この物語は私の妄想である本来ならばありえないカップリング――主に敵女性との恋愛物語シリーズの一作品となっております。
現5ちゃんねる掲示板様(旧2ちゃんねる)に投稿していた物を加筆修正致しました、喜名朝飛先生原作漫画『幕末風来伝 斬郎汰』より主人公の斬郎汰×子々のお話しです。
子々とは、主人公と敵対する敵組織幹部の近衛十二支の一人なのですが、私が喜名先生のサイトを発見する以前に書いたお話しですので、子々の設定が私の独自設定となっており、原作裏設定の子々とは設定が根本的に異なっております。
当物語に置ける子々は『疼夜配下の近衛十二支でありくのいちでもある』という事となっております。
子々の衣服や髪の色などは、原作4巻裏表紙の物を参考にさせて戴いております。また、原作との時系列も異なります。
ピクシブ様にも投稿しております。
幕末風来伝 斬郎汰 喜名朝飛 斬郎汰×子々 斬郎汰 子々 おねショタ
運命変わる夜の出逢い
運命変わる夜の出逢い
街道を歩く小柄な少年がいた。
そして、時同じくして、同じ場所でその少年の様子を探るように見つめる一人の女の姿が有った。
気配を消し、木の上から彼の少年を興味深そうに観察する女。
彼の少年は、長く伸びた頭髪を頭の後ろで一つに纏め、自身の身の丈よりも大きく長大な刀を縄で縛り、肩から提げていた。
顔立ちは幼く、一見何処にでも居そうな子供だ。宿場町にでも行けば幾らでも見かけそうな。
しかし女は知っていた。呑気に歩いている目先を行く少年が只の子供ではないと言う事を……。
「あれが疼夜様が昔、弟同然に接していた坊や……通称血袴の斬郎汰ね」
頭の上で幾重かに結い上げられて一つに纏め背に流された一本の髪は、下ろすと優に膝、もしくは膝下にまで届くであろう。女の茶色がかった赤の艶やかな長い髪が風に靡く。
「フフ、かわいい坊やだこと」
額には鉢巻を結び、忍び装束のような着物を着た女、先程から少年を見続けている色っぽく妖艶な美女は呟き、その美しく整ったかんばせに妖しい笑みを浮かべる。
「気に入ったわ♪」
女の名は子々。幕末の世の只中にある日本を力で統一しようと目論む、八神疼夜という男の武装勢力の幹部にして組織の精鋭、近衛十二支の一人であった。
子々、彼女は、己が主である八神疼夜の全てが知りたくなり、疼夜の実質的な弟とも言えるであろう八神斬郎汰の事を以前より独自に調べていたのだ。
疼夜の強き意思と統率力、彼の持つ強いカリスマ性に惹かれ集った近衛十二支を含む彼の配下の者達は、皆彼に心酔していた。
故に配下の中には謎に包まれた疼夜の事柄や出自を独自に調べてみたくなる者も居た。
“自分達を纏め上げる力を持った八神疼夜様とは、一体どのような御方なのか”
多くの者が抱き思考するそれ。彼女、子々もそんな人間の一人であった。
知りたいと思う者は行動に移し、ただ綽々と従うに留める者は己が本分を全うするのみ
そんな中、前者であった子々は行動に移す者。
故に彼女は調べ上げた。余すことなく徹底的に。疼夜に関係するであろう事柄を。
そうして彼女が独自に調査をしていく内に、疼夜には弟のような存在が居る事が分かったのだ。
気になった子々は現在任務に就いていないという事も有り、自由な立場を活かして彼の少年を捜した。
西へ東へ、京を江戸を。凡そ日本中目ぼしい場所を虱潰しに。
そして遂に見つけたのだ。その少年──斬郎汰を。
「ウフフフ、見つけてどうするか。……それはもう決めておりますわ」
妖艶に笑う子々の瞳は件の少年を補足していた。
◇
ひんやりとした夜。鬱蒼とした森の中。炭焼き小屋を見つけた小柄な少年斬郎汰は小屋の前で火をおこし、一人静かに焚き火を焚いていた。
辺りは一面暗闇に包まれており、今夜は月も出ていない。そのため、焚き火の灯り以外光源は無い。
どこを見渡しても闇が広がるばかりでなにも見えない、誰も居ない筈。
その筈なのだった。つい先ほどまでは。
「……っ!?」
だが彼は、その闇夜の中に不意に感じた。つい今し方までは無かった筈の人の気配を。
何の前触れもなく現れたその気配を、鋭敏に感じ取って身構える斬郎汰の前で。
「こんばんは」
気配と共に、暗闇の中では、唐突に現れた光が浮かび上がっていた。
「……ああ、こんばんは」
その光の下に陽炎が浮かび上がるように現れたのは、光源たる灯籠を手にしている妖しげな美しさを持つ女だった。
優に膝まで届くだろう薄茶色に近い色の長い髪を、頭の上後ろで幾重かに結い上げ一つに纏め。
額には緑色の模様が描かれた鉢巻を巻き結び。
胸部より上が白で、下が赤。同じく腹部から腰にかけてが白で、膝から裾までが赤色。腰には鉢巻き同様に三角形の緑の模様と白の螺旋模様入りの帯。腕の裾や腰より下の衣服の前合わせの裾にも同じ模様が入っている。
そしてその手には某か仕込まれていそうな様子の、長く鋭い爪が特徴的な手袋といった。まるで忍び、くのいちの着る忍び装束のような衣服を身に纏っていた。
否、第一印象も、感じ取れる何かも、凡そ常人にあらず。
間違いなく忍びの者だった。
「となり……よろしいかしら?」
「……いいよ」
女が気配もなくいきなり現れた事に警戒していた斬郎汰だったが、殺気が一切感じられない女に警戒を緩める。
たとえ相手が忍びであろうとも、何らの害も無き女を警戒し続ける必要も無いとして。
ましてや相手は忍びであろうとも女。女には優しくすべきだろうとも。
しかしこんな夜更けに忍びとは言え女が一人で森の中を歩いているのは明らかに変だ。
忍びなら、くのいちなら何かの任務の途上という事も考えられるが、様子を見る限りではそうとも思えない、一体何をしているのだろう。
そう思いながらも、敵意が有る訳ではない様子の彼女を拒絶するのも此もまたおかしく、斬郎汰は取り敢えずの妥協点として彼女を受け入れ、その様子を窺う事にした。
もしかしたら彼女ははぐれくのいちかなにかで、ただ旅をしている中、この森にまで辿り着いたところで夜を迎えただけなのかもしれないと。
「しつれい、そう言えばまだ名を名乗りもしておりませんでしたわね」
すると女は斬郎汰の隣まですっと近付き、手に持った灯籠を左から右へスーッと静かに動かした。
彼女が灯籠を動かすと、不思議な事に周囲に幾つもの灯籠が、ポッ ポッ と火を灯すように現れる。
(凄い奇術だな……かなり手練れのくのいちかな。……ほんとに、綺麗だ……)
周りが暗いため、煌煌と光る灯籠の灯りがとても綺麗に見え、斬郎汰は思わず目を奪われてしまう。奪われてしまった。迂闊にもだ。
そう、迂闊なのだ。得体の知れない女の奇術に見取れてしまうなどという油断を、彼は無意識にしてしまっていたのだ。殺気は無い友好的な接触だったから。
気付いたところで全ては遅きに失し、もう手遅れであるとも気付くことなく。
「私(わたくし)は子々」
彼女は尚も灯籠を動かしながら自分の名を名乗った。
奇術を交えた自己紹介。
「子々……子々、か。いい名前だね……。オレは斬郎汰っていう……ん……?? ざんろ、たって…………あ、あ……れ……こと、ば、変に……?」
名乗られた以上、自分も名乗ろうと思った斬郎汰が、彼女に自分の名を告げた時。それは起きた。
「……なん……だ……これ……?」
依然灯籠を見続けていた彼を突如目眩が襲ったのだ。
目眩と共に感じるのは倦怠感、意識が混濁し身体がふらつく。
(な、なんだ、これっ?!)
急な事に戸惑いながらも、視線を上げた彼の目に映るのは、妖しく微笑み彼を見つめる子々の姿のみ。
「フフフ、この子々の得意技“傀儡の術”……の前座。──というところかしら。綺麗でしょ?」
その言葉からこれが子々のやった事だというのは分かったが、時既に遅しな斬郎汰は腑に落ちなかった。
何故こんな事を? 何故にこの様な行為に及ぶのだ?
そう思うのも無理からぬ事。何せ彼女と逢うのはこれが初めてだ。
恨みを買った覚えもなく、彼女の気に障るようなことを言った訳でもないのに……何故、こんな事をするのか?
それとも何処かの誰かに“血袴の斬郎汰を討伐しろと”依頼されたりしてのこの行いなのだろうか。
それにしてはまるで殺気を感じないというのに。
子々の不可解な行動に疑問は尽きず。
考えている間にも、どんどん目眩は酷くなっていく。
「幻覚を見せておくとね。“傀儡”がより強力にかかるのよ♪」
「お前……なんで……こんなこと……っ」
「どうしてかって? そうね、敢えて言うのならば私、坊やのことを気に入ったのよ」
「なん……だって……?」
彼女のその言葉を耳にしても全く訳が分からず、益々混乱してしまう斬郎汰だった。
討伐や暗殺依頼ではなく、敵対する気も無い。だったらどうして?
(オレの事を気に入ったのに、だったらどうしてこんな事をするんだ……?)
