R16くらい?
オールA以上
いきなり政庁の担当医に呼び出された。医者が鬼畜モン……元鬼畜モンの俺に何の用事だってんだよ。
何だ? まさか俺の体に惚れたとか? ……いや、ま、そりゃねーか。小太り、軽肥満な俺の体に惚れる男の同性愛者もそうそういるわきゃねー。
むしろ俺が痩せてたらヤバいな。この脂肪の下の鋼鉄の体が見られっちまったら。
そんときゃ、俺に惚れる男とか居ても……。ユーフェミア皇女は「痩せろ痩せろ」って言ってくるけどよぉ、その可能性があってこえーんだよ痩せるのは。
ユーフェミア皇女には交接を通して、風呂で洗いっこもして、お互いの体に良く触れ合ってるからバレてるンだけどなあ。
別に良いんだぜ? ユーフェミア皇女には何一つ隠し事したくねーし、脂肪の下が筋肉の塊だってのも知られたって問題ねー。
ただ知らん男、まあ知らねえ間柄じゃあねーけど、男に触診とかされて気持ちいいことはねーわな。そんな趣味は少なくとも俺にゃあねー。
どーせ触診を受けるなら女医さんのがいいんだが、女医さんは女の方専門で回ってるからなクソッタレ。
こういうところでもお堅い方だよコーネリア社長閣下はよぉ。
普段着で良いってっから上下緑のジャージで来てやったが、こんなところは学生時代のまんまだねえ俺様ってば。
そういや学生時代とイヤぁ、一応俺クソヤベーガッコの番をぶっ潰してやったことがあったなあ。
『お前結構やるんだってな? 仲間にしてやるよ』
なーんてクソ生意気な口聞いて来やがったから、右一発くれてやったら鼻血吹いてぶっ倒れて救急車で運ばれて行きやがった。
どんだけヨエー番長様なんだよって思ってたら関東最強クラスの男だったとか。どんだけレベル低いんだよ旧関東……。
あれじゃ、俺よりゃ弱えが、俺とつるんでいたヤベー奴の方がよっぽど危険だぞ。
なんせぶつかってきた極道モンを道路に蹴り飛ばして車に跳ねさせるような奴だったからなあ。
背丈体格も俺とそっくり、容姿まで似てる従兄弟なんだが。こいつも俺と同じで腹筋がバキバキの奴だが、喧嘩の力よりヤバさの方が凄かった。
「はあ、従兄弟かぁ……ブリタニアの爆撃でおっ死んじまったのかね?」
不良だの極道だのと言った反社を纏めてぶっ飛ばしてくれたブリタニア。
名誉ブリタニア人になった連中の中にゃあ、旧日本時代よりも住みよいと感じてる奴もいるだろうなあ。
俺や俺の従兄弟もそういう意味じゃ社会に迷惑掛ける側なんだよな。
俺が何人の女を犯してきたと思うよ? その女達にとっちゃあ俺なんか死んで欲しいに決まってるだろうからなあ。
ま、何人かは変に仲良くなっちまった女もいたけどよ。
普通に考えて俺みてェな不細工の変質者に犯されたら憎しみの方が募るか、トラウマになるだろう。そりゃ気持ち良くさせて貰ったわけだからアフターケアもしたし、何十万と金も渡しちゃ居りましたがねェ。
「そんな一人に百も渡したのにサツに駆け込まれて追っかけられることンなっちまったんだよなあ。あのアマ金は取って置いてサツに行くとか良い雰囲気まで作って置いて、やられちまったぜ」
刺されなかっただけマシか。今までの変質者生活の中で刺そうとしてきたのも居たからな。得意の話術で説得したが。ヤバかったことには違いねえ。
幾ら強くても、殺気も無く、いきなり後ろから来られたら、反応が遅れることだってあらぁ。
ギルフォード卿クラスの猛者であっても後ろからいきなりじゃ対処が出来ねえだろ。
俺は強いとは思うが無敵じゃねえ。ンなモンコーネリア社長閣下やギルフォード卿でもそうだ。
天下のナイトオブラウンズだって無敵じゃねえ。
「と、あれこれ考えてる間に付いちまったよ。ん゛ん、んんん゛」
守衛の騎士様が一人立っている。ここからは丁寧モードで。
