ここ政庁副総督室なんだけどの続きです。
カップリングは名無しのイレヴン六十代ほどのおぢさま×ユーフェミアです。
「あの、少しばかり思うのですが、わたくしたちって着衣交接ばかりですよね」
ふと呟いた一言。特に思う事は無い。ただ何となくこれも彼の我が儘なのではないのだろうか? そう、感じただけ。
着衣交接時には、彼は、私のタイトスカートを腰より上までたくし上げます。時に、腰の後ろ半分を覆う薄紅色の羽スカートも纏めて。それは、スカートが行為で濡れたりしないようにとの措置。
言わば彼の気遣いであり文句を付けるところでは無いのですが……、彼は反応する。当たり前の反応を。
「着衣での対面座位が俺たちの基本だろうがよぉ、全裸や半裸でやってどうすんの? 俺、オメーの着付師じゃないんよ? その小難しい意匠の衣服を欠片残さず綺麗に着付けする自信はねーの」
そう言いつつも時折、彼御自身もそして私にも、互いで全裸での交接に臨む事もあるくせに。そうです。そんなには無いとは言え、私たちは素肌と素肌を重ね合わせるのです。
一度や二度ではありません。私は幾度も衣服を脱がされたことがありますよ? その時は彼も私も共に全裸、素肌と素肌を晒し交接に臨む。それもまた心地の良い一時なのですが。
◇◆◇
肌と肌を深く隅々まで重ね合わせ、汗と汗を交わらせ、足を絡ませ合い、胸部をすり合わせ、頬をすり合わせ彼が私の髪を触り、私が彼の禿げた頭を撫でまわす。
私は胸を乳首を揉まれ吸われ、私は彼の逞しい胸板を撫で回し、ぽっこりお腹も撫で回す。本当に全身で愛し合うのです。ただひたすらに愛を交わします。
一度事が始まれば、始めてしまえば、彼から犯されるような始まりを経て事が始まれば、数時間は彼のベッドの上で私と彼は愛を語らう。変わらないのは私の髪型だけ。彼は髪結いが難しいからと、私の髪だけは、大きな髪留めで纏めさせたままですから。
私の髪は解かれない。そこだけは変わらずのでも私は全裸で、彼も全裸。生まれたままで愛し合う事に変わり支障は出ないので、髪くらいは良いでしょう。
本当は髪も解いて欲しい。彼の好きな私の髪を堪能して頂くためにも。ですが、髪を堪能するだけならば結っているままでも出来ますものね。少し不満ですがそこは承知致しましょう。それに彼はしっかりと髪を愛撫してくださいますし、私も彼の頭髪の無い頭を私なりに愛撫します。
そして下。私の陰唇部位中央を貫く彼のたくましい男性。その部位での交わりと触れ合いは、他の場所と比較できない深さと強さを誇る。私たちの愛、それがこの場所へと集約しているのですから。
いつもよりも深く感じる抽挿は、先端肥大部位が私の胎内への口を割り、入ってくるほど。膣内射精を超えた胎内射精も、いつにも増して回数と量と共に多くを私は受け取らされます。いつもの交接でもされているのですが、全裸での交接の折には回数も量もそれその物が異なるのです。
キス。甘いキス。唇を触れ合わせての幾度ものキス。ちゅっちゅと、終わらない口付け。甘いキスは深いキスへの誘い水。彼が私の口内に侵入してきます。私の唇を押し割って。私の桃色のリップなんて気にもとめておりません。
彼の唇はもう桃色に染まっているのですから。入って来た大きな肉、舌という名の肉塊が、私の歯茎を縦横無尽になぞり触り、私が差し出す私自身の舌をも撫で擦り、優しく絡ませ触れてくださるのです。
余談ですが、きちんと歯磨きはなさってお出でのようですね。彼の外見からは予想も出来ないくらいに彼は身を清めております。以前、彼に何故かと伺ったのですが『政庁に仕事行くんだ。身の回りも綺麗に。クロヴィス前総督閣下の頃よりその辺りは抜かりなくでございます、はい』との事でした。お仕事が理由。お仕事に手を抜かない彼らしい尤もな理由に、私は感心した物です。
しかし、けれど、ああ、なんて……気持ちいい。心地良い。うれ、しい……。私は、彼の無理強いの無い深い口付けがとても嬉しい。彼はいつも私を労ってくださいます。口、口頭では些か乱暴でも、いざ事が始まれば、本当に優しく私の事を全身を以て愛撫してくださる。
この口付けがその証明の一つ。交接その物もです。膣内射精に胎内射精、繰り返される射精の合間は静かな優しい交接の時間。彼の男全体を使いながら、彼は静かに私の秘部内を優しく、優しく、静かに、擦りあげながら、彼自身の肉と私自身の秘肉を甘くこすらせ合わせて、何処が一番気持ちいい? ここか? それともここか? そう、逞しい男で私を気持ち良くしてくださるのです。
とてもお優しい確認なのですが、私の秘部は、陰唇・秘口より、入り口より中程を通り、奥まった場所へと進み、最奥へ解いたり、膣口と膣口を押し広げられた胎内の一部まで。そう、全体があなたとの交接にとても具合が良いのです。初めてあなたに犯されたあの日からまるで、まるで私とあなた――おぢさまは、愛し合う運命にあったかのようですね?