自身の事を気に入ったというのならば、出逢ったばかりでそれもおかしな話ではあるのだが。
もし彼女の言葉の通り、本当に自身の事を気に入ってくれたというのならば、尚更にこの様な暴挙に及ぶ理由が分からない。
「混乱しているのね坊や、可愛いこと……」
戸惑う斬郎汰の顎に手を添えた子々は、彼の顔を自分の方へと向けさせる。
勿論これからの仕上げを行う為に。
「さあ、最後の仕上げですわ……私(わたくし)の目をごらんなさい」
見てはいけないと直感的に思う物の、全く言うことを利かなくなった彼の身体は子々の誘導に従ってしまい、彼女の目を真正面から見てしまう。
この強制される言葉からは逃れようとも逃れられない、逃げたくとも逃げられない、他ならぬ斬郎汰自身の身体がそう叫びを上げていた。
傀儡──つまり人形に、操り人形に……そういうことなのだろう。
「大丈夫よ。本当の“傀儡”のようにしたりはしないから。お人形とじゃ楽しくないし、ね♪」
敵意の欠片も見せないままに子々は言う。
楽しそうに、手に入らぬ筈の宝をその手にした盗人のように。
それはあまりに自然体で、こんな暴挙に及ばれているというのに怒りを抱かせないのだ。
子々には本当に彼女自身が言うように、敵意の欠片も無いのだろう。この今でさえ殺気らしい殺気を感じないのだから。
「それに私は坊やの事を殺そうというのでも、傷付けたりしようという訳でもありませんもの」
「それじゃ……っ、どうしようって……言うんだ……!」
「知れたこと。目眩も何も無く、坊やの意識だけを完全に覚醒させたまま、身体の自由だけを奪ってしまうのよ」
嗤う子々と見つめ合っていると、程なく斬郎汰の意識がはっきりとしてきた。
代わりに彼女の言葉通り、身体の自由が利かず指一本動かせなくなってしまっていた。
身体に力が入らず完全に脱力した状態だ。
完璧に術がかかった事を確認した子々は、斬郎汰を抱き上げる
「軽いわね。小さいからなのかしら?」
「う、うる……さい! これでも十三だぞッ!」
「十三……小柄だからかもう少し幼く見えますわね。十くらいかと思いましたわ」
「う、うるせー」
確かに八神斬郎汰は小柄だ。十三歳という年齢の割にはそれよりもまだ子供──精々10つほどにしか見えない。
反面十八の子々はくのいちである事も手伝い実年齢以上に見えるのだ。
背は高く胸も豊か。少女ではなく正しく大人の女性であった。
くのいちであるのならば戦場や陰謀の中に身を置いてきたとも考えられ、人間的な経験は豊かでありやはり大人である。
江戸の世では十八の女性はもう既に成人なのだから。
「その反抗的なところもまたかわいいですわぁ」
そう上機嫌になりつつ子々は炭焼き小屋の中へ入り、彼の身体を床に横たえ、持っていた灯籠を小屋の隅に置いた。
「本当に……何する気、だよっ」
床に寝ている自分を見下ろし微笑む子々に斬郎汰は無駄と思いつ問うてみた。
子々が自分を殺そうとしているのではない事は彼女の行動、及び、敵意も殺気も感じられない事から大体分かってはいる。
それなら彼女が一体何をしようとしているのか? そこが分からない。
もっとも、子々が“斬郎汰としようとしている事”は、それこそ彼には想像も付かない事なので、彼が分からないと思うのも仕方がないと言えば仕方がない。
「うふふ、良い事よ」
「良い事だって?」
「そう……。男子(おのこ)にとってはとっても気持ちの良いこと……。天国に昇らんばかりの」
そう言うと子々は、身動き出来ずに仰向けで寝ている斬郎汰の側に腰を下ろし、静かに顔を近付けていく……その距離僅か一寸ほどと、鳶色の彼女の瞳と斬郎汰の緋色の瞳が絡まり合う程に隙間無き距離。
「な、なんだよ」
男と女の関係というものに興味を抱いたことも無ければ、良く分かりもしない斬郎汰だったが、ここまでの至近距離で近付かれ、子々の身体から漂ってくる女特有の良い匂いに、その芳香に、思わずくらくらとしてしまう。
斬郎汰の近くに居た異性とは、母以外では、それまで自身が姉のように慕っていた深雪という少女だけだった。
しかしそれは“女”という対象ではなく、飽く迄も“家族”であり“姉”としての関係性に重きを置いていた相手である。
深雪の温かさや匂いは側に居て気持ち良く、そして落ち着く物だったが、こんな、子々のような“匂い”は初めてであったのだ。
子々の匂いは“女の匂い”──男という生き物は女に反応し、引き寄せられる生き物。
如何に十三という、未だ少年の域を出るなど程遠い斬郎汰と言えど、年齢だけを考慮するのならば元服に入る時期の男である。
初めて嗅ぐ女の匂いはとても良い匂いに思え、嗅いでいるだけで熱病に魘されるように頭がクラクラしてきていた。
この目眩は子々の術による物ではない、男としての物だと少年は本能的に感じ取る。
「ねえ坊や……坊やは接吻をした事はお有りかしら?」
僅か一寸ほど、子々の甘い息が顔に掛かる至近距離からの質問。それこそ、その接吻を交わせるような距離からの。
「せっ、せっ、接吻……?」
接吻──口づけ……。斬郎汰は生まれてこのかた一度もした事がない。
する相手がまだ居ないからというのも有るが、その一方で──
「無いよ……」
“子供故に無い物は無い”が正答なのかも知れなかった。
「興味はお有り?」
接吻という甘い響きを帯びた行為に興味はあるのか。
続く子々の簡潔なる質問がそれだった。
これにも少しだけ考えた上で──
「……どんなものかって思った事はあるけど、相手とか……居ないし……で、でも!」
「でも?」
「でも、興味はある……よ、だって、オレだって、男……だから」」
子供であっても男として興味は有ると答えた。
斬郎汰も子供とは言えども十三という年頃の男だ。興味を持たない筈もないだろう。
それは子々とて分かっていた。理解しながら敢えて訊ねたのだ。そうして理想に適う答えを引き出した。
「そう……」
少年の、男としての本音を引き出した子々は、良い返事ねとだけ告げながら、至近距離の顔をつつっと近づけ。
「フフ だったら……。チュッ──」
「んぅぅッ?!」
形の良い紅い唇を斬郎汰の唇に押し付けていた。
“んっふう──”
ほんの数秒を触れ合わされる二人の唇。
甘く、香しく、背筋を走る痺れと共に柔らかい大人の唇が重ねられたのだ。
「フフ。ちゅる」
「ぷぁ──!」
その甘い唇は直ぐに離され、また触れ合えるくらいの距離へと差し戻された。
軽く触れ合わせただけだというのに目を白黒させて驚くのは斬郎汰だ。
それもそうだろう。いきなりの質問に質問内容の実行。
立て続いたのだから驚くなと言うには無理があろう。
(かわいい……。ホントかわいいわ……、坊や……)
そんな少年の初な反応を見て、更に欲望に火が着いた子々は、もっと色々したくなってきた。
彼女は一目で斬郎汰を気に入っていたのだが、ここまで可愛いと余計にそそられ、いけない気持ちになってくる。
そう、このまま最後まで……。
「な、な、なッ、なにすんだ……っいきなり?!」
「フフ、興味がおありのようだったから、教えて差し上げたのよ♪ ……そしてこれが……んっ」
抗議の声を上げる斬郎汰に再度子々は口づけた。
「ふう──っ!!? ──んんむっ!」
彼女も今度は逃すまいとして斬郎汰の唇を己の舌でこじ開け、彼の口の中に自らの舌を入れ、彼の舌を絡め取りながら、荒々しく、深く、そしてそれでいて優しく、口づける。
愛を以て行うような丁寧で深い口づけを、彼女は斬郎汰へ贈り続ける。
「んっ……くちゅ、ちゅぱっ」
ぴちゃぴちゃと、二人の唇と舌が触れ合っている。
軽く触れて終わりなどではない。明らかに先とは違う接吻だ。
唇が触れ合う時間も長く。
舌を絡ませられ、唾液まで送り込まれるような、濃厚で味わい深い接吻。
子々の湿った唇の感触、息遣い、香り、自分の舌に絡まる彼女の舌の温もり。
(せ、接吻って……っ、こんなに──気持ち良いんだ)
その全てが斬郎汰を魅了し、頭の中を蕩かしていく。
絡まる舌を通して口の中に溜まった子々の唾液を彼が飲み込むと、何とも言えない甘酸っぱく美味しい味がし。
どんな美味なる料理を以てしても適わないほどの満足感に、空腹感のあった胃袋が満たされていく。
そうして接吻を受け続けている斬郎汰は、彼自身の考えで何かをしたくなった。
何か物足りない。何か──もう一つの何かが。
そう無意識に思う彼の舌が、今度は子々の舌に、ねとりと絡みついた。
「んん──ん、むうっ!」
くぐもった声は子々の声。彼女は逆に彼よりの舌の侵入を受けたのだ、思わずの反応に歓喜に震える。
自身の口づけを接吻をこの少年は自分の意思で受け入れたのだ。気に入った男に受け入れられる。それは一人の女としても気分を高めさせる物だった。
舌を情熱的に絡み合わされ、絡め取られつつ彼の唾液を飲まされる。
それはまるで捜していた物を捜し当てたかのような熱情を帯びた口づけだった。
くのいちの子々でさえも満足させられるような、そんな口づけだった。