「守衛様」
「ん? ああ、清掃員の。どうした?」
「いやあの、お医者様にお呼ばれ致しましたので参上した次第で御座います、はい」
「そうか。なら少し待っていろ。伝えてくる」
「はっ」
ったく一々大袈裟だねえ。お医者様ともなるとお貴族様階級だろうからそうなっちまうのかね。
闇医者ンとこでも健康診断はしてもらったがオールAAA+で、精力はオールSオーバーなんて訳の分からん検査結果を伝えられたよなあ。
『要するに健康体に過ぎる上に凡そ見たことが無いほどに精力が強いという事だよ。お前さんの勢いでユーフェミア皇女殿下を抱くんじゃねーぞ。ユーフェミア皇女殿下を優しく抱いてやることのみを心掛けろ』
偉そうなこと言ってたが俺がユーフェミア皇女との交接を優しくしねェわきゃねーだろうがよぉ。
どれくらいユーフェミア皇女を愛してると思ってんだ?? 序でで言うなら昔犯した女だって優しく抱いてきたぜ? 俺ぁこう見えて女第一のレディファーストなんだからよお。
そんな事考えてたら守衛、つーか騎士様が出てきた。
「入室許可が取れた。ははは、というか、一々許可を取りに来るなと怒られたよ」
頭を搔く騎士様。
「いやいや、騎士様は正しいお仕事を為されたと思いますよ私めは。私めは上下ジャージに雪駄といった凡そ政庁には見合わない不審者な格好をしておりますからねえ」
「すまんな気遣ってくれて」
「いえいえ、それでは失礼致します」
◇
結果だけを言うとオールA+、もしも基準値にSと言った基準があるならSだと仰られたわけで。
「健康その物。君、年齢が分からないとは言え大凡六十くらいなんでしょ? 健康寿命だけで言えば二十代でも通用するし、なんなら今からでもKMFパイロットになれるよ? 私からコーネリア殿下に推薦しておこうか?」
なーんてお貴族様のお医者様が仰る物だから、俺ぁそんなに健康なのかと自分で自分を疑いもした。
正直言やあ日本時代よりも健康になってやがるんだよ。まあ、疎開で良いメシ食って、底辺ながらそれなりの生活をさせて貰えてる影響かねえ。
住んでるとこは疎開とゲットーの中間点とくらあ、体力面も鍛えられるわけで。あー、六十程の年齢の割にゃ馬鹿みてえに健康な訳だよ全くよお。
「KMFのパイロットになれれば今よりも給金は上昇するが、どうだね?」
KMFの試験までやらされた。シミュレーターでだがなあ。結果はだかだかだかだかじゃん!! ぶっちぎりのオールS。これにゃ自分でも驚いたし、検査した医者にも口止めしておいた。ぜってー変な勧誘が来るってもんよ。医者はしきりに勧めて来たぜKMFパイロットにならないかってな。才能ねーのに滅茶苦茶やってたらオールS叩き出しただけだっつーのに。
「滅茶苦茶やってあの結果なら正規の技術を覚えれば軍でもかなり上を目指せるんだよっ!!」
「いえいえ、KMFパイロットなどとんでもない。それは軍人様や騎士様方のお仕事であって一介のイレヴンが賜るには栄誉に過ぎます、はい」
上を目指すとかそんなんじゃなく普通にKMFの操縦は出来るんだけどな。パイロットになるつもりはねえ、それこそユーフェミア皇女専属パイロットとかなら別だが。
「そうか。だが考えて置いてくれ。中年でもエースパイロットはいるからね。君なら鍛え方次第では間違いなく」
しつけーな。ユーフェミア皇女専属ならって言ってんだろ。心の中で。
「それとは別だが、こちらが終わればコーネリア総督の部屋へと来るようにとの命令だ。君、何かしたのか? どうも怒っている様子だったが」
怒っている? 社長様を怒らせる様な事をしたか? 思い当たるところじゃあねェンだが……。
まさかのまさかでユーフェミア皇女とのことがバレてるとか??
