TS憑依堕天使は主人公のNTRを計画するようです 作:カイバル峠
まさか、一話目からこんなに感想をいただけるとは……感激です!
最初にいっておくと、今回は性的描写はございません。
それではどうぞ!
夕闇の追憶
「そう、それは仕方ないわね。報告ありがとう。」
私はリアス・グレモリー。
この町の管理を任されている上級悪魔グレモリー家の次期当主だ。
最近、私の領地で堕天使が出没し、神器持ちと思われる人間にちょっかいをかけているようなのだ。しかもそれが私の通う学園の男子生徒なのだからなおさら質が悪い。
そもそも彼ら堕天使は私たち悪魔とは不倶戴天の仲。
敵に領地の中を我が物顔で歩き回られたとあってはグレモリー家の恥だ。
そこで私はその学園の生徒の身辺に自分の眷属を監視としてつけることにした。
堕天使は男子生徒に色仕掛けで迫っているようで、報告は大半が放課後に二人でイチャイチャしているといったたぐいのものばかりでしばらくは何も起こらなかった。
だがそれからしばらくのちの週末、動きがあった。
件の男子生徒が堕天使とデートすることになったという。
二人きりの状況、間違いない。
ここで堕天使は男子生徒の始末に乗り出すはず。
私は眷属に監視を続けさせつつ、有事に備えてすぐに動ける態勢を整えることにした。
それなのに。
結論から言うと、私の予想はことごとく外れた。
男子生徒はその後も何もなかったかのように、依然と変わらない生活を続けている。
おかしい。
あそこで動いたということは確実に仕留める意思はあったはず。
しかし男子生徒は生きている。
おまけに私の眷属は堕天使の敷いた結界によって撒かれ、その間の堕天使と男子生徒の身に何が起きたのかは全くわからないというのだ。
ならばそこから導き出せる結論は一つ。
堕天使は彼を殺さなかったということだ。
考えられる可能性としては二つ。
一つは彼の神器に危険性がないと判断して立ち去った場合。
そしてもう一つは―――――
―――彼が堕天使の手に墜ちた場合だ。
しかしどちらも釈然としない。
事前に神器にある程度の危険性が認められていなければ堕天使がリスクを冒してまで私の領地に侵入するとは考えにくい。だから神器の危険性が想定より大分低かったから身を引いたという可能性は低いだろう。
そして二つ目の、堕天使の手に墜ちた可能性だが、こちらも可能性は低いと言わざるを得ない。
仮に本当に堕天使側の住人になっていたとしたら、今まで通りに悪魔の根城であるこの学園に通っているとは考えにくい。仮にスパイとして送り込まれたにせよ、当の本人に私たちのことを探る様子は全くない。
いずれにせよ、今できるのはこのまま監視を続けることくらいだ。
真相を知るには当人に聞き出すよりほかないが、タイミングを間違えれば却って警戒されることにもなりかねない。
だがもしもの場合は―――――
◇◆ ◆◇
俺、兵藤一誠は最近どうにかしてしまったんじゃないかと思う。
これまでいつもやってきた悪友たちとの紳士の円盤鑑賞や、ましてや女子更衣室を覗くなどといった行為への願望が嘘のように立ち消えてしまった。
不思議なのは、それが突然、それもただ飽きてしまったからではないことだ。
強いて喩えるなら、「それ以上のもの」を知ってしまったために、その程度では満足できなくなってしまったという感覚に近い。
そしてもう一つ、気になることがある。
それは“夕麻ちゃん”の存在だ。
彼女はある日を境に、忽然と姿を消してしまった。
携帯のアドレスも、周りの人間も皆の記憶からも、彼女の存在の痕跡はきれいさっぱり無くなってしまっている。
それとも周りの奴らが言うように、彼女の存在そのものが俺の妄想だったなんてことが本当にあり得るのだろうか。
少し前に告白されて付き合って、この前の日曜にはデートにも行ったはずなのに。
だがこれもまた不可解なことに、あの日、夕麻ちゃんと一緒に出掛けてからの記憶が、途中から酷く曖昧なのだ。
あの時何があって、どうやって帰ったのか。
それが全く思い出せない。
ただ唯一覚えているのは、やたらと気持ちのいい感覚だけ。
それも今まで生きてきた中で、感じたことのないほどの。
その時のことを何度も思い出そうとしたが、その度にまるで記憶に靄がかかったようになって思い出せないのだ。
もし本当に、俺が思っているようなことが起きていたのだとしたら、俺は何としてもそれを思い出したい。
あの時、一体俺の身に何が起きたっていうんだ?
