BSの片隅で後編
平和とか平穏とか。今まで生きてきた14年と数ヶ月の人生において、あまり意識したことがなかった。
行政・司法・立法がしっかり構築されているシティとは違い、生まれた場所というのがそもそもにして平和と無縁の地であるが故に。
BS……ブラックスポット――。
第三次世界大戦時に多種多様な兵器が投下されて出来た巨大な汚染区域。日本各地に点在するこの地図上の空白地域は、長大な壁によりシティ……いや、日本という国その物から完全に隔離されていた。
そんな隔離された地であるBSとは、好きな時に寝て、好きなときに遊んで、好きな仕事をするという、外部より隔絶されているからこそ何者にも縛られることのない住人達が個々人の自由に生きることができる、まさに自然状態の世界だ。
但し、それは正の自由のみにはあらず。
暴動、略奪、殺人、強盗、ありとあらゆる負の自由すら誰もが行使可能であり、咎められることはない。
規律を重んじる法もなければ弱者を守る治安組織もない。ギルドや自警団がその代替組織と言えなくもないが、国法に照らし合わせられる類の組織は皆無。
BSとはそんな無法地帯であるが故に、力を持たない人間が生きて行く危険と隣り合わせの日々には“平和”の二文字を思い浮かべられる要素もまた皆無な世界であった。
それでもこの激動の数年を…、シティからやってきたBS全体にとっての侵略者と呼べるシメオン製薬との戦いを経験したからこそ僕は感じていた。
ニードレスという超人的な力を持つ超能力者でさえ毎日が安全とは言い難いこの大地にも、そう……。平和はあったんだと。
いいや、そんな危険と隣り合わせの毎日こそが、実は意識したことのない平和な状態その物だったのだと気付かされたんだ。
それに、シメオンによる秩序と平和なんて押し付けられなくても、自分の手で幸せを手に入れる事は出来る。
『貴女と一緒なら他には何も必要ない』
そう言えるただ一人の大切な人と過ごす毎日があれば、それこそが平和であり、そして幸せなのだ。
少なくとも、僕にとってはそれが平和だった。
「どうした?」
その共に生活する人の横顔を視ていた僕は不意に声を掛けられた。
「えっ? どうしたって、なにがですか?」
「いや、さっきからずっと私の事を見つめてくるものだから気になってね。私の顔に何か付いているのかな?」
「あ、ああ…、ええと……」
不意のことに言葉が出ず言い淀んでしまう僕は、変わらずその人を見つめたまま目を離せないでいた。
首をかしげるとさらり、揺れる、太股の裏側まで届くほど長い金色のポニーテール。
胸と股間だけを隠すという、およそ衣類としては最低限の役割だけを果たしているだろう黒色の細長い布のような衣服は、腹部より下が隠れてさえいれば裸の肢体に極太のサスペンダーだけを付けている様に見えなくもないボンテージ風のレオタードという、実に目の遣り場に困るものだ。
露出度の高いその衣服は胸下と腰回りだけを白いベルトで留められていて、服と同色のアームカバーに、同じく黒色で足の部位と大腿部だけが赤銅色のサイハイブーツと合わせデザインが統一されていた。たぶん服とアームカバーと靴・ベルトで一式の衣服になっているんだと思う。
そして、その大胆な衣服を着こなしているその人はというと、14歳の僕と一回り近く歳の離れた20代前半の大人の女の人だった。
彼女はアメジストやルビーを連想させる綺麗な赤紫色の瞳で僕を覗き返していた。
女の人の名はミウ。
空気の弾丸を飛ばしたり、これを応用して空を飛ぶことも出来たりするフラグメント(能力)を持つニードレスの女性で、そして僕の……僕の愛する奥さん。
この視界が捉えているのはあくまでも彼女の姿のみで、この間の嵐で酷くなった雨漏りの後が残した天井の染みも、少し開いたままになっている引き出しも、いまは目に入らなかった。
「なんか、幸せだなって思ったんです」
「幸せ?」
「はい。その……、こうして貴女と、ミウさんと一緒に居られる事が」
そんなありきたりで当たり前ながらも、僕が日々抱いている素直な気持ちを伝えると。
「……そ、そうか」
ミウさんの白い綺麗な頬が見る見る内に朱に染まっていった。
ふふ、ミウさんって僕と同じで凄く分かりやすい人なんだよね。
「ミウさん」
「な、なんだい」
「ひょっとしてボク今赤くないですか?」
「あ、ああ、その、真っ赤だよ」
ああ、、やっぱり僕とミウさんは似た者同士だなあ。
※
この年上の凛々しくて美人な僕のお嫁さん……ミウさんとの出逢いは、ブラックスポットへと進出してきたシメオンの拠点ビル落成式における混乱の真っ直中でのことだった。
シメオンのボスであるアダム・アークライトの恐ろしさを知らないグループの生き残りだった彼女が、仲間と共に無謀な襲撃を掛けようとする――そんな状況下。
その情報を得ていた僕が彼等の陣取る場所へと必死に掛け、ただ一人だけ押し止めることが出来た人。それがミウさんだったんだ。
所属していたグループは違えど、レジスタンスの一員である僕とミウさんの境遇は、とてもよく似ていた。
アークライトの力を知らない無知が、無謀な襲撃へと至る道筋を付けてしまった挙げ句、仲間を殺され、独りぼっちになって、神父様たちと共に再びの戦いへ身を投じる。
内通者の有無という相違点こそ在れ、それまでの過程はまるで同じ。
自分の身の上と、彼女が置かれた状況を重ね合わせてしまった僕は、パートナーという事もあったが、その後の戦いでは常にミウさんと離れないように行動を共にした。
だけど、それは、ただ似ている境遇にあったからというだけじゃない。
雰囲気とか、どことなくアルカ姉さんと似ているところがあって、傍から離れたくなかったんだ。
戦いの中で、知らぬ間に頭を過ぎるのは彼女のことばかり。
皆が巻き込まれるような大きな攻撃があれば彼女に目がいき。
戦えない僕のカバーをしたり、吹き飛ばされた先で受け止めて庇ってくれたりする彼女に、戦いの中にありながら胸の奥が熱くなる事もあった。
そんな中、最初の内はミウさんに姉さんを重ねていた僕は、姉さんではなくて、彼女自身を見るようになっていく。
性格も、生い立ちも、考え方も。当然姉さんとミウさんは異なる。
後に知る非情な一面も持っていた姉さんに対し、ミウさんにはそういった部分はない。性格や在り方の一部分を見ても、やっぱり姉さんとは違ったんだ。
小さい頃からずっと姉さんに守られてきた僕には、姉さんへの依存を求める心の弱さがある。
これは自分ではどうにもならないところで、その依存をミウさんへ向けていたことも、今にして思えばあったと思う。