だったらもう疾うにこの首は跳ねられてるか。
「君?」
「あ、失礼致しました、つい考え事をしてしまっておりましたので……それではコーネリア総督閣下をお待たせするわけにも参りませんので、私めはこれで」
◇
「失礼致しますコーネリア総督閣下」
早速やって来たりますはコーネリア総督の執務室。
薄紫の絨毯が敷かれた豪奢な執務室には、大きな窓を背にした執務机が据え置かれている。
その机に座っていた主、コーネリア総督閣下。社長様は。
「私とこの男以外、執務室から出て行け」
なんて命令を下し、護衛の騎士様方を部屋の外に出してしまった。
何のつもりで御座いましょうか社長閣下。
私めと閣下の二人きりなど。まさかやらせてくれるのではありますまいな?
仮にそうだとしても、私めにはユーフェミア皇女という愛を捧げた御方がいらっしゃいましてですねえ。
「一つ問いたい……これは何だ?」
そんな軽いことを考えていた俺に見えるよう、執務机の上にばらまかれた写真。近寄って見てみると……。
「げェェェェ──?!」
「これは平民用の政庁使用人のロッカールームを写した物らしいのだ。盗撮だな。これを行った者には厳正な処分を下したが。だが、そんな事はどうでも良い。ここに写っているのはお前だな? 椅子に座ったお前、そしてお前の前で跪いているのはユーフェミアだ。確度的にユーフェミアの顔は横顔が少し見えるくらいだが、この公務服、この髪型、公務上の正装だ」
そうだ。確かに此処に写っているのは、この写真はロッカールームでの俺とユーフェミア皇女の姿で間違いない。
しかも非常を通り越して絶望的に不味いシーン。ユーフェミア皇女が俺の──。
「ユーフェミアが貴様の男性器を咥えている。フェラチオという行為か? ……なぜ、なぜこの様な事をしているっっ!!」
ドンッッ
思い切り執務机が叩かれる。握り込まれた白いグローブに。スゲー音。
ひしひしと伝わってくるのは怒りだ。どうしてユーフェミア皇女が俺のペニスをお口に咥えているのか? なぜだ?
「はああああッ、……あ~あぁ」
ため息も出てくるぜえ、こんなに完璧な写真を撮られて、見せつけられたんじゃあ、言い訳の一つも出てこねえ。
「まさか、まさか、まさか、まさかのまさかでございますですよぉ~……、こんな形で知られてしまうことになってしまうとは、全く以て思いも寄りませんでしたよ」
「なッ、貴様認めるのかッ?!」
「認めるも何も、写っているとおりでは御座いませんか」
「合成写真だと逃げ切ることも出来るのだぞ?」
逃げる。逃げるねえ……。警察からは散々逃げてきたが、愛する女からは逃げられねえよ。そいつは、それだけは俺の矜恃が。こんなクソみてえな屑人間な俺の矜恃が許さねえンだよォ。
俺ぁ確かに屑だぜ。真性のクズ野郎だ。そんな俺でもなあ、この女は、この女だけは、ユーフェミア皇女だけは裏切れねえ。
人生で初めて出逢った、生まれて初めて出逢った運命の女ユーフェミア・リ・ブリタニア皇女を俺は絶対に裏切れねえのさ。
「確かに。閣下の信用を勝ち取っている私めならば、こんな物は合成写真ですぜと一言申し上げればご信用頂ける自信が御座います」
「そうだな。貴様が否定するというのならば私は見なかったことにも出来よう。だが、貴様はこれが事実であると認めると?」
執務机を回り込み、静かに歩いてくるコーネリア総督閣下。歩みはゆっくりだが、確実に俺へと歩みを寄せてくる。
「なぜ事実であると認めるのだ?」
真正面に立たれ、ぐいっと胸ぐらを掴み上げられたぜ。すげー力だが、力だけなら俺のが上だ。振り払おうと思えば振り払える。
だが、俺は振り払わねえ。コーネリア総督閣下のお怒りが分かるからなあ。昔の俺じゃあ考えられねえぜ。これも慈愛の皇女って呼ばれる程お優しいユーフェミア皇女の影響かねェ?
