※この作品はR-18です。

TS憑依堕天使は主人公のNTRを計画するようです   作:カイバル峠

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お待たせしてすみません!!!

前回からまたしても時間が空いてしまいました^^;

それではどうぞ!


漆黒の帳

漆黒の帳

 

 

 

――冥界・堕天使領某所

 

 

「足りんな」

 

 

 

机の上に広がった書類を見ながら、男は独り言ちる。

 

彼は際立って特徴的な外見をしていた。

 

血の気の感じられない病的に白い肌、横に大きく伸びた尖った耳、鮫を思わせるような山形の歯列、そして全体が赤色に染まった眼球。

 

彼の名はコカビエル。

 

聖書にも名を遺す、堕天使の幹部。

星の運行を司るとまで言われた、古よりの強者。

ある意味悪魔よりも悪魔らしい容姿をした堕天使の大幹部は、積み上げられた報告書を一枚一枚捲るたび、落胆の表情を濃くしていた。

 

(幾度となく上級悪魔の領地や教会所有の土地に部下を送り込んでは騒ぎを起こしてみたものの、これまで結果は全て鎮圧か撤退。これでは火種にすらならん。部下共が無能なのは如何ともしがたいが、天使や悪魔共がここまで冷静な対応を見せるとはな。正直、ここまで手応えがないとなると拍子抜けもいいところだ。)

 

コカビエルが一番上の書類を手にした途端、瞬時に発火して消えてなくなる。

そして一気にグラスの酒を呷る。

 

(このままでは不味い、我が宿願は果たされぬままか…)

 

コカビエルは今一度、自身が理想とする闘争の在り方、過ぎ去りし“旧き良き時代”を脳裏に思い起こす。

 

太古の時代、神に反旗を翻したその時から、その身は常に戦いと共にあった。

血で血を洗う泥沼の戦場、阿鼻叫喚は絶え間なく繰り広げられ、敵味方を問わず皆一様に傷つき、一人、また一人と斃れていく。

堕天使勢力でも最古参かつ指折りの実力者であったコカビエルは、その戦争の中核にいた。

力を振るえば山は消し飛び、大地は抉られ、大気が軋む。

光の一閃が駆けるたび、幾千、幾万という天使や悪魔が灰燼に帰す。

闇を溶かしたような十の黒翼が天を覆うたび、凶星の如き赤い双眸が地を照らすたび、敵は慄き、恐怖に震え上がった。

気の遠くなるような悠久の時の中で、三つの種族が徒に命を散らす中、彼は確かに自らの「生」を実感し、魂を歓喜に打ち震わせていた。

 

しかし、それはとある二匹の龍の登場で突如として終わりを告げる。

異教の地で語られる赤白の龍は、神や魔王をも歯牙にかけぬ圧倒的な暴力で戦場を蹂躙した。

僅かな合間に、戦による被害を遥かに上回る数の命が儚く消えた。

三勢力は残された力を振り絞り、多大な犠牲を払いながらも二龍を封じ込めることに成功した。

しかしその代償はあまりに大きかった。

天使は神を、悪魔は四大魔王を、堕天使は幹部を除くその大半を喪った。

長きに渡る戦乱でいずれの勢力も疲弊し、力と統合の象徴であった神や魔王も失われ、種族として最低限の数を残すのみとなり、もはや戦の目的も、勝者も敗者もなく、決して消えぬ遺恨を各々の心に刻み、戦争は終結した。

 

戦後、自らの頭である総督アザゼルは早々に和平路線に舵を切った。

なるほど、衰退した自種族を立て直すため、集団の長としての判断には誤りはないだろう。

しかしコカビエルにとって、それは耐え難い苦痛の始まりでしかなかった。

自らに生の実感を与えてくれ、己の力一つで自在に作り替えることのできる世界。

漂う血煙の臭い、圧倒的な力で敵を叩き潰す感触はハッキリと五感に刻まれ、今なおも、つい先ほどのことのように蘇る。そのたびに血が滾り、心が叫びを上げる。

彼にとって戦場とはそのような世界であり、生きる意味そのものだった。

コカビエルは、自らの内で燻る炎を抑え、日に日に増していく魂の乾きに耐えながら、来るべき日を心待ちにしていた。

 

 

いつの日かまた、友たちと再び戦場を駆け抜ける姿を夢見ながら。

 

 

『二度目の戦争はない』

 

 