でも傍に居て、姉さんとの“違い”を見出す度に、僕はそれまでにもましてミウさんという一人の女性を意識するようになっていった。
“依存”ではなく“意識”となったのは、きっとミウさんに姉さんを重ねなくなったことを意味しているのだろう。
勇敢で、優しくて、僕を気に掛けてくれるミウさん。彼女はいつも僕の事を第一に気にかけてくれていた。そこにパートナー以上の心の変化を見たのは、今にしてみれば、勘違いではなかったことをしる。
姉さんとは異なる一人の女性であるからこその、依存ではない意識。家族愛ではない“なにか”が芽生えていた。
意識すれば意識するほどに、ミウさんという女性が僕の心の深い場所へと刻まれていき、いつしか仲間としてだけじゃなくて、男として惹かれるようになっていたんだと知ったのは、アークライトを倒した後のことだった。
そして、平和が戻ったある雨の日。僕の小屋へと訪ねてきたミウさんとの語らいの中で、僕は子供と大人という超えられない壁に阻まれて、半ば諦めていたこのなにか――己が恋心。
この胸を焦がす感情の向う先に居る彼女の心の内を知った。
僕が彼女へ惹かれていたように、彼女もまた僕に惹かれていたのだということを。
『私はクルス君が好きだよ。仲間としてじゃなく……女としてね――月並みな言い方になるけれど、私ミウは、クルス君を愛してる』
切っ掛けは僕が彼女を止め、彼女が僕に止められたこと。
僕がミウさんを助ける形になったあのとき。
僕らを繋いだのはその瞬間だった。
出逢いと同時に、僕とミウさんは結ばれていたんだ。
『キミが身体を張って私を助けてくれたとき、私は既にキミを意識していた――』
僕へ一目惚れに近い感情を抱いたというミウさんはでも、本当のところ僕を好きになったことに対し、大きな理由は無かったという。
好きになる切っ掛けはあっても、ただそれだけで人生を共に過ごしたいと思えるような感情へと発展するほど、人の心という複雑なブラックボックスは、単純な構造をしてはいないのだ。
それは同じ感情を彼女に抱いた僕だからこそわかる。僕はミウさんを愛しているけど、そのことに本当の理由は無いのだと。
敢えて理由を付けるのならば、それは彼女が彼女だからこそ、僕は彼女が好きだということだ。
『BSにはまず居ない、優しすぎるほどに優しいキミの心に触れている内に……キミを思うと胸が高鳴ることに気が付いたんだ……。それが、恋心だというのもね――』
そう言うミウさんだったけど、ただ優しいだけの男ならば、それこそ星の数ほど居る。
“境遇が似ているから。どことなく姉さんを想起させられるから”
そう思い込む僕だったけど、姉さんを感じた女性はミウさん以外にも居た。
でも僕――クルス・シルトという男が、一人の男として愛した女性はミウさん唯一人で。
ミウさんが女として愛してくれたのはクルス・シルト唯一人。
“気が付けば好きになっていた”
難しく考えるよりも、単純で率直ながらも好きなものは好き。それでいいと思う。
誰かを好きになることに本当の答えなんてものはないから。
僕は仲間である以上に男としてミウさんが好きで、それ以上でも以下でもない。
端的に言ってミウさんを愛しているんだ。
僕は思うんだ。僕とミウさんとの出逢いは確かに偶然だったけど、でも、出逢った以上結ばれることは最早必然だった。
好きだという気持ちを互いに伝えて結婚したあの雨の日の出来事は、そうなるように定められていたからそうなったんだと。
ただ一つ、そこへ何か差し挟むべき異論や疑問があるのなら。それは……それはこの偶然の出逢いさえもが必然だったのではないか?
ミウさんと僕がこのBSで生まれたのは、出逢い結ばれる運命にあったからこそなんじゃないかということだ。
偶然にも同じ時代に生まれた。
偶然にも同じBSで生活をしていた。
偶然にもレジスタンス活動をしていた。
偶然にもミウさん達のグループがアークライトへの襲撃へと移る前に僕はあの場へと辿り着くことができた。
アークライトへの無謀な突撃を止めようと走り出した僕が偶然にも間に合い、無我夢中でしがみつき止められた人が偶然にもミウさんだった。
レジスタンス活動をしながら、結果的に自分一人だけが生き残れたという僕らの共通的な偶然。
偶然……。偶然。偶然。
重なり合った、重なりすぎた偶然は、僕らを出逢わせ、まるで予定調和のようにその後の関係を形作っていく。
僕がミウさんを愛し、ミウさんが僕を愛するという、必然的結果を。
だからこそ、生まれたときから決まっていたと考える方が自然な気がしていた。
ううん。これはもう気がしていたという曖昧な物ではなく、確信していると言っていい。
‟僕とミウさんは互いを愛し合うために生まれてきたんだ”
この時代の、この地に生まれ落ちて、出逢って、愛し、一つになるために。
今こうして夫婦として過ごしているのが、その何よりの証明だった。
※
「そうだな……。うん、確かに君の言うとおり私も幸せだ。クルスと一緒に居られるだけで何も要らないというほどにね。ううん、本当にクルスが居てくれれば、私は何もいらないよ」
「ミウさんもですか?」
「ん、おかしいかな? クルスが私だけを求めているのと同じ様に、私もクルスだけを求めるというのは」
「い、いいえ、おかしくないですっ! 嬉しいですよ僕……! ……だけど」
「だけど?」
「ミウさんは大人で、僕は、その……子供です。だから、子供の僕みたいに一緒に居られればってだけで、いいのかなって」
嬉しいけれど、少しだけ意外に思えた。所詮は14歳の子供でしかない僕なんかと違って、大人のミウさんまで僕が居るだけで何も要らないなんて言うとは思わなかったから。
この小屋にしても、雨漏りが酷いからもっといい家に移ろう、新居が欲しいと考えてたりするんじゃないのかと。
愛だけで満ち足りるのだろうかと思って。
「たまに聴くんです。ただ好きな感情のみだけでは夫婦として一緒に居られないと。時にそれは夫婦関係の破綻にまで行き着くことがあるとか嫌なことも耳にしました……」
シティのことはわからないが、制度としての結婚が形骸化している此処では別れる為のハードルはゼロだ。
切っ掛けなんてわからない。でも市場に行くと誰某がわかれたとか耳にすることがある。
この近くに住む人もそんな経験はあるという。これが初めての恋で、そのまま結婚となった僕にはよくわからないことだらけだ。
生涯愛する。この人しか居ない。だからこそ結婚するんじゃないのだろうか?