「コーネリア総督閣下には怒髪天かも知れません、いや間違いなくそうでしょう。しかし、私めは本音を申し上げます」
「貴様の本音だと」
「はっ」
鋭い瞳で俺を見つめ、目を射貫いてくるコーネリア総督閣下。俺はその目を真正面から見据える。けして目を離さない。
離せるわけねーぜ。愛する女を愛しているその事実を実の姉に伝えるんだからよォ。
「不詳、イレヴンの六十がらみの私めは、ユーフェミア皇女殿下を愛しております。心の底より偽りなく愛しております。私めの人生で初めて愛した女性で御座います、はい」
「ユーフェミアを愛しているだと?! 貴様がっ!?」
手がぷるぷる震えてやがる。怒りの余りに力みすぎだぜ。今背後を突かれたらアンタ一発であの世行きだな。
まあ、無理もねえか。人間意外を通り越してあり得ない状況に陥ると、自然、周りが見えなくなるモンだからねェ。
「はい。私めは真剣に、心よりユーフェミア皇女殿下を愛しております。年甲斐も無くユーフェミア殿下に初恋をし、心の内を打ち明けて交際を申し込みました」
「ふーっ、ふーっ、では、あの写真に写っている行為は貴様が無理矢理に行わせた行為では無いのだな? ユーフェミアと合意の上で行った行為なのだな? それで間違いは無いのだな?」
「はっ、間違い御座いません。つーかよォ、コーネリア社長さまぁ、俺が色恋で嘘吐くと思うかぁ? アンタも御存じの通り俺ぁ胡散臭い不貞不貞しい人間だ」
ああそうさ、自分でも分かってらあ。ガキの頃クソ親に育てられたせいでクソ見てえな人間に育っちまったってこたあな。
だからユーフェミア皇女を強姦して、俺とユーフェミア皇女はおかしな形で愛し合う仲になれた。
そこには満足してるしクソ親に感謝してるぜ。よくユーフェミア皇女と愛し合える切っ掛けを作ってくれたなあってな。
「信用おけないイレヴンで、植民地の最下層の人間で、あんたらがぶっ壊してくれた国の人間だ。だからこれがアンタの目にゃ復讐に映ってるのかも知れねえな」
「……」
「だがな、だがよ、腹の底から言ってやるぜ。俺ァユーフェミア皇女を愛してんだよッ!! 愛する女との行為を合成写真だと嘘を吐いて誤魔化すだァ?! 出来るわきゃねーだろうがンなことッ!! ユーフェミア皇女はこの世でたった一人の愛する女なんだぜッ!? その女の事で俺は嘘を吐く事は死んでも出来ねーよッッ!! これがこのクソイレヴンの嘘偽らざる想いだッッ!!」
あーあ、今までに信用と信頼とを勝ち取って、タメ口きくのも許して貰ったコーネリア総督との仲もこれでおしまい。
それ以前にこれが知られた以上は人生その物が終了。だよな~ッ、ああ、心残りがあるとしたらユーフェミア皇女と子を作れなかったことと。
俺みてェな屑人間の死でユーフェミア皇女を悲しませることだなあ。
「……ユーフェミアは、ユフィは、あの写真の行為を自ら進んで行ったのか?」
「愛し合ってたらそれは」
「そんな事は聞いていないッ!! ユーフェミアは自らの意思で貴様の、お前の男性器を頬張り、その行為に及んだのかと聞いているのだっっ!!」
どういう意味だよ。愛し合ってるからそういう行為をするモンだろうに、ユーフェミア皇女の意思を確認するとは。
ん~ッ。俺の周りは男ばっかだったからよくわからねェが、あの時は確か俺、ユーフェミア皇女に閉じ込められたんだよな?
