TS憑依堕天使は主人公のNTRを計画するようです 作:カイバル峠
活動報告にも書きましたが、前回更新後一時閲覧できない状態となっておりました。
御愛読頂いている皆さまに多大なるご迷惑をおかけしたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。
今後とも拙作「TS憑依堕天使は主人公のNTRを計画するようです」をよろしくお願いいたします。
来訪者と内通者
夜もすっかり更けた頃。
白髪の少年が一人、ベッドの端に下着一枚で腰かけていた。
シルエットは細いながらも、全身に刻まれた無数の傷跡、巌のごとく鍛え上げられた筋肉はまさしく彼が戦士であることを物語っていた。
(多少誘導したとはいえ、なんとかうまく手に入れてくれたな。とりあえず第一段階はクリアってとこか。)
彼はベッドの脇に置かれたテーブル上のチェス盤の、『女王』の駒を手に取ると、相手方の『兵士』の駒を倒す。
(まあ、わざわざ生き残る術を示してやったんだ。キチンと成果は出してもらわねェとなァ……ん?)
その時、不意に彼のスマートフォンの通知が鳴る。
手にとってメッセージを確認する。
すると彼の表情が一気に不機嫌そうなものへと変わる。
(ゴミが……あーあ。そろそろ来るころだとは思ってたが、改めてみるとやっぱムカつくわ。膳立てさせといて、全部かっさらうたァ、さすがは貴族の坊っちゃん。いい根性してやがる。けどま)
不意に、彼は背後を振り向く。
寝台にはもう一人、彼とほぼ同い年くらいの少女が一糸纏わぬ姿で、毛布にくるまってスヤスヤと安らかな寝息を立てて寝ている。
部屋のソファには、彼女が着ていたものであろう、修道服が乱雑に脱ぎ散らかされていた。
彼はそっと、彼女の頬を撫でてやる。
「ん…」
少女は少しくすぐったそうにしながらも、わずかに口元が緩んだように見えた。
そんな少女の様子を見て、彼もまた、口元に笑みを浮かべる。
しかしそれはほんの一瞬だけだった。
再びスマホの画面に視線を落とすと、彼の浮かべていた笑みは狂気を孕んだものへと一変する。
(悪いなァ、今回でテメェとの縁もお仕舞いだわ。ちーとばかしおイタが過ぎたみてェだし、年貢の納め時ってやつだな。さてと、後はどう舞台を整えてやるか、だな……)
彼はメッセージの送り主に対して訪れるであろう凄惨な結末を想像して笑みを深める。
短く了解の旨を返信すると、通知を切り、スリープモードにして画面を落とす。
(ま、ヤロウの処遇はともかくとして、問題は奴の身内が出張ってくるようだとさすがに面倒だな。あんなゴミでも次期御当主サマらしいからな、いなくなったら草の根分けてでも探すだろう。さすがにここに辿り着くなんてことはねェとは思いたいが、超越者サマなら万が一ってこともある。一応ホシを連れてきたらすぐに設備諸々は破棄するようには言っておいたが……あの脳内お花畑の烏共に任せるのはどうにも気がかりだ。念には念で、こっちでも隠蔽工作しとくか。ハァ、やること多すぎるぜ。)
少年は頭の中で今後のタスクを素早く纏めると、あまりの懸念事項の多さに心の中で悪態をつきながら、ベッドの上で仰向けになる、
そして彼が目を閉じると同時に、通知を切ったスマホの画面が受信したメッセージを表示した。
そこには簡素に、こう書かれていた。
―――了解した。君の働きに期待しているよ。 D.A.―――
◇◆ ◆◇
私はアーシアとの顔合わせを終え、自室に戻ろうとしていた。
おおよそ事前に聞いていた通りの人物像と相違なかった。
じきに彼女にはとある役割を担ってもらうつもりだが、あの手のタイプは初見でネガティブなイメージを抱かせてしまうと途端に扱いが難しくなる。
加えて『私』の記憶のこともある。
…じっくりと、こちらのやり方に慣れていってもらう必要があるだろう。
それに扱いが難しいと言えば兵藤一誠についてもだ。
この前は自分でも少しヒートアップしすぎたと思う部分があった。
最初に力関係を見せつける意味もあったが、赤い龍を宿している以上、何がきっかけで暴発するか分からない。
あんな煩悩しかないようなエロ餓鬼でも、完全にモノにしようと思うと予想以上にデリケートな扱いが求められるのかも知れない。
『私』の記憶では少なからず一誠にはマゾの気があったのは確かだが、緩急をつける意味でも次の調教は少しソフトにしてみるべきか。
そんなことを考えながら歩いていた時だった。
「よォ、姐さん。」
そういって軽い調子で私に声をかけてくる男。
身内でこんな奴は一人しかいない。
「あら、フリードじゃない。何か用かしら?」
ニヒルな笑みを浮かべる白髪の少年神父、フリード・セルゼン。