そうして愛の時は続き、最後には膣内射精を行われ、続き胎内射精が行われます。彼の目的は私の妊娠。私の想いも彼の御子を産む事。ですので、最後はこの射精が私と彼の自然なのです。奥深い交接は私が彼の御子を妊娠する確率を上げるのです。それを行うはだって、私と彼が、夫婦なのですもの。
彼の妻である私ユーフェミア・リ・ブリタニアが彼の子を産む。それは自然で幸せな事。彼が私に子を産ませる、それは自然で、私と彼は誰はばかることなく御子を作るのです。ああ、彼との御子を授かる日はきっと近いでしょう。それだけの回数とお時間を愛し合い来たのですもの。懐妊の時、その瞬間が待ち遠しい。
◇◆◇
そうして私も彼も満足し、交接は終わり、一時の休憩の後の着付け。この着付け、彼の手による私の衣服の着付けが、愛の時の一部を振り返る切っ掛けとなった先の私のふとした意見、異議に繋がったのです。
彼は四苦八苦しながらも私の衣服の着付けを完遂しております。この公務服に限り彼は着付けが出来ておりますれば、先の様な言い様は、単なる言い訳に過ぎないと思われますわ。
私のドレスの着付けは流石に彼には不可能でしょう。あのブリタニアの権威をこれでもかと示すような豪奢なドレスはとても構造が複雑で、彼の手には余る事でしょうね。
けれどでも、少なくとも、彼は私の公務服に置いては、きちんと着付けを為さる事が可能ですもの。
ただ着付けが面倒くさい――。きっと理由はこれでしょうね。
面倒だから着衣での交接に終始する。私自身も着衣の交接になれておりますのでけして否やはありませんが。
それでも彼はある種自分勝手です。御自分の為さりたいように為さり、事を終わらせ良しとする。私の気持ちも考えずに。
着衣交接が嫌なのではありません。着衣交接には着衣交接なりの気持ちの良さ、心地の良さ、具合の良さという物がありますので、私は着衣交接を否定しているのではありません。
それに、着衣交接は、私の着衣を汚さない為という、立派な意味、目的があり、実際に私の衣服が汚されるのは困りますし。
もう一つ、急な来客への私の対処の為という意味も持っています。まさか半裸や裸でお客様をお迎えするわけにも参りませんし、彼が脱衣して私だけが着衣での交接もままあるので対応は私が行う事も多いのです。
素早く重ねていた身体を離し、彼からタオルを受け取り秘部を綺麗に拭き、スカートを下ろし、下着を穿く時間はありませんが身なりだけを整えるのはこれでも手間ですのよ?
彼など、早く、早くしろ早くっ、と、いつもの傲岸不遜な冷静さが何処に行ったのか、慌てておりますもの。
勿論、この私にお客様への対応をお任せになるならば、それ相応の対処もさせて頂きますが。「当家へとどうもいらっしゃいませ。わたくし? わたくしは当家の主人の妻ですが。夫は今着替え中なのでわたくしがご用件を伺いますわ」対処とはそういった対処。
おかげさまで、この界隈と彼の職場の人々、近くのゲットーの一部にまでは。いつもビジネススーツみたいな服(公務服)を着て、大きなポニーテールに結わえた桃色の髪に、サングラスを付けたお堅そうな若い奥さんを持つ不細工なおっさんイレヴンが彼処らに住んでると、噂が広まりました。
まあ噂では無く真実、彼と私は夫婦なので間違いでは無いのですが。これも着衣交接がもたらした副次効果にして、善き影響。それを考えればそう。
着衣交接は私と彼の基本形と呼んでも差し障りないでしょう。衣服を汚さないようにの手前上と致しましても。問題は、彼の勝手がまかり通るのが少々気分を害するのです。
だって、私と彼は夫婦。夫婦とは対等の立場ですもの。それなのに私の我が儘は通らず、彼の我が儘ばかりが通ってしまう事は不本意でしょう?