「ええ、まあ、信じていただけねェかも知れませんが、この写真のはむしろユーフェミア皇女の方が積極的に私めの性器をお触り下さり、お口に」
「そう、か」
「信じるので? こんな不貞不貞しい胡散臭いイレヴンの言を」
「……ふん、舐めるなよ。これでも人を見る目はあるつもりだ。そうでなければ一軍の将も、エリアの統治者も務まらん。何が起こっているのかまでは神ならぬ人の身である私にもわからんがな……」
ほお、信じるかよ……、俺みてーな奴の言葉を。本心からの気持ちをぶつけたのは確かだが、まさか信じてくれるとは思わなかったぜ。
「……歯を食いしばれ」
「は?」
「いいから歯を食いしばれ」
真剣な眼差しのコーネリア総督閣下。拳を構えていらっしゃる。
……なるほど、そういうことな。いいぜ、久々だがこんないい女の拳なら何発でも貰ってやる。あ、いい女って思っちまった。ユーフェミア皇女申し訳御座いません……。
「ふッ!」
バキィッ!!
「ぐふぉッッ!!」
おお、痛えッ、痛えぜッ、根性の入った重いパンチだ。今のイレヴンや疎開の人間にゃ出せねえパンチだぜェ。
「まだだッ、我が怒りはまだ収まり止まぬぞッッ?!」
「ええ、ええ、お好きなだけ拳をください、……くれよコーネリア皇女ォ。アンタが満足できるかどうか分からねえが、どこまでも付き合ってやらァッッ!!」
「よく言ったッ! 吐いた言葉は呑ませんぞッッ!! ふんッッ」
バキッ
「がはァァッッ!!」
右の次は左。様式美を良く分かっていらっしゃる。流石は武に名を馳せるコーネリア皇女。
こいつァ、俺も覚悟しないといけませんねェ。
◇◆◇
「はあ、はあ、はあッ。百は行ったか……」
息遣いの荒いコーネリア皇女。こちらも過去最高の物を戴きましたよォ、はい……。
「ひゃぐ、いっだが、わがりばぜんが……がなりどぼどをいだだぎばじだ、はい……」
「はあ、はあ、よく、倒れんな? 本当に六十かお前」
「でぼ、じっがりど、いだいでずよ、はい……」
ああ、痛えよ。思いのこもった拳って奴は。本当に女かってくらいに鍛えてあるのも相まってなあ。こんなもんそこらの男が一発でも食らったら即日整形外科送りだぜェ。俺も大概タフな男だわ。
よくもまあこの歳で、こんなパンチを百発以上貰って平然と立ててるわなァ。
そんなことを考えてると、すっと紫色のハンカチが差し出された。コーネリア皇女の物だ。
「拭け、貴様そんなにまでなっても倒れず骨折した様子も無い……見上げたものだ」
「こりゃあどうも……」
口ン中は血まみれだけどなァ。まあそれは呑み込むぜェ、ゴクリと。
しかし高級そうなハンカチだ。これで血まみれの口を拭いて良いとかコーネリア皇女も太っ腹だわ、あんな写真を見て、俺の告白を耳にしたばかりなのによォ。
ごしごし。
遠慮無く拭いていく。両頬を。するとコーネリア殿下は誰かを呼び出すボタンを押した。
「私だ。今すぐに私の部屋に来い。一人でだ」
誰を呼んだんでしょうなあ。処刑人かねえ。散々殴られたわけだけどまあそれでも許されねえってンなら、処刑しかねェわなあ。
