※この作品はR-18です。

二次創作SS集   作:夜半の月

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おぢさまとユフィとスザクのお話ですね。スザクはナナリーと結ばれて、ナナリーの騎士となっております。
おぢさまはちょっとした能力者で場合によっては何かの能力に覚醒するかもしれません。
ユフィを守る為、ユフィ第一主義なので、ユフィに何かあったらです。
平凡に進んでほしいですね。


視る

 

 

 

 視る

 

 

 

 

 

「おぢさま~っ! おぢさま~っ!」

 

 私は呼びかけます。昼食時、お姉様があいつも共にしないかと、呼んでやれと私に仰いましたので。

 

 ブリタニア皇家リ家の次期当主でもあり、皇位継承権では最上位のお一人──神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア・リ・ブリタニア。

 

 お姉様の目と耳は節穴では御座いません。私とおぢさまが親しい事を存じております。勿論、肉体関係や二人だけの婚姻関係にある。

 

 御子を作ろうと日々励んでいる深い間柄にあるとは存じ上げていらっしゃらない事かと思われますが。或いはそれすらももうお姉様の耳目には入っているのかもしれません。

 

 政庁に於いて誰よりも親しい間柄にあり私が彼をおぢさまとお呼びしていることも存じておりますが、それでいてお認め下さっているお姉様は、イレヴンであるおぢさまにも良く昼食を共にしないかとお呼び掛けなさるのです。

 

 おぢさまはいつも。

 

『私めの様なイレヴンと昼食を共に為さっては、社長閣下の品位に傷が付くという物でございます』

 

 等と断りをお入れなさいますが、社長命令だとお姉様が一言仰ると粛々と従い卓に付きます。

 

 そこでお姉様は黒の騎士団という大きめなテロ組織の情報などをお聞き出しになり、彼は存じ上げている情報をお姉様に提供。

 

 後は面白おかしい雑談などに入るのですが、そんなおぢさまが本日見当たりません。

 

 どこにいらっしゃるのか? 特派の方々もいらっしゃるので何かお知りでは無いかと顔を出してみると。

 

 七三訳の銀髪に薄い緑の瞳を持つ眼鏡をかけた男性ロイド・アスプルンド伯爵が。

 

「これはこれはユーフェミア殿下」

 

 優しく出迎えて下さいました。助手のセシル・クルーミー女史は休憩でいらっしゃらないとか。

 

「何かご用でしょうか?」

 

 底の見えない瞳を持つアスプルンド伯爵のその瞳が私を見つめます。

 

 以前、人間でさえも部品であると言い切るほどのメカマニア、KMFマニアだと伺ったことがございますけれど、まさか私でさえも部分に見立てていらっしゃるのではないかと背筋を冷たい物が走りました。

 

 おぢさまとはまた違った意味で危険な御方なのでしょうか? 私に取りおぢさまはもう危険でも何でも無い、私を御守り下さる優しい御方なのですけれど。

 

「ユーフェミア殿下?」

 

 はっ?! いけません。考え事に気を取られてしまっておりました。

 

「あの、アスプルンド伯爵」

 

「気が~るにロイドとお呼び下さい~。あんまり鯱張った呼ばれ方するの好きじゃ無いんですよね~」

 

 ん~。私の考えすぎだったのでしょうか。気さくな方の様ですね。

 

「では、失礼致しまして。ロイド伯爵――ロイドさんと。ロイドさんあのこう、むすっとした感じで薄ら笑いを浮かべた薄気味の悪い終始下手に出られている小太りより少しばかり肥えた男性をお見かけ致しませんでしたか? 特徴と致しましては禿げです」

 

 ……自分で尋ねて置いて何ですが、私いまとても失礼な事を口走ってしまっておりますね。私もついおぢさまの事となると遠慮が無くなってしまうのです。……ま、まあ、夫婦ですものね。遠慮なんて必要ありませんよね。

 

「あ~、あの清掃員の彼ですか~。いや~彼のお仕事は完璧なのでよ~く存じ上げておりますよ~っ。つい先日もうちの開発室をピッカピカにしてくれちゃいましてねぇ、いや~良いお仕事をしてくれますよ彼~」

 