そんな歓喜の刻も、一度終わりを迎える為と、触れていた唇同士が離され終息を迎える。
「ん……これが大人の接吻なのですけれど、フフ、坊やも情熱的ですわね……私の方が気持ち良さを味わわされるなんて、ね」
「か、身体が勝手に動いたんだよっ、なんかそうしなきゃって……」
「ウフフ、それならば──今度は、坊やから私に接吻をなさっては如何? 接吻の途上で私を絡め取るのではなく、坊やからの接吻を」
子々は誘う。斬郎汰を。
一度接吻を受け入れたのだ。それならば次なるは自ら奪えと誘うのだ。
「だ、誰がそんなことッ……ッッ!」
ただそれも、好き勝手にされている事に対しての反抗心からか、斬郎汰が拒絶の意を示した。
身体はどうだろう。心はどうなのか。
子々からの接吻はそれはもう気持ち良く、自分からも彼女を求めずには居られないほどだった。
彼女に求められて心は胸はとても熱くなっていた。
自分は、オレは子々を求めているのではないのだろうか? との疑問を少年の心へ抱かせながら。
いやさはっきりというなら斬郎汰は子々を求めていた。ただ、強制的にというのが如何せん歯止めとなってしまっている。
自然な接吻なら、斬郎汰はもう既に子々の唇を奪っている頃だろう。奪い、口内に舌を差し入れ、心行くまで彼女と絡み合う。
そうしていたし、そうする。
だがしかし。そんな斬郎汰の意思など関係なく。身体は子々を求めてただ動くのだ。
「う、……な、なんだこれっ?! か、身体が、勝手に……んうっ?!」
「あむ、んっ」
考えに耽る間もなく、次の瞬間には自らの唇は、ぷっくりと膨らむ色気有る紅い唇を塞いで、子々のくぐもった声音を今一度引き出すに至っていた。
「んっふむぅ──」
意に反してか。意に沿ってなのか。分からずとも、斬郎汰の方から子々に口づけてしまったのだ。
無論、これは子々の“傀儡の術”によって操られている彼の身体が、彼女の言葉に従って動いているのだけなのだが。
きっと自身の意思も関係しているのだろう。斬郎汰は子々がしたのと同じように、子々の口内へと舌を入れ彼女の舌に再度己の舌を絡ませゆく。
「んっ、あむっ、ちゅぱっ、んう」
子々が教えた、教えられてしまったその実践通りに、少年の小さな舌が、瑞々しい女の舌へと絡ませられていた。
もう操られているからどうという段階にはなく、明らかに彼は彼の意思で彼女を求めていた。
ぬめった感触が舌や口の粘膜から伝わり、彼を操る子々自身の身体にも、熱を帯びさせてくる。
その一途で情熱的な接吻は、手練手管なくのいち子々の理性をも狂わせている様だ。
それを悉に感じ取った斬郎汰も、己の舌を巧みに使いつつ、子々に飲ませようと自らの唾液を送り込でいく。
これに彼女は応える。送り込まれた蕩けた唾液を飲み下し、自分からも斬郎汰の口に舌を入れ、彼と舌を絡ませ合う。
全てが先程とは真逆であるが、その熱情的な接吻の度合いは先程よりもなお大きく深く。
「ちゅぱ、ちゅ、ちゅるっ」
子々の思惑通りに進みながら、一方で想定の埒外にも進んでいた。
蕩けに蕩け行く二人。
(フフ……私との接吻、お気に召したようね……。ああ、でも……なんて、気持ちの良い接吻ですの……初めてですわ、この様に心の底から心地よいと思える接吻は、斬郎汰……坊や)
予想を超える斬郎汰との口づけの気持ち良い事。
これも相俟って、彼女の気分もどんどん昂揚してくる。
互いの口内を何度も往復し、唾液を飲ませ合い、長いようにも短いようにも思える数分間の口づけを終えたところで、昂ぶる高揚感を残しながら、二人の唇はほぼ同時に離されていった。
つつー……。
口の間を繋ぐように唾液の糸が伸び、銀の橋を架ける。
子々はそれを辿るようにして軽く斬郎汰に口づけ、唾液の橋を消した。
余韻に浸るのも良い。
それだけの良き接吻であった。
しかしながらこれはまだ前段階でしかないのだから、と、名残惜しくも残痕を消し去ったのである。
そして、最後の名残を円を描くようにして自分の唇を舐める事で拭い去る子々は、次へと進むために言葉を紡いだ。
「ちゅる……ふう……。ウフフ坊やの接吻、とても上手だったわ。この私が思わず心奪われてしまうくらいに……」
紅く艶っぽい唇が更に彼女を艶めかしく感じさせ、自然、斬郎汰の高揚感をも高めさせていく。
「……オレ、接吻がこんな気持ち良いなんて知らなかった……なんていうか、心地良くって……、頭が胸が熱くって……子々、オレ」
強制的にさせられて、強制的にして、強制の中で想い合うように行った口付け。
接吻は強制でも、その強制がこんなにも気持ちが良いと怒りすら吹き飛んでしまう。
そもそも途上から怒りなんて無かった。子々と、彼女との接吻を斬郎汰は望んでしまうようになっていたのだから。
「お気に召しまして? でも、これからする事は……もっと気持ち良くってよ」
接吻が良かったのならば今度は更にその先へ。当然にして当然のことを告げる子々に斬郎汰は疑念と期待に胸を熱くさせた。
そうして自身も斬郎汰のことも昂らせた子々は、あらゆる物を切り裂く糸──自身の必殺武器『血糸金』が仕込まれている手袋を両手から引き抜き、素手になり、そうして斬郎汰の腰帯を解き始めた。
「え……っ? ええっ?!」
「うふふふ」
「うあっ……なにをっっ、やめっ」
わけも分からぬと混乱振りを見せる彼を放置したまま、身動き一つ取れない彼の衣服を手早く脱がせ、子々は彼を生まれたままの姿にしてしまうと。
「ちょっ……!」
首の下辺りに人差し指で触れてみた。
彼女の方は服を着たままに。
「オっオレを裸にして……っ、一体どうするんだよ……っ」
“傀儡の術”を掛けられたままなので抵抗する術は無く、服を脱がされるのを黙って見ているしかなかった斬郎汰は、自分を裸にし、舐めるように身体を見ながら喉の下に指を当ててきた子々に問うた。
「ウフフ……。言ったでしょう? もっと気持ちの良い事をするって」
それに答えながら、子々は斬郎汰に触れている人差し指を つ―っ と首筋から下へゆっくりとなぞっていく。
「うぁぁっ!」
瞬間、彼はゾクッとした感触に襲われ鳥肌が立った。嫌な感触ではない。寧ろ気持ち良い感じだ。
気持ち良く心地良き、身を貫かれ続けていたくなる感覚であった。
子々も子々でビクンと震えた斬郎汰に嗜虐心を煽られ、虐めたくなってしまう。
「かわいい……」
だが、虐めたくなるのを我慢しながら彼女は斬郎汰の身体に顔を近付け、唇を落とした。
「う……ッ!」
自分の胸板に落とされた彼女の唇の感触に、少年は言うに言われぬ感覚に襲われてゾクゾクッと身を震わせるが、指で擽られるよりも更に気持ち良いと彼自身は感じていた。
ぴちゃ、ぬる、滑る舌が胸板を這い回る。上から下へ。下から上へ。位置を変えながら時に首筋を。時に肩胛骨の辺りを絶え間なく。
顎にも這わされ来る舌が、そこから上に来て唇を舐め、そのまま頬を這いつつ、横へと反らされては甘く耳を噛む。
そうして子々は胸から始まり上半身のあらゆる場所へ唇を落とした後、彼の乳首を舐めて吸い、そのまま再度上へと己が唇を移動させていき、またも首筋に舌を這わせた。
「う……あ……ッ……ッ、ああッ」
身体を這い回るねっとりとした舌の感触に、斬郎汰の口からは声が漏れてしまう。
この夜、子々と触れ合い始めてより幾度目となろうかという声を。
こんな弱音のような声を出してしまうだなんて、それもこんなことで。
でも、なんだかそれが、とてもとても自然な事のように思えて受け入れていた。
「フフ、坊やどう? ……気持ちいいでしょう?」
「な、なんか、いい……っ、わかんないけどっ、いい感じ、だ……っ」
首筋を舐め耳を甘噛みした後、腹、下腹部へと舌を這わせていった子々は、最後に股間へと辿り着く。
もう既に斬郎汰の股間の一物は天を目指してそそり立ち、何かを求め彷徨うようにビクビクとした痙攣を繰り返していた。
少し剥け掛けてはいたが、まだ皮の被っているその一物を見ながら、彼女はそれを右手で掴む。
「坊や……。坊やの皮、この子々が剥いて差し上げるわ」
これから自分の中に迎え入れる為にも、斬郎汰の幼い一物の皮を剥くことにした子々。
皮を被ったまま入れても中で剥けそうな感じはするのだが、やはりきちんと剥いてからの方が良いだろうとして。
そう、子々はこれより斬郎汰と女と男として交わろうというのだ。
初めはここまでしようだなんて考えていなかった気もするが、このかわいい坊やと交わってみたいという高揚した昂ぶりが今の子々にはあったのだ。
「か……わ……? か、皮って……。お、オレのの、皮……、む、剥くの……か?」
一方、斬郎汰の方はというと、こんな経験は初めての為、どうして自分の一物の皮を剥こうとしているのか分かっておらず、自分の一物を握る美しい女を見つつ、疑問を口にしていた。
そんな彼を一瞥した子々は。返答は行動を以て返すこととした。余計な言葉は要らないのだから。