でも大人の視点で考えると話は変わってくる。子供でさえ成熟しているBSの世情ながら、やはり子供と大人では考え方が異なる部分もあると。
「ふぅん……なるほどね。お前は、愛だけでやっていけるほどに世の大人達は単純じゃないのではないかと、そう言いたい訳か」
「はい、愛情だけでは幸せを語れない……大人ってそうですよね? 僕とミウさんは深い愛情で結ばれてます。永遠の愛を誓いました。別れるとか、愛を喪うとか絶対に無いと分かっているんですけど。夫婦生活で何か足りない物があれば、夫として僕が気を配るべきだと思っていた物で」
男は外で仕事をなんてことがシティでは普通と聞いたことがある。でも、このBSでは男女の別なく自らの力に見合う仕事をしているから一概には言えないけれど、それでも僕は男だ。
家庭を守ってくれる奥さんが必要だと考える何かが有れば、僕はそれを調達したいと思う。
まあ、僕もミウさんもパートナーとしてギルドの依頼を受けているから、その実は共働きなんだけど、やっぱり男としての矜持が僕にだってあるんだ。
「男だからとか、男のくせにとか、あんまり好きじゃないんですけど。でも頼りがいのある男で在りたいと思っていますので」
ミウさんの、大人からの、夫婦生活に必要な物、また必要なことを聴きたい。
「……確かに。クルスの言うように大人は子供の視点で物を考えたりは基本しないな」
やはり足りない何かがあるのだろうかと、一言一句聞き逃さないようにする僕に。
そんな僕に、だけどねクルス、とミウさんは続ける。
「私にとっては、お前の存在こそが私の幸せの全てなんだよ。幸せになる、夫婦生活に必要。大人と言うよりも、私の視点だけを述べるのならば、お前という必要不可欠な存在さえ傍に居てくれれば、万事揃っていると言えるんだよ」
ミウさんの回答。それは僕が言う、ミウさんが居て、そこに愛があって、それだけでいいという考えと寸分違わずの同じ物だった。
それが大人の視点というか、ミウさんにとっての必要な物だという。
「あのとき。クルスが私に飛び付いて邪魔をしてくれなければ、私は仲間達と同じ様にアークライトに食べられていたことだろうね。生きているだけで幸せなのがこのBSの日常……だが、私はあのときまでは本当の意味では理解していなかったらしい。いま、思い出してみても恐ろしいよ。仲間達がアークライトの腹に開いた大口で噛み砕かれながら咀嚼されていった光景は……。お前が止めてくれなければ、皆と同様私もああなっていた……」
「――それは」
考えたくもない。ミウさんがアークライトに食べられる光景なんて。
思い浮かべるだけで気が変になりそうだった。
「もし、そんなことになったら、……僕は、生きていけません……。ミウさんの居ない世界でなんて……そんなの……ぐすっ」
涙が流れてしまう。ミウさんが死んでしまった世界。想像するだけで悲しすぎて。
「クルス……」
ミウさんは僕の涙を拭ってくれる。優しいな。
「すみません……」
「いや、わかるよお前のその気持ちは。私もお前がいないと寂しさと悲しみに押し潰されてしまうだろうから……毎日を泣いて過ごして、その先で廃人になってると思うよ」
愛し合う前ならそんなこと考えもしなかっただろう。
だが僕らは愛し合った。夫婦としての関係を築いてしまった。成就された想いと、この胸に大きく花開いた愛する気持ちは、互いが一緒に居なければ生きて行くことすらままならないほどに昇華されてしまったのだから。
「とにかく、お前は私に生を与えてくれたんだ。ううん、それだけじゃない。お前は私を愛してくれた。お前は私にクルス・シルトという最高の伴侶を与えてくれたんだ。クルス。今やお前は私の幸せその物なんだよ。そんなお前にこれほど愛されながら他に何が要るというんだ? クルスはそれほどまでに大切な、私の生きる意味その物だから。私にとっての夫婦生活に必要な物、それはお前との愛さ。クルスと愛し合う、それだけあれば私は何も要らないよ」
まるで互いへ抱く愛情を再確認し合っているようにも感じる。
好きとか愛してるとか。毎日のように囁いているのに、口にしなければ、耳にしなければ収まらない。
僕も……、ミウさんも……。
そしてよくわかった。ミウさんが僕と同じだという意味が。
僕が居れば何も要らないと、本心からそう訴えてくれているって。
「布団の上でお前の愛を受けているときはより強く幸せを感じる。――身体の中でお前が動く度に。私の身体や心へと、お前の存在が刻まれていく度に、愛が強く大きくなっていく」
寝具の上で向き合っていたミウさんが、大切な行為に及んでいる時の心境を語りながら、僕の方へ身体を寄りかからせてきた。
「そうやって私の奥で解き放たれた熱は、クルスに抱く私の想いを更に大きく燃え上がらせるんだ」
その温もりを身体に感じて、僕の心臓が早鐘を打ち始める。
「いったいどれだけの愛情を私に注げば、お前は満足するのだろうね」
預けられる身体は、ただ接触を試みただけで終わることはなく。
しなやかに伸ばされた両の腕が、僕の腕の下から背中へと回る。
「お前の愛を受ける幸せな私は、お前の全てを満足させてあげたいと願ってる」
こうして抱き締められると実感する体格差。大人と子供の違い。
成長期といってもまだ14歳でしかない僕の胸板はミウさんの大人の肢体を受け止めるには少しばかり役不足で、端から見れば大人の女性にあやされている、ただの子供のように映るだけなのだろう。僕って小柄だしね。
夫婦どころか恋人――愛し合う男女の関係にさえとても見てもらえそうにない。精々が歳の離れた姉弟のじゃれ合い……そんな構図。
「お前が幸せに満ち足りるその瞬間を見たい……、お前と居るだけで何も欲しなくていいほどに幸せだからこそ、私はお前を満足させてあげたいんだ」
でも僕らは紛う事なき夫婦。一生を賭して……、ううん…生まれ変わってもまた愛し合おうと永遠の愛を誓い合った、男と女なんだ。
「満足ですよ……僕はいつでも。だって、愛するミウさんといつも一緒なんですから。でも“満足しきれる日”なんてのは一生きません。生まれ変わろうとなにをしようとも、永遠に」
そんな日が訪れるはずはない。何せこの気持ちに終着点など無いのだから。
「ミウさんの傍に寄り添う幸せ。ミウさんと肌を重ねる幸せ。ミウさんと食事をして風呂に入って出掛けて、共に過ごせる時間をどれだけ得てもまだまだですから」