ふー、年貢の納め時か。まあ最後の二ヶ月ほどは良い思いをさせて貰ったから、十二分にお釣りは来るがよォ。
“コンっ コンっ”
「来たか……お前、怪我をしているところ悪いが部屋の鍵を開けてくれ」
「こんな血の臭いのする中に他の方が御入室されたりは?」
「大丈夫だ。私が入るなと申しつけている以上は絶対に入室しない。我が騎士ギルフォードでもな」
なるほど、見上げた忠誠心だ。コーネリア軍団が強えのはこのカリスマ溢れるコーネリア皇女が軍を引っ張っているからか。
おっと、入り口を開けないとな。ほいほいこのイレヴンめは、お待たせは致しませんで御座いますよォっと。
出入り口の扉に進み行きながら、掛けていた鍵を開ける。
“ガチャ”
「失礼いたしま──お、おぢさまっっ!!」
「ゆ、ユーフェミア皇女っ!」
血なまぐさい執務室へと入って来たのは、膝まで届く桃色の長い髪を大きな白い髪留めで纏めて大きなポニーテールに束ねた女。
見開かれた瞳の色は藤色紫、目鼻立ちは整い、耳の後ろで纏めたシニヨンの髪が特徴的。
首から胸元に掛けて金色の文様が入った白い衣服はスカートが膝丈のタイトな物。
その白い衣服の上から纏う薄紅色の衣服はスカート部が腰から背部までを覆う羽の様なひらひらしたスカート。
清楚さと気品を感じさせる公務服姿。いつも見ている公務服姿のユーフェミア皇女が俺の前に居た。
「鍵を閉めろ」
「は、はい総督閣下っ」
ユーフェミア皇女はコーネリア皇女をお姉様とは呼ばない。公務上は総督閣下と基本呼ぶ。公私の分別は付けるべき。
まあ、お堅いコーネリア総督閣下ならそう言うだろうな。
「お、おぢさま……」
ユーフェミア皇女が心配気に俺の顔を見る。そりゃま痣だらけだからなあ。
「ま、まさか総督閣下が……」
「いまはお姉様でも構わんぞユフィ」
「こ、これはお姉様が為さいましたのっ?! こ、んな、酷いことっ……」
俺を見るユーフェミア皇女の毛先が腰まで届く大きなポニーテールがさらり。
揺れる髪を見ながら思う、優しすぎるぜェユーフェミア皇女……。
「いえいえ、これはけじめで御座いますよユーフェミア皇女ォ」
「えっ、けじ、め……?」
「バレてしまいました。ユーフェミア皇女と私めの関係が。コーネリア総督閣下に」
「ええっっ??!」
焦るユーフェミア皇女にコーネリア総督閣下はあの写真をお見せに成られましたのです、はい。
「こ、これ、って、この間のっ、な、なぜ、どうし、て……」
「盗撮していた者が居てな。偶然撮れたのだ。そして私は事の真相をその男に問い質し、一人の姉としてのけじめを付けた」
「で、ですが、だからといってここまで殴ることはっ」
あくまでもお庇い下さいますか。本当にいい女だぜェ。
「構わないのですよユーフェミア皇女。私めもこうなることを望んでおりましたので」
「っっ……」
絶句するユーフェミア皇女。まあよお、もういいのさ、このくらいの事。後はコーネリア総督閣下が如何なさるかですからなァ。
「……この様な行為をしているという事はお前達はもう体を交わらせているのか?」
ド直球で聞いてくるかよ。もうちょっと恥じらいを持つとかせんのか?