◇◆ ◆◇
「ええっ、それじゃあ姉様、結局殺してないんスか!!?」
部下の叫びが木霊する。
「ええ、そうよ。別に殺しても良かったのだけれど、それよりも生かしておいて後で総督閣下に献上した方がいいと思いなおしたのよ。」
この世界の住人が記憶の通りであるとするならば、兵藤一誠が『赤龍帝の籠手』を宿しているのはほぼ確実だ。
リアス・グレモリーは彼を手に入れることによってその栄誉を冥界にとどまらず、全世界、全勢力に遍く知らしめるところとした。
そればかりではない。
赤龍帝の存在と魔王の一族という二つの要因により、事実上彼女の一党はこの世界において半永久的な不可侵の地位を手に入れたといってもいい。
そして記憶の通り、総督から彼の抹殺の命は下った。
つまり、今後の私たちの命運は、彼をどう処遇するかにかかっているといって過言ではない。
そこで私は一考し、とある結論に至った。
リアス・グレモリーよりも先に彼を手に入れるべきだと。
「しかし、それでは献上した後、我々は用済みになるのでは?」
「もっともな疑問ね。もちろんその可能性も考えてあるわ。だからこそ、出荷前に調教しておく必要がある。今回はその第一段階だったの。」
記憶の中で兵藤一誠とリアス・グレモリーは精神的に共依存のような関係にあった。
だからこそ、いかなる形であれ、彼の心を常にこちらに向けさせておく必要があるのだ。
「……そのためにわざわざ、あんなガキにそこまでの処置を?」
「あら、気づいていたの?」
「当然です。あなた様がいつもお使いになる手ですから。」
部下が不満そうな顔で口を尖らせる。
「そう……つまりあなたは、この私のとる方法が、そんなに気に入らないというのね?」
わたしはさぞ心外そうに、声のトーンを下げてみせる。
「っ!そんな……滅相もございません!あなた様は紛れもなく、至高の堕天使たるお方!なればこそ、たとえ
途端に顔を青くしたかと思うと、軍隊式の敬礼よろしく、背筋をビシッと伸ばし、踵を打ち鳴らして思いの丈を打ち明ける私の部下。
「ウフフッ、冗談よ。ただあなたがあまりにも可愛らしく嫉妬してみせるものだから、ついからかってみたくなっただけよ?」
私が茶化してみせると、カラワーナは顔を赤くして、伏し目がちにモジモジとした様子を見せる。
「そ、そんな…!わ、私は別に嫉妬など……!」
「あ!カラワーナ顔が赤いっス!図星っス!」
「なんだと、ミッテルト!!」
からかうミッテルトにそれを追いかけるカラワーナ。
私をよそに追いかけっこを始めた二人の姿を眺めながら、私は改めて今回の計画の概要を振り返る。
兵藤一誠を確実に手に入れるために必要な条件としては二つ。
一つは彼自らの意思で私のもとへ来るということ。
そしてもう一つは、リアス・グレモリーらと決してことを構えないこと。
特に一つ目の条件を満たせば、二番目の懸念は解消される。
そのための楔は打っておいた。
私がとった方法は、
あれならば効果は確実に見込めるだろう。
“私”が知れば卒倒するかもしれない。
だが、これ以上に有効な手はない。
“私”は計画の詰めの甘さは当然のこと、身の丈以上の野望を抱きつつも、最後まで無駄なプライドを捨てることができなかった。
ゆえに敗れたのだ。
そして幻術と同時に意図的に記憶の一部を封印し、思考誘導の暗示もかけておいた。
「いずれ、彼は必ずここへたどり着くわ。」
あなたは必ずやって来る。
そしてその時こそ、あなたは文字通りに私に身も心も捧げることになる。
「……楽しみだわ」
ねぇ、一誠君?