『私』の記憶では、『私』の部下であったにもかかわらず、グレモリーとの戦いで窮地に陥った『私』を見捨てて逃げた男だ。
「いやいや、どうでした?アーシアちゃんは。めちゃんこいい子だったっしょ?」
「そうね。実にアナタ好みの、素直で純朴な子ね。」
「うわ、ひでェ!人を節操無しみてェに言わねェでくだせェよ?!」
大袈裟なジェスチャーを交えて、いかにも心外ですと言わんばかりの顔をして見せるフリード。
私は一つ、大きな溜息を吐く。
「よく言うわね。ここをはぐれ聖職者共の駆け込み寺にした張本人の癖に。」
そう。
私がこの団体を立ち上げるにあたって、最も中心的な役割を果たしたのは何を隠そう、このフリードだった。
私がこの男と出会ったのは「神の子を見張る者」の中での昇進に行き詰っていた時のこと――ちょうど『私』の記憶に目覚めた直後のことだった。
はじめはよくいる、やりすぎて教会を追放され、流れてきたはぐれエクソシスト共の一人で、“ちょっと普通の人間より強いくらい”にしか見ていなかった。
今思えば我ながら短気が過ぎたと思うのだが、荒んでいた当時の私はそのあまりに馴れ馴れしい言動が気に食わず、カラワーナたちと共に潰しにかかった。
しかし結果は思わぬものだった。
こっちは本気で殺すつもりでかかったにも関わらず、奴は息一つ乱さず、堕天使4人を同時に相手取り、そして完膚なきまでに叩きのめした。
屈辱だった。
だがそれと同時に恐怖でもあった。
奴は全くと言っていいほど力を出していなかった。
正直本当に人間なのかどうかすら怪しいほどの、圧倒的な力。
その時私たちは死を覚悟した。
しかし奴はそうしなかった。
それどころか、私たちにこうして武装集団を立ち上げさせた。
そして何を思ったのか、私をトップに据えたのだ。
後で知ったことだが、この男はコカビエル様をはじめ幹部の方々とも面識があるという。
もはや完全に謎だった。
「まあまあ……俺が今までに人選間違えたことってありましたっけ?」
「……。」
その通りだった。
フリードが連れてきた人材は皆何らかの能力に秀でた者ばかりだった。
戦闘面はもちろん、事務作業や技術力に秀でた者など、その才能は幅広い。
特に、女性――はぐれシスターは元々各地の聖女や高名なシスターだったとかで、神器持ちや魔法の才に秀でている者が多く、フリード監修の下、一通りの戦闘訓練を施したら皆化けた。詳しいことは不明だが、中には上級魔相当の戦闘力を持っている者もいるとか、冗談めいた調子で漏らしていたのを聞いたことがある。
さらに不可解なことに、そうした連中に私を崇めるよう仕向けたのだ。
「全てレイナーレ様のお陰」と言って私への忠誠を誓わせているのは理解に苦しむ。
しかしこの男のお陰でこうして組織がまとまっているのも事実だし、今の私たちがあるのも彼の尽力に拠るところが大きいのだから文句を言う権利はない。
だが彼が何者で、何を考えているのかは皆目見当もつかず、また『私』の記憶の中の「フリード・セルゼン」の人物像も相まって、何か得体のしれないものの存在を感じさせるのもまた事実だった。
「まあそれはともかく。今日はちょいとバッドなお知らせを持ってきやしたぜ。」
「?」
フリードはスマホを取り出して操作すると、何かのアプリを起動してチャット画面を表示して見せた。
「っ!?……これ、まさか」
「そうそう。
私は文面を見て愕然とした。
アーシアを受け入れるにあたってあるリスクについて説明されていた。
『私』の記憶では、『私』とアーシアが出会う直接のきっかけを作った人物。
「そ、そう。遂に、奴が……一応聞くけど大丈夫、なのよね?」
「こんな時のためにあれこれ準備してきたンすからねェ、この施設しかり。あの坊っちゃんじゃここまでたどり着くのはまず無理っすね。一応あの町の教会にいるって体で情報流したンで、もしかしたらグレモリーが絡んでくるかもしれねッスけど、そん時は予定通りあんなダミーの教会なんざさっさと放棄しちまえば済む話ですし。さすがに連中も町の外で起きたことにゃ関与しないっしょ……それに」
フリードはゾッとするような冷たい笑みを浮かべて言った。
「正直あの坊っちゃんはもう用済みなンスわ。ちょいとおだてりゃすぐ調子乗って余計なことまでベラベラ喋ってくれちゃう見栄っ張りの糞餓鬼君でねェ。おかげで思った以上に楽にエキスでトラな情報まで手に入っちゃいましたわ。まあでも、もう潮時ッスね。これ以上付き合っててもメリットないんで。」
心なしか空気が凍ったような気がした。
フリードという男、本当に底が見えない。
