※この作品はR-18です。

TS憑依堕天使は主人公のNTRを計画するようです   作:カイバル峠

3 / 6
お久しぶりです。

何とか5月中にもう一話仕上げることができました!
それにしても、ハーメルンでの活動開始以来過去最高評価をいただいたのがまさかR18作品とは。。。^^;

今回は前半にかなりハードな描写がありますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。

それではどうぞ!


邂逅

邂逅

 

 

 

 

「ん……」

 

……俺は、気を失っていたのだろうか。

 

意識が鮮明になるにつれて、気を失う直前の記憶が蘇る。

 

そうだ、俺は夕麻ちゃんを追って、それで……

 

「んぐ?!」

 

俺は自分の体に起きた異変に気付き、そして絶句した。

なぜなら、下着以外身に着けておらず、手足は大の字に広げる形でベッドの四隅に固定されていたからだ。

おまけに口には猿轡――――形からしておそらくボールギャグ―――を嚙まされており、言葉を発することができない。

 

「あら、気がついたのね?」

 

「!」

 

不意に発せられた女の声。

俺は反射的に声の方向に首を動かす。

そこには忘れたくても忘れられない、“彼女”の姿が。

このような明らかにおかしい状況にもかかわらず、不覚にも目頭が熱くなり、頬を温かいものが伝うのを感じた。

 

「むぐぐが(夕麻ちゃん)……」

「フフフ…こんな状況だっていうのに、相変わらずね。そんなに私に会いたかったの?」

 

革張りの、玉座のような椅子に足を組んで腰かける夕麻ちゃんはクスクスと妖艶に、でもどこか憐れむように微笑む。

しかしその姿は俺の記憶の中にある清楚な夕麻ちゃんの姿とは程遠い。

濡羽色の艶やかな長髪に整った顔立ち、抜群のプロポーションは間違いなく夕麻ちゃんのもの。

しかし身に着けているのは極めて布面積の小さな、黒光りする素材でできた服。

普通であれば絶対にみかけることはない、いわゆるボンデージファッションだ。

普段の俺なら間違いなく手放しに喜んでいただろう。

でもなぜかこの時は、その姿に懐かしさにも似た奇妙な感覚を覚えていた。

 

「まあいいわ。ようこそ、一誠君。今日からここがあなたのおうちよ。気に入ってもらえたかしら?まあでも、あなたに拒否権なんてないんだけれど。」

「?!」

 

あまりに突然の展開に理解が追い付かない。

しかし薄暗くてよくわからなかったが、目を凝らして見ると、夕麻ちゃんの背後には夥しい数の器具が並んでいた。

壁に掛けられた、鞭をはじめとする長さから形にいたるまで様々な打具、手枷と足枷の付いた拘束台、そしてなんと水車と鉄の処女までもが安置されていて、さながらまるで中世の拷問部屋だ。

 

「凄いでしょう?これ全部、あなたのために用意したのよ。」

 

満面の笑みを浮かべる夕麻ちゃん。

その様子はまるで新しいおもちゃを自慢する無邪気な子供のそれだ。

 

「これなんかどうかしら?」

 

そういって壁から取ってきたのは棘の編み込まれた鞭。

 

「んー!んんーっっ!」

 

冗談じゃない!

あんなので叩かれたら怪我じゃ済まないぞ?!

俺は何とかして思い止まらせようとして叫ぶがボールギャグを嵌められた口から出るのはくぐもった声と隙間から垂れる唾液だけだった。

 

「私ね、一度こうやってペットを飼って、調教してみたかったの。イッセー君なら私のお願い、聞いてくれるよね?」

 

……訳が分からない。

どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだ……!

俺たちは付き合っていたはずだろう?!

大体告白してきたのだって夕麻ちゃんじゃないか!