◇◆ ◆◇
「はぁ……」
これで何度目だろうか?
ため息が止まらない。
いつもなら放課後は悪友二人とともに猥談に浸っているはずの時間だ。
事実、今日も誘われたが、俺自身がそんな気分じゃないから断った。
あいつらも次第に、付き合いの悪い俺から距離を置き始めているように感じる。
失恋のショック、だなんて言っても同情さえされないだろう。
だってあいつらの中では夕麻ちゃんは俺の脳内彼女ってことになってるんだから……
そんなことを考えながらとぼとぼ家路に着く。
そして人通りの多い街の中央の通りに差し掛かったその時だった。
ふと、前を見る。
そして俺は言葉を失った。
数十メートル先、人込みの中にいたのは黒い髪の美少女。
白のワンピースに黒のスカートという、最後に会った時の恰好そのままだ。
なにより、俺がデートの最中に買ってあげたピンク色のシュシュ。
それが決め手だった。
「…夕麻……ちゃん……?」
俺は無意識のうちに走り出していた。
ここで彼女の姿を見失ってしまったら、もう二度と会えないような気がした。
なぜ突然消えてしまったのか。
なぜ誰も夕麻ちゃんのことを覚えていないのか。
なぜ、最後にあった日の記憶が一部抜け落ちているのか。
様々な思いが浮かんでは消えていく。
追いつこうにも、途中で何度も人通りや視界の悪い道に入り込んだりして、そのたびに見失いそうになる。
そのたびに必ず、夕麻ちゃんの姿が視界の端にチラつく。
俺は無我夢中で走り続けた。
そしてどれだけの間走り続けたのだろうか。
気が付くと、そこはもう町の外れだった。
目の前には古びた教会の建物。
すっかり傾いた夕日が、協会の窓を照らし、一面オレンジ色に染まっていた。
夕日―――――夕麻……
俺は意を決して、教会の扉を開いた。
中は異様な雰囲気に包まれていた。
古びた外見に反して内部は清潔で、燭台の蝋燭には煌々とした火が灯り、薄暗い内部にぼんやりと浮かぶ。
長椅子も通路に敷かれた絨毯も、古いものではあるが丁寧に手入れされたものであることがうかがえた。
仄暗い教会内部には人影は一切なかった。
ここに夕麻ちゃんがいる、そんな感じがしていたが、それも気のせいだったようだ。
「……帰るか」
肩を落としながらも、そういって踵を返したその時だった。
「オイオイお客さん、そんな焦るこたァねぇんじゃねぇかァ?」
「!!」
突然背後から聞こえた声。
いつからそこにいたんだ?!まるで気配が感じられなかったっていうのに……!
俺は反射的に振り返る。
だけどそれよりも早く、後頭部に衝撃が走り、俺は昏倒する。
「え、マジで??弱っ!!この程度でもうダウンすんの??こんな奴が危ねぇ神器持ってるなんて本当なんスかねェ?」
「余計な口を叩くなフリード。こんな奴であろうとレイナーレ様はできるだけ傷をつけずに連れてこいと仰せだ。さっさと運ぶぞ。」
「おお、怖っ。いくら姐さんがこいつにご執心なのが気に入らないからってパワハラはよしてくだせぇよ。」
「うるさい!私は決して悔しがっているわけではない!それに第一、レイナーレ様がこのようなガキにご執心などあるはずがないだろう!」
「……誰もそこまで言ってねぇっすよ?」
遠のく意識の中で数人の男女のやりとりが聞こえる。
一人だけじゃなかったのか。
俺はそのまま意識を手放した。
今回は本当は第一話の続きで書くつもりだったのですが、長くなりそうだったのでには二分割するところとなりました。
今後もなるべく一話5000字以内に収める方向で行きたいと思います。
第二話は内容的には前回で書ききれなかった原作ヒロインの動向、そしてレイナーレの思惑の補填にあたります。
次回からまたエッチな描写が増える予定ですので、楽しみにしていただければと思います。
それと更新についてですが、実生活が忙しいため、更新ペースは劇遅になると思います。
今月中にあともう一話投稿できればいい方かな、と考えています。