しかし、コカビエルの希望は脆くも打ち砕かれた。

アザゼルの放った一言。

それは組織として、戦争再開の可能性を永遠に否定するものだった。

彼は信じていた。数多くの同胞を喪った勢力の回復のため、今は雌伏の時に甘んじている者たちも、いつの日か必ず共に立ち上がる日が来ると。そんな自身の想いを知ってか知らずか戦争再開を否定したアザゼルを、彼は当然問い詰めた。当然、アザゼルの答えは否。アザゼルばかりではない。シェムハザも、バラキエルも、生き残った他の幹部たちは皆、揃って厭戦の意を露わにしたのだ。

自信の思い描く未来は、決して訪れないことをコカビエルは悟ってしまった。

 

コカビエルの心を失望が埋め尽くした。

加えて自らの想いを踏み躙った同胞たち全てへの復讐心が膨れ上がる。

そしてその時から、コカビエルは胸に誓ったのだ。

 

自分ひとりでも、戦争の決着をつけるのだと。

 

ここで、コカビエルという男の本質に触れておくと、彼は飽くまで「戦争狂」であって、「戦闘狂」ではない。

 

一対一で己の力と技と誇りを掛けた戦いは嫌いなわけではなく、寧ろ好きな部類に入るが、それでも真に望むは多くを巻き込み、より大きなうねりとなって展開する混沌の戦場、そしてその先に進むことでしか辿り着けない、遥かなる高みである。

 

彼は悲願成就のため、あらゆる手段を模索する。

幸いにも、彼と同じく現状に不満を抱く者たちは内外に大勢いた。

彼はすかさずその者たちと接触し、焚き付け、抱き込み、けしかけるなど、数々の裏工作を行った。

 

しかしそんな彼らの目論見は悉く、現状維持を望む各勢力の首脳陣によって阻止されてきた。

コカビエルは表向き従順に、内に募る苛立ちを抑えながら、野望実現に向けて虎視眈々と機会をうかがい続けていた。

 

(何か、何かないのか。確実に戦端を開くきっかけとなる何かが……ん?)

 

その時、ふと、一枚の紙が目に留まる。

 

(これは…ああ、思い出したぞ。確かフリードの奴が最近面白い拾い物をしたとかなんとか言っていたな。…ほうほう、なるほど。)

 

コカビエルは赤い双眸を細め、口元が三日月形に歪む。

 

(『赤い龍』、か。クククク、もしこれが本当だとすればかなり面白いことになるな。さて、奴の名目上の上司となっているのはどの堕天使だったか。)

 

コカビエルは情報端末を操作すると、幹部の権限で組織の成員に対するあらゆる人事情報を検索にかける。

そしてすぐに、彼は目的の人物にたどり着く。

 

(ふむ、レイナーレというのか、ランクは中級堕天使、性別は女。直属の上司と人事課の評定によれば戦闘能力は高くなく、そのため前線で目立った勲功はなし、か。だが野心家で向上心が強く、功を逸りがち……)

 

そこまで読んで、コカビエルは一層笑みを深める。

 

(クククク、こいつは面白いな。スペックだけ見れば大したことはないが、貪欲に上を目指すその姿勢だけは評価に値する。しかし気の毒だがこの女は組織での出世は望めそうにない……だがそれでもあのフリードが何かと気にかけているんだ、それ以外に相応の理由があるのだろう。)

 

コカビエルは立ち上がると、残った書類全てを燃やし尽くす。

 

(いいだろう、この女に賭けてみることとしよう。正直戦力としては期待できそうにないが、火付け役にはちょうどいい。そうだ、手土産に昔仕込んだ祭りの残りでもくれてやろうか。それならばいくらか足しになろう。)

 

 

 

 

◇◆    ◆◇

 

 

 

 

レイナーレは拠点内の細い通路を歩いていた。

長い通路は狭く、歩くたびに足音が反響する。

そんな代わり映えのしない風景がしばらく続いた後、一枚の扉に突き当たる。

扉は一目で重要なものを格納しているとわかるほど重厚な作りで、いくつもの術式を掛け合わせた厳重なロックが施されている。

レイナーレは扉の横に備え付けられたパネルに手を翳す。

一瞬、小型の魔法陣が展開して淡い光を放つと、扉からプシュッという空気が抜けるような音が聞こえる。

ロックが解除され、重々しい物音と共に固く閉ざされていた扉が開かれる。

それを確認したレイナーレは悠然とした足取りで部屋の中へと歩を進める。

そこには土下座の体勢で蹲り、深々と頭を下げる人物がいた。

レイナーレはその人物のすぐ前で立ち止まると、心底蔑むような眼で見下ろす。

 