「クルス……」
「僕にとってミウさんという存在は、永遠の幸せなんです」
僕の胸板に押し付けられて形を変える、大きく豊かな二つの膨らみ、夫の僕だけに触れることを許されている宝物。
もっと言うなら、ミウさんという僕のお嫁さんこそが、僕が見つけた一生の、そして永遠の宝物なんだ。
だから僕は、その大切な宝物である女の人を抱き締める。彼女が僕へそうしてくれるように、その背中へと手を回して。
「ん」
聞こえた小さな声、息が少し漏れただけの声と共に、左肩へと重みを感じる。
先程よりもより強く感じられる温もりに混じった甘い匂いだ。
それは僕が抱き締めると同じくして、僕の左肩へと乗せられたミウさんの頭から香るもの。
間近に捉えた金色の尻尾は、膝にまで届く長い髪を頭の後ろ高くで絞り、赤いゴムで縛り上げることで形作られたポニーテール。
「……」
そっと、ポニーテールの根本である赤いゴムに触れ、そこから背中・臀部へと下へ伸びている髪の束に指を差し入れて梳き通す。
「ミウさん」
髪の束で作られた尻尾が指に絡まりながらもその間を滑り抜けていく。絹糸のように柔らかく艶やかで、真っ直ぐな癖のない金色の髪が。
このシンプルな髪型を見ていると、共にシメオンと戦った仲間であるセトさんや、レジスタンスBS解放軍の仲間だった捧さんを思い出す。
セトさんはミウさんと同じ金色で、捧さんは薔薇のような真紅。共に背中くらいまでのポニーテールを揺らしていた二人と僕は同じ戦場に立っていた。
前者のセトさんは戦いを生き延び、後者の捧さんは死んでいった。
それは戦いの日々の中に残る記憶のひと欠片でもあるけど、その辛く苦しい戦いを思い出すと、やっぱり今の平和が貴い物であるのだと改めて思い知らされるんだ。
「僕は、平和な日々が訪れた今だからこそ、時間の許す限り貴女を求めていきたいんです」
朝起きたとき。日中の生活。水浴びや湯浴みの時間。そして就寝のとき。
歳を取り、やがて寿命を迎えるその日まで、僕はミウさんを求め続ける。
そして、その続きは来世で。僕もミウさんも同じ姿でまた生まれ来て、年齢差も同じで。でも必ず出会うんだと約束を交わす。
手を繋ぐ、抱き合って眠る、身体に触れる、口付けを交わす、性交を行う。
どんな形でもいい。どこでだっていい。ただミウさんと触れ合えれば、そこに僕の幸せがある。
「そうか……、クルスはどんなに私を愛しても、どれだけ私を抱こうとも、満足は出来ないんだね」
私と同じか、というミウさん。
「クルスを好きになって……。あの雨の日に訪ねたこの小屋でお前に想いを伝え、応えてくれたお前に抱かれながら……永遠の愛を誓い合い」
僕の左肩に頭を載せたまま囁く彼女の吐息が耳に掛かる。
僕は僕で、ミウさんの膝裏にまで届くほどの真っすぐな長い金色のポニーテールを、優しく優しく撫で続ける。五本の指に絡めながら。髪先へと向けて。
「毎日の夫婦生活でも深く愛されているのに、それでも満足しきれない自分が、私の中にもいるよ」
濡れた熱い息と、言葉の途中で入る一呼吸に混じる形で時折甘噛みされる耳朶。
「んっ――。こうやって……はむっ、耳を噛んだりして……一時の満足感を刺激したところで……あむっ……一瞬の後には消えてしまう……」
耳への甘噛み、ミウさんの濡れた唇が耳を啄む。
「んっ、僕も……こうされるの……好きです……、でも……してるのに、貯まらないもの……なんですね……ミウさんも」
ぞくぞくした感触が背中を駆け抜けて気持ちが良い。
彼女の髪を撫でる僕の指に、ほんの僅かな力が入る。
「もちろん、日々その時々には満足しているんだよ? でも、もうこれで充分だという満足感がどうしても得られない。まだだ、もっとだ。溢れても渇き続ける私を満たし続けていてほしいと、そう心がね……訴えてくるんだ」
「僕もですよ。心と身体を一つにしているときに、一番強く大きな幸福感を覚えるんですけど、満たされた状態が長続きしないというか」
お互いに満足してる。でも満足し続けられはしない。
これくらいでいいなんて事はない。まだ足りない。まだまだ。
「まだまだ、だな」
「まだまだ、ですね」
たぶん僕は一生ミウさんを求め続けるんだろう。愛情を注ぎたい欲求と、愛されたいという欲求を満たすために。
湧き上がり溢れる彼女への愛情が、これで充分という到達点に僕を辿り着かせてくれそうもないから。
人間は究極的には欲望の生き物だ。ミウさんと出逢い結ばれて、愛する人と送る時間という幸せの最高到達点を僕は知ってしまった。
こうなると、欲望はその幸せの持続を欲するようになる。それが今であり、これから先の全てなのだろう。
一種の麻薬だ。ミウさんの愛を受けなければ、彼女を愛さなければ切れてしまい、禁断症状に襲われる、甘美なる魔性の薬。
愛し合わなければ、心が渇き死んでしまうというほど、成就させた永久の愛は副作用も強かった。
「無理、させたりしてませんか?」
こんな事を話し合いながら実に意味のないことを訊いていると考えるも、思い起こされるのは昨日の夜の睦み合いのこと。
もっと言えば、今朝起床と共に愛し合ったときのことも。
14歳という思春期真っ直中に永遠の愛を誓い合った所為か、ここ最近強い性的欲求を抑えられずにいた僕は、いつも以上にミウさんを求めていた。
無理をさせていないか?
これは満たされるとか、欲するとか、そういうこと以前の問題で、単純に性交数の増加と長時間化の話であった。
立て続けに求める僕が、求められる側の彼女に負担を掛けてしまってはいないだろうか?
紅く上気した頬を流れる沢山の汗。額にも腕にも腹部にも、身体中に汗を浮かび上がらせたミウさんの切ない喘ぎ。
本能に従いつつ、想いのままに腰を突き出しては、ミウさんの中へ愛を注ぎ。注ぎ終えるとまた性交を再開させるという、休み無き睦み合い。
朝起きたのがまだ5時台で、終わったのが7時台。起き抜けだけでも実に2時間近くもの間僕はミウさんを抱いていた。
自分でも驚いた。僕ってこんなに体力があったのかと。
それでも終わったときには息も絶え絶えの彼女の身体の上へ倒れ込んでしまった。身体を繋げたままの状態で、彼女のふくよかな乳房を枕にして。
自身を引き抜く力も残らないほど体力を使い果たしていたから仕方ないのだろうけど、男の僕でさえこうだ。
ならば女のミウさんは大丈夫だったのだろうか? 無理させてしまってはいないだろうか?
