「花陽ちゃんは……これまでは?」
自分の戸惑いはさておいて、目の前の花陽ちゃんに聞くと。
「養子縁組先のお家で……弁護士さんから連絡が来たときに、実の家族で暮らすのが一番だからって……気にしないで行きなさいって、言ってくれたんです」
「……そっか……良い家族だったんだね」
「はい♪」
彼女の口振りから、本当に大切にされていたのが伝わってくる。
「あ、あの……」
「ん?」
「あの、でも……ご、ご迷惑……でしたか?」
「え?」
「お兄ちゃんの都合を無視して……いきなり、押しかけてきたから……」
「迷惑なんて思ってない。ただ、ただ驚いてるだけ♪」
冗談めかして答える。
その時……グゥ〜っと腹の虫が大きな音を発てて鳴る。
俺だけの音にしては大きいような?
花陽ちゃんの顔を見ると真っ赤だ。
そういえば、今日はバタバタしすぎて、殆んど何も口に入れてなかったし、ここは……。
「あ、もうこんな時間か」
そろそろ、時間じゃないか。
「え、あ、あの……?」
「冷蔵庫の中、空っぽだった筈だし……ちょっと待ってて!」
「ふ……え……?」
財布をポケットに捻り込み、呆然としている花陽ちゃんをそのままに家を飛び出す。
使い込んだ自転車に飛び乗り、ペダルをこぎ出す。
目指すは、スーパーのタイムセールだ。
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矢澤さんにオマケしてもらったり、一人暮らしの東條さんとセール最後の1品を取り合ったり(勿論、彼女と折半した)したりして二人分の食料を調達して、此れからの事を色々……そして、花陽ちゃんの事を考えながら家に戻った。
この家にしたって、まだ実感がわかない。
土地つき一軒家が、俺達の家だって言われてもなぁ……。
「あ」
「あ……」
夕暮れに包まれたリビングで、荷物はそのままに花陽ちゃんはお米の準備をしてくれていた。
「あ、あの……っ、お帰りなさい……っ」
「あ、あぁ……だだいま」
こんなやり取り……少しくすぐったい。
「お米……準備してくれたんだ」
「はい……あっ……勝手にしちゃって……」
「怒ってないから……花陽ちゃんは座ってて、直ぐにおかずを準備するから」
「あの……でも……は、私が……」
「この家、花陽ちゃんの家でもあるんだから、自由にしてて良いんだからさ。今日は俺に準備させてよ」
「「今日は」……あ……はい。あ、ありがとうございます」
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そして、食卓。
俺の作った野菜炒めをおかずに、向かい合いながら二人で食べる。
「美味しいです♪ お兄ちゃん♪」
一口食べた花陽ちゃんが、本当に嬉しそうにそう口にした。
「そっか……」
「はい♪」
こんなやり取り初めてで……自分の料理を誰かに喜んでもらうのが……何だかくすぐったい。
「……あの、お兄ちゃん」
「ん?」
「は、私……此所に居て良いですか?」
まだ、気にしてたのか……。
俺の気持ちを正直に話すか……。
「敬語」
「……え?」
「正直、俺も戸惑っているけど……俺達、兄妹なんだから、敬語はやめよ。喋りやすい話方をしよ」
「あ……」
「兄妹として……家族として……そういう所から、慣らして行こう?」
「お……お兄ちゃん……花陽……」
また、目から涙が溢れる。
「ほら、折角の御飯が冷めちゃうぞ、花陽」
「うん。お兄ちゃん♪」
俺の妹は、泣き笑いのままお茶碗に手を伸ばしていた。
「そういえば花陽?」
「何?お兄ちゃん」
「荷物は其だけ?」
ソファーの上のバッグに視線を向けながら、花陽に聞く。
「大きな荷物は明日、届くようにしたの」
「ようし。お兄ちゃん頑張るぞ」
「うん♪ 頼りにしてるよ、お兄ちゃん♪」
名前のとうりに、大輪の花のような笑顔で答える花陽。
「「ははは〜♪」」
二人の笑い声が、リビングに響く。
血が繋がっているとはいえ、ずっと離れていた人間二人が、一緒の生活を始めるのだ。
色々な問題も出てくるだろうし、良い事ばかりじゃないかもしれない。
だけど、俺は此れからこの娘と……花陽と二人でやっていこうと思った。