なのにいつの間にか勝手にいなくなって……

それでまた会えたと思ったらこんな……

 

「んんんーっっ!!」

 

俺の叫びはただの空気の震えとなって、決して意味を持つことなく消えていく。

 

「♪~、何を言ってるのかしら?全然わからないわ・よっ!!」

 

そう言って夕麻ちゃんは鞭を振り下ろした。

 

「っ!!」

 

空気を切り裂き、迫る鞭。

俺が反射的に目を閉じて顔を背けると、鞭の先が俺の顔のギリギリのところを掠める。

すると口枷(ボールギャグ)を固定していたベルトが裂け、だらりと垂れ下がった。

俺はすぐさま球を吐き出す。

ずっと開いたまま固定されていたせいで顎が痛むが、俺は自由になった口で抗議の声を上げた。

 

「おい!一体どういうつもりなんだよ?!さっきからペットとか飼うとか、おまけに暴力まで……!これは歴とした犯罪だぞ?!」

 

俺は思いの丈を、ありのままにぶちまけた。

だが、肝心の夕麻ちゃんはといえば、目から光が消え、さっきまでの無邪気な笑みは完全に消え、仮面のような無表情になって、俺に虫けらのような目を向ける。

 

「はぁ?なんなのそれ?犯罪ですって?意味がわからないわ。大体」

 

夕麻ちゃんの背中の羽がバサッという音と共に大きく開く。

そしてそのまま宙に舞い上がり、文字通り俺を見下ろす格好になる。

 

「堕天使であるこの私に人間の法律なんて通用するはずがないでしょう?それよりもむしろ、お前の方こそ自分のしたことにどう言い訳するつもりなのかしら?」

 

この時の夕麻ちゃんの剣幕は相当なものだった。

単なる逆ギレじゃない、本当の怒気が滲み出ているのがひしひしと伝わってくる。

だが俺は彼女が一体何を言っているのか理解できなかった。

俺は夕麻ちゃんに何をしたというのか。

ただ一つ分かるのは、これ以上何かを言えば、本当に命に関わるということだけだ。

気が付くと全身からどっと冷や汗が噴き出し、カチカチと歯を鳴らして震えているというありさまだ。

 

「ふん、わからないというのならいいわ。思い出させてやるまでよ。」

 

夕麻ちゃんは視線を俺に向けたまま、指を鳴らした。

すると背後の壁面が開き、大型のモニターが現れる。

 

そして映し出されたのは……

 

「なっ?!」

 

俺は絶句した。

 

そこに映っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下半身を露出し、自分の肉棒を扱く俺自身の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背景に映っているのは夕暮れの公園。

ここは確か、夕麻ちゃんとデートしたあの……

 

「うぐっ」

 

その時、頭がズキリと痛む。

 

そして次の瞬間―――――

 

 

――――――俺はすべてを思い出し、理解した。

 

 

 

記憶が曖昧になってどうやっても思い出せなかった前の週末。

ただ一つだけ覚えていた快楽の招待。

俺はあの時、握っていたのは夕麻ちゃんの手だと思っていた、否。

思い込まされていた(・・・・・・・・・)。

 

「――――どう?これで思い出したかしら?」

 

頭上から夕麻ちゃんの冷え切った声が降ってくる。

それは奇しくも、映像の中の俺が息を荒げ、情けない声を上げて絶頂を迎えるのとほぼ同時だった。

 

 

 

「-―――っあ…うああああああああああああああッッッ?!!!!」

 

 

 

 

俺は絶叫した。

 

俺が信じたもの、唯一確かに存在したと思っていたはずの思い出。

 

それが全部幻想だったなんて……っ

 

 

「わかる?お前は私をオカズに公衆の面前で堂々とオナニーしてたのよ。これって拙いわよね?確かこういうのって、人間界の法律では公然猥褻っていう犯罪行為よね?私は人間の記憶ならいくらでも操作できるから、人間の法では決して私を裁くことはできないわ。でもあなたは別でしょう?もしこんな映像が出回ったりしたら……わかるわよね?」

 

無防備になった俺の心に夕麻ちゃんの言葉の一つ一つが深く突き刺さり、毒針のようにじわじわと心が蝕まれていくのを感じた。

 

「うがっ?!!」

 

そのとき不意に、下半身に強い衝撃を感じた。

 

いつの間にか夕麻ちゃんが降りてきていて、俺のモノを握っていた。

 

「ふん、粗末なものね。その癖こんなにすぐに硬くなるんだから……本当にどうしようもない屑なのね……でもいいわ。私は寛容だから、もう一度チャンスをあげるわ。」

 

そう言うと夕麻ちゃんはそれまでの無表情から一変、にこっと微笑むと、ゆっくりと、しかし力を込めて俺のモノを扱き出した。

 