 おぢさまを褒められて私も嬉しい思い。妻として誇らしいのです。ですがいまは彼の行き先を。

 

「彼ならスザクくん……失礼、枢木准尉と出て行きましたよ。たぶん中庭ではぁ~?」

 

 枢木准尉と中庭へ? 中庭で何を為さっていらっしゃるのでしょう? とりあえず足を運んでみましょう。

 

「ありがとうございますロイドさん」

 

「いえいえ~」

 

 

 ◇

 

 

「ふ~む、特派にギルフォード卿にダールトン将軍にユーフェミア皇女殿下。確定でコーネリア総督。彼、人脈がすごいねぇ~」

 

 とてもただの清掃員には思えない。

 

「一種の特異点のような存在だね。研究しがいがあるけど分野が違うからパスかぁ~」

 

 

 ◇

 

 

「中庭、この辺りですね」

 

 少しうろうろとしながらおぢさま~っ! と大きな声でお呼び致しますと。

 

 何故か草むらに隠れていたうさぎのように飛び出して参りました。

 

 飛び出し足るは、ビールっ腹というのでしょうか? お腹の出た、白の作業服を着た中年男性。禿げ、禿げ、そして禿げが特徴の。

 

 容姿は不細工寄りながら野性味溢れる容姿とも取れる、政庁に引き抜かれてからは毎日無精髭を剃っておりますので以前ほどの汚らしさはありません。不潔な彼も好きなのですが……。そんなイレヴンの清掃員。お姉様を社長と仰ぎ、私を副社長と仰ぐ、私の秘密の夫――おぢさまでした。

 

「ゆ、ユーフェミア皇女殿下っ、おぢさんとは私めの事で御座いましょうか?!」

 

 大急ぎで取り繕うおぢさまは見ていて面白いです。

 

「お、おぢさん、おぢさまっていま、ユーフェミア殿下から??」

 

 おぢさまの右側に立ちあがったのは茶色の軍服を身に纏った、焦げ茶色の黒髪に緑の瞳を持つ見目のよろしい少年――特派の枢木スザク准尉。

 

 そういえばロイドさんはおぢさまが彼と出て行ったと仰ってお出ででしたわね。

 

「い、いやいや枢木の坊ちゃん。お聞き間違えでしょう。まさかユーフェミア副総督閣下が私めの様な下卑たイレヴンに」

 

「おぢさまっ。御自分の事を卑下なさってはなりませんっ!」

 

 おぢさまが御自分を卑下なさるのでつい枢木准尉の前でおぢさまの事を、おぢさまと呼んでしまいました。これはお姉様達の前での秘密事ですのに。

 

「あっちゃ~っ……」

 

 額に手を当ててやっちまった感を醸し出す彼。ですが私、彼との間で妙な壁は極力作りたくは無いのです。夫婦ですもの。

 

「や、やっぱりおぢさんの事じゃないですか?! ユーフェミア殿下におぢさまってお呼ばれされてるんですかっ?!」

 

 驚く枢木准尉。無理もありません。私をおぢさまと呼んで良いのは二人だけの時か、お姉様がお側にいらっしゃるときだけ。後はこのことを知っているダールトン将軍とギルフォード卿の前でだけのみ政庁内では許されておりますので。

 

 ですが枢木准尉はおぢさまと同じイレヴン……ああいえ、いまは名誉ブリタニア人なのでしたね。ですがおぢさまと枢木准尉は元ニッポン人同士ですもの。私が彼をおぢさまとお呼びしている事が露見しても問題は無いでしょう。

 

 きちんとお口止めもさせて頂こうかと考えておりますし。

 

「ええ~まあ、実を申し上げますと私めとユーフェミア皇女殿下は仲の良いお友達同士でして、コーネリア社長、コーネリア総督閣下からユーフェミア皇女殿下が私めを“おぢさま”と呼んでも良いとのご許可を戴いておりましてね。それで、まあ」

 

「本当ですよ? わたくしがおぢさまの事をおぢさまと呼称しても良いとの許可がお姉様より出ておりますの。身内、おぢさまとわたくし、双方にとり親しき間柄にある者のみの間でとなりますけれど」

 

 枢木准尉は唐突な事に目をぐるぐるさせています。まあそうですよね。急にこの様な事実を聞かされては。

 