「少しばかり痛くってよ」
言うやいなや、幼い一物の皮を一息に、下方へと引っ張った。
剥け掛けの皮がずるりと下がり、赤ん坊の様な赤い男が生まれ出た。
「ぐあァ……ッ!」
「我慢なさいな。痛みは私が和らげて差し上げますから」
その瞬間訪れた痛みに声を上げた斬郎汰を見ながら、子々は自分の手の平の中にある彼の一物をにぎにぎと揉む。
一物に刺激を与え、痛みを快感が上回るようにする為だ。
皮を剥かれた事で現れた生まれて間もない赤い色の亀頭。
それは、彼女の手により快感を与えられ、皮を被っていた時よりも硬く大きくなっていく。
彼女の手の平で揉みほぐされる、それは新鮮で気持ち良く。
「うう……っ」
「まだ痛みは有るかしら?」
「ちょっと……痛い……。けど、子々が揉んでくれるから凄く……いい感じがする……」
徐々に快感が痛みに勝ってきているようだ。
「それじゃ、少しこすってもみましょうか」
「こ、こする」
「そう、こうやって私の手で坊やの物をこするのよ」
下へ、上へ、まずは優しくひとこすり。
「ふ、ああ」
雄々しく猛る彼の男も更に猛りを増すかの如く硬く、子々の手の平の中で大きく膨張を始めた。
「う、ぁぁ、うああッ、子々っ、ああ子々ッ、オレ、う、あああッ」
「ああ、いいですわ。私の愛撫に感じているのね坊や、ハア、ハア、坊やっ、坊やっ、私もっ……高まりますわぁ、ハア、あハアぁ、坊やぁっ」
子々は子々で、手の動きを揉むだけから上下に動かすものに変えながら少年の一物を扱き、空いている左手は着物の裾の中へ入れて自らの股間を触りつつ、斬郎汰と自分を同時に愛撫していく。
暫く続くその行為。行為の最中に膨張していた少年の男が徐々に最高潮を迎えんとしていた。
「ああ、坊や……気持ち良くなってきた様子ね。そろそろ出るわ」
「でっ、出、る……っ?」
「そうよ。出るのよ、ここから……坊やのこの先からと、私の……ンっ、ここから……ね、それが……あっは……っ、もっと気持ち良くなる為の……準備」
間もなく言葉の通りに、斬郎汰の一皮剥けた亀頭の先端から先走りの汁が。
「うあっ」
びゅる
子々の股間の肉芽と割れ目からは塩と愛液が。
「ああン」
ぷしっ
それぞれ出てきて、もっと気持ち良くなる行為──交わる為の準備が整う。
「これで、いいわ……ウフフ」
もういい、と、子々は斬郎汰の一物から手を離し、自らも愛撫を止めて立ち上がり、彼の身体を跨いでは、自分の装束の裾を腰帯の位置まで捲り上げた。
「坊や……、ごらんなさい……」
斬郎汰の目の前に立ち、股間をさらけ出している子々。彼の目は其処に奪われた。
「どうかしら……、私の此処は……」
「き、きれ、い……綺麗、だ……、すごく……、すげェ、綺麗だ……」
そう、そこはとても綺麗だった。とても言葉にできないほどに美しかった。
初めて目にした女の秘所。灯籠の灯りに照らされた愛液で潤う割れ目はてらてらと妖しく輝き、見ているだけで何かが身体の奥から湧き上がってきそうになる。
もし“傀儡の術”に掛かっていなければ、甘い蜜に誘われる虫のように子々に引き寄せられたに違いない。そう思わせる程の美しさを湛えていた。
子供ながらに理解する。男が女に惹かれるのは、優しさ、甘い匂い、美しさ、色々あるのだなと。
「ウフフ……、私、素直な子は好きよ」
斬郎汰の一物がビクンビクンと痙攣している。それに視線を奪われた子々の割れ目もヒクヒクと蠢き、互いの性器はその時を今か今かと待ち侘びているようだ。
「さあ坊や。これから坊やの一物が私の割れ目──秘め処へと入って、私と坊やは一つになり……交わるのよ」
「子々と……交わる……」
「そう……」
互いに互いを欲している。身体同士が求め合っている。
子々を、斬郎汰を。
子々は斬郎汰の目を見据えたままにただ一言だけを強く告げた。
他にはなにも必要ない、ただ一言の言葉を。
「八神斬郎汰はこの私──子々と交わるの」
「えっ! あ、うああっ」
子々は腰を下ろしていった。
自分の割れ目に斬郎汰の一物を添えると、ゆっくり腰を落として、愛液に濡れる子々自身の秘部の割れ目に皮の剥けた幼い一物を飲み込んでいく。
ずぶずぶずぶ……。先走りの液と愛液がせめぎ合い、沈み込んでいく一物と秘め所が淫らな、それでいて在るべき音を立てている。
「はあっ……あぁぁぁ……、はあぅぅぅっ、ぼう、やぁぁ……あ、ぁぁぁぁぁぁ……」
一物に自らの襞を擦りあげられながら子々は喘ぐ。閉塞していた柔肉を押し割られていくことに喘ぐ。
その感覚に背を仰け反らせて一つ括りの長い髪を揺らし官能を感じながら子々は喘いだ。
「うぁぁ……っ」
女を知らない斬郎汰も、己の一物が飲み込まれていく感覚に、知らずと喘ぎの声を漏らしていた。
受け入れる準備の整っていた子々の膣は、凄く滑り良く。十三という歳の割には比較的大きな斬郎汰の一物は、引っ掛かる事もなくすんなり子々の奥へと入って来た。
亀頭を呑み、竿を呑んでいき、腰を落としきり根元まで全て呑み込んであげると、幼い一物は膣の中でビクビクと痙攣を繰り返し自身を主張する。
子々の秘所という、自分が入るべき場所に入れた事を喜び、歓喜の声を上げているように一物は己が全体で彼女を感じ取っていた。
「あっ、あっはぁ……っ。はあ、ぁ……ぁぁぁ、あっ……ウ、フフ、坊や……どう? 気持ちが、っっ、良い……でしょう?」
「う……っく……ッ」
温かくぬめった子々の膣肉は、大切な物を包み込むように一物を迎え入れ、程好い感じに締め付けている。
ぬるっとした愛液とざらざらの襞が一物に絡みつき、全身を痺れるような快感が貫く。
未知の気持ち良さと心地良さに触れている彼は言葉も出ない。
そこは気持ち良いの一言で語れるような場所ではないのだ。
「ッ……ッあぐ……」
「はっうう……、私の中、はァっ、はあ、ァ……、お気に……召しまして?」
彼女は答えを求めるが答えはなくとも分かる。言葉も出ないほど気持ちが良いという事だろう。
斬郎汰の反応に満足した子々は落としきった腰を少しずつ上げる。
ぬろぉ~っ ととろみを帯びた液が糸を引きながら咥え込まれていた一物が顔を覗かせたが、物が秘所より抜けるギリギリまで上げたところで彼女が腰を再び下ろすと、またずぶずぶと食べられているように、子々の秘所の口の中へと斬郎汰の一物は入っていく。
それを数回繰り返して斬郎汰の反応を確かめた後、子々は本格的に上下運動を始めた。
斬郎汰がまだ十三という幼い歳である上に、これが初めての性交という事もあって、子々も長くは持たないだろう事は分かっていた。
しかし子々は斬郎汰と時間を掛けて交わりたいと思っている。
それを反映するかのような、急がず、焦らず、ゆっくりとした交わりは続く。
「あッ、ああっ……、は、ああぁぁ、ぼうやぁ」
「うう、ああっっ、ね、子々っっ」
ぐちゅ じゅぷ 一物が膣壁と擦れ、淫らな音が聞こえる。
溜まった水が掻き出されるような、そんな音だ。
結合部ではぬめった体液が溢れて滑りを良くし、身体も、脳も、ただ快感を伝え、二人の気分を高めさせていく。
次第に息が荒くなり汗も浮んで熱でも有るかのように身体の芯から熱くなってきた。
「あァ……っ、あふぅ……っ……はァっ……いい……っ、坊や、坊や……いいですわぁ……。わた、くしぃ……、こんなに気持ち良いのは……、初めてぇ」
身体の相性が良いからというのも有るかも知れないが、それだけでは説明できない気持ち良さに、子々は驚きを隠せないで居た。
(な、なんて気持ちが宜しいのかしら……。この私(わたくし)が、翻弄されるなんて……)
虐めてやろうという考えを改め、可愛がってあげたのは正解だったようだ。
自分の中にある亀頭の先端が子宮口を小突いている。
彼がこのままココで達すれば、ばらまかれた騒水と子種は自身の胎へと入っていくだろう。
男は女の中に出す時が一番気持ち良い瞬間らしい。
(ここまで私を良い気持ちにさせたのだから、御褒美に中で出させてあげてもいいわね)
彼女は、近衛十二支になる以前は時に遊郭へと忍んだりと忍びとしての仕事をしていた為、性技には精通していたが、一度たりとも胎の中に出させた事はない。
それでも彼女は“坊やになら出させてあげてもいい”と考えたのだ。素直に“出させてあげたい”“出してほしい”と望んだのだ。
「くっ、うぁ、お、オレも、……ねっ、子々……っ、子々……ッ!」
声を震わせ彼女の名を呼ぶ斬郎汰。
下腹部。股間の一物の奥から、何かが込み上げてきて爆発しそうになっている。
知識も経験も無い彼だが、これが爆発すれば終わってしまう事は何となく分かった。
「子々っ、なんか、何かッ出そうだッ……ッ」
「坊やっ、わたくしの……っ、わたくしの中に出しても……ッ、よろしくてよ……ッ!」
子々は限界がきた斬郎汰に出したければ出していいとだけ伝え、出させることを促し、自身もまた絶頂へと上り詰めていく。
そして彼女が腰を下ろしきった瞬間……。 ビュクッ!