「私の玩具(モノ)になりなさい、イッセー君。そうすれば今度は本当に、この私の手でイかせてあげるわ。イエスならそうと、出す前に言いなさい。もしノーだったり、返事をする前に出したりしたら、その時点であなたのコレを握り潰すからね?」

 

慈母のような笑みを浮かべながらも、その瞳にドロドロとしたものを映す夕麻ちゃん。

手を動かすスピードは速まり、万力のように締め付ける強さも増していく。

この華奢な手のどこにこんな力があるのか。

やはり人知を超えた存在ゆえなのだろうか。

 

「く、うふぅ……」

 

俺自身も限界が近い。

強まる刺激と生命の危機が、本能となって最後の花を咲かせようとこみ上げる。

 

「ほらほらどうするの?早くしないとあなたの大事な息子が潰れちゃうわよ?」

 

夕麻ちゃんがクスクスと嘲るような笑みをこぼしながら挑発してくる。

人としての尊厳を守って死ぬか、それともすべてを捨て、惨めに生き延びて至高の快楽を取るか。

俺の中で激しく天秤が揺れ動く。

滾るマグマが尿道を突き上げ、白い溶岩が火口のすぐ下まで迫っているのを感じる。

もう時間がない。

 

しかしよく考えれば俺に選択の余地はなかった。

このままプライドを守り、果ててしまえば俺はもう二度と、男としての義務を果たすことはできないだろう。それならば―――

 

 

 

「俺、は…」

 

 

一世一代の覚悟。

 

 

口にすれば俺は生涯、一切の自由もなく弄ばれることになるだろう。

 

 

だがそれでも。

 

 

兵藤一誠という男の命運すべてを委ねる言葉を口にしようとした。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

扉が開き、一人のベールで顔を覆ったシスターが一人、部屋に入ってきて、夕麻ちゃんのもとへ駆け寄り何かを耳打ちする。

それを聞いた夕麻ちゃんは短く「そう、ありがとう」とだけ言ってシスターを下がらせると、妖しい笑みを浮かべた。

 

「ごめんなさいね、急な用事が入ってしまったから続きはまた今度。いい子にしてたら今度はもっと気持ちいいことしてあげるわ。だからくれぐれも変な気は起こさないことね?とはいっても無理でしょうけど。あはははっ!!」

 

そう言って夕麻がパチンと指を鳴らすと再び鉄格子が下りてきて、俺と夕麻ちゃんの間に鉄のカーテンのごとく横たわる。同時に俺をベッドに固定していた拘束具も外れる。俺はフルフルと震える足に鞭打って、どうにか立ち上がる。

 

「夕麻ちゃんっ……ぐっ?!」

突然の中断に、一度頂点に達しかけた熱が急激に冷えた後の後味の悪さの中、俺は必至で追いすがろうとするが、足首につけられた鎖だけは外れておらず、そのせいで鉄格子の一歩手前までしか進めず、バランスを崩して前のめりに倒れる。

夕麻ちゃんは顔だけこちらに向ける、憐れむような視線を俺に向けた。

 

「あら、まだそんな元気があったのね。でもいい加減、受け入れたほうがあなたのためよ?あなたの学生生活は一応見せてもらったけど、退屈の極みね。あんな乳臭い人間の小娘どもの着替え覗いて、寂しくオナニーして済ませるより、ここにいたほうがずっと刺激的なのは確実だって、もうわかってるでしょう?。ああ、それから、今後わたしのことは“夕麻ちゃん”ではなく“レイナーレ様”と呼ぶこと。飼い主は私で、あなたはペットなんだから、立場ははっきりさせておかないとね。じゃあね、イッセー君☆」

 

最後に手をひらひらと振りながら、あざとくも出会った時のような満面の笑みを浮かべて彼女は部屋を出て行った。

部屋は再び静寂に包まれる。

人の気配がなくなった薄暗い部屋では、すらりと並べられた数々の拷問器具が不気味さを助長する。

なぜ急にいなくなってしまったのか、そして急に現れたと思ったら、なぜこんな仕打ちをするのか。

再会の喜びと、徹底した侮辱への怒りが綯い交ぜになった、行き場のない感情。そしてその中で、横に置かれた姿見が映し出す、裸に剥かれて檻に縋りつく、それでも下半身の自己主張を抑えきれない自分の姿がより一層の寂しさ、そして尊厳を奪われた惨めさとなって降りかかる。