「ですので枢木准尉。この事は内密に願います」

 

「い、イエス、ユア・ハイネス! し、しかし突然なので驚きました。ユーフェミア殿下がおぢさんの事をおぢさまとお呼びなさっているとは」

 

「はぁ~っ、もうこのお姫様にゃ参っちまうぜ。ったくそのうち何もかもぶちまけやしねえだろうなあ」

 

 おぢさまがお言葉使いを悪く為されると、また枢木准尉は慌てます。

 

「ふ、不敬ですよおぢさん皇族の方に対して」

 

「いいんですよお。俺ぁ、ユーフェミア皇女は元よりコーネリア皇女の前でも人目が無けりゃこんな態度だからよ。堅苦しいのは得意だがお前らしくアレと言われちゃな」

 

 は~と驚く枢木准尉。彼は私を見て。

 

「そうなのですか?」

 

 そうご確認を取られましたが、そうも何も事実ですので。

 

「ええ、本当です。お姉様直々の許可ですので」

 

 ただ事実だけをお伝え申し上げました。

 

「おぢさん、掃除は完璧でランスロットもいつだってピカピカに磨いて下さって、気さくですし、まさか皇族の方々とも気さくだったなんて、凄いですね」

 

「別に特別何をやったわけでもありませんがね。結果が付いてきたと申しましょうか。まあ皆様揃って私めの様な底辺の人間を買い被りすぎてるだけです」

 

“それでは私に人を見る目が無いとお前は言うのか? 社長である私に”そう、おぢさまがお姉様に詰められていたことも記憶に新しい。

 

 おぢさまは確かに様々な意味で一般人とは違うのでしょうね。人と縁を結ぶことが上手いです。それに私と御子を作ろうと子作りに励んでいるのですから。

 

 この神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアとですよ? イレヴンでありながら。

 

「まあそれはともかくとしてユーフェミア皇女よぉ、アンタ何しに来たのよ。今昼休憩なんだから食堂でメシ食ってる時間だろ?」

 

 ああ、そうでした。それを伝えに来ていたことを忘れてしまうところでしたわ。

 

「いえ、お姉様が“あの男も呼べ”と」

 

「はあ、社長が? 俺なんかしたっけ。なあ枢木の坊ちゃん」

 

「い、いや僕に聞かれましても」

 

 おぢさまはまるで意味が分かりませんといった雰囲気でしたが、昼食時に呼べとお姉様が仰っている以上は昼食を共にしようという意味以外にありません。

 

「おぢさまも共にご昼食を摂らないかという意味です。さあ参りましょう。副社長命令です」

 

 こういうときに権力を使うのは何か間違えている気がしますが、おぢさまを引っ張って行くには多少強引な手法も必要となるでしょう。ただでさえ色々とご辞退される御方ですから。

 

「ああ~そういうことでしたら本日は申し訳ありません。これ」

 

 お断りを入れて片手にお持ちでした白い物を私に見せてくる彼。それは所謂おにぎり、おむすびというニッポンの食事でした。お弁当と言い換えてもよろしいでしょうか。

 

「おむすびですか?」

 

「ええそう。枢木の坊ちゃんと食べていたところでしてねえ。社長とお食事を共にするには少々腹が膨れておりまして、社長に対して失礼に」

 

 言いかけて意味を察した私。つまり本日に於いてはお姉様のお誘いをお断りなさると。

 

 本来ならば許されることではありませんが、彼ならば特別に許されます。

 

 私は携帯を取りだし、お姉様へと繋ぎます。

 

『どうしたユフィ。あの男は見つかったか?』

 

 すぐにお出になられたお姉様。普通にしゃべっていても威厳があります。

 

「見つかりました。中庭に居りましたが、もう既に昼食を食べているところで」

 

『ほう、弁当か。持ってこずとも良いと申しつけているのだがな。まあ、気分を変えたいときもあるのだろう。手間を掛けさせたなユフィ。あいつと変わってくれ』

 

「はい」

 

 私はお姉様とのお電話を彼に差し出します。彼は表情一つ変えずにお受け取りになると。

 

「ああ~社長閣下。せっかくのお誘い大変嬉しくまた光栄なことなのですが、本日は私め弁当持参で御座いまして」

 