「……は、い……。わたくしと、おぢさまは……もう、幾度も、幾度も幾度も、交接を……交して……おります」
俺が言おうとしたらユーフェミア皇女が言っちまった。そんな気遣わなくてももう喋れるんだけどなあ。
「お前達はお前達の意思で、この様な行為を行い、交わり合っている……快楽を求めてか?」
こりゃ俺への質問じゃねーな。俺は先程はっきりと伝えてあるからよォ。これが俺への質問だってんならおかしくなっちまうじゃねーか。
「いいえ。わたくしとおぢさまは愛し合っております。心の底から愛し合っております。わたくしはおぢさましか愛せず、おぢさまはわたくしだけを愛します」
「不純な動機では無いのだな?」
始まりが俺の不純な動機だったことは黙っておこう。余計な事を言う必要ねーしよ。
「はい。イエス・マイ・ロード。わたくしはおぢさまと結婚しております」
「なに?」
「誰にも認められていない二人だけの結婚です……そして、日々、わたくしとおぢさまの御子を作らんとして交接を交わしております」
「こ、ども、だと……?」
コーネリア総督閣下が俺にまで顔を向けてくる。俺も。
「イエス・マイ・ロード。コーネリア総督閣下ぁ、私めはねェ、私めはユーフェミア皇女に私めの御子を産んでいただきたいのでございますよ、はい」
こんなこと言っちまったよ。
「ふ、ふふ、ふふふふふ」
あれ? コーネリア総督閣下おかしくなっちまったか?
「ふはははははっ! この私を前に結婚していると宣い誓いの宣告までし、子作りを行っていることまで暴露するとは。……お前達が本気であると言うことは分かった。いいだろう、お前達の仲を認めてやる。不純でも無ければ恋人でも無い、夫婦としてな。始まりが何処でどうやってだったのかも敢えて聞かずに置こう。お前たちが夫婦として愛し合っているのならば最早何も言うまい」
「お姉様……っっ」
「し、社長閣下っ、俺が言うのもなんですがよろしいのですかねェ、その様に簡単にお認めに成られても?」
絶対的階級制国家の神聖ブリタニア帝国エリア11で、平民以下のイレヴンの俺と、皇族のユーフェミア皇女の仲を簡単に認めて。
「勿論認めるのは私、そしてギルフォードやダールトン。政庁の人間くらいだろう。だからアレを実現化すれば良い。階級差があろうとも階級差に捕らわれず、人種差があろうと人種差に捕らわれず、ニッポン人はニッポン人として暮らしていける行政特区構想を。そこでならばお前達も公に結婚が可能だ。まあ、政庁内については今後お前達は身分差のある夫婦として認めよう」
「あ、ありがとうございますお姉様っ」
「何とお礼を申し上げて良いやら」
「ただし、公私混同はするなよ? 愛し合うにせよ何をするにせよ、プライベートな時間のみだ。昼休憩時だけは人目の無い場所でなら認めよう。しかし、ユフィに先を越されているとは思わなかったぞ?」
「お、お姉様」
「だが、母上やリ家の支援貴族は認めんだろう、が、私がうまく口添えをしてやろう。過去リ家とニッポンは強いつながりもあった時代があるからな。我ら姉妹の祖先であるクレア・リ・ブリタニア陛下の御代にて」
A以上の評価。それは何も健康診断だけに限らない。
こんな無茶苦茶な形でもS判定みたいな結婚をコーネリア総督閣下より認められたりしちまうんだからよォ~。
「ユーフェミア皇女ぉ~っ、これで気兼ねなく子作りを行えますなァ~っ」
「は、はい……おぢさま 」
「こ、子作り……子作りか、改めて聞くと少し不思議な感じだが、まあ、夫婦ならば、当然か……。……し、しかしユフィ、妊娠の兆候が見られたら何処でもいいっ、どの様な医者でも腕のしっかりした医者ならばいいっ、きちんと見て貰うのだぞっっ、だが、町医者は無理か……まだお前達の関係を明かすわけにはいかんからな……」
そこは腕の良い闇医者を知ってるから御安心くださいませェ、コーネリア総督閣下ぁ~。
「おぢさま、わたくしがお手当させていただきますので少しの間じっと動かないでいて下さいませ」
ああ~癒されるわぁ、ユーフェミア皇女ぉ。俺なんかの為に手当までしてくださるなんてよぉ。こんなもんほっときゃそのうち治るんだが。
「いで、いでででッ、ユーフェミア皇女痛いのですがぁ~っ?」
「我慢してくださいまし。血は粗方拭き取られておりますわね。お姉様、消毒箱は?」
「医務室だ」
「それでは取ってまいりますのでおぢさまは動かないでください」
長いポニーテールを揺らしながらスタスタと歩いて執務室を出ていったユーフェミア皇女。俺の体を動かさないのは負担を掛けさせない為かね。
「優しくありながらもユーフェミアの尻に敷かれているなお前」
「まあ、私めもユーフェミア皇女の尻に敷かれるならば本望に御座いますよぉ~っ」
「ふ、どうやら末永く幸せでありそうだな」
「ですが、本当にいいんですかねェ、私めなどで」
もう一度コーネリア総督閣下に確認する。やっぱり駄目だとか言われたら悲しいだろう?
「杞憂だ。私はユーフェミアが、ユフィが幸せであるのならば何も言わぬ。お前の事も信用しているからな」