時には私の我が儘だって通さなければ対等なる夫婦とは申せません。私だって我が儘を申し上げても良いはずです。
皇女さまは妊娠後について~これからを考える
◇◆◇
「んちゅうう──」
長い口付け。十数分は続いたであろう口づけは、彼の仕事時間さえ奪い去った。
元より必要なのか? この部屋には誇り一つとして落ちていない。日ごろのおぢさまの御仕事のたまものだ。
昨日のこの部屋の担当者もおぢさまだったとお聞きしました。御仕事が完璧なのも頷けますね。
彼はこと、御仕事には手を抜きません。『俺ぁよォお金を貰いに行ってるんだからォ』そういう矜持、遊びではないのだという矜持をお持ちです。
イレヴンである彼が、なぜそこまでブリタニアに尽くすのかというお姉様の問いに、そうお答えだった事を覚えております。
『貴様が清掃を行った部屋。皆が満足している。埃一つ塵一つ汚れ一つ無いと。三次受け清掃員なら多少の手抜きもあろうが貴様に限ってはいつも完璧だ。手抜かりが無い。何故其処までの奉仕が出来るか一つ聞いておきたい』
問うお姉様。眼光は鋭い。嘘は許さないという詰問の姿勢。
誰しもが震え上がり、誰しもが真実を口にせざるを得ないお姉様の詰問。
これを以ても、彼は常と変わらぬ人を馬鹿にしている様で、それでありながら努めて真剣な、薄笑いの表情を崩さず話した。
『これはこれは総督閣下ぁ、私めの様な卑しいイレヴン如きにまでお声がけくださり、恐悦至極に存じます。で、総督閣下のご質問でございますがぁ、私めは確かにイレヴンです。卑しい卑しいイレヴンの身にございます。ですが、ですが、これはブリタニア人イレヴン関係ない御仕事のお話。私めは遊びに来たのではありません。お金を頂きにまいったのです。お金を頂く以上は私情も身分も関係ありません。お金を頂く、ただその報酬に対してのみする事をする次第でございます、はい』
努めて堂々と。恥じることなど無いのだと持論を展開なさった彼に、お姉様は。
『……なるほど。賃金の分の働きはきっちりこなす。賃金を頂く以上は遊びではないと、そういう事か。一切の手を抜かないと、そういう事か』
『はっ、仰います通りで……』
『ふむ……、なるほど、な。とても簡潔であり当たり前なことだな、が、それを実践できる者は残念ながら少ない。恥ずべき事ながら我がブリタニアもそれなりには腐敗していてな。貴様のように仕事を仕事、為すべきを為すを出来ない者の多き事……私がエリア11の実権を握ってよりもその様な者達は残念ながら存在する。これを一掃するは並大抵では無い少しずつ根を枯らしていくしか……ん゛、いまは貴様の事だったなすまぬ。以前よりだったが、改めてと前置きを付け加えておこう。我が神聖ブリタニア帝国の為、エリア11の為、政庁の為、励めよ』
『ははっ、ありがたきお言葉にございます』
終始丁寧口調で総督閣下、お姉様に仰っていた事を思い出す。
お仕事はお仕事、手は抜かない。その言葉の通り彼は手を抜きません。
隅々までを一片の誇り無く掃除し仕上げて見せます。
これが他の清掃員なら多少の、本当に気にならない、誰も気づかないところには誇りの欠片が残っていたりするものなのですが。
彼にはそれが無い。お金をもらうからには完璧に。これは彼の持つ小さな心情の様な物かも知れない。
故にお姉様は自室の清掃を彼に任せ、私の部屋の清掃も彼に任せる事が多い。
彼も仕事で来ている身。仕事場は選べず日によっては全く別の場所の清掃任務に就いている事もあり、常に私とお姉様のお部屋を清掃なさって居るわけでも無く。
お姉様は窓の隅の埃、部屋の隅の塵を見つめては『今日は奴では無かったのだな』と小さくため息を零すことがありました。