『私たちと食堂で食べれば良いだろういつものように』

 

 食堂と言いましても皇族の食堂。

 

 聞いていた枢木准尉が私へ問います。驚きを以て。

 

「ゆ、ユーフェミア殿下っ、おぢさんいつも殿下やコーネリア殿下と食卓を共に為さって居るのですか?!」

 

 百面相のように変わる枢木准尉の表情が面白くてついつい含み笑いをしてしまいましたが、私は事実だけを伝えます。

 

「ええ、おぢさま。わたくしとお姉様と食卓を囲んでおりますよ? お姉様はおぢさま目線でのブリタニア人、名誉ブリタニア人、イレヴンの生活や様子について御興味が御座いますようでいつも聞いておりますの」

 

 テロ活動を減らすにはとおぢさま目線の意見を伺い、ブリタニア人のイレヴンへの当り、区別と差別の違いなど。

 

 その助言を取り入れてみたら徐々にですがテロ活動が減少してきておりまして、イレヴンへの職の斡旋。配給の充実を図ることで平和裏に事を収める方法もあると。

 

 ナンバーズは区別すべきだというお姉様の思想に彼は一石を投じ、そう有りながらもその中でこれまでの在り方を変える選択をお姉様はお選びになった。

 

 これも彼の僅かながらの影響力がもたらした最大限の効果なのでしょうね。

 

「最近イレヴンへの、日本人への生活環境が行政主導で改善されてきたのは……おぢさんの影響?」

 

 枢木准尉が呟きます。名誉ブリタニア人である彼も肌で何かを感じ取っていらっしゃるのでしょう。

 

「ま、たまにゃ晴れたお日様の下で弁当を食ったりする事もあるのでございますよ~はい」

 

『そういうことか。ならば今度五人分作っておけ。私と、ユーフェミア副総督と、ダールトンと、ギルフォードの分だ。晴れた日の下で食べようではないか』

 

「無茶言うなよおい。食費もただじゃねーンだぜぇ?」

 

『それはこちらが出す故に弁当は貴様の担当だ。決定事項だ。社長命令だな』

 

「何でもかんでも業務命令にすんな!! ったくまあ良いけどよ。ま、とにかくそんな訳で本日は私めは欠席という事で――ってうおっ!?」

 

 私はお電話が切られる前に彼からひったくりました。こちらも要件があるからです。

 

「お姉様。わたくしもこちらでお弁当を戴きます。おぢさまのお弁当がまだ残っている御様子ですので」

 

『ふはははっ。そうか皇族としては褒められた行動では無いがいいだろう。どうせ肥満の奴のことだ多めに作っているだろう、ダイエットの手伝いとして全部ぶんどってやれ』

 

 電話は再びおぢさまへ。

 

 お姉様は間接キスになる事もご承知の上で仰います。もしかしておぢさまと私の仲についてもう気付いてらっしゃるのでしょうか。

 

 時折意味深なことを仰るのです。年の差婚についてのお前の見解は? 身分差婚についてお前はどう思う?

 

 ある日子供が出来たならお前はどうする“お前達はどうする”と。

 

 ……お気づきなのでしょうか? 私とおじさまの関係について。

 

『夫の物は妻の物。妻の物は妻の物。などという言葉が世間では流行っているそうだ』

 

「たけしくんのパクりかよっ! つーかおめーら何勝手な事言ってんの?!」

 

『……それではな。精々ユフィに弁当を貪られてしまえ』

 

 ピっ。携帯は切れます。それにしてもやはり意味深です。偶然かも知れませんが夫婦間のことを出して来るだなんてお姉様らしくないと申しましょうか。

 

 枢木准尉が私と彼の顔を行ったり来たりとご覧になっております。

 

 少し気まずいですがその気まずさもおぢさまが吹き飛ばして下さいました。

 

「おら来い」

 

「キャっ」

 

 私の腕が引っ張られます。場所は草むらの中の開けた場所。中庭にこんな場所があったのですね。

 

「お、おぢさんユーフェミア殿下に対し非礼ですよ」

 

「いいんだよ。俺ぁある程度の非礼は認められてンだ。社長曰くそっちの方がお前らしいんだと。流石にここまでやんのはユーフェミア皇女にだけだがな。噂っつーか事実の話しは知ってるだろ? 俺とユーフェミア皇女が仲いいって事」

