付けていた。
「さっきからニタニタ笑いやがってよぉ。キモいんだよ、オマエ」
授業中なのにもかかわらずノートの板書すらせず(啓太もだが)、ズケズケと毒を吐いてくる金髪女子小学生。
あい変わらずなこの毒舌娘に、啓太は半ばうんざりと肩をすくめた。
彼女、西園寺のはクラスの女子グループのリーダー格。さらに言うと啓太を日々虐げる、憎きいじめっ子たちの一人である。
この娘はそのいじめっ子集団の中でも特に口が悪く、おまけに性格も悪い。
普段はシカトこいているくせして、こうしてときたま啓太に絡んできては罵詈雑言を浴びせてくるのだ。
正直、面倒くさい。めちゃくちゃ面倒くさい。
「別に……、なんでもないよ」
「はァ? 何だよその態度」
「うるさいなぁ……」
心底うっとしげに眉をひそめながら啓太は、今にも飛びかかってきそうに息巻く茜を半眼で見つめた。
茜との付き合いはこの小学校入学したときから。つまりは一年生からになる。どういう因縁か、そのときから今日までずっといっしょのクラスなのだ。
言ってしまえば幼馴染みたいなものか。まあ幼馴染といっても二次元にありがちな甘酸っぱい関係性なんかこれっぽっちもありゃしない、まごうことなき腐れ縁。本音ではこんな嫌な縁とはさっさとおさらばしたいと、常日頃から思っている。
なにしろ、元が美少女とはいえ口調が男っぽい上暴力的だし、いじめグループのリーダー格という何ともマイナスな特徴の持ち主なのだ。
いくら啓太がドスケベであっても、いくら女好きであっても、茜とはあまり関わりたくないのが本音だった。
(それに貧乳だしね、こいつ)
だいたい啓太はパイオツのでかい年上お姉さんがタイプなのだ。
まだまだ発育が発展途上である同年代のペチャパイ女子など、基本的には眼中にない。…基本的には。
「………オイコラいい加減にしろよテメー」
そんな啓太のそっけない態度が癪に障ったらしく、茜はすっかり冷えきった表情になっていた。
これ以上機嫌を損ねるのはまずいか。
啓太はハイハイゴメンゴメンと軽い感じで謝りながら、とりあえず彼女の機嫌をとる。
以前の啓太であれば茜の凄みに怯え、みっともなく媚びへつらっていたであろう。だが、今の啓太はもう昔とは違う。
童貞を捨て、大人の女の味を覚えた。何より大人の女を屈伏させ、その悦楽を知った。それが彼のトリガーとなったのだ。リアスとの肉体関係(もといレイプ)は性欲の充実のみならず、さらに精神面の安定と強化にも貢献したのである。
そう、この爛れた性活は啓太は人として、男として強く逞しい成長を促したのだ。
……不健全きわまりない成長のしかたではあるが。
そんな最近になっていきなり雄としての余裕と自信を体得した啓太に対し、茜を筆頭とするいじめっ子グループはかなり戸惑っているようであった。
「……で、 何してたんだよ?」
表面上とはいえ形だけでも謝罪したことで一応収まりがついたのか。
眼の鋭さは維持させたまま、茜は面白くなさそうに鼻を鳴らしてまたも同じ質問を投げ掛けてきた。
純粋に啓太の挙動を不思議に思っただけなのか。いずれにせよ、ここは素直に答えておくのが無難であろう。
「んー、ちょっと今忙しくてさ」
言いながらパタパタと『ノート』を見せつけるように振ってみせる。
が、茜は「?」といった顔で首を傾げるばかり。
「はァ? なんだよ?」
「いや、だからコレ」
はっきりと見える持ち上げ、『ノート』を掲げる啓太。
けれどもやはり茜には伝わらず、不機嫌そうに眉根を寄せ、こちらへと身を乗り出してくる。
本当に沸点の低いヤツである。
「さっきからふざけ―――」
「コラ、西園寺。今は授業中だぞ」
と、そこでようやく先生から助け船が出された。
詰問してくる茜を制したのは黒板の前ででチョーク片手に突っ立っている担任教諭。
いつもなら啓太に無関心な彼もさすがに授業中となれば体裁上ほうっておくことはできず、注意せざるを得ないようだ。
さすがの傍若無人な茜も大人には表立って逆らえない。憎々しげにこちらをチラチラと見遣っていたが、もう一度教諭から注意されると、ようやく諦めて視線を外してくれた。
そんな三次元女子の醜態に呆れ返りつつ、啓太は静かに手元の『ノート』へと目線を固定し、感嘆の息を吐く。
(……………………やっぱり、本当なんだ)