「お待ちしておりました、レイナーレ様。」

「顔を上げなさい。」

「はい。」

 

レイナーレが顔を上げるよう指示すると、蹲っていた人物は顔を見せた。

そこにいたのはまだ年若い茶髪の青年だった。

微笑を浮かべながらも露骨に見下すような視線を向けるレイナーレに対して、彼は聖人を目の前にした敬虔な信徒の如き崇敬の念を込めた瞳を彼女に向けていた。

 

「フフフ、随分殊勝な態度をとるようになったじゃないの。ここに来たばかりの時とは大違いね?」

「はい、私が愚かでした。貴女様のお役に立てることこそ、私の悦び。無力で卑しい存在であるにも拘らず拾っていいただいたこと、身に余る光栄でございます。」

「そう。でも思い上がらないことね。今のあなたは何の力も無い、いわばお荷物なの。だからせめて、今できる最良の形であなたの存在価値を示しなさい。」

 

レイナーレは傲慢ともいえる態度で、片足を差し出す。

 

「はい。」

 

青年は本当に嬉しそうな表情を浮かべ、再び頭を下げてレイナーレの爪先にキスをした。

そんな彼の無様な姿を見下ろし、レイナーレは自身の絶対的優位に由来する愉悦を噛みしめ、嗜虐的な笑みを浮かべながらも、その表情はどこか恍惚としていた。

 

「良い心掛けね。」

 

彼女は虫けら以下のモノを見るような目で彼を見下ろしつつ、あの日(・・・)のことを思い返す。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「……」

 

兵藤一誠は憔悴しきった様子で、力なく項垂れていた。

 

ほぼ全裸の状態で衣類と呼べるものは股間に着けられた貞操帯、それから自殺防止用のマスクのみという、人としての尊厳を徹底的に奪われた姿だった。

そこに、正史として語られる世界における「英雄」の面影は全くなく、ただ哀れな虜囚の姿があるのみだった。

 

水や食事は与えられているが十分ではなく、さらに長期に渡る監禁によるストレス、教団の者たちから日常的に受ける嫌がらせが、彼の心身を共に確実に蝕んでいく。

 

しかしそのような状態にあって、まったく別の行動を示す者がいた。

 

ガチャリと扉が開く音がする。

 

「あら、随分顔色悪そうだけど、大丈夫?」

 

入ってきた人物を、一誠は生気の感じられない虚ろな瞳で見上げる。

彼をこの状況に追い込んだ張本人・レイナーレだ。

 

「んぅ……」

「ああ、そういえばずっと口塞いでたものね。いいわ、外してあげる。」

 

レイナーレが指を鳴らすと、一誠の口を塞いでいたマスクの留め具が外れ、床に落ちる。

 

「ッはぁあァ―――――ッッ!」

 

久しぶりに解放された口からは多量の唾液が零れ落ち、肺が新鮮な酸素を求めて呼吸は深くなり、心の臓は澱んだ血液を浄化するためひたすらに激しく脈打つ。

虚ろな瞳に僅かばかりの精気が戻る。

 

「どう?久しぶりの空気の味は?」

「ぅ、ぅぁあうァ……」

 

当然のことながら、言いたいことは山ほどある。

しかし言葉を絞り出そうにも、長い間口を開いたまま固定されていたせいで顎の筋肉が硬直し、普通に話すことさえままならない。

 

「そんなに苦しかった?でも、そんな風に舌出してゼエゼエ息してる姿、まるで犬みたいよね。アハハハ!これはこれで面白いかしらね。」

 

尖った歯を剥き出しにして声高に嘲笑するレイナーレを、一誠はキッと睨みつけてせめてもの抵抗の意思を示す。

未だに折れない彼の様子を見てレイナーレはやれやれといった様子で、諭すように語り掛ける。

 

「いい加減に観念したらどう?これ以上反抗したところで、自分が辛いだけよ。何度も言うけど、ここには誰一人としてあなたの味方はいないし、外にもあなたのことを覚えている者はいない……あなたはここで暮らしていく以外に道はないの。」

 

「…して……」

「ん?」

「…どう…して……こんな、ことを…ッ…なん、で…俺を、こんな、目にッ!」

 

その時、僅かに周囲の空気が一変する。

一誠の体から赤いオーラが薄く立ち上る様が可視化され、周囲の小物がカタカタと小刻みに震えた。

 

「がっ」

 