 

「ええ、まあ。政庁で勤務している人間でお二人の仲が良い事を知らない人間はほぼおりませんよ」

 

 そうですね。いつも私が彼に話しかけ彼を構っているから広がり始めた噂はもう確信段階まで来ております。

 

 お姉様が何も言わない。これが決め手となっているのでしょう。

 

 勿論私と彼が交接を交わして御子を作る間柄にある事までは誰も知らないはずですが。ただ最近お姉様がやや怪しいのです。

 

 存じ上げていて何も仰らないのならば私とおぢさまの交際を、夫婦関係に至っていることを密かにお認め下さって居るという事。

 

 もしもそうであれば私は嬉しいのですが、お姉様がお許し下さってもリ家やリ家の支援貴族が何というか。

 

 お母さまからは二度と返ってくるなと仰られるか、おぢさまが得意の話術で抱き込んでしまうか。

 

 いずれにせよ私の妊娠が先となりましょう。お姉様や政庁の方々は誰との子か直ぐにお気づきに成られます。

 

 おぢさま以外に居りません物ね。

 

「ほれ」

 

 考えている間に、以外にも可愛らしいピンク色のお弁当箱を私に差し出して下さるおぢさま。

 

 中身はおむすび、卵焼き、ハンバーグ、ブロッコリー、にんじん、バランスの取れたおかず達。

 

「俺ぁこのおにぎりだけでいいから後は全部ユーフェミア皇女が平らげてくれたら良いぜ」

 

「あ、あの、ありがとうございます」

 

 こんな事を口にしだしたおぢさまはお断りしたところでてこでもお受け取りくださいませんから。ありがたく頂かせて頂きます。

 

 箸も付いておりましたが、私、おぢさまとの生活の中でお箸の使い方は覚えましたので使えますのよ?

 

「ところで枢木の坊ちゃん。話しの続きだが守りたい者ってなあ好きな女性って事でいいのかなあ?」

 

 まあ、そのようなプライベートなお話しをされていたのですか。

 

「私までお聞きしてもよろしいのでしょうか?」

 

「え、ええ、構いませんよ殿下」

 

 少し苦笑いを為さる枢木准尉。あまり公にお話しを為さる内容ではありません物ね。ハイスクールでは誰が誰を好きと皆お話ししておりましたけれど。

 

 私も私で他人の恋愛話に興味もあります。無いと言えば嘘になります。勿論わたしとおぢさまのように御子を作るところまで進んでいる方はまれでしょう。

 

「で、どうなんよ坊ちゃん」

 

「ええ、仰るとおり好きな女性、女の子です。薄い茶色のふわふわした長いウェーブの髪が綺麗な、穏やかな女の子です。前にも言いましたが幼なじみの子でもありまして、僕はその子の騎士となりました。一生守ると。その子のお兄さんも喜んでくれてささやかなパーティを開いたんです」

 

「ほう、そりゃいいねえ。好きな女の子の騎士になる。騎士としちゃそりゃ本望でしょうなあ」

 

「まあ素敵。その女の子も枢木准尉にご好意を抱いていらっしゃるのですか?」

 

「じ、自慢じゃ無いですが、両想いです……結婚を誓い合った……は、恥ずかしいですね」

 

 気付くとおぢさまのいつものうさんくさい笑顔が消えて、本心からの微笑みに変わっておりました。

 

 彼も枢木准尉を祝福しているのですね。恋愛には一家言ありますが、私とおぢさまの場合は特殊事例ですのでアドバイスをして上げられないことが残念ですが。

 

 この様子ではアドバイスなんて必要ないのかも知れません。両想いの恋人同士であり枢木准尉が騎士の誓いまで立てているならば、私やおぢさまの言葉はむしろ余計な口出しとなってしまいかねません。

 

「良かったですね枢木准尉。ねえ、おぢさ――おぢさま?」

 

 おぢさまは枢木准尉をじーっと見つめて居られました。

 

「なあ枢木の坊ちゃん。その、このことについて心のわだかまり。最近何か厄介事があったとか心当たりがありますかねえ?」

 

 この目をしているときのおぢさまは“視て”らっしゃるときのおぢさま。

 