私はまた一つ、彼を知った。知れたような気がします。お姉様の信頼厚い彼の姿。ナンバーズには珍しくお姉様は彼を区別していないご様子。
これは良き事ですね。
◇◆◇
「ん……キス、気持ちいですね……」
気持ちのいいキス。私とおぢさま、二人だけのキス。誰にも邪魔をされる事のない空間での私とおぢさまだけの。
でも、おぢさまは気に入らないう様で、片手に持つバケツをぶんぶんと振り回します。
「お前──アホか!! こんなとこでキスなんかして誰かに見られれたらどうすん──!」
身の破滅。ええ、そうでしょう。私はともかくもおぢさまは、彼は破滅です。古いニッポン風の処刑方なら打ち首でしょう。
神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアに男女の意味で手を出しているのですから。銃殺は確実です。
ですがそれは誰かに見られていればのお話。この密閉空間。
締め切られた厚い扉。締め切られた窓。カメラも盗聴器の類も無い清浄なる空間。この空間に私たちの行為を知る誰かは存在しません。
「へいへい……、分かりやしたよユーフェミア副総督閣下ぁ、ともかく私めの御仕事の邪魔だけはなさらない様にしてくださいませェ」
キスの。口付けの終局がその様なお言葉。これにカチンときた私は本日の主題たるある事を彼に対してぶちまけました。ええそうです、ぶっきら棒な対応をお取りになるのならば、私も冷たい対応を取るだけですわ。
「妊娠中は一切の交接はこれを致しませんよ?」
「・・・・・・・・」
その私の言葉に、彼は一度天井を見ると。
「すーはー……」
大きく呼吸を為さり、私を見て。
「ユーフェミア副総督閣下ぁ、いやユーフェミア皇女ぉ、もう一回言ってくれェ」
再度お聞きなさるので、事細かに説明して差し上げました。
「ですから、わたくしは、わたくしがおぢさまの御子をこの身に身籠もり、妊娠した時は、暫し交接は致しませんよと申し上げました」
言い切ると、彼は私に迫り。
涙すら流して見せながら私の両肩に手を掛け、私の身体をお揺すりなさいました。
先ほどまでのお仕事モードが嘘のような早変わりです。正直、私としては冷たい対応を取られてばかりでしたので、してやったりな気分でした。
「なんでよぉぉぉ~~っ!! 俺なんか悪ィ事を致しましたかユーフェミア皇女ぉぉぉ~~っっ!! ユーフェミア皇女のお気に触る様な事をなさいましたですかぁぁぁ~~~~っっ!」
何を堂々と自分は何も悪いことをしていないとでも仰るのでしょうかこの方は。
今日の、先ほどの私への非礼に留まらず。全ての始まりから。
「されています最初から。わたくしはおぢさまに犯されたのですよ? 始まりは強姦、立派な犯罪ですわ」
しれっと何もしていないとでも主張しそうな彼を私は牽制しました。
まあ、ですがあの時、おぢさまに犯され、その後も犯され続けたからこそ、それが私とおぢさまの愛へと変わったのは福音ですが。
この様なことは普通ではありません。強姦された女性は傷付き、死ぬまでその傷を背負う物なのですから。
と、言いつつ。戦争でこのエリア、旧ニッポンを焼き尽くした国の皇女である私の身は、イレヴンであるおぢさまに犯されても仕方の無いこと。文句の言えないことなのかも知れません。
ブリタニアは、我が祖国は、数千万人のニッポン人を殺したのですから。その国の皇女である私がその罪業をこの身に受けるのも……。
ですが、その罪業を受けながら私はそれを為したおぢさまを愛してしまいました。これはニッポン人の方々より見て許される行為なのでしょうか?