「勿体ないお言葉でございます、はい」
パタパタとユーフェミア皇女が戻ってきた。元気というか焦りに揺れる桃色の大きく長いポニーテールが忙しなく動いている。キュートで可愛いもんですなあへっへっへ。
「さ、おぢさま。消毒液を染み込ませたガーゼです」
ちょんと充てられた染みる消毒液。
「いっで~~~~~~~っっ!!!」
「我慢しなさいっ!!!」
「くくく、本当にユフィの尻に敷かれているな。まあ、色々あったが殴り過ぎたのは済まなかった」
今更謝んのは無しだぜ総督閣下ぁぁ。
「つーか痛ってーのよユーフェミア皇女ぉぉぉ~~~っっ!!」
せっかく近くに身体を寄せてるからユーフェミア皇女のポニーテールをなでなでする。指を通して梳いてみる。触り心地が良いねぇ。
「ですからじっとして我慢しなさいおぢさまっっ」
「御髪を触らせていただいているだけでは御座いませんかぁ~」
「髪を撫でられるのは気持ちが良いのですが、消毒の邪魔ですっ!」
「へ~いへい、わかりましたよじっとしてればよろしいので御座いましょうじっとしていれば~」
「そうですっ!」
健康診断は最高、コーネリア総督にはユーフェミア皇女との夫婦関係を認められ、愛するユーフェミア皇女からの痛い痛ーいお消毒……いや、色んな意味でイイ一日だわ……。
過去にリ家と日本の間に強いつながりがあったのは事実です。
漫画コードギアス 漆黒の蓮夜が公式の歴史として発表されておりますので。漆黒の蓮夜をご存じない方はお調べいただくか、単行本をご購入下さい。時代は江戸時代あたりです。
コーネリアとユーフェミアの先祖クレア・リ・ブリタニア皇帝は日本人である蓮夜たちの活躍によって皇帝の座に就きました。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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コードギアス
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コードギアスR2
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此花トゥルーリポート
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FF4×FF6
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カオシックルーン
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学園黙示録
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ルパン三世 ワルサーP38
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幕末風来伝 斬郎汰
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ニードレス
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ヨルムンガンド
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少女少年
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北の告発
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サラダデイズ
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クレセントノイズ
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ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
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ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
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遊戯王GX(十代×カミューラ)
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魔装機神(マサキ×モニカ)
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椎名君のリーズニングファイル
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RAVE(ハル×絶望のジェロ)