 彼には生まれながらの特殊な能力なのか、後天的に身についたのか、他人の憎しみや恨みマイナスの感情が黒いもやとして視える能力があります。

 

 心に闇を抱えている人のその闇を視る能力とでも言うのでしょうか。ある程度は取り払えもする御様子ですが。

 

「ちょっと失礼」

 

 おぢさまは枢木准尉の胸の辺りをぱんぱんと払います。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「ああいや、ちょっとゴミがね……枢木の坊ちゃん、最近心に闇を抱えた人間と会ったりしましたか? または闇を抱えていそうな人間と」

 

 おぢさまには黒いもやが見えたのですね。枢木准尉に。

 

 ですが以前枢木准尉が守りたい人が見つかった。心が救われたと仰っていらしたときには、黒いもやは綺麗さっぱり消えていたと仰っていらしたのに何故? どうして?

 

「闇を抱えていそうな人間……ルル――」

 

「ルル?」

 

「あ、いや何でも無いです。友達にちょっと闇って言うほどじゃないですけど、複雑な過去を抱えた奴がいて。僕が好きに、恋人同士になったのはそいつの妹なんです」

 

 ルル――誰かしら? 一瞬まさかルルーシュって考えたりもしましたが……。

 

 よくよく伺えば枢木准尉の心を救い、両想いとなり、剣を捧げた女の子という方もナナちゃんと特徴が似ております……。

 

 ……偶然、ですよね? だってルルーシュとナナリーは……。もし、もしも生きていたなら会いたいですけれど。

 

「あ、あのそれじゃ僕行きます。午後の段取りもありますので。おぢさん、また。ユーフェミア殿下、お先に失礼させて頂きます」

 

「ああ、昼からも気を付けてなあ」

 

「またお昼ご一緒致しましょうね」

 

 ……。

 

 ……。

 

 枢木准尉を見送ってからの暫しの沈黙は、おぢさまが考え事をしているから。

 

 同時に私も考え事をしており、きっと二つの考え事は一つへと帰結する物でしょう。

 

「枢木の坊ちゃんにうっすらと黒い霞が見えたんだよ。すげえ薄い霞だからありゃ枢木の坊ちゃんが出してるもんじゃあねえ。誰ぞ枢木の坊ちゃんの近くに居る奴の何かへの憎しみだ」

 

「……」

 

「どうしたよユーフェミア皇女」

 

 話して良い物でしょうか。

 

「……」

 

「ユーフェミア皇女?」

 

 そう、ですね。もう終わってしまったこと。過ぎ去ってしまったことですから。

 

「おぢさま。実はかつてニッポンへ人質として送られたブリタニアの皇族が居たことを御存じでしょうか」

 

「人質の皇族──ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ナナリー・ヴィ・ブリタニア……知ってるよでかいニュースになってたからな。碌に世間様で生きてなかった俺でもこれくれえは知ってらあ」

 

 おぢさまも御存じでらしたのですね。ならば話は早いです。

 

「おぢさまは枢木准尉がニッポンの元総理、枢木ゲンブ氏の御子息である事を御存じですが、その枢木ゲンブ氏の関係先へルルーシュとナナリーが人質に送られたと耳に致しました」

 

「ほお、んなこと話してるのがいんのか。俺んちの近くのイレヴンか?」

 

「はい」

 

 イレヴンさん方の情報網も侮れません。表に出て来ない情報も彼らは知っております。私もおぢさまの妻としてあのエリアのイレヴンの、いえニッポン人の方々とは仲良くなりました。

 

 おかげで私の知らなかったお話も沢山聞けました。これをおぢさまと共にニッポン人の生活改善のお役に立てたらとお姉様へ上申し、実践して頂くことで、テロも大幅に減りましたので。

 

「その枢木准尉がルル――と仰りかけたのが、その、ルルーシュのような気が致しまして。枢木准尉が恋人になった女の子というのがナナリーのような。ナナリーはとても優しい子ですから、枢木准尉の抱えていた闇を消し去り救い出したのでは無いかと」

 

 全ては私の推測に過ぎませんが。

 

「……なるほど、なあ。無いとも言えんなあそれは。だがだとしてだ、そのルルーシュ皇子、元皇子か? が、近くに居て坊ちゃんに闇を移したとなる」

 