性交における負担は男よりも女性の方が強いような気がして心配する僕だったけど、結論としてはNOサインを示されて終わりだった。
「無理なんてしてないよ」
そんなことは少し考えれば分かる程度の杞憂でしかなかったのだ。
だって、僕とミウさんは、本来なら体力に優れている性である男と、男よりも体力面では劣るはずの女……という前に。子供と大人であり、無能力者とニードレス(能力者)。
どちらの方が体力があり、どちらのほうが持久力に優れているか? そんなの、頭を悩ませて考えるまでもなく、後者のミウさんに決まってるから。
「子供のクルスに求められて、大人の私が音を上げるとでも思うのか?」
周りの人が凄すぎて僕の感覚が麻痺しているだけだ。ミウさんは神父様やイブさん、照山さん、そして姉さん達と比べるとずっと弱い。
だけどそれは“強すぎる人たちと比べて”の話であって、僕みたいな無能力者なんかとでは比較にならないほどミウさんは強いのだから。
断然基礎体力も、総合的な体力も、彼女の方が僕よりもずっと上だ。
「まあ、朝の起き抜けからあんなにもじっくりと時間を掛けて愛されるとは思わなかったが、ここ最近は回数も時間も増加傾向だったからあのくらいなんでもないよ。それに。クルスが求めているなら応えるのがお前を愛する女として、そしてお前の妻としての私の努めだ」
そういって僕の左肩に載せていた頭を持ち上げたミウさんは。
「なによりも私がそうしたい。誰に言われるでもなくお前の愛を受けたいし、お前を愛したいんだ……」
そのまま僕の左頬へ自らの頬を擦り寄せてくる。
「あ……ミウさん……」
擦り合わされた頬が徐々に熱を帯びる。
「クルス……」
頬ずりしてくるミウさんの頭の動きに合わせて揺れる金のポニーテール。
腰を下ろしていると床に付くほど長いその金色に輝く艶やかな美しい尻尾は床にとぐろを巻いていて、彼女の背へと回している僕の手がその金色のポニーテールに撫でられた。僕が彼女の髪を撫でていたのに僕の手が撫でられるといった、反対の立場に早変わり。
「私はね……、お前に愛される為に生まれてきたんだよ……きっと……。クルスを愛し、クルスに愛される為に……。お前と出逢ったのは偶然なんかじゃない……そう、思わないか……?」
「ん、僕も……よく、考えますよ…それ…」
擦り寄せられる頬の温もりが気持ち良く、僕も押し返すようにしてミウさんの頬に擦り返す。
「生まれたときにはもう、結ばれることが約束されていたから……、だから、ミウさんと出逢えたのは、運命に引き寄せられたからなんじゃないかって」
「運命……か、」
結ばれたのは必然で、出逢いさえもまた必然で。
「同じ時代に生まれたのも必然で」
僕は擦り合わせていた頬を離して彼女の赤紫色の瞳を見つめる。
「必然……、そうだな、必然だ。私は生まれた瞬間からクルスと愛し愛される運命だったのだろう――」
――んっ……――
赤紫色の瞳が閉じられて、瑞々しい唇が僕の唇を塞ぐ。
――んっ、ふうっ……あむっ、…んっ、――
心ばかり傾けた顔は唇だけを接触させたまま。
唾液に濡れた舌を絡ませ合う。
――ちゅ、はふぅ…、んん…っ、――
互いを塞ぐ唇は呼吸を堰き止め、代わって行われる鼻よりの息継ぎが顔に掛かり、温かく心地いい。
口内へ差し入れた舌に唾液を塗り込めてくれた彼女は、そのまま僕の舌を絡め取りながら、こちらへと舌を押し返してくる。
――んむぅ…っ――
押し返された僕の口内に入ってくるのは、ミウさんの舌。
歯をなぞりつつ、口の中を愛撫してくれる。
彼女の手が、僕の背より離されたのは直後のこと。
離れた手は、僕の腰をなぞりながら僕の股間へと移り渡っていく。
探り当てられたズボンのホックが外されて、次いでチャックも下ろされ。
下着の中へ入れられた手の平に、僕は撫であげられた。
「んっ、……っぷあ! ミ、ミウさんっ……」
同時に口内から舌を抜かれた僕は、性器を撫でてくれるミウさんの肩へ頭を寄りかからせつつ、性器の奥から駆け上がってきた快感に身を震わせた。
「クルス……、もうこんなに大きくなってるぞ……、お前の物……」
「仕方ないですよ……、ミウさんに触られたら、僕……、」
「触られたら……? 触られる前からの間違いじゃないのか?」
裏筋を優しくなぞられて、もういつ暴発してもおかしくないほどに僕の性器は大きくなっている。
反応し始めたのは勿論触られる前。抱き締めてくれたときにはもう、ミウさんを求めるしかない状態へと追い込まれていた。
ミウさんの髪に触れている間にはもう、ミウさんの中へと入るしか解決策は無くなっていたんだ。
「クルス…、私とお前は運命で結ばれているんだ……、なら、愛し合い……求め合って……。子を儲けるのもまた……運命に導かれたが故の必然だ……違うか?」
「そう…、ですね……。僕がいつも中に出すのは……、ミウさんを孕ませたい……そういう意思もあります。ミウさんは僕の子供を生まないといけない……、僕と貴女は子供を作らないとって、それはやっぱり運命で……、でも……夫婦だから当たり前のことでもありますよ。僕は、クルス・シルトはミウさんとの子が欲しいです。嘘偽らざる気持ちです」
「それもそうか……。夫婦なのだから、子作りをする……。私は妻としてお前の子を生む……そのための自然な行い」
「そうです、するんです。しなきゃ、いけないんです……」
ミウさんの肩により掛かったままで手を移動させる。行き先は言うまでもなく彼女の蜜壺。
「あっ……、」
触れた瞬間、そこは既に濡れているのだと気付く。
僕を求めて濡れる蜜壺に、僕を求めるように喘いだ彼女。
「濡れてます、ミウさんのココも」
「お前に触られるとどうも……ね。まだ、今朝の余韻が残っているのかもしれない……」
「服、脱がせますか?」
「クルスの好きにすればいいよ」
「じゃあ、脱がさずに行きますね。脱がせてる余裕なんて僕にも無さそうですから……。それにミウさんの服なら……脱がさなくても、問題無くできますし」
股間を隠す服の下には何もない。
彼女の服はそういう服だから。
構造上、少し横へと布をずらせば潤う花弁も蜜壺も、その姿を露わすことになる。
僕だけが触れていい場所。僕だけが見てもいい場所。
「んッ、確かに……言われてみればその通りだが……、この服は別に…、こういうことをしやすい様にするために……、こんなデザインをしている訳じゃ……ない」
「でも、触りやすいです……ミウさんの……、ココが……、この…僕を迎え入れてくれる……ココが」
「あッ…!」
性器を愛撫される快感を堪えながら、僕もミウさんの花園に指を触れさせて、指圧してみた。
くちゅくちゅ。
柔らかな蜜壺に触れた指に、ねっとり絡まる粘液。
「んンっ、あ…ァッ」
縦に走る唇のような粘膜の割れ目がぱくっと開いて、まるで何かを食べたいと言わんばかりに涎を垂らしていた。
「ミウさんの……、下の唇……綺麗です……」
「いつものことだが、あまり見られると……、恥ずかしい……から……」
その唇を指でなぞると、ぷくっと勃起したクリトリスも、奥深くへと続く蜜壺も、共に湧出した愛液に塗れて濡れそぼり、淫らな水音を奏でることができた。
「ミウさん……早いですけど……。入れても……、いいですか?」
撫で擦られる性器を力ませて伝える。コレをミウさんの蜜壺へ入れさせてと。
「このひくひくしている……、口の中に……」