そんな私の心情を知ってか知らずか、またいつもの道化じみた胡散臭い調子に戻る。
「とまあ、そんな感じなんで、お坊ちゃんの件は俺に任せてちょ!それよりも姐さんは予定通りに赤龍帝クンの教育頑張ってくだせェな。俺も後でフォローしに行くんで!ほな、バイちゃ!」
そう言うと、フリードは振り返らずにひらひらと手を振って立ち去る。
私は自分が知らぬ間にかなりの冷や汗をかいていたことに気がつく。
正直あの男が何を考えているのかは分からない。
けれど、フリードに任せておけばどうにかなるという不思議な安心感も同時に感じる。
「…そうね、私は私の役目を果たさないと、ね。」
私は気持を切り替えて、自分の仕事に向かうことにした。
◆◇ ◇◆
「はぁ……」
私、リアス・グレモリーは手渡された報告書を見て溜息を吐いた。
「やはり、侵入されたのは“空白期”みたいね。」
「はい。おそらくその時期の可能性が一番高いかと。」
私の通う学園の男子生徒が一名、行方不明になってから2週間が経とうとしていた。
以前も堕天使からの接触があったことで、神器持ちの可能性が高いと思い、監視を付けていた。
しかし監視に付けていた私の眷属が依頼で席を外した日を境に、彼は忽然と姿を消してしまった。
この状況で、最も怪しいのは当然ながら堕天使だ。
そこに私の片腕たる『女王』・姫島朱乃は疑問を差し挟む。
「それにしても、普通ここまで徹底してやるでしょうか。周囲の人間の記憶はおろか、公式文書、戸籍謄本にいたるまで、彼の存在に関わる全ての痕跡が抹消されていますもの。人間一人を殺害するにしては不必要なほど手の込んだやり方です。」
彼女の意見に私も大筋同意だった。
以前私の眷属の尾行を振り切った時といい、堕天使の行動はこちらの予想をことごとく裏切るものだった。
まるでこちらが取るであろう動きを最初から知っているかのように。
そしてそのことが私を悩ませると同時に、それ以上に苛立たせもする。
この駒王町は私が魔王様から任された土地、すなわち悪魔の領土だ。
その土地で堕天使に人攫いを許すなど、今後の私の沽券にかかわる問題だ。
しかし堕天使の行動を見れば私たちを関わりあいになることを極力避けているようにも思える。
つまり、下手にこちらが手を出せば戦争再開に繋がる恐れもある。
だがこのまま手をこまねいて見ているわけにもいかない。
せめて事の真相だけでも突きとめねばなるまい。
シロならよし。
クロなら勧告しよう。
もしそれでも応じない時は……
そう思った時だった。
突然、床が光り、魔方陣が展開する。
「アスタロト……」
朱乃がポツリと呟いた。
その魔方陣は私たち悪魔にとってなじみの深い、元72柱の名門・アスタロト家の紋。
そして魔方陣がひときわ強い光を放つと光の粒子が人影を作り出す。
現れたのは、穏やかな微笑みを浮かべる一人の青年。
「ごきげんよう、リアス・グレモリーさん。突然の来訪、誠に申し訳ない。急を要する事態ゆえ、平にご容赦願いたい。」
現れた青年はそう言うと、私と朱乃に向かって優雅に一礼した。
彼はディオドラ・アスタロト。
上級悪魔アスタロト家の次期当主だ。
正直、私はこの男があまり好きではない…というより、苦手だ。
人のよさそうな笑みを浮かべながら、心の底では何を考えているのかわからない。
極めて直観的な感想ではあるが、あの笑みの下には一体どんな本性を隠し持っているのか。
この男に会う度、私の勘がそう囁く。
しかし彼は私と同じ、現魔王輩出家の次期当主という立ち位置。
将来の関係性を鑑みれば、無碍にはできないのもまた事実だった。
「……ごきげんよう、ディオドラ。あなたがわざわざ訪ねてくるだなんて、よほど重要な要件みたいね。その急を要する事態とは何なのか、説明してもらえるかしら?」
私は気を取り直して、本音を悟られまいと気をつけながら尋ねる。
「ああ。実は人を探していてね。この町にいるという情報を掴んだから来たんだ。」
そういうとディオドラは一枚の写真を取り出して見せた。
私は目を疑った。
写真に写っていたのはまだ幼さの残る顔立ちをした、金髪のシスターだった。
私はディオドラの顔を見つめる。
すると彼はまっすぐ私たちを見据えて言った。
「率直に言おう――――彼女を救出するのに力を貸して欲しい。」
突然やってきた来訪者。
この一言が新たな波乱の幕開けとなるのだった。
今回は皆大好き!下種ドラくんの登場会でした(笑)
それにしてもフリードェ…原作通りの役回りでもつまらないので色々と暗躍させることにしたらこの有様。
どうしてこうなった(白目)
R-18描写は前回少し飛ばしすぎてしまったなという反省があるので今回は少しトーンダウンです。