「うぁぁぁ……ッ!!」
ビュクビュク……、限界を迎えた斬郎汰の一物の先端から、白く熱い白濁液が飛び出した。
「あはあぁぁッッ! ぼうやぁぁぁぁ──―!!」
子々は子宮に飛び込んできた熱い精を感じながら、絶頂の声を上げて、背を仰け反らせる。
彼女の膣壁が、解き放たれた騒水を子宮に届けようと蠕動し、斬郎汰の一物から最後の一滴まで搾り取っていった。
◇◆◇
「んん……っ」
射精が終わると同時に斬郎汰の一物を自身の秘所から抜いていく子々。
彼女の股間の割れ目からは、白い液体が糸を引き、熱い交わりであった証として静かに滴り落ちている。
ふと斬郎汰に目を向けると、彼は性交の疲れか。将又“傀儡の術”の負担からなのか。目を閉じ気を失っていた。
「フフフ、良かったわよ坊や」
そう良かった……。子々は初めて心の底から気持ち良くなれた交わりにとても満足していた。
今まで一度足りとも良かったなどと思えなかった彼女は、この少年とならばこれからも関係を続けたいとさえ思う。
しかしながら、一つだけ残念に思う事がある。
それは……この少年が自分の主君である疼夜の敵だということ。
子々が調べた限りでは斬郎汰は間違いなく疼夜に楯突く人間なのだ。
「疼夜様の敵である以上……、残念なことですけれども、このまま何もしないという訳にはいかなくってよ」
如何に気に入ったとは言えど、それとこれとは別。
本来ならばあの世へと行って貰うところなのだが──
「坊やは一生涯、この子々のお人形として側に置いてあげますわ」
彼女は気に入った可愛い坊や──斬郎汰を殺すのは勿体ないと思い、“傀儡の術”の倍掛けによって、決して逆らったり出来ないようにしてから、自分の傍らに置いておく事に決めた。
定めた以上、行う事は一つ。
と、術を掛ける為に斬郎汰を起こそうとする子々。
「ウフフフフ。目を覚まして直ぐ私のお人形になる運命だと知ったら、坊やはどんな顔を見せてくださるのかしらね」
術を掛ける前に斬郎汰がどんな顔を見せてくれるのか気になった彼女は、彼に自分がどうなるのかを教えようと考え、妖しく微笑む。否、邪悪に微笑んだ。
「起きなさい坊や」
しかし、声を掛けてみる物のまだ起きない。それほどの疲れであったのだろうか。
それほどまでの快楽であったのだろうか。前者であれば子供らしい、後者であれば嬉しくはある。
その辺りも確かめようかと、彼女はあらためて彼の身体を揺さぶろうとしたが。
「…………坊……や……? あ、あら?」
彼は自分から目を覚ました。
「え? え……?」
突然目を覚まし起き上がった彼、斬郎汰。その様子を見る子々は正直内心の動揺を隠せなかった。
目を覚ました事……それは良い。起こす手間が省けたのだから。
だが一つだけおかしい事がある。彼が“身体を起こしている”のだ。
“傀儡の術”によって身動き一つ出来ない筈だと言うのに。
「ど、どういうこと? 何故動けるの?」
「……」
そして彼女は見た。斬郎汰の身体から強大な気が溢れ出し、その気が鬼神の形になるのを。
◇◆◇
斬郎汰が起きたのは、子々が言った“疼夜”の名前に、彼の身体が反応したからである。鬼神が現れる程の気が放出されているのも同じ理由……。
とは言う物の、斬郎汰自身が寝ている状態での事だったので、彼に疼夜の名が直接聞こえた訳ではなく、子々が疼夜の名を口にした事さえも彼には分かっていない。
「こ、これが、血袴の斬郎汰の鬼神……ッ!」
一方の子々はといえば、先程まで呼んでいた“坊や”ではなく、忌諱され付けられた通り名──血袴の斬郎汰と叫んでしまう。
今目の前に居る鬼神の気を纏う彼は、とても“坊や”と同じ人間には見えない。姿形が同じだけの別人のようだ。
子々がそう判断するのも分かろう物。事実として斬郎汰の少年の部分が今はもうその欠片さえ見当たらないのだから、万人が彼女と同じく“別人”として見てしまう事だろう。
「……」
感情のない瞳を子々に向ける斬郎汰。
「ひ──っ!!?」
その目を見た……その目に、その瞳に射竦められた子々は、小さく悲鳴を上げて尻餅を着いた。
今の彼女の体勢を第三者が見たら、そういう行為に誘っていると勘違いする者も居るだろう。
目の前の少年もそんな彼女に反応を示す。
股を開いて尻餅を着き、自分を誘っているかのような彼女を見た斬郎汰が、……小さく呟いた。
「オレは……オレは子々と交わる」
「……へ?」
鬼神を背後にしての堂々たる佇まいでの宣言に、子々は一瞬呆ける。
それはそうだろう。恐ろしい気を放たれながらの命の危機を感じていたところで、性交をする宣言だったのだ。誰でも呆け、気も抜け得よう。
子々には全く分からなかった事なのだが、斬郎汰に掛けられていた彼女が施した“傀儡の術”は、鬼神の形をした闘気の放出と共に破れていたのだ。
鬼神の強大なる圧力によって、術その物が消し飛んでいたのである。
しかし、術の掛かっていた時点での命令はまだ生きていたのだ。
それは、彼女が斬郎汰と交わる前に強く告げていた一言。
『八神斬郎汰はこの私──子々と交わるの』
この言葉を命令として捉えていたのである。
斬郎汰は命令を遂行せんが為、尻餅を着いたままで居る子々の目の前に腰を下ろすと、彼女の腰の帯──その結び目に手を掛け、帯を解く。
しゅるる、しゅる……ぱさっ……。
衣擦れの音、解かれ地面へと落ちる帯。
「ぼ、ぼう……や……?」
子々は斬郎汰の突飛な行動に対して、斬郎汰への呼び方がまた“坊や”に戻っていた。
無理もない。恐ろしい気を放ったかと思えば行動がこれなのだから。
帯を解かれた事で子々の着物がはだける。男を虜にするだろうその様相にも、特に大きな反応は示さずに、だが、斬郎汰は構わず彼女の着物を脱がせていく。
「子々」
「あ……」
強大な気を放ちつつも、行うべき事を行う為だけに動く斬郎汰が、彼自身の手によりはだけさせられた子々の装束を左右に広げる。
と、柔らかく触り心地の良さそうな彼女の大きな胸が、外気の下へとさらけ出させられた。
胸の膨らみよりも少し上には華のような形の墨が彫られている。
桜色の乳首と、同じ色の乳輪、そして透きとおるような白い肌。
子々の美しい肢体は最早完成された美の形。
しかし、十と三つの斬郎汰には細かい事はまだよく分からない。
いや、綺麗だという事が分かっていればそれで十分だろうか?
斬郎汰は彼女の腕から服の袖を抜き、装束を脱がせ、暗器の仕込まれた手袋も脱がせながら、最後に靴までも脱がせてしまい、彼女を生まれたままの姿に……全裸にさせた。
彼女の衣装で残されている物と言えば、最早額の鉢巻きしかない。
斬郎汰に着物を脱がされ裸にされた子々は、彼に脚を開かされ、脚の間に身体を割り込まされた。
「あ……ぅ……」
「子々、子々と交わる」
限界まで開かされた子々の股間の真ん中にある割れ目が“ぱっくり”と口を開き、先程交わった時に放たれていた、斬郎汰の精液と子々の愛液が混ざり合った液体が、彼女の膣口よりとろり……、と溢れ出てくる。
液体を垂れ流す割れ目を見て、斬郎汰の萎んでいた一物はもう一度子々の膣に入ろうと硬度を取り戻し大きく膨らむ。
「お、大きっ……。そんな大きな、物……!」
一物は入れられる時を待つように血管を浮き立たせて反り返り、更に大きく大きく、膨張しながら硬くなっていった。
そうして、それを早く子々の割れ目に挿れようとする彼に、折り曲げ立てられていた彼女の膝は、下から抱えられるようにして彼の手で持ち上げられた。
「そ、んなのを、挿れられたら……っ」
鬼神の気に充てられて抜けてしまった腰には力が入らず。
言葉を発してもただ子々と交わる事のみに終始する斬郎汰によって、子々は為されるがまま。
斬郎汰は子々の股間に己が股間を近付け、口を開いて待っている膣に一物をぴとっ、とくっつけた。
くぱぁっ──と開かれた膣口が亀頭に吸い付く。
「ぼ、坊や」
膣口に宛がわれた一物を感じながら、か細い声で斬郎汰を呼ぶ子々。
そこに、つい先程まで妖しく微笑みながら、斬郎汰を可愛がっていた彼女の姿は無く。
ただ瞳を潤ませ戸惑うその様子は、さながら狼に捕らえられた哀れな子兎。
「いくぞ……子々……」
『坊や』と自分を呼ぶ声に応じるように、斬郎汰も彼女の名を呼ぶと腰を前に出し、一物を割れ目の中へと潜り込ませ。
くちゅ……
「あッ!」
子々の膣を一番奥まで一息に貫き通した。
秘部を捲り上がらせんばかりの強引さ。
膨張しきった男根はほとの内膜を容赦なく引き裂く。
「ひぎぃぃぃッッ!!」
ぶちぶちと肉を引き千切る痛みが子々を襲う。
「い゛ッッ!」
無理とに裂かれた襞は、先頃までゆとりを持ち迎え入れていた一物と同じ物とは思えない巨肉の塊に犯されながら、それでもその肉に膜を張り付かせて男を迎える女の体勢を作り上げる。それがまた痛みを誘発させ子々を狂瀾させるのだ。
鬼神の闘気を纏った斬郎汰は飛躍的に力が増している。力だけではなく、一物その物それもまた大きく硬い猛々しさを誇る物となっていた。
「子々と、交わる……」
深く突き込み押し上げる。
「あ゛あ゛ッッ」
小さな体躯に見合わない大きな鬼神を纏わせて、その巨化した男根で幼い獅子は美しい獲物を味わうのだ。
「子々と交わるんだ」
「いう゛う゛ッッ!?」
凄まじい突き込みの衝撃を受けた子々は、悲鳴を上げて背中を浮かせた。そう、あまりもの大きさに擦り削り上げられる襞の感触に。
身体の奥の奥までを叩き付ける事で発せられるその鈍痛に。
突き破る痛みと突き抜ける快感に、激痛と気持ち良さに。彼女は目をカッと見開き口も大きく開け、小刻みに身体を震わせていた。
「あ゛……ッ、あ゛……ッ……ッッ」