「もちろん……だよ……、私も……、早く……お前のコレを……、入れて欲しい……」
僕を愛撫していた手が止まり、下着から性器を解放させてくれたミウさん。
「子を、儲けるつもりで……抱いてくれ……」
「もちろんですよ……。ミウさんと子供を作るのは、生まれたときから決まってることですから、ね」
結ばれるのが運命なら、子を作るのも運命の一部。
当たり前すぎる答えにしかし、僕は自分の意思も付け加えた。
「運命かどうかは抜きにしても……、ミウさんと子供を作りたいです……、僕と貴女の……愛の結晶を……」
僕の意思を伝えると、赤らんだ顔に微笑みを浮かべた彼女が呟く。
「私も……早く、クルスの子を……、生みたい……」
それだけ言って、布団の上へ身を横たえ仰向けになると、彼女はすっと大きく脚を開きながら、いつものように僕を受け入れる態勢を整えてくれた。
頷きをもって返答とする僕は、血液を巡らせて大きく硬く膨らんだ自身の性器を、その蜜壺へと差し込む寸前で止める。
「あの……、ちょっといいですか?」
「ん…、なんだ……?」
「その……、朝以上に……時間を掛けて貴女を抱きたいので、お昼ご飯……ちょっと遅くなりそうなんですけど……」
朝からもう何度となくしていたけど、でもこの数日は集中して行わないといけない理由もまたある。
足りないから求める、愛しているから抱き合うだけじゃない夫婦としての……最も子作りに適した期間に、ミウさんは入っているから。
「なんだそんなことか。かまわないさ、いっそ昼食くらい抜いても……、なんなら、日中いっぱい愛してくれてもいい。私も……子作りのほうに……時間を掛けたいからな……」
「ミウさん……」
了承を得た僕は、仰向けになってくれたミウさんの、大きく開かれた艶めかしい脚の間へと身体を入れ。
濡れて光る美しい蜜壺へと添えた性器をそっと差し込むと、閉じた柔肉を押し広げながら奥へ向かい沈み込ませていった。
「ああっ、クルスっ……!」
響くミウさんの声。肉と肉の擦れ合いで生じる快感が全身を駆け巡る。
「ミウさん……っ」
締まり包み込む肉の温かさに、僕は愛おしい奥さんの名を叫びながら、止めることなく腰を前に出す。
「あったかい……っ、ミウさんの中……っ、気持ちいいっ」
性器の頭は割れ目の中へ入り込み、徐々に竿の部位が飲み込まれていく。
「あ……ァァ……、熱いモノが……中を、掻き分けて……、入ってくる……」
幾度となく僕を入れてくれた彼女の蜜壺は、それでも初めて愛し合ったときと何ら変わらない至上の心地良さで僕を受け入れてくれる。
帰るべき場所、収まるべきところは、いつも変わらぬ温かさで僕を迎えてくれるんだ。
「お前が入ってくるこの瞬間が……、たまらない、ね……、私達は……こうして一つになるために、生まれてきた……、そう……、考えると……っ、んんっ……ッ!」
中を満たしている愛液が押し出されて、繋がる僕らの股間と、そして着たままの服へ付着した。
「僕と貴女は……、この広い世界で、出逢うべくして出逢い、結ばれるべくして結ばれた……、それを思うと……なんだか、感動を……、覚えます……僕の、僕のミウさん、僕はもう貴女を離しませんっ!」
竿は完全に沈む。蜜壺へ挿入された僕の全てを包み込んで。
交差された脚。重なる下半身。そこに隙間なんて無い。
肌と肌を合わせて重なる、身も心も密着した、いつもと同じ体勢。僕はこの体勢で抱くのが一番好きなんだ。
こうしてミウさんの全身を目に収めながら、彼女が乱れる姿を目に映しながらするのが。
いつでもできるが、いつでもこうしていたい。いつまでもいつまでも愛し合うために。
彼女と見つめ合って、どこまでも深く……。
「不思議だ……クルスが私の中に収まっていると、なぜか懐かしさを感じる」
「前から知っていたみたいなの、ですよね」
「お前も、そうなのか」
「はい……、ミウさんに包まれていると、ずっと昔から貴女と肌を重ねていたような……そんな感じが、するんです……」
ぐっと、股間を擦り付ける。
「ああっ……!」
奥まで入り込んだ亀頭の先が、胎内へと続く入り口をこする。
瞬間、少し沈んだ感じがしたのは、きっと扉が開いて僕の子が住む事になる部屋の中へと先が侵入したからだろう。
「ふ、ふふ、」
含み笑いを浮かべたミウさんに、僕は抽挿を始めて肉を擦れ合わせながらも訊いた。
「どうっ、したんですか?」
愛を奏で合いながら、僕らは語り合う。
「いや、こうも……、懐かしく感じるのは、ひょっとすると……っ、生まれる前にも……。んっ……、こうして……っ、求め合っていたからっ……ではないかと……、ふと、思ったんだよ……。んはあっ、前世のお前と、…ッ前世の私は、やはり愛し合っていて……、ああッ……あっ……、だから、魂が……ッ、覚えているんじゃ……、ないかとね……っ」
「前世で……?」
魂とか前世とか。死んだらどうなるとか生まれ変わりとか。正直、本当にあるのかなんてわからない。
科学も進んで、ニードレス能力者が誕生して、世界は着実に先へと進んでいる。でもまだ解明されていない分野が魂の存在だ。
だが、有るとも無いとも言えないそれを、僕らは有ると信じていた。
根拠なんて無い。ただ、そうだと思う僕らの主観。
想像も出来ないそのことに、たった一つだけわかることがある。
「案外、それが答えかもしれませんね……、僕らは前世で結ばれていた……。だから……、今もこうして……結ばれている。そして……、僕は生まれ変わってもまた……ミウさんと結ばれる……。そう、決まってると……思うんです……」
解明されていないけど、有ると信じる僕らは確信しているから。永遠の愛を誓った僕らだから。
抽挿は続く、繋がる場所から湧出する愛液が彼女のお尻を伝いながらシーツへ落ちていく。
耳慣れた水音と、肉壁と性器が擦れ合う心地の良い感覚を共有しながら、僕らは睦み、語る。
「そう、だな……。きっと、そうなんだろう、な……。生まれ変わっても愛し合う私達は……、きっと……その時にも……っ。同じ会話を……、しているのだろう……」
「そうですよ、そしてまた、子を作ろうと、こうして……励んでいるんじゃないですか……?」
「ふふ……、それなら、わかりやすいように……、クルスはまた、クルス・シルトという同姓同名で……、今とそっくりそのままの姿で生まれて……、私も同じ姿で……、生まれているのかも知れない……ね、」
「年齢差も同じで……、僕は14歳、ミウさんは僕よりも……10歳くらい年上で……、僕らは出逢って……そして――」
想像する。その時を。今と変わらない姿で、今と変わらない年齢で、今と変わらない魂を持って。それはとても素敵なこと。
「また、愛し合うんです――」
「あぁっ――!」
愛し合う来世の僕らを思い浮かべながら、ぐっと、腰を押し出した。
「あっ、あ……あァ……っ、クル、ス……、」
「ミウ、さん……」
一つにした身体を止めることなく抽挿を続ける。
「あっ……、あっ……」
じっとしているのもいいけど、動いている方がもっといい。
ミウさんと一緒に気持ち良くなる幸せを味わえるから。
「クルス、はっ……あい、かわらず……、優しく……愛してくれる、ね……っ、ぁぁっ……、まるで……愛撫されているような……感じだ……」
「ゆっくりした方が……、気持ち良く、愛し合えるので……、」
「ふあ……っ、ああ……、はぁぁっ、あァっ……。私も、優しくされるのは……っああ……好きだよっ……、あ、あァ、気持ち……いい、よ……」