しかしレイナーレも、それを見逃しはしない。

すかさず距離を詰めると、一誠の首を掴んで持ち上げる。

 

「…そういえば、あなたは私の奴隷の中でも最高クラスに出来の悪いクズだったわね。」

 

万力のような握力でギリギリと首を締め上げられ、逃れようと必死で暴れるがびくともしない。当然のごとく声は出ず、コヒューという空気の漏れるような音が僅かに出る程度だった。

苦しむ彼の様子に、レイナーレは笑みを深める。

 

「何故自分がこんな目に遭っているのか、ですって?教えてあげてもいいのだけれど、今のあなたには到底理解できないことよ。一つだけ言っておくと、我々が手を下さなくとも、いずれあなたは殺されるか、こうして囚われの身になるかのどちらかになることは確実だったわ。あなたは決して平穏な人生なんて送れない。それに」

 

レイナーレは不意に、一誠の股間に手を伸ばす。

 

「っ」

「あなたのここ、こんなに気持ちよさそうよ?貞操帯越しでもわかるくらいにね。ていうか、首絞められて感じるって、あなたってやっぱりとんだ変態よね?」

 

レイナーレは貞操帯の周囲から巧みに一誠の一物を愛撫する。

そして悲しいかな、かれのモノはその絶妙な刺激に正直に反応を示すのであった。

 

「かは…」

「フフフフ、やっぱり感じているじゃない。結局のところ体は正直よね?あなたが私に従う限り、最低でもこの快楽は約束してあげるわ。あのくだらない日常に戻るより、ここで刺激的な日々を過ごす方がよっぽど素敵でしょう?」

 

一誠の心は揺れ動く。

確かに、こうして理由もわからず拉致・監禁され、常に苦しみを与えられているのは納得できないし、その張本人であるレイナーレを許すこともできない。しかし昨今のやりとりで彼女が人間など足元にも及ばない人外の存在であることは明確であるし、逆らえば命はない。相手は人間の命など虫けらの如く、いとも簡単に奪ってしまえるだけの力を持っているのだ。

しかし一誠が躊躇う理由はそればかりではない。

レイナーレによる度重なる性的な挑発は、確実に快楽となって彼の身に刻まれている。

欲望に対して正直でありながら女性経験が皆無な思春期の青年にとって、ボンデージ姿の、それも人外の美貌を持つ女性の色香はまさしく甘い猛毒。元々マゾヒスト寄りの彼が、自身の根本的な性癖に目覚めるのはまだ先のことだが、人間の最も根本的な欲求に訴えかける、強すぎる刺激に感覚は麻痺し、判断力を鈍らせるには十分過ぎた。

事実、こんなにも苦しい思いを強いられているにも関わらず、彼の怒張は今にも貞操帯を突き破らんばかりに猛々しく反り立っているのだ。

 

「…だから誓いなさい、私に全てを捧げると。」

 

甘美な悪魔の囁きが脳内に響き渡る。

苦しみは生命の危機に対してばかりではない。

レイナーレの指技が執拗に責めたて、彼の一物は既に痛いくらいに熱く滾り、その存在感を主張し続けている。

兵藤一誠の心はこれ以上にないほどに激しく揺れ動く。

たとえ命を散らしても、人としての尊厳に掛けて最後まで抗うか。

それとも人間としてのあらゆる自由と尊厳を剥奪され、家畜以下の存在となっても生にしがみつくか。

 

 

 

「俺、は……」

 

 

 

 

「そう。」

 

 

 

 

 

選択の時は過ぎ去った。

 

兵藤一誠は選んだ。

 

そしてレイナーレはそれを受け入れた。

 

審判が下った。

 

 

 

 

 

それからまもなくして、覆面姿の神父たちが複数人現れ、監獄から一誠を連れ出した。

 

「それじゃあねぇ、一誠君。生まれ変わった姿を楽しみにしているわぁ。」

 

これは始まりに過ぎない。

 

彼の命運は大きく歪んだまま動き出す。

 

そしてその命運を歪めた張本人たるレイナーレは、神父たちに担がれて通路の奥に消えていく背中を見送りながら邪悪な笑みを浮かべているのだった。

 

 

 

 

 




お久しぶりです。

気が付けば前回更新からもう2か月近く空いてしまいました。

それから、あれだけ甘美な調教を強調しておきながら、結局ハードな展開となってしまいました^^;
期待されていた方々にはお詫び申し上げます。

次回からは新章突入を予定しております。
今後ともよろしくお願いいたします。
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