先の性交で子々の膣内に溜まっていた彼女と斬郎汰の混ざり合わされていたその体液が、潤滑液となり滑りを良くしていたのと、既に一度交わっていた事で中がしっかりとほぐれていた為これでも幾分かは緩和されているのだろう。そうではあったが、一度目にこの衝撃を受けていたら、彼女は気を失っていたかも知れない。
そんな彼女の状態を気にする素振りもなく、斬郎汰は一物全体を子々の膣内に埋没させたまま動きを止め、抱えていた膝を離すと、上半身を彼女の身体の上に倒して彼女の腰に手を廻し、ゆっくりと一物を抜いていき……再度力強く突き挿れた。
「アア゛ァッ―ッ!!」
再び訪れた衝撃に大きな声で悲鳴を上げる子々。
彼女の悲鳴としか言えない喘ぎを肴とするかのように、ずぶッ! じゅぼッ! ぐじゅ! 、大きく響く水音に酔いしれるかのように、斬郎汰は今度は止まることなく腰を打ち込み始めた。
「あぐッ! はァッ! ひぐぅッ! あ゛ッ……ッ! い゛あ゛あ゛ッッ!!」
少年は、ただ本能の命じるままに、強く激しく抉り込む。大人のそれよりも遙かに太く逞しいだろう一物で、襞をすりあげ、子宮口へと打ち込む。
気遣いの欠片もない斬郎汰の突き込みに、よがり狂う子々。
身体の内を抉り込むような動きで出し入れされている雄々しき肉。絡みつく彼女の肉襞が強引な抽挿に引っ張られ、強く擦られる。
この、肉と肉が擦れ合う摩擦に、彼女は膣肉が削り取られていくような感じさえ覚えていた。
「は、激しッ……ッ……ッッ……! こ……ッ、こんなッ……! こんなァァァッ……ッッ……んあ゛ッ……あ゛ああ゛ッッ……!!」
唯々“命令”を実行し続ける斬郎汰は、耳障りの良い子々の喘ぎを聴きながら、床に寝ている彼女を抱き起こそうと、彼女の腰に廻した手に力を入れた。
「はァッ……ッ! ぼ、ぼうや……ッ……」
抱き起こされた子々も斬郎汰の背に手を廻し、彼に自身の身体の自由を委ねる。
激しく苦しい痛みと、思考が焼き切れてしまいそうな程の快楽。
異なる二つの強い衝撃を受け続けている子々だが、辛くとも、与えられる快感の方がより強い事も感じていた。
鬼神を纏う獣は本能でこの美しい獲物がどうすればより美味しくなるのかを悟り、獲物の声を、獲物の味を堪能しながらも、雄としても雌を求めている。
この美しい雌を雄として求める事は寧ろ当たり前。
鬼を受け止める雌、鬼神を受け止めている子々。
皮肉な事に『斬郎汰は子々と交わる』の命令が、形はどうあれ子々に鬼神を受け止めさせる事となっていた。
動物的本能は、雌を、女を求め、子を成したい情動を沸き立たせるのだ。
子々と子を成そうとする斬郎汰の本能が導き出す最適な交わりが、子々を気持ち良くさせていく。
混じり合う苦痛と快感が、そうして快感へと天秤を傾けたのだ。
だからこそ子々は身体を委ねて自分の方からも彼を求めた。
ぐじゅッ ずちゅッ ぐじゅッ、斬郎汰と子々のしっかと繋がる股間の結合する場所からは、交わりの証である淫靡な音が変わらず響いている。
「あ゛ッ、ひぎッ、かはッ……ッ!」
更に早く、そして強くなった突き込みに子々の身体が跳ね、後頭部で一つ括りにされた子々の長い髪が右へ左へ大きく揺れる。
斬郎汰の小さな手では掴みきれない彼女の熟れた大きな胸も、ゆっさゆっさと上下に揺さぶられ、交わりの激しさを物語っているかのようだ。
ぎしぎしと音を立てる床に、結合部から流れ出る混ざり合った体液と、彼女のきめ細やかな柔肌に浮き出た汗が飛び散る。
頭も身体も熱も持ち、頬を真っ赤に染めて涎を垂れ流し、辛くとも心地良く、気持ちの良いひとときに子々の思考は蕩けきっていた。
斬郎汰と子々、二人の身体の相性があまりにも好すぎる為、一度快感を覚え始めれば、どのような交わり方でも気持ち良くなってしまうのだ。
子々は勿論のこと、本来の意識が定かではない斬郎汰も。
「子々……そろそろ……いくぞ」
水気とぬめりを以て擦れ合う少年の一物と、女の膣襞は、ただ当然の如く導かれるままに最上の喜びの瞬間へと二人を押し上げていく。
迫り来る絶頂を感じた斬郎汰は子々の深部へ力強く突き入れる。
ずぶぅぅッ──膣道を貫き行く剛直が、締め付ける柔肉を掻き分けながら擦りあげ、行き着く狭まりを押し開く。
「あ゛ァァッ!」
剛直の頭は子々の最奥まで届いた。彼の剛直の形そのままに、彼女の最奥部も同様の形に押し広げられている。
が、それでもまだだと言わんばかりに、斬郎汰は子々の奥へ奥へ、一寸でも深く入れようと腰を押し上げる。
斬郎汰の射精を子宮に受けたい──苦痛と快楽の果てにそう思う子々もまた、彼と同じように、少年の小さな体躯に見合う細腰へと、自らの腰を押し付けた。
「子々……」
「ひぎッ! アアぅ……ッ! ぼう……や……ッッ!」
二人の身体が、僅かな隙間も見出せないくらいに、深く深く繋がったその時……ドクンッッッ!! 一つの大きな鼓動さながらにして斬郎汰の剛直が、子々の最奥にて爆ぜた。
「あはァァッ──!?」
止めていた堰を切ったかのように、信じられないほどの大量の精が、子々の子宮へと、とくとくと注ぎ込まれる。
その量は先とは比べ物にならず、瞬く間に彼女の子宮内部を満たしていく。
「坊やァッ! ぼうやァァァァァ──―ッッ……ァァァ……ッッ!!」
熱い精を子宮に受ける子々は、斬郎汰に遅れて絶頂に達し、身体を大きく反り返らせてビクンビクンッ、と震えた。
沸き立つ感情は善いようにされてしまった事への反感? 否、断じて否。
彼女の心を満たすのは至上の幸福感であった。痛みと快楽の果てに迎えたこの絶頂への、不可思議なる幸せ。
それに感じ入り、打ち震えながら、子々は一人、背を仰け反らせて叫んでいた。
「あああああ────ッッッ」
一つ括りにされている子々の長い髪が弧を描いて宙を舞い、浮かんだ汗が飛び散った……。
しかしその歓喜の時にも終わりは訪れる。何事にもある最後。それが静かに訪れたとき、子々の身体からは力が抜けてしまい、彼女は少年の腕の中で、穏やかなる眠気に襲われた。
その襲い来る眠気に、子々はこんなにも激しく交わったのだから疲れて当然だと思い、原因を作った斬郎汰に目をやる。
「……」
あれ程の激しい交わりを行って見せていた子々という紛う事なき強者を、精を以て翻弄せしめた少年は、ただ静かにその瞳を閉じていた。
今まで見えていた鬼神は影も形も残って居らず、彼もまた一度目と同じように眠りに就いてしまったのだ。
「ぼう、や」
まだ秘所へと一物を挿れられたままなのだが、動くと起こしてしまいそうな気が彼女にはした。
下手に起こしてまた今のような突き込みをされたら流石に体力的に保たない。
考えた末に彼女は、斬郎汰と抱き締め合う形のまま、床に仰向けとなり、彼を身体の上に乗せたまま自らも目を閉じると、深い微睡みの中へと沈んで行った……。
◇◆◇
「……ん……んんっ……。……わた、くし」
夜明け近くになり、深い眠りに就いていた子々は目を覚ました。
「んん……」
目覚めたばかりのぼーっとする頭。ふと、昨夜の事を思い返す。
「ああ、そうですわ……わたくし……、私、坊やと交わって……。それで疲れて……眠ってしまったのでしたわね」
手早く記憶の整理を終えた子々、彼女は未だ全裸で居る自分の身体の上で眠っていた、同じく裸そのものの斬郎汰を見る。
よく、眠っている。鬼神の気の片鱗、その残滓も見せず。
昨夜の荒れ狂う性交の余韻すらも、繋がったままで居る身体の奥で感じる彼の一物の温もり以外には感じることもない、安らかな眠り。
「ウフフ……。よく寝ているわね」
すぅー……、すぅー……、と寝息を立てている斬郎汰を見て微笑みながら、子々は彼の頭に手を置いて優しく撫でた。
「かわいい寝顔だこと」
子々の乳房を枕にして気持ち良さそうに寝ている斬郎汰の顔には、穏やかな笑みが浮かんでいる。
「一体どんな夢を見ているのかしら?」
斬郎汰の寝顔を見ながら、彼の頭を撫で続けていると。
「……子々」
「……!」
「ずっと……いっしょに……」
「……」
「オレと……いっしょに……」
「……坊や」
寝言で彼女の名を呟き、ずっと一緒に居て欲しいと言ったのだ。夢を見ながら……、そう、彼の知り合いであろう人々を差し置いて、誰あろう子々だけの夢を見ながら、斬郎汰は呟いていたのだ。
初めての交わりの所為もあったろう、初めて女を知った事もそこにはあっただろう。しかし、親しき人々。思い出深き人々よりも、この瞬間の斬郎汰は確かに子々だけを思っていた。
「坊や……。あなた、私の夢を見ているの?」
尋ねる子々。無論眠っている、夢の中に居る少年がその問いに答える事はない。
問いに応じる事は、言葉に表す事はなかったがしかし。
幾十幾百の言葉よりも、幼い少年の小さな囁きこそが雄弁に物語っていた。
子々の夢を見ている。
私の夢を見ている。
この幼き少年は子々と共に居る夢を見て、夢の中でさえ子々を求めているのだ。
「そんなに、そんなにも私をお求めになるの……? 敵同士、ましてや坊やの事を永遠の傀儡としようとした私を? 坊やは私を(わたくし)を、この子々をそんなにも」
そして──
「あ……っ」
そして眠ったままの斬郎汰の枕にされていた子々の胸の頂きが、寝返りでも打つようにして不意に彼の口に含まれる。
意識のない今だ、意図しての物ではない。
だがそれでも少年はそのまま、ちゅうちゅうと音を立てて子々の乳を吸っていた。
「あ……あ……、ん──」
当然母乳が出る訳ではない物の、しかし眠る斬郎汰は子々のお乳を吸い続ける。
母を求める幼子のように、契りを交わした女子(おなご)を求める殿方のように。
いや、もう既に契りは交わされていた。
子々自らが求め、そして時を置かずして激しく求められ。
交わり深く、熱き騒水を胎の奥深くへと注がれた。
胎を満たしたそのままに秘部へと収まる一物は、深奥の口を塞ぎて、今この刻もなお子々と斬郎汰を一つに繋げている。
一緒に居てという少年の願いを叶えるかの如く。
「坊や──……」