 

「くっ……」

 

俺は、一体どうなってしまうんだろうか……

 

 

 

 

 

 

◇◆    ◆◇

 

 

 

 

 

「ここが…日本……」

 

空港から出た私の最初の一言がそれでした。

 

整然とした街並み、行き交う人々の出で立ち、すべてが欧州とは異なっていて、ヨーロッパの、それも教会に近い場所しか知らない私にとってはすべてが新鮮でした。

けれども、決して良いことばかりではありません。

この国で使われている独自の言語は難解そのもの、英語もほとんど通じず目的地までたどり着くのにも一苦労です。

けれども皆さんとても親切で、こちらが必死に身振り手振りで伝えようとすると、地図を描いてくださったりして、丁寧に教えてくださいました。

そして電車とバスを乗り継ぐことおよそ二時間。

私は無事、目的の駒王町まで辿り着くことができました。

イタリアを出る際にいただいた連絡では、駒王町に着く頃にはお迎えの方が到着なさっているとのことでした。

駅前でそれらしき方を探していると、すぐにわかりました。

この国では珍しい神父服姿の方がこちらに手を振ってくれていたので、私はそちらへ駆け寄りました。

 

「御機嫌よう、お嬢さん。アーシア・アルジェントさんでお間違いないですか?」

 

声を掛けてくださったのは穏やかそうな中年の神父様。

そして隣にはもう一人、修道服姿の女性がいましたが、こちらは顔をベールで覆っていて素顔を伺い知ることはできません。

私が肯定すると、神父様はとても朗らかに微笑まれました。

 

「そうですか、よかったです。ようこそ、シスター・アーシア。遠路遥々、よくおいでくださいました。私は御案内役を仰せつかっております、マクシミリアンと申します。どうぞお見知りおきを。」

 

そう言って神父様は手を差し出されて握手を求められたので、私もそれに応じます。

すると今度は隣にいた女性が進み出てきました。

 

「シスター・アーシア、お会いできて光栄です。私はマチルダと申します。本日はこの二人でシスターのご案内を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしますね。」

 

シスター・マチルダも同様に手を差し出されたので、彼女とも握手を交わしました。

ベールをかぶったままだったので表情はわかりませんが、声色からしてきっと微笑んでいらっしゃるのだろうということはわかりました。

 

「それでは参りましょう、シスター。主が待っておいでです。」

 

マクシミリアン神父が先頭に立ち、私たち3人は駅近くの駐車場に停めてある乗用車に乗り込みました。それから車は駐車場を出て、町の郊外へ向かって走り出します。

途中、私たちはいろいろなお話をしました。お二人とも、笑いながら私の話を聞いてくださいました。人とかかわってこんなに楽しい思いをしたのは本当に久しぶりのことです。

しかししばらく走って、住宅に差し掛かった時のことです。神父様が不意にこんなことを口にされました。

 

「ところでシスター・アーシア、あなたは我らが主、レイナーレ様がどのような方だとお思いですか?」

 

レイナーレ様。

 

その名を耳にした途端、私は暖かな気持ちから急に、現実に引き戻されたのです。

 

「いえ、あまり詳しくは……聞くところによれば、それはそれはお美しい女性の堕天使様であらせられるとか。」

 

堕天使。

唯一神教において、主たる神に背き、欲に溺れて翼を黒く染めたかつての天使。

そしてその堕天使を主とする人間もまた、何らかの罪を犯した咎人であることを意味します。

 

そう、この私も。

 

「ええ、おっしゃる通り、レイナーレ様は堕天使であらせられます。聖書では堕天使とは神に対して罪を犯し、天界を追放された存在です。そのくくりでは、堕天使に仕える我々もまた罪人ということになる。確かに我々は教会を追放された身だ。けれども、考えてみてください。追放を言い渡したのは誰であったかを。」

「追放……あっ」

 

私は自分の生涯を振り返りました。

 

孤児だった私は教会に拾われ、そしてある時発言した治癒の力。

それを見た教会の方に連れられ、より大きな教会で聖女として祭り上げられました。

そして各地の信徒の怪我や病を治していた私の前に現れた、一人の悪魔。

その傷を治癒したことを見咎められ、連れていかれたのは協会の上層部の方々が鎮座する宗教法廷。

その方々が口々に私を罵り、押された烙印が魔女。

 