正直疑わしかった。
しかし、今確かめてみてやっと納得できた。
(―――これ、僕以外には見えないんだ)
最初に疑問を抱いたのはついこの前。
次はどんな命令を書こうかとエンピツ片手に『ノート』を広げていたとき、リアスが不思議そうな目でこちらを観察していることに気付いた。
何でもリアスには啓太が大切そうに両手で持ち上げている『ノート』が視認できず、何もない中空を見つめているようにしか見えなかったらしい。
ぶっちゃけ半信半疑だったが、茜の反応でわかった。
『二次元の女の子とエッチなことできちゃうぞ』なんていかがわしい文句が表紙に刻まれているノートだ。何かにつけて啓太に因縁をふっかけてくる茜が、これをネタにしないはずがない。
(本当にとんでもないもの拾っちゃったなあ……)
なぜ自分にしか見えないのか。
性欲にも劣らず好奇心も盛んな啓太は先日、どうしても気になってこの『ノート』を調べてみた。
すると、裏表紙の長ったらしい説明書きに関連性のある記述があった。
―――この『ノート』は選ばれし、ただ一人の変態にしか見えない。
…この文を見たとき思わず『ノート』を真っ二つに破りたくなる衝動にかられたが、まあ致し方ない(変態は事実だし)。
要するに自分はこの『ノート』に選ばれたというわけだ。
選ばれた自分にしか認識できず、触ることすらままならない―――実に都合のよすぎる仕様だ。
誰かに盗まれたり、『ノート』の秘密が知られるリスクもない。となると、いよいよ本格的に怖いものなしである。
二次元に干渉できる『ノート』。エッチなコトをサポートしてくる『ノート』。自分にしか見えない魔法の『ノート』。
そう、これさえあれば。
(これさえあれば………、ハーレムだって夢じゃない!)
そうだ。
せっかくこんなチートなアイテムを手に入れたのだ、使わない理由なんてない。
今ではリアス一人に夢中であったが、どうせならもっとたくさんの二次元美女を召喚して、もっといっぱいエッチしたい。
そして、ゆくゆくは男のロマンであり己の宿願であるハーレムを実現できるかもしれない。
いや、できる。この『ノート』があれば絶対にできる!してみせる!
「ぐへへへ……」
口の端からヨダレを足らしながら、妄想してみた。
アニメ漫画ギャルゲエロゲ…etc.ありとあらゆる媒体の二次元少女たちが妄想の中で裸になって、啓太の正面にズラリと並んでいる光景を。
彼女らの豊かな胸の膨らみに思い切り顔を埋め、しゃぶりつき、もみしだいている己の姿を。
『ん、んぁあああんっっ……ダメだよ、こんなのぉ……あぁん……!』
『お、おっぱいっ……やっ! さわらないでぇ……んんっ、ゃあぁああっ!』
最初こそ嫌がり、抵抗の意思を見せる妄想の中の美女たち。が、次第に啓太の怒濤の攻めに押し負け、ついには艶かしいあえぎ声を漏らしていく。
見渡す限りの肌色。美女特有の甘い香り。その全てが啓太の、啓太だけのもの。
そんなとても幸せな妄想の世界に浸っているうちに、啓太の股にぶら下がっている立派な息子も自然と反応し、ズボンを突き破らんばかりの勢いで勃起する。
燃え盛るような性欲に全身をあぶられながら、啓太はふと考えた。
自分がこの『ノート』を見つけることができたのも、『ノート』に選ばれたのも単なる偶然ではないのではないか、と。
それこそ、何かきっと意味があるのではないのかと。
(もしかして、いじめられてばかりのボクを可哀想に思った、お父さんとお母さんが神様にお願いしてこの『ノート』を届けてくれたのかな?)
そうだ。そうにちがいない。
今は天国にいる両親が鼻つまみ者とされ鬱になりかけている息子を哀れみ、この『ノート』をプレゼントしてくれたのだ。
一度そう思うとそうとしか思えなくなった啓太は、心中で両親に深々と感謝した。
……仮に天国があろうものなら、今ごろ啓太の父母は小学生にして強姦魔に成り下がった息子を見て、絶望の涙を滝の如く流しているだろうが。
(――ヤってやる)
両親の思いやり(妄想)を背負った啓太は、思い付く限りの巨乳二次元ヒロインを脳内に投影する。
官能的かつ健康的に弾む彼女たちのおっきなオッパイ………。それに手を伸ばしながら、啓太は決意する。
(二次元ヒロインたちをあのオッパイを、必ず、必ず手に入れてやる!!)