時には激しくすることもある。だけど、僕はこうやってゆっくり愛し合う時間が好きだった。僕も気持ちよくありたいけれど、ミウさんを気持ちよくさせる方が重要だから。それに、どうせミウさんとの交合は、どんな形であっても気持ちいいんだ。
「奥に……、当たる……、こつん……こつん……、はあっ……、そんな、優しく……ノックされたら……、」
服の下に隠された大きな膨らみに手を置く。
いつどこで触ろうとも柔らかい。張りがあって、こぼれ落ちそうなほどに豊かで。
「あう、はぁぁ……胸が、好きだね……クルスは」
「触り心地が……、凄く……、いいんです」
枕にして眠ることもある。
夜、仰向けのミウさんと抱き合ったまま、疲れに負けて寝てしまうときは特に。
「昨日は…っ、それで夢精された……ね……、ふっ、ぅぅ……私の中へ、挿れたまま寝たときは……っ、いつも……」
「ご、ごめん、なさい……っ」
此処連日の長時間休み無しで行う夜の夫婦生活の影響から、結構な頻度でミウさんと繋がったまま眠っていた。
その所為か、朝の生理現象と夢精を彼女の中で迎えるのはもう日常的になっている。
小さな頃には誰でもするおねしょ。その類の夢を見ると、大体何かを出す開放感と共におねしょをしていたように。
身体を一つにしたまま眠りに就き、その上でミウさんと抱き合う夢を見て、射精感を覚えて夢精する。
中に出されるミウさんは、胎内へ溜まる精を感じて目を覚ますなんて、愛故の目覚めを経験していた。
「ううっ――!」
不意に感じた射精感に焦りを覚えて一際深く腰を突き込んだ。
じゅぶうと、音を立て、奥深くに入り込み見えなくなる肉の棒。
「あああ――っっ!!」
普通に会話をしていたミウさんも、唐突な突き込みに背を浮かせて叫ぶ。
ミウさんの長い金色のポニーテールが膝裏にかけてまっすぐ伸びているのが見える。
思わずして深い挿入となった性器の切っ先が、蜜壺の奥を貫いた。
子宮への口を突き抜けて、先が内部に食い込んだ感覚を捉えた。
僕らの腰のぶつかりと、泡を吹かせて飛び出す愛液が、濡れた音を響かせる。
どくっ、どくっ……どくっ!
息継ぐ間もなく堤防は決壊し、精巣から駆け上がってきた億を超える命の源を、僕は躊躇うことなくミウさんの子宮へ。
「あ、ああぁぁ……っ、クルスっ……い、いきなりはっ……! っあはぁぁ――!」
僕の身体を挟み込む脚が張り詰めたように伸ばされて、小刻みな痙攣を繰り返す。
大きく開いた口からは、甲高い絶頂の声が上がり、急な射精に対応しきれない肉襞が、遅れて僕を締め上げてきた。
「す、すみませんミウさんっ、でも僕……ッ う、ううう――ッ」
どくっ、どくっ……!
「ま、まだ出ッ……っっアア――ッ!」
圧迫される性器に反応した精巣は、ポンプのように精子を送り出す。
止まることなく、唯ひたすら壊れたみたいに。
単独では決して芽吹くことのない命を、融け合うことで芽吹かせる胎内へと。
「ああ……あッッ、クルスッ……ッッ……」
ぎゅっと、強く抱き締められた小柄な僕の身体。
「お、お前のっ……精が、溜まっていく……! 子供、お前との子供が……っ!」
抱き竦めるように僕を掻き抱くミウさんは、僕の全てを搾り取っていく。
子を、僕らの子を、そのお腹に宿すため。
「ミウさん……僕の、僕の子供……生んで、ください……!」
僕も力を振り絞って解き放ち続ける。命の源を、生命の種を。
ミウさんの中へ送り込み、受精させるために。
「ああ……クルス」
「ミウさん……愛しています……」
“んん――”
交わされた口付け。
互いの唇を押し付け合い、僕らは動かなくなる。
身体を一つにしたまま。深奥までを貫いたまま。
新しい命を紡ぐため。時間を忘れ、ただひたすらに愛し合う。
この平和な無法地帯で出逢った。一人にして全の幸せを持つ相手と。
いつまでもいつまでも。
愛し合い続けた。
※※※
「それじゃいってきます」
快晴の空。雲一つ無い蒼空の下に身を投げ出した僕は、いつものように挨拶を交わす。
“いってきます”
それは共に住む家族へと出掛けに伝える言葉。
「気を付けるんだぞ。お前は力も弱いし、なによりもまだ子供なのだからな」
その出掛けの挨拶を受け取る相手は、扉の前に立ち僕を抱き締める大人の女性。
彼女の背に沿い太股の辺りまで流れ落ちた黄金色に輝くポニーテールが、外からの風に煽られ揺れている。
「大丈夫ですよ。今日請け負ったお仕事は揉め事解決とかそんな危険な物ではありませんし」
「住居の荷物運びだったな」
ミウ。僕の愛する人。この世でただ一人の僕の奥さんだ。
仕事に行く夫を送り出す妻と、送り出される夫。
充実した夫婦生活の中で、ここしばらくはそんな日が続いている。
「困っている人を助けるのがギルドのお仕事ですからね。ハンターギルドなのにどうして便利屋みたいな仕事まであるんだなんて言う人もいますが、こういうお仕事も好きですよ僕は」
「まあ、ギルドへの依頼と請負は、揉め事解決や、プレデターから町や村を守るという仕事ばかりではないからな。しかし荷物運びか……それならば私のボルテスリングバズーカを使った浮遊があれば楽だろうに……やはり、駄目か?」
「駄目ですよ……。ミウさんは大人しく家で留守番してなきゃ」
「あまりジッとし過ぎているのも身体がなまるんだ」
ギルドにて共に働いているはずのミウさんだったが、いま仕事を請け負っているのは専ら僕だけ。
彼女はここ暫くの間ずっと休暇を取っているのだ。
勿論、怠惰な生活を送りたい、楽がしたい、などということではなく。ちゃんとした理由があった。
家で留守番していなければならない理由が。
女性だけに訪れる何よりも大切な理由が。
それは……。
「駄目ったら駄目ですよ。ミウさんはいま激しい運動をしちゃいけない身体なんですから」
大きく膨らんだ、彼女のお腹。
「それは分かっているが、現場でお前に能力を掛けて手伝うくらいはできるのではないか?」
「そのくらいなら、ジッとしててもできることはできるのでしょうね……。それでも身重の身体にはよくないと思います」
いま、ミウさんのお腹には、新しい命が宿っている。
僕が彼女を愛し、生命の源を送り続け、彼女が受け取ってくれたことで実り、芽吹いた……新しい命が。
彼女の薄手の服では目に見えて分かる妊娠の事実が、そこにある。
太るほどに食べているわけでもないのに膨らみ始め大きくなっていったお腹は、ただその答えだけを示していた。
僕とミウさんの間に、子供ができたのだという答えを。
「っ……!」
「どうしました?」
「いま、お腹が蹴られた……」
「えっ! 本当に!?」
驚くミウさんに、丸く膨らんだ彼女のお腹へ素早く耳を当てる僕。
すると、そこには確かに生命の息吹を感じさせる胎動があった。
「動いてます……、ははっ……動いてる! すごい!動いてますよミウさん!」
「それはまあ生きているのだから動きもするさ。私とクルスの子が……、ココに、居るのだからね」
まるで幼児のようにはしゃいでしまった僕の頭をミウさんの手が撫でている。
「いってらっしゃいと、この子もそう言ってるんだろう」
「なら、この子のためにもお父さん頑張らなくちゃ!」
「14歳の子供お父さんがな」
「こ、この子が生まれる時には15ですよっ。それでも子供ではありますけど……」
もうそれほど遠くない時期に僕らの子供は生まれる。
その時でも僕はまだ15歳。15で自分の子を抱く事になるなんて、考えてみるとすごいことだ。