引き剥がす訳にもいかず、そのつもりもない子々は、両手で彼の身体を抱き締めると、その小さな背中を撫でながら呟いた。
「大丈夫よ……私が、この子々が……、ずっと側に居てさしあげますわ……。側に、坊やの傍らに──……この子々が坊やを一人にはしませんわ」
そう呟いて自然に浮かんだ子々の微笑みは、妖艶な美しさを持つ彼女の雰囲気とは打って変わった、慈愛溢れる優しい微笑みであった。
◇◆◇
それから一年と少しの時が過ぎる──。
とある街道にて、馬が引く荷台に乗せてもらえないかと交渉をする少年と女が居た。
「おじさま、山向こうの町に行くのでしたら私達を乗せて行って下さらない? お邪魔で無ければ」
色気たっぷりの女が馬の持ち主と思われる男に誘惑するように話し掛ける。
掌で男を転がすかのように、まるで男を煽り立てているかのように。
無論、あくまでもそれはそう感じさせるだけの話であって、女の声が何か特別な色を帯びていることなどあり得るはずもない。
ただ、誰がしかを誘惑するつもりなど更々無くとも、彼女の妖艶な美しさが嫌でもそう感じさせてしまうのだ。
「か、かまわねえだよ、後ろに乗ってくれたら良いべ」
(え、えれェ、べっぴんさんだべ……っ)
下ろすと膝までは届くだろう、頭の上で一つ結びにされた風に靡く茶色がかった赤といった艶やかな長い髪。
鳶色の鋭い瞳に、蠱惑的な厚く紅い唇。額には鉢巻を結び、大きく太腿が覘かされた膝丈の短い忍び装束のような出で立ち。
その着物の胸元を押し上げている大きな膨らみは、それだけで世の男を虜にするであろう事疑いなし。
整いすぎた顔立ちと色気の塊のような肉体という“絶世の”が付く程の美女に頼まれた男は、相手の正体や素性に関係無く簡単に、快く承諾する。
この様な美女に物事を頼まれては断れる男はそうは居ない。その典型例であった。
「ありがとう。助かりましたわ」
「お、おめーさんら、名は?」
あっさりと乗せることを決めた馬の持ち主の男は、女と少年に名前を訊く。
「私は子々、八神子々。それでこの子は──」
「八神斬郎汰!」
女、子々と、少年斬郎汰は、男に名を告げた。
「紹介を遮るだなんて、はしたなくってよ」
「いいだろー別にぃ」
「あら、そんな事はありませんわ。妻としての品位も問われてしまいますもの」
「よ、嫁ェッ!? おめーさんらまさか夫婦(めおと)だべかァッ!?? 同じ姓だからてっきり姉弟だとばかり──」
「ああそうだよ。オレは子供だけど子々とは祝言挙げてるから夫婦(めおと)だよ。つーかおっちゃん失礼だろ。同じ姓だからって姉弟とは限らねーぞ?」
「はああ~~、おったまげただなあ-。ああ、それと悪ぃ坊主」
「子々のお腹にはオレたちのやや子だっているんだからなっ!」
「ややっ!? こらおったまげただぁ、子供が子供作っちまうなんてえれ~世の中だなぁ」
「ウフフフ。ええ、私(わたくし)のお腹には坊やのややがおりますのよ? 悪阻も酷いときは酷くて辛い物ですわ」
一年と少し前のあの日。
始まりはそう、あの日あの時から。
“一緒に居て”
あの時、彼女を求めてそう言った斬郎汰に、子々は図らずも情が移ってしまった。寝言ではある物の確かな本音がそこに顔を覗かせていたが故に。
非情の忍びもおなごはおなご、幼い少年の曇り無き親愛は彼女の母性を揺り動かせた。
放っておけない。
子々──と、自身を求め来るこの子を、女として放っておくことなど出来る物か。
激しく求められた末の迷い。
幾度もの騒水の斜行をこの身に受け、胎の奥へと受け入れさせられた。
幾度も、幾度も、終わりなど無い様に、子々という女の胎は斬郎汰という男の騒水を受け入れ、受け止めたのだ。
女として、一人の女として子々はそれ程までに求められてしまった。生まれて初めての事。
此処まで、これ程にまで子々唯一人という女を求め来る男──八神斬郎汰。そんな男に出会った事も無ければ、そんな少年を、子々は放っておけなかった。
一人の女として子々は八神斬郎汰という男を放っておけないのだ。
放っておける物か。この世でただ一人、子々という女だけを素直に愚直に求め来る男を。
生まれながらに備わる本能が告げる。
八神斬郎汰のやや子を産まなければならない。八神斬郎汰と夫婦(めおと)となりて、八神斬郎汰の子を産む──それが、それが子々の運命なのだと。誰でも無い自分自身がそれをただ一つの道であり、自身のこれよりの在り方であると受け取ったのだ。
複雑に絡み合う女の情は、いずれか一つを欠いても成立を見なかったであろう。
求めただけでは成りはしない、求められただけでも成りはしない、親愛を向けられても尚成されない。
求め、求められ、その上で抱かれた親愛があって……そうして子々は斬郎汰に心を掴まれた。
普段は子供らしい天真爛漫さを隠さない少年は、あの日目を覚ました時より『一緒に居てほしい』と、時に無言で時に言葉で、子々に語り掛けてきた。
『私の中に誰かを重ねている』
少し、そんな気もした事もある。事実、旅の途上、斬郎汰の鬼神が暴走しそうになった時など、傍に寄り添い彼を止める彼女は何度も少年の目に子々を通した誰かを見たのだ。
時を重ねる中やがてその誰かの姿も見えなくなったのだが、程なくしてその誰かがかつて彼が姉のように慕っていた“深雪”という少女の事であるのだと知り得た。
凄惨で悲しい少年の過去。語られたのは一つの悲劇だった。
それは動乱迫りし世に数ある話の一つかも知れない。
乱れ荒廃する世のどこにでも落ちている小さな話でしかないのだろう。
たった一人の子供に囚われ大道を見誤るなどと、子々の同志が今の彼女を知れば侮蔑すら浮かべ、所詮は情にほだされる様な女かと吐き捨てられることだろう。
彼女自身まさかとさえも思わないような、想像だにしなかった今なのだから。
しかし子々にとってかけがえのない少年の心の傷となった悲劇。
唯一という者の代わりになどなれる筈も無いと知りながら、図らずも思ってしまった。
興味本位に求めた末に逆に激しく求められる事となり、親愛の情まで向けられて。
自身の心にまで愛情を芽生えさせてしまうに至った大切な少年、八神斬郎汰を癒やしたいと。
くノ一、忍びに人への情けなど不要。時に家族ですらその手に掛けなくてはならない非情の理に身を置く者として、それは余計な感情。
以前の彼女ならばそう斬って捨てた些末時であっただろう事は、だが今となっては完全なる逆位置にあった。八神斬郎汰という光に照らされて。
情の移った幼い少年、自身の在り方を一夜にして変えられてしまわれた。
激しく求められたあの日より欠かすこと無く行われている伽は、彼の過去を伝えられて以降深まり続けている。
心で、体で、男と女、交わり癒やす閨の睦言。
交わりの中で癒やし癒やされ深まる話もある。
一つ一つ語られていく過去と、熱く強くぶつけられる想い。
子々は斬郎汰の全てを受け止めて癒やしていったのだ。
今や斬郎汰の鬼神の暴走を止められるのは子々ただ一人。
子々以外、斬郎汰の鬼神の暴走は止めることが出来ない。
子々という女性がそれほどまでに斬郎汰の心と深く一つになった証明でもあった。
『なあなあ子々、子供ってどうやって出来んの?』
『坊や……、まぐわう女人の中へ殿方の騒水が注がれていれば、いずれ授かる事になりますわ。……坊やが私になさっているように』
『いっ!?』
『あら、自覚なさっていなかったんですの? 坊や、いつも私とややを作ろうとしておりますのに。御存じでなかったようですけれど、まぐわいで女人の中に騒水を注ぐ事は子を作る行いでしてよ。坊やは日々この子々と子作りを行っておりますのよ?』
『い、いぃぃぃ?! そ、そんな、そんなのオレっ、し、知らなかったぁぁぁ……。子々の中に出すの気持ちいーし、それにまぐわいって中に出すもんなんだとばっか思ってたから……い、今更になっちゃうけど……、ご、ごめん。ごめんよ子々……!』
『くす……。仕方の無いことですわ……、坊やの年頃ならばね』
『ご、ごめん! ほんっとーにごめんっっ!』
『くすくす、よくってよそんなに謝らなくても。私(わたくし)も坊やのややを産むつもりですもの』
『いっ?! え、ええっ!? ね、子々……、オレのやや……、産んで、くれるの?』
『ええ、勿論ですわよ。坊やのややをこの子々以外の誰が産むと仰いますの?』
そんな話をしてからも伽の様子に変わりは見られず。
昼夜を問わず温もりを求めて心を重ね、共に快楽の果てへと至りながら自然と子を成そうとするが如く睦み合う。
愛に始まり愛で終わる。営みの中で子を授かる刻も早晩来たれり。
益々以て深まる伽は二人の絆を強め、想いを膨らませる。
それは尽きない蝋燭の様に。
濃く熱き過程を経て子々の唯一となっていった斬郎汰、冷酷な忍びの心に母性と恋慕を抱かせた少年。
しかしその少年の心にも唯一の風は吹き込んでいた。
姉として慕っていた過去から今尚も唯一である、姉としての家族としての唯一とは異とする唯一。
子々という“唯一の女の”甘い香りを伴った新しい風が。
一緒に居て、無意識下で求めたその願いに応えて貰えたその時から、もう新しい風は……。
やがて形と成り整っていく道程は、傍らに居てくれる女の存在と温もりの中、そして甘く酸い伽の中にありて。
大好きだった姉と同じ匂いを女の中に感じ見出し、また姉ではない“女”としての匂いも感じながら。
斬郎汰の心は自身にとっての唯一の女、“子々”という、かけがえのない存在を刻み込んでいったのだ。
今生に結び見た情愛、死は互いを分かつべからず永劫を以て添い遂げん。
斬郎汰の意思の下、鬼神を現出させながらとなる一昼夜のまぐわい。
深く、強く、激しい夫婦の契りは、果てども果てども終わりの無い騒水の奔流を作り。
流れを身に受けとめる子々に、今日今宵、己が身が斬郎汰に娶られたことを悟らせる。