―――それは宣戦布告。
性欲盛んなただの人間でしかない小学生男児の、大いなる覇道の第一歩がついに踏み出されたのであった。
「…………やっぱきしょいわ、こいつ」
授業の真っ只中にも関わらず、股間のブツをおっ勃てて、ゲスな微笑を浮かべ妄想にふける啓太。
彼の考え事など知ったこっちゃない茜は小さくぼやきながら、道端に転がるネズミの死骸でも見るかのように横目でそれを観察していた。
同時刻。皇家。
主人不在の、子供部屋。
リアス・グレモリーはそこにいた。
「…………」
たった今目覚めたばかりの彼女は、静かに部屋を見渡す。
視界に入るのは、最早すっかり見慣れてしまった光景。あの変態ドスケベマセガキこと、皇啓太の自室。
ほとんど裸に近い露出度の高い衣服をまとったアニメやらゲームやらのヒロインのタペストリー・ポスターに支配された壁。棚を埋め尽くすのは、フィグマ・漫画・エロゲの数々。中には少年らしくロボットや戦艦の模型なんかもひっそりと置かれてあるが、大半が美少女モノや萌え系の作品ばかり。
まともな感性を持つ人間なら、居座るだけで息苦しさを禁じ得ない内装である。
もちろん、リアスとてこんなキモオタ臭の激しい部屋を寝床にするなんて甚だ不本意なのだが、そこにはやむを得ない事情というものがあった。
「あのエロガキ………ッ」
意識を手放す前のこと。昨晩の情事を思い出し、リアスは静かに肩を震わせた。
あの日から。
あの悪童男子小学生、啓太によってこの一軒家に閉じ込められてしまったあの日から、もうどれくらいの時が過ぎただろうか。
あの日を境にリアスはすっかり啓太専用の慰安婦、もとい性奴隷と化していた。
毎日毎日性交を強要され、無遠慮に犯される生活。
あの小学生ばなれしすぎの太い肉棒に突かれ、好きなようによがり狂わせられる日々。
初日こそ精一杯抵抗の姿勢を示していたリアスも、何度も何度も啓太の底無しの性欲をぶつけられ、今となっては抗う気力すら失いかけていた。
「―――!」
屈辱、恥辱。怒り、悲しみ、悔しさ。
ありとあらゆる感情をかき混ぜながら、リアスは両膝に手を回して背中を丸め、自分の身体をぎゅっと抱き締めた。
今のリアスの着衣は純白の長袖シャツ一枚のみ。他は何も身に付けていない。
俗に言う、裸ワイシャツというやつだ。
これも啓太の性的趣味によるもので、昨日はこの格好のままで弄ばれた。
出会ったときから思ってはいたが、本当に小学生なのかと言いたくなるくらいの変態ぶりだ。もしかしなくとも、助平の度合はイッセー以上なのかもしれない。
(…イッセー)
そういえば皆はどうしているだろう。
イッセーは? 朱乃は? 小猫は? アーシアやゼノヴィアたちは?
心配してくれているだろうか。捜してくれているだろうか。
……いつになったら助けてくれるのだろうか。
淡い望みを胸中にいだきながら、リアスの目線は窓へと投げられる。そこにあるのはこれまで見たことのない町の風景。実際まるで覚えのない町並みだし、少なくとも駒王町ではないことは確かだ。
だとするとどこなのか。いったい自分はどこまで拐われてしまったというのか。
啓太の謎の能力によって脱出もできなければ、場所の特定も見込めず、ただ助けを待つしかない状況。神経をひたすら磨り減らすこの現状に、リアスは疲弊しかけていた。
とはいえ、この悪趣味な部屋も幽閉生活もまだ我慢できる。リアスを一番悩ませているのはまた別にあった。
身体が、うずく。
豊かな二つの乳房を中心に、女体にゾクゾクと脈打つような「うずき」が走っている。
「あっ……あぁん……」
一生懸命口を閉ざそうとしても、小さな喘ぎとなって漏れでてしまうほど。うずきは快感を誘発させ、リアスの意識をむしばむように溶け込んでくる。気がつけば、自分の身体を自身で慰めようとする。そんな淫靡な衝動を、リアスはひたすらに押さえつけた。
あの日から昨晩まで続く少年との強制的な情事。それをチラリとでも思い出すたび、女体がうずきを訴える。
あんな可愛いげのない子供に弄ばれ、雄の種を植え付けられたというのに、肉体は主の意識に反する反応をとっていた。
自分の身体が何を欲しているのか、そんなことはわかっている。だが、わかりたくない。自分の女体がさらなる快楽を求めているなんて、あんな年下の男児とのまぐわいに悦を覚えているなんて、絶対に認められない。
レイプ同然に犯されたというのに、それに対して悦楽を抱くなどありえないし、あってはならないのだ。
「お願い、早く助けにきて……」
このままでは自分が自分ではなくなる。そんか恐ろしい予感を抱きつつ、リアスは仲間たちの救援を祈った。
……それが叶わぬ望みなのだとは、知ることもなく。
お久しぶりです。
今回は次の章とのつなぎになります。新キャラ登場は次回からになる予定です。
リクエストありがとうございます。他にもあれば、ぜひ遠慮なく応募ください。
遅筆ですみません……。次の投稿も未定ですが、どうか気長にお待ちください。