「しかし、私もこんなに早くクルスとの子を生めるとは思わなかった……。お前の性欲には恐れ入ったよ」
「そ、そこはまあちょっと頑張りすぎましたが……」
「ちょっと……? 日に4時間も5時間もするのがお前のちょっとか? じゃあ、いっぱいならどれくらいの時間私を抱き続けるというんだよまったく。こと精に関しての体力だけはそこらのニードレスなんかよりもずっと上だぞお前」
何度私を失神させたと思っているんだ?
そういって呆れ顔で溜息を付くミウさんに反論する術を僕は持ち合わせてなかった。
「以前は“子供のクルスに求められて大人の私が音を上げるとでも思うか?”なんて言っていたが、前言撤回させてもらう。さすがに稀のこととは言え、一度たりとも抜かないでの連続5時間は幾ら何でも体力の限界だ」
結婚して暫くの間は僕との性交について大人でありニードレスでもあるミウさんは余裕を持って受け入れていたんだけど、回数を重ねていく内に僕の精力と体力がメキメキと鍛えられてしまって……。
たまにだけど、どれだけ抱いても求め続けたくなることがあるんだ。そういうときはだいたい抜くことなく継続して最長5時間は抱きっぱなしだから、ミウさんを気絶させてしまうことがある。
一日の延べでなら10時間の経験もあった。ひょっとしたら、BS生まれだけあって、僕もまた特異体質なのかもしれない。
さすがにミウさんの妊娠がわかってからは長時間セックスについては控えているけれど。それでも妊娠中だって抱いている。気を付けてはいるんだけどね。妊娠中のセックスは危険だと聞いたこともあるし。
ただまあ性欲というより、ミウさんへの愛情を抑えられないんだ。
「うう……ぐうの音もでません……。だけど、それだけ愛してるんですミウさんを」
決してムラムラして欲望に負けたんじゃない。
ミウさんを愛する気持ちの暴走だ。それが欲望に負けたというのなら、負けていたのかも知れない。
無論、僕はそれならそれで負けて良かったと思う。負けたからこそミウさんと僕の子ができたのだ。
それは云うなら勝ちと同義の負け。理性が負けたおかげで実りに繋がった以上、負けは負けでも負け勝ちだ。
「色々と脱線してしまったので話を戻しますけど、とにかくこの子が生まれるまでは貴女は仕事を休んでいてください。ギルドの幹部の人にも了解を取ってるんですから」
正直言えば、能力者である分だけミウさんのほうが報酬も多いので、収入面では僕よりも彼女が仕事をするほうがいいのだろう。
しかしいまは子供を産む前の大事なときだ。だから産前休暇を取らせて貰っている。
ギルドの上の人も理由が理由だからと、僕の分の報酬に色を付けてくれているので、生活にも支障はない。
だからこそミウさんには家を守って貰いたいのだ。何よりも彼女とお腹の子、二人のためにも。
子供である僕に働かせて、大人である自分が一日中家で留守番という状況を彼女が良くないと気にしているのは分かっているけれど。
それはそれ。これはこれだ。
「わかったよ。そこまで言うんなら、妻は大人しく夫の帰りを待たせてもらうことにするよ。この子と一緒にね」
納得しがたくとも納得するしかない。自分の身体は自分が一番よくわかっているから。
お腹を撫でたミウさんの顔にはそんな表情が浮かんでいる。
「ミウさん、少し屈んで貰ってもいいでしょうか?」
「うん?」
そんな彼女に屈んで貰った僕は。有無を言わさずに彼女の頭を抱き竦めた。
「クル、ス……?」
そして、先程僕がされていたように、この胸に掻き抱いたミウさんの頭を撫でる。
屈んだことで僕よりも低くなった彼女の頭の上から自分の顔を押し付けて。頭を撫で、金色に輝く綺麗な、膝裏太ももまで届くほどの長いポニーテールの毛束を優しく撫で梳いて、静かに愛撫した。
「ん、くすぐったい……。くすぐったいよクルス……」
僕はミウさんの髪を優しく愛撫し、その金髪に鼻と口を埋めて息を吸い込みながらただ一言だけを伝える。
「愛していますミウさん――」
「愛しているよ、クルス──」
ミウさんと、そして僕と貴女の間に生まれるこの子を。
愛し、守ります――。
朝日の差し込む小屋の入り口で、僕は愛おしい奥さんと子供を抱き締めながら呟いていた。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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コードギアス
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コードギアスR2
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此花トゥルーリポート
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FF4×FF6
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カオシックルーン
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学園黙示録
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ルパン三世 ワルサーP38
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幕末風来伝 斬郎汰
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ニードレス
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ヨルムンガンド
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少女少年
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北の告発
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サラダデイズ
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ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
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ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
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遊戯王GX(十代×カミューラ)
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魔装機神(マサキ×モニカ)
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椎名君のリーズニングファイル
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RAVE(ハル×絶望のジェロ)