「そ、それはっっ」

 

「ああ、安心しろよ。それで枢木の坊ちゃんやナナリー元皇女が闇に引っ張られることはねえ」

 

 お二人が闇に引っ張られて取り込まれてしまうのでは無いかと考え、一瞬ヒヤッとした私でしたが彼の言葉に安心しました。

 

「問題はそのルルーシュ元皇子だ。他人に闇を移しちまうほどの濃い憎しみ、憎悪を何かしらに対して持ってるとしたら、碌な事をしでかさねえぞ」

 

 折角安定してきてるってのにトラブルはゴメンだ。おぢさまはそう仰っておむすびを口に頬張りました。

 

「年に為言っとくが、これは枢木の坊ちゃんのお姫様がナナリー元皇女で、真っ白になった坊ちゃんに闇を擦り付けたのがルルーシュ元皇子だったらって前提の話しだからな? なにもそうだと決まったわけじゃねえ。仮にナナリー元皇女が枢木の坊ちゃんの恋人だとしてそれならそれでいい。別に問題はねえから。闇を抱えてる奴なんざ世間にゃ一杯居るしなぁ」

 

「くすっ、おぢさまなんて闇の塊ですものね♪」

 

「そうそう俺ぁ闇の塊ってそーじゃねーよ!」

 

 草むらに座る私の膝におぢさまが頭を載せます。膝枕、そういえばあまりしておりませんね。

 

 私はおぢさまの頭の重みを膝に感じながら、彼の禿げた頭をなでなでと撫で回します。この感触、好きなのですよ。

 

「あ~っ、暖かいわ~っ、ユーフェミア皇女の膝。こうして膝枕をされるのってあんまりねーもんなあ」

 

「いつも数時間の交接をなさって、わたくしの衣服を脱がされ、ポニーテールを解かれ、そして入浴ですものね」

 

 おぢさま、初めの頃は私の衣服、公務服を脱がせることをめんどくさいと仰ってお出ででしたけれども、最近は手慣れてきておりますの。

 

 上手に脱がせ、また上手に着付けてくださいます。髪も上手く大きなポニーテールに結い髪留めで纏めてくださって。その一つ一つの行為に愛を感じるのですわ。

 

「風呂で背中の流しっこしてる方が断然気持ちいいしよお。それか抱き合ったままアニメ視てる方が充足感があるんだよなあ」

 

 彼の両手が私の腰を捉えます。つかんでもみもみ。愛し合う私たちのちょっとしたスキンシップですが、こそばゆいです。

 

「キャっ、うふっ、ふふふっ、こそばゆいですわおぢさまぁ」

 

「ふふふっ、こそばゆくしているからこそばゆいのだよユーフェミアくん」

 

 地下室でひたすらに愛し合う交接を行うのもいいですが、こうしてお外でのじゃれ合いもまた良い物ですね。愛を感じます。

 

「おぢさま、愛しております」

 

「俺も、愛してるぜユーフェミア皇女」

 

 腰をこそばている手指の動きが止まります。

 

 頭を撫でてている手を止めます。

 

 私の膝で仰向けに寝るおぢさまの頭を抱え込みながら、私はおぢさまに逆さのまま口付けを行いました。

 

「んっ」

 

 お外ですので軽い口付けですが、愛するおぢさまとの口付けは軽くとも幸せを感じます。

 

 そして私が抱き竦める形のキスですから、私の大きくて長いポニーテールの髪は肩より体の前に垂れ下がり、おぢさまの禿げた頭に乗るわけでして。

 

「くすっくふふふっっ、アデ○ンス」

 

 うふふふふっ、自分で申し上げて置いて自分で笑ってしまいますわ。

 

 ピンク頭のおぢさまを想像してしまって。

 

「うるせーよっ! 桃色のアデ○ンスなんか誰が進んでやるかっっ!!」

 

「そういったっておぢさまはわたくしの髪が大好きなのでしょう?」

 

 彼は私の髪が好きです。これは彼自身認めております。髪に限らず私の全てが好きなのですけれどね。

 

 髪と胸が特にお好きなようです。ここでは致しませんが地下室ならばもう疾うに愛し合っていることでしょう。

 