神父様は悲しげな様子で続けられます。

 

「そうです。我々を追放したのはほかでもない、同じ信徒・人間です。神を信じ、敬う気持ちは皆同じ。だというのにほんの少し、考え方や実践が異なるだけで異端として蔑み、徹底的に弾圧する。我々は直接、神がそう決めたのか、あるいは大天使の誰かがそう言ったのかを知ることはかなわない。言葉は人の口を経るごとに少しずつ歪んでいくものです。それをいいことに教会の者たちは我々に異教徒の汚名を着せ、全てを奪った。本当に恐ろしいのは人間なのかもしれません。」

 

神父様の言葉は私の胸に深く沈み込むようでした。

私は生まれてこの方、神に仕える以外の道を知りません。

けれども目に見えない、言葉を聞くこともできない神に仕え、教えを守ってきた私を、異端としたのはほかでもない、教会の方々でした。

神父様のおっしゃる通り、本当に神が私の追放を決めたのか。

それを知ることは確かめようがないのです。

隣に座っていらっしゃるシスター・マチルダもまた、共感する部分があるのか、心なしか悲しげな様子に見えます。

 

「すみません、お辛い過去を思い出させてしまったかもしれません。けれどもこれだけは覚えておいてください。レイナーレ様はたとえ我々がどんな罪を犯していたとしても、それを受け容れてくださるお方だと……おや、もう着いてしまいましたね。」

 

気が付くと私たちは町はずれの林の中、街を見下ろす高台の上に建てられた教会の前に来ていました。

日は傾き始めていて、ステンドグラスに赤い夕陽が反射していて少し眩しいです。

車を降り、お二人の案内の下、扉を開けて建物の中に入ります。

中は古びた外見に反して、とても清潔に保たれていて、聖人の像も十字架も破壊されることなく綺麗に磨かれていて、一見するととても堕天使の拠点とは思えないほど静謐な空気さえ漂っていました。

 

「さあ、こちらへ。」

 

神父様たちは更に奥、礼拝堂の裏手にある、地下へと続く階段へと向かっていきます。

階段をそのまま下っていくと、やがて重厚な扉に突き当たります。

 

「マクシミリアンです。シスター・アーシアをお連れしました。」

 

神父様がそう言うと、重たい音を立てて扉がゆっくりと開き始めました。

 

「っ」

 

そこでみた光景に、私は思わず息を呑んでしまいます。

 

扉の向こうは礼拝堂とほぼ同じ大きさの部屋。

中央奥にピラミッドのようなひときわ大きな祭壇が建てられ、その上に安置された巨大な四角い枠状の物体の中で眩い青い光が渦巻いており、そこから漏れる光で部屋の内部は幻想的に彩られています。

そして祭壇までの道の両脇を、目だけを出すマスクをした神父服姿の男性と、シスター・マチルダと同じく顔をベールで覆った修道服姿の女性たちが一列に並んで固めているという、ある種異様な光景だったのです。

 

神父様は最初に言葉を交わした時と変わらない穏やかな笑みを浮かべられています。

 

「ようこそシスター・アーシア、『復讐者の教会』へ。この先で我らが教主・レイナーレ様がお待ちです。」

 

何故でしょうか。神父様の笑顔がここまで異質に感じたのは初めてです。

この異様な光景に戸惑っていると、革の手袋のひんやりとした感触が手から伝わってきました。気が付くとシスター・マチルダが隣に来て、私の手を取っていたのです。

 

「参りましょう、シスター・アーシア。このゲートの向こうにレイナーレ様がおいでです。いきなりこんなものを見せられて戸惑っておいででしょうが、ご心配なく。私も一緒に参りますから。」

 

ベールの上からではありましたけど、この時シスターもまたどことなく微笑んでいるように感じました。

 

「では、彼女のことは頼みます。」

「はい、お任せを。」

 

私は言われるがまま、シスターと共にゲートと呼ばれた青い光へと向かって祭壇を上っていきます。

これが、ますます私の運命に波紋を投げかけることになるとは、この時は知る由もなかったのです。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。