この身は最早斬郎汰のもの。
何処にあろうと、那由多の時を刻もうとも子々は斬郎汰のものなのだ。
彼女は早期の内に近衛十二支を離脱、この神州を理想郷へとするべく集う八神疼夜の一派である組織を離反する選択をした。
斬郎汰と共に居ること、それ即ち疼夜の敵である人間の肩を持つことに他ならない。
覚悟の上だ。
後悔など無い。
あの日、子々は斬郎汰と交わった。
まぐわい、そしてまぐわられた。
深く、強く、激しく。
痛みに喘がされ、苦しみに悶え、そしてその上で残ったのは心地よい気持ちであった。
振り返れば、そのまぐわいこそが大きな分かれ道だったのだろう。
本来あったかも知れない別の運命が、斬郎汰と共に在るという運命に書き換えられた瞬間だったのだ。
思うがままにまぐわられて、気持ち良くさせられた。
年端もいかない子供に精の主導を握られ、求めに求められた。
流石に戸惑いはした。強さも勇気も男らしさも併せ持つとはいえ、相手は年端も行かぬ子供だ。
そんな子供に懸想をしてしまうなど、どうかしていると。
だが、その子供が紛れもなく“男”なのだと、交わりを通じて理解していった彼女は、程なく自らの想いを肯定するに至った。
これでいいのだ。
これでいいのだと。
斬郎汰の方もまた、彼は彼なりに何度も子々と交わって心の交流を図っていき。ずっと自分の側に居て、温かく包んみ込んでくれていた彼女へと、好意を抱くようになったのだ。
互いに想いを寄せ合う二人は共に交わりを通じて気持ちを伝え合い、言葉にするまでもなく深い愛情で結ばれ、一年と少しの時を共に過ごし、やがて二人だけの祝言を挙げ、正式に夫婦(めおと)となり、そして、現在へと至る。
やがて、子々のお腹には、子々と斬郎汰のややが宿る。昼夜を問わずまぐわい続けたのだ。それは当然の帰結で在った。
子々の悪阻で発覚したそれは嬉しき知らせに他ならない。
「嬉しいですわ私(わたくし)。坊やのややを産めるのですもの。坊やの、ややを……私(わたくし)が……」
落ち着きながらも瞳を潤ませる子々。
「ああっ、ああっ、子々っ、オレと子々のややが出来たんだなっ、オレもっ、オレも嬉しいよっっ!!」
身体でも言葉でも、いっぱいの嬉しさを表わせる斬郎汰。
そうして、子々と斬郎汰、子々のお腹に宿った子々と斬郎汰の子。幸せな旅路は続いていた。
◇
「斬郎汰!!! 覚悟!!!」
馬を引く男に名を告げ道々を振り返っていた直後、子々と過ごしてきたこの一年と少しの日々を振り返りながら油断していた斬郎汰は、突然現れた少女に斬り掛かられた。
「わっ!」
咄嗟に躱す斬郎汰に尚も斬り掛かる少女。少女の手には鎌が握られている。
彼に取ってはこれを躱し続けるくらい簡単な事だが、そこへ少女を止めようと割って入る者が居た。
“ドシュッ”
斬郎汰に斬り掛かる少女の身体は細い糸で雁字搦めにされ、身動きが取れなくなってしまう。
「ああッ! な、なにこれッ?!」
二人の間に割って入り、その糸を放ったのは無論子々だ。
子々の放った『血糸金』が、少女の身体を縛り上げ、その自由を奪ったのである。
「いきなり斬り掛かってくるなんて……。貴方何者?」
斬郎汰も子々も少女とは面識が無い、だから恨みを買われる覚えが無いのだ。
もしや疼夜の手の者かとも考え警戒しながら問う子々に、少女は敵意剥き出しにして答えた。
「私は江戸御家人、都築清久が娘“都築泉! ” この名に覚えがあるだろう血袴の斬郎汰ッ!! 父様母様の敵、覚悟しろッッ!! ってこんな糸で雁字搦めじゃ動けないじゃな──いっっ!!」
一気に捲し立てた少女こと都築泉だったが、斬郎汰と子々にはやはり聞き覚えがない。
(えッ? 子供──? と、大人の女の人キレ―な人……)
そして、その泉も、斬郎汰と名乗ったのが子供である事、連れ合いに大人の女性がいることが分かると、自分が人違いをしてしまった事に気づく。
彼女は助けを求めるかのように、自分を糸で縛っている女、子々に目を向けた。
目を向けられた子々も、状況から泉の勘違いである事に気づく。
泉の反応からして、疼夜配下の者という可能性も消えた。
よって自分に助けを求めている泉に、子々は手を差し伸べるように尋ねていた。
「ひょっとして、お嬢ちゃんの勘違いかしら?」
「そ、そうみたいです……」
◇
「だからーゴメンって謝ってんじゃない」
「冗談じゃないやい! 最初の一撃躱せてなかったら今頃血の海だぞーっ!!」
勿論あの程度の攻撃を躱せない彼ではないし、いざとなれば子々もいるが子々のお腹のややはまだ小さいとはいえ身重、無理はさせられない、が、納得いかない物は納得いかないのだ。
「斬郎汰なんて紛らわしい名前してんのが悪いのよ!」
怒る斬郎汰に泉はそう言い放つ。
「坊やもういいでしょ。泉ちゃんもこうして謝っていることだし大人気なくってよ」
大人気ないとはおかしな話。子供の斬郎汰に大人気ないも何もないのだから。が、このままでは何時まで経っても言い合いが終わらないと思った子々が仲裁に入る。
「怪我もなく無事なのだから、それで許してあげなさいな」
「ううー……。分かったよ……」
子々に言われて渋々と許した斬郎汰を見た泉に。
「へー、斬郎汰って子々さんには弱いのね」
と言われた斬郎汰の顔は真っ赤になった。
「う、うるせえやい!! 嫁さんに頭が上がらねーのは世の常だいっ!!」
子供故に子々に窘められることもそれなりにある斬郎汰が彼女に対して弱いのは必定。
そも子々は妻なのだ、妻に弱い旦那など世に星の数ほどいる。
毎回意見が食い違ったときは斬郎汰が子々に言いくるめられている。
そんな二人の関係を知らない泉も、何とはなしに気づいていた。二人の力関係に。
そして納得する。
「夫より弱い妻でいる私ではなくてよ」
「へっ?! 二人って夫婦なんですかっ!?」
「ええ。長い間恋仲ではあったのだけれど、つい先頃正式な夫婦(めおと)となりましたわ。いい加減はっきりさせておきたいとお互いに考えておりましたのよ……、私のお腹には斬郎汰の、坊やのややもおりますもの」
優しくお腹を触る子々にエーッ! と驚く泉。
「や、やや子、もう出来てるんですか?」
「夫婦生活と伽の回数もそれなりですもの。私(わたくし)もややを授かるというものですわ。最近は少しばかり悪阻が酷いのも、良い方へ返せばややが順調に育っている証とも言えますわね」
「はえ~っ、ざ、斬郎汰っ、あんた子々さんの事しっかり守らないと駄目だからねっ! 子々さんのお腹のやや子もよ!?」
「何言ってンだってんだよ! こちとらずっと守ってらいっ! それに子々だってすげー強いんだぞっっ!! オレが失敗したって自分の身を守れるくらいにはっ! そりゃもちろん第一義にはオレが子々を守るけどなっっ!!」
「そんな事言っててその万が一の時に子々さんに悪阻が起きたらどうするのよっ!?」
「だから子々の事は絶対にぜーったいにオレが守るんだよっ!!」
小柄で幼さを感じさせる子供な斬郎汰と、女の自分から見ても綺麗で、妖しい色気を持つ大人の女性子々が夫婦であることには驚きを隠せなかったが。
二人の関係が夫婦というのなら、妻・子々に対して夫・斬郎汰が頭が上がらなくて当然かも知れない。
子供と大人の差もあるだろうが、それ以上に夫と妻なら妻の方が強いのだ。
まさか子々のお腹に斬郎汰のやや子がすでにいるとか予想外だったけど、と泉は思うのだった。
「でも斬郎汰が子々さんに弱い理由。子々さんだけには頭が上がらない理由。分かりますね」
「何で夫婦だったらオレが子々より弱い理由になるってんだよ!」
「私の父様と母様と同じだもの」
「同じだけど同じにすんないっ! オレはそこまで子々に媚びへつらってねーぞ!!」
「そんな事言って、実際には子々さんに何も言えないんでしょ?」
こうして斬郎汰と子々は泉と出会い、父母の仇を追う泉も話の流れで二人の旅に加わる事となるのであった。
袖触れ合うのも他生の縁。彼女一人での仇討ちは返り討ちとなる可能性もなきにしもあらず。
子々が提案し、斬郎汰が賛成。泉も受け入れた故にの新たに始まる三人旅。
「フフ……坊やとの二人きりの旅も良かったけれど……、こうして賑やかなのも良いですわね。やや子の胎教にも良いでしょうし私は良いと思いますわ」
「子々さんのややが産まれそうになったら私が取り上げますっ!」
「泉ちゃんに私(わたくし)と坊やのややを取り上げて頂いたら、ある意味泉ちゃんは恩人ですわね。旅の最中ですもの。当然としてお医者様や産婆さんを頼れないことも多かろう事でしょうし」
「え?! そ、それほどでもないです」
「何言ってんだいっ! オレと同年代の泉がややを取り上げられるわけねーだろ」
「ふふん、女を舐めないで頂戴斬郎汰。やるときはやるのよ」
言い争う自分の小さな夫と、新たに旅の仲間になった少女を見ながら、楽しい旅になりそうだと子々は一人微笑んでいた。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
-
コードギアス
-
コードギアスR2
-
此花トゥルーリポート
-
FF4×FF6
-
カオシックルーン
-
学園黙示録
-
ルパン三世 ワルサーP38
-
幕末風来伝 斬郎汰
-
ニードレス
-
ヨルムンガンド
-
少女少年
-
北の告発
-
サラダデイズ
-
クレセントノイズ
-
ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
-
ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
-
遊戯王GX(十代×カミューラ)
-
魔装機神(マサキ×モニカ)
-
椎名君のリーズニングファイル
-
RAVE(ハル×絶望のジェロ)