おぢさまはニッポン等どうでも良いと仰いますけれど。
ああ、今は他のことに思考を捕らわれていてはいけませんね。
「いやそりゃ俺、ユーフェミア皇女の事を犯したよ? 犯しましたよ犯しまくりましたよ嫌がるユーフェミア皇女の事を……ただ、よぉ、あの、さあ……今は、そのぉ」
彼らしくない歯切れの悪い口調に、少し嗤いが漏れました。
「うふふ……、ええ、そうですね。あの日々の途上よりわたくしとおぢさまは愛し合っておりました。わたくしはおぢさまよりの交接と、交接の目的である子作りを、受け入れました」
そう、そうです。今はもう、私は彼を嫌っても居なければ、彼を嫌悪しても居りません。心より彼を愛しております。
彼と行った交接の回数。始めてからの回数と時間。もう、いつ妊娠してもおかしくないだけの回数と量をこの身に受け入れました。
近く、私は妊娠します。確実に。確実にです。あれだけの、これだけの交接回数と射精を受け入れた私に妊娠より逃れるすべはありませんし、妊娠する事をこそ私は望みます。だからこそ、その時、その後を考える必要があるのです。
「わたくし、今この時に妊娠していても、おぢさまの御子を身籠もっていても、不思議では無いのですよ?」
「そ、そらまあ、そんだけセックスやってきたしなあ」
ええ、して参りましたわ。何百と。彼曰く千に達しているかもしれないという不確実で胡乱な事も。そして、今もしておりますもの。
「まあ、セックスだなんてはしたない。交接と言い直してくださいませ」
「こ、交接な、交接、分かったよ交接な……ユーフェミア皇女ぉ、お上品ですなあまったく……。ま、とにかく子供が出来てても不思議じゃ無い。ちょっと体調に変調が出て、妊娠検査したら当たりだったって事も十二分にあらぁね」
「他人事のように仰って……。おぢさまとわたくしの御子なのですよ?」
「そ、そんな怖い顔すんなよォ、ユーフェミア皇女の美人が台無しだぜェ。そんなこわ~い顔ばっかしてたら、俺みてェな不細工になっちまうぜェ?」
全く。御自身で、ユーフェミア皇女と子を作る、ユーフェミア皇女との子供が欲しい、と、そう常々仰って来た御自覚はおありなのでしょうか本当に。
「さておき。そう、御子を身籠もっていても、身籠もっていることが分かっても不思議ではありません」
不思議ではありません。それだけして参りましたし、今も致しております故に。
私がおぢさまの御子を身籠る、これは最早確実な事でしょうね。それが明日に判明するのか一か月後に判明するのか。後は時間の問題ですわ。
「で、それと交接しないのとよォ、一体どう関係ある訳ェ?」
はあ、呆れましたわ。私の夫は六十代と見られる年嵩の人間にありながら、男と女、子を作る時の一般的常識もご存じないのですね? 私、妻として恥ずかしいですわ。
「呆れましたわ。おぢさま御子を欲しがる割にお知りではないのですね? 妊娠した後の、妊娠しているときの交接は、お腹の子に危険なのです」
「はあっ?! マジかよ?!」
驚く彼。実際に飛び上がりました、ひょうきんにも映りますけれども今の事態を考えるに、けしておふざけで居られる場合では御座いません。
「マジですわ。おぢさまの交接はとてもお優しい物だという事は身を以て存じ上げておりますけれど、体位や行為の強さによっては子宮への物理的刺激による出血の可能性もあるのです。それがお腹の御子にどの様な影響を及ぼすか分からない以上、交接に応じる事はわたくしには出来ません」
交接が及ぼす影響は未知数。よく分かっては居ないし諸説有ると伺います。
けれども、どの様な影響があるのか分からない以上はしないに越したことは無い様に思われます。
私と致しましても、おぢさまと愛し合う機会が減衰致しますことは望んではおりませんが。
「そりゃ、駄目だなぁ……万一、ってことを考えたら……、はあ、我慢、かあ……我慢、ねえ、」
「出来ますか? おぢさま……」
私が心配なのはそこ。彼が我慢できるかどうか。我慢できなければ彼は使用人の女性、騎士の女性等を、某かの罠を以てハメて、私の時のようになさるかも知れない。
私は、私は、それだけは我慢がならないのです。彼が、おぢさまが私以外の女性と疑似的にでも心を交わし交わる……、考えるだけでも嫌な気分です。現実となってしまえば気がどうかなってしまうやも。
私は彼だけの物であり、同時に彼は私だけの物。余人が立ち入るなど許されない関係なのですから。
「なんだなんだよおい。そんな不景気そうな面ァしてェ。あー、あれか。ユーフェミア皇女殿下様と交接のできなくなった卑しいイレヴンの私めが、次の女でも求めて他の女を犯すかとかどーせそんな余計な事考えてんだろ」
「よ、余計な事?! こ、これが余計な事だと仰いますのあなたはっっ!!」
私は憤りを隠せない。愛する男性が、この世でただ一人愛する男性がよもや他の女性とまぐわう可能性を秘めた事態にあるというのに、肝心の彼はどこ吹く風。全く重要視されては居られないのですから、憤りを覚えずにいられましょうか。
ですが、彼は続けて仰ってくださいました。私への誓いを。私への忠誠を。
『あ~私め、一イレヴンの六十くらい?の清掃員は、禿げで、不細工で、デブってる、クソみてえな人生を送ってきた殿下には不似合いも不似合い。あり得ない相手であるイレヴン清掃員はぁ…………──ユーフェミア・リ・ブリタニア、エリア11副総督閣下にして、神聖ブリタニア帝国第三皇女殿下に、この身と忠誠を捧げます。けして貴女様以外を見る事は無く、貴女様への想いが外れることはこの先永劫に御座いません。もしもあなた様以外に目移りする事あらば、この命、貴女様に捧げます』
……。彼は、彼は、忠誠の儀の様な物を私に?
