ピンポーン。
「……んあ」
誰か来た……何だろうか?
宅配便か何かか……?
寝巻き変わりのスウェットのまま、玄関に向かう。
ガチャッ。
「え?」
玄関を開けると1人の女の子が立っていた。
明るめの髪を肩口で揃えた髪型……赤いフレームのメガネ……整った顔立ち……何より目立つのは……低い背丈に反して……制服を盛り上げている双丘だった……。
……こんな可愛い女の子……知り合いにいないよな。
「えーと……どちら様?」
「……っ!! あっ……あっ………!!」
「……?」
此方の質問に目を大きく見開いて、口をパクパクさせている。
「あっ……あっ……あのっ!! 小泉……太陽(たいよう)さん……ですか?」
「え? ああ、そうだけど……」
「あはぁ……」
俺の名前を知っている?
彼女は俺の事をじっと見つめている?……そんなに見つめられても……。
俺が戸惑っている間に彼女の瞳が潤み、表情が歪んで……。
「お……お兄ちゃああぁぁぁ〜〜〜〜〜んっ!!!!!」
「えええええっ!?」
華奢で柔らかい女の子の感触と、髪の甘い匂いがいきなり飛び込んで来た。
彼女は、身体ごとぶつかるように俺にしがみついてきたのだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃぁぁぁぁぁん!! うわああぁぁぁぁぁ〜 〜〜〜〜っ!!」
「えっ!? ちょっ? ええ〜〜〜っ!?」
お兄ちゃん!?
見知らぬ女の子……しかも可愛い……に、いきなり泣きながら抱き付かれ……これは、幸運と呼ぶべきなのかどうか……。
「お、お兄ちゃん……っ……うっ……ぐ、ぐすっ……ぐすっ!!」
俺の胸で、「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言いながら、泣き続ける女の子。
「え〜っと……」
……何これ?
ど、ど〜なってるんだぁぁぁぁぁ!?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう落ち着いた?」
「あ、は、はいっ」
弁護士さんとの電話を終え、リビングに戻ると、彼女は角の方にちょこんと座っていた。
「さっきの手紙もきちんと読んだよ。……ごめん、俺、何も知らなかったから」
「い、いえっ」
姿勢良く背筋を伸ばしたまま、ブンブンと首を振る。
「弁護士さんがね、「ちゃんと連絡をしておかなくてすまない」って言ってたよ」
彼女から渡された手紙を机の上に置き、俺も向かいのソファーに腰を下ろす。
「え、えっと……あの……さっきはごめんなさい……は、私、あんな……」
女の子の頬がカァっと赤く染まる。
泣き止むまでに随分時間がかかったから、目元が少し腫れぼったくなっている。
「ちょっと驚いたけど……もう気にしないでいいから……ええと……小泉……花陽さん?」
「あっ……あ……はい」
一瞬、戸惑ってから頷く女の子。
あ……今の言い方、ちょっと他人行儀過ぎたかな?
自分の"妹"に向かっては。
「ごめん。え〜っと、まだ、俺もちょっと混乱していて……」
「い、いえ……あ、あの……い、いいんです。その……突然やって来た人間に、いきなり「妹だ」なんて言われたら、誰だってビックリします……から」
無理に笑顔を作り、また、彼女はフルフルと首を振った。
なんだか、この娘、凄く良い娘そうだな。
「妹……か……」
そう。
突然現れたこの娘は、自分は俺の"妹"であると告げてきた。
俺同様、弁護士さんから連絡を受けて、俺に会うために、この家にやって来たと言うのだ。
彼女が俺に差し出してきた封筒には、弁護士さんからの手紙と、彼女の戸籍謄本が入っていた。
「……」
天涯孤独だと思っていた俺に、生き別れの妹がいた。
自分の想定外の事態が起こると……何の感情も沸く事なく……だだ……その事実を受け止めるだけで、いっぱいいっぱいだった……。