 本当は此処でもしたいのですよ? 愛して頂きたいのです。ですがおぢさまが政庁には仕事に来ているのであってプライベートじゃ無いと拒否為さいますの。

 

 昼休憩はプライベートなのですから少しくらい抱いてくださってもよろしいではありませんか……。

 

「ああ、俺ぁユーフェミア皇女のこの綺麗な御髪のポニーテールが大好きだよ。でもこれと同じ色でアデ○ンスとかしねーよ! 大体想像して見ろよピンク頭の俺を」

 

「…………ぷっ、あははははははっ、変ですわおぢさまっっ、わたくしお腹がよじれてっっ」

 

「だろ? やっぱニッポン人は黒髪が似合うんだよ」

 

「ぷくくくく、はぁ~あ。……おぢさまには丸禿げ頭が一番似合っているのです」

 

 呟きながら抱き竦めたままで居るおぢさまの禿げ頭を撫で回します。

 

「俺も、ユーフェミア皇女のこの大きなポニーテールが好きなんだぜ。綺麗な御髪が。お互いにやっぱ」

 

 私のポニーテールを触るおじさま。撫で回すように、私と同じように。

 

「有りの儘が一番ですわね。余計な何かをせず。そういえばおぢさま」

 

「なんでございますかあ?」

 

「髪を解いたわたくしは如何でしょうか?」

 

 私もいつもポニーテールという訳ではありません。ドレスを着ているときなどは髪を下ろしております。

 

「綺麗だぜ、膝裏まで届く長い髪は、超ロングの髪はとても綺麗だ。白桃色と白のあの豪奢なドレスに濃色の桃色が良く映える」

 

 地下室での入浴時にはおぢさまが私の髪を解いて、膝まで届く私の髪を丁寧に丁寧に優しく泡立てて、両手で洗髪剤を揉み込みながら洗ってくださるの。

 

 ですからおぢさまは私の髪の長さをその手で実感なさっております。

 

「が、まあこの公務服姿と大きなポニーテールが一番見続けてきたもんだから目が慣れてんだよ、手触りもなあ」

 

 結局おぢさまはこの髪型が最も好きということなのですわね。

 

 

「ですが本当に政庁でいつでもおぢさまとじゃれ合いたいです」

 

「そうもいかんだろ。周りの目があるからよおーっと」

 

 おぢさまは勢いよく立ち上がると座ったままで居る私の背後に回り、私の髪留めを触ります。

 

「しっかし相変わらずデカい髪留めだなあ。そりゃポニーテールも大きくなるわ」

 

「幾つか持っておりますのでよろしければ差し上げましょうか?」

 

「いや、俺貰ってなんにつかうんよ」

 

「王冠」

 

 禿げた頭にこの髪留めを乗せれば立派な王冠ですもの。

 

「舐めちゃってんのかテメエは」

 

「じゃれ合いの一つですわ。そう怒らずに――ツ?!」

 

 おぢさまは唐突に背後からわたくしを抱き締めます。

 

「愛しいユーフェミア皇女にじゃれつかれるの、嬉しいぜ……あ~あ、ここがプライベートならこのまま愛し合いたいところなんだがよお」

 

 体の前に組まれるおぢさまの腕に頬を擦り寄せながら。

 

「わたくしも、おぢさまと愛し合いたいですわ」

 

「でも、駄目なんだな。自分で引いた線引きだ。仕事は仕事。プライベートはプライベート。コーネリア社長閣下のご許可があっても崩すつもりはねーからよ」

 

 堅い御方。ですが私はそんなあなたを愛しております。

 

 

 

短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)

  • コードギアス
  • コードギアスR2
  • 此花トゥルーリポート
  • FF4×FF6
  • カオシックルーン
  • 学園黙示録
  • ルパン三世 ワルサーP38
  • 幕末風来伝 斬郎汰
  • ニードレス
  • ヨルムンガンド
  • 少女少年
  • 北の告発
  • サラダデイズ
  • クレセントノイズ
  • ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
  • ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
  • 遊戯王GX(十代×カミューラ)
  • 魔装機神(マサキ×モニカ)
  • 椎名君のリーズニングファイル
  • RAVE(ハル×絶望のジェロ)
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