私をけして裏切らない。それを言葉で形で表すために?
命までもをかけて。ブリタニア第三皇女たる私に命を捧げるといった言葉、覆すことはまかりなりません。彼はそれを知りながら、その言葉を?
「……う、ふう」
私の瞳に涙があふれて参ります。彼は、おぢさまは、私をけして裏切らない。私以外の女性を見ないとお言葉とお命を以てこの場で証明なさったのです。
「う、裏切りは‥…許しませんよ? おぢさま」
彼は私の言葉にへたり込む私の傍へと歩み寄り。私の正面にしゃがみ込むと。
「あり得ねえよェ。俺ぁユーフェミア皇女を裏切らねえ、こいつぁ天に誓ってもいい」
私を抱き締めながら、いつもしてくださるように私の大きく纏めたポニーテールの髪の中へとお指を差し入れ、撫で梳き始めました。
五指に絡む私の髪。指に絡まり引かれる私の髪。痛まない様に丁度具合よくなされる髪への愛撫が私は好きなのです。
もう一方の手は、私の涙をぬぐいます。16にもなってエリア11副総督にもなって人前で涙を流す等。
「泣けよ、泣け泣け。見てんのは俺一人だ。誰の目もねえ。皇女殿下だって人間なんだ我慢せず泣け。俺の胸くらい貸してやらぁ。六十のくたびれたおやぢの胸でよけりゃなぁ」
そう言って、彼は胸を貸してくださいました。私は、私は、その胸の中で告げました。
ある意味では横暴に過ぎる言の葉を、彼に対して突きつけました。もう、もう我慢が出来なかったから。
「お、おぢさま、おぢさまは、あなたは、わ、わたくしに、このユーフェミア・リ・ブリタニアに誓いなさいわたくしを永遠に裏切らず、わたくしだけを見、わたくしだけを愛し、その心も身体もわたくしだけに捧げると、この場で誓いなさい!」
私は足りない。天に誓うではまだ足りない。だから請う。それ以上を、それ以上を私だけにと。そう告げると彼は
私を抱き締める。優しく優しく抱きしめられた。大切な物を扱う様に。大切な物。彼の大切な物、者。ユーフェミア・リ・ブリタニアを。
「イエス・ユア・ハイネス。日本語英語で悪いが我慢してくれや。ユーフェミア皇女殿下、俺の愛しい女、俺の大切な女よ、俺ァ永劫お前を裏切らねえ。この身はお前だけのもんだ。安心しろユーフェミア皇女」
「ふ、うあああっ、ああああ~~~っ」
私は泣いた。どうしようもない出逢いと。どうしようもない経緯とを経て。愛し結ばれてしまったイレヴンのおぢさまを前に。
私だけの彼を前に。私と彼は愛し合う。この場では愛し合わずとも、場所と時間が合えば愛し合い──私は、ユーフェミア・リ・ブリタニアは、彼の御子を。
愛し合う幸せの前に、私は嬉しくて泣き続けた。間違いの出逢いも突き抜ければ正しい出逢いなのだと心で身体で実感しながら。
余談ですが、彼の御仕事は時間が遅れました……。
彼曰く大した仕事の遅れでもないからと仰っておりましたが、やはり私が原因。
そこからは一転、彼は御仕事モードに切り替わってしまわれました。
「とまあ、ここまでっつーことで。はいはい、まずは本棚の上から片付けます。ゴミは上より下にですからねェ……ユーフェミア皇女様も失礼ですが御退室頂くと助かりますぅ」
「んなっ!?」
彼はそれだけ言うと脚立を大きく広げて本棚の前に設置します。
高い本棚の上にはそれでも届きません。
「ありゃ? こりゃ届かねー。なんでだ、尺間違えたかぁ?」
まるで私を無視して独り言。先のように抱いてもくださらない。触れてもくださらない。
愛しい妻を無視して御自分の世界にお入りになって……。
「ユーフェミア副総督閣下ぁ、誠に申し訳ありませんが尺違いの脚立を持って来たようですから交換に――」
瞬間、切れた。
「いい加減になさい」
「はあ?」
「わたくしを無視なさる事です。此処には目も耳もカメラも騎士も、厚い入り口の扉も施錠中。二人だけの世界しか無いのです。それなのにあなたはどうしてわたくしを!!」
普段怒らない私。怒らない分怒りがこの瞬間に一気に吹き出した様な気がした。妻を無視する夫に対して。先までは私を大切にしてくださっていた分が余計に上乗せされて、私の気分を害してくれました。
すると私の愛しい夫は仕方ねーなと呟きながら禿げた頭を搔いた。
「ユーフェミア皇女よぉ、確かに此処には目も耳もカメラも騎士もねー、扉も施錠したから中の声も聞こえん。キスしたって飛び込んで来てねェしよぉ……。さっきはさっきで抱き合って騎士の誓いみたいなもんもしたし、ユーフェミア皇女が泣いても俺だけしか見てねーわけだわなァ。でもな、此処にゃ」
俺の仕事がある。
「……」
お、しご、と……?
「俺が此処に来たのは何だ?」
「そ、それは……、おし、ごと、ですj
「そ、仕事だ。遊びに来たんじゃねェ、金貰いに来たんだ」
彼は一呼吸置いて。
「そらな、ユーフェミア皇女とキスしてェよ? 触れ合いてェよ? 交接していつもみたく子作りに励みてェよ? いっぱい抱き合って、いっぱい口付け交わして、愛し合いてェよ? ただな、今の俺ぁそんな事しに来たんじゃねェンだ。メシ食う金を貰いに来たんだ」
私の身体から力が抜けました。いつもの為すべき事を為す為の力が。ああ、私は、私は何を勘違いしていたのだろう。
彼は私と愛し合う為に登庁為さったのでは無い。彼は、彼のお仕事を、お遊びでは無い本当のお仕事を為さるために登庁し。私の部屋までやってきたのだ。
それを私は愛し合おうと……愛に支配されているのは私かも知れません。
ぱんっっ――!
私は、私自身の両頬を叩いて立ち上がり、彼の脚立の下へと立ちます。
「おぢさまっ、尺が足りないのならばわたくしが脚立を支えますので天板へ」
「お、おいおい、皇女様にそんな事させらンねェよ!??」
「夫のお仕事のお手伝い、妻としてお手伝いさせてくださいまし」
「つーか、皇女様に作業手伝って貰うだけでもやべェのに、天板作業もやべェし……ああ~っっ!!もういい!! 考えるのもめんどいわっっ!! しっかり支えてろよユーフェミア皇女ぉぉぉ!!!!」
「はいっっっ!!!!」
四本の脚。内二つを支える手に荷重がかかります。夫婦でお仕事、子作り以外では初めてですよね。
共にお金を稼ぐこと。立派な夫婦の共同作業です。そう、おぢさまは此処に遊びに来たのでは無い。
此処にお金を稼ぎに来たのだから、私がそれを邪魔してはいけませんわね。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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コードギアス
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コードギアスR2
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此花トゥルーリポート
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FF4×FF6
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カオシックルーン
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学園黙示録
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ルパン三世 ワルサーP38
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幕末風来伝 斬郎汰
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ニードレス
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ヨルムンガンド
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少女少年
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北の告発
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サラダデイズ
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クレセントノイズ
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ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
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ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
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遊戯王GX(十代×カミューラ)
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魔装機神(マサキ×モニカ)
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椎名君のリーズニングファイル
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RAVE(ハル×絶望のジェロ)