CPは名無しの日本人少年×ヘックス。またはヘックス×名無しの日本人少年となります。
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母子(おやこ)
母子(おやこ)
東欧某国。
ドーンッ!!
街頭に響き渡る轟音。
ドーンッ!!
割れる窓ガラス。地を揺らす地響き。爆発は一つだけには終わらず、二つ三つと続いていた。
恐怖と混乱の渦と化した通りには、逃げ惑う人々の声が木霊する。
我先に、我先に、あまりにも大きな複数回の爆発に、誰もが先を追って逃げようとしていた。
それは本能だった。生きたい。ただ生きたい。死にたくないという、人間らしい本能に突き動かされての行動だった。
しかし、そんな本能に忠実な人々とは異なり、じっと動かず倒れている人々もまた其処には存在していた。
否、それはかつて、つい十数分前までは、まだ“人であった者”だった物のなれの果てだった。
意思も本能も持たないなれの果て達は動かない。ただ静かに其処にあるだけだ。頭部から、腹部から、至る所から赤い液体を流しながら。
或いは構成する部位その物が喪われているなれの果ても居た。皆動かない。皆一様に静かに横たわっている。
なれの果てはなれの果て。最早生物ではない故に。
だが、その静かに横たわるなれの果ての中に、一つだけ動く物があった。
「う……」
動く物、いや動く者は。物言わぬなれの果ての中にありながら、異質な存在としての声を上げていた。
声を上げる。つまりそれはまだその動く者が人間のなれの果てではないという証でもある。
「生きてますかぁ?」
なれの果て達の中を。爆発に脅え逃げ惑う人々の中を。ただ一人優雅に冷静に歩を進めていた、薄めのコカブラウンの色をした腰まで届く長い髪を、吹き荒ぶ爆風に晒していた“彼女は”。
なれの果てではない、まだ生きている人である声の主へと問い掛けていた。
しかしながら、彼女の問い掛けに声の主が応えることはない。応えるだけの力も最早声の主には残されてはいないのだ。
声の主はただ一言だけ「痛い、よ」と口走ったのみで沈黙してしまった。
「日本語……アジア系だとは思ったけれど、この子、日本人なんですねぇ。日本、Japan、私の祖国の同盟国──」
彼女はドロリとした濁りを帯びたような黄土色に輝く瞳を、眼前で倒れ伏したなれの果てではない声の主──幼い少年に向けながら、うっすらとした慈愛の微笑みを浮かべた。
まるで子を見つけた母のように。子を見守る母親のように。唯々純粋な好意の眼差しだけを向けていた。
「大切な同盟国の子供ですからねぇ。守らないといけませんねぇ」
日本人。祖国合衆国の大切な同盟国の子供。それだけで彼女は動く。いや、それだけで彼女を動かすには充分な要因であるのだ。
少年を優しく抱き上げた彼女は、片手をこの爆発を起こした犯人らしき銃を持つ男へと向けた。
ただ視界に映ったから。ただそこに犯人が居たから。偶然居合わせたに過ぎない“自分の任務とは一切無関係な犯人へ”掲げた手に持つ己の銃を向け、逡巡もなく発砲した。
「テロリスト……どこにでもわいて出るなんて、本当にハエみたい」
東欧某国にて発生した無差別連続爆弾テロ事件。
犠牲者は実に五百余人にも昇ったこのテロ事件では、爆心地近辺に居た人はほぼ原形を失うか、爆発により生じた熱で焼き尽くされて死亡。
その中には一組の日本人の母子も含まれていたものと見られ、母子ともに遺体は蒸発したのか、その残滓を発見することができなかった。
尚その際、犯人グループの一人と思わしき男が何者かに頭部を撃ち抜かれて死亡。
グループに犯行を指示した者による口封じと見られ、当局は上部組織の存在があると見て現在捜査中……。
◇◆◇
東欧某国CIAブラックサイト(秘密収容所)
一般人は疎か、その国の政府要人でさえ容易に立ち入ることの出来ないこの場所で、自身に与えられた部屋の中で、一人の少年がぼんやりとしていた。
短髪の黒髪、黒目の少年、年の頃は10つといったところだろう幼い少年が、ここブラックサイトと呼ばれる場所へ連れてこられてよりもう半年近くが経つ。
言葉の分からないお兄さんや、おじさん達と過ごしてきた少年は、この数ヶ月の間に彼等がテロリストという悪い人達を時々退治している事を知った。
テロリスト──それは、少年の大切な人の命を奪った存在なのだという。
存在なのだという、といった曖昧な感覚となってしまうのは。少年が奪われた大切な人というのが少年自身にも誰の事なのか分からないからであった。
少年が、彼がテロリストに奪われたのは母親だった。少年の様な子供にとっては掛け替えのない存在。それが母親という物であるのだ。
しかし、彼にはその母という大切な存在を失ってしまった感覚が分からない。母が誰かも分からない。
彼が知っているのは、この施設にいるボッツ、パウエル、スタイルズといった名前の言葉の分からない人々と、時折連れてこられる名も知らぬテロリストだけだからだ。
彼はこの数ヶ月より以前の記憶を全て失っていた。喋れる言葉は日本語という言葉だけ。日本語は、日本語とは違う言葉を使っているこの施設の人達には通じず、彼はいつもこの部屋で一人の時を過ごしていた。
勿論、皆は彼に話し掛けてくれる。ボッツも、パウエルも、スタイルズも。イコやゴドゥノフ、リックマンという名の人達も。皆、記憶がないが故に恐れといった感情すらも知らず、荒事を観ても物怖じしない少年の事を気に入っていた。
それなりに仲良く成れたと彼自身も感じてはいた。分からない言葉ながらも気さくに話し掛けてくれる人達の様子を見聞きして。
だが言葉の壁はやはり大きく、上手くコミュニケーションが取れない。それに施設の人達は仕事で忙しく、そうそう彼のみに掛かり切ることも出来ないのだ。
部屋に居るか、施設の外の金網越しに荒野の風景を観るか。それが彼の日常となっていた。
しかし、その日常にも例外はあった。
「ただいま戻りましたぁ」
少年の部屋の扉を無造作に開けて入って来た、薄めのコカブラウンの髪を腰まで伸ばした大人の女性。
「ヘックス!」
この施設の荒くれ者達を、とても他人からの指示には従いそうもない彼等を、従順にと言えるほどまでに従えている彼女──通称をヘックスと呼ばれる女性こそが、変化の少ない少年の日常に於ける例外であった。
「お帰りなさいヘックス」
少年はベッドから下りて駆け寄る。奇しくも母の記憶がない少年が母親を見つけたかのように。
駆け寄ってきた少年をヘックスは微笑み返しながら受け止めるようにして抱き上げた。
「大人しくしてましたかぁ」
彼の頭を優しく撫でるヘックス。
「うん」
元気の良い返事をする少年。
「良い子ですねぇ」
彼とヘックスは言葉を交わしていた。言葉を交わせていた。
つまり少年はヘックスとだけは会話が出来るのだ。それは言うまでもなく彼女が日本語を使えるからに他ならない。
他にも幾つかの国の言葉を扱えるという彼女に、少年は親しみを感じていた。
ただ言葉が通じるからといった理由からではない、もっと大きな理由が其処にはある。
それは数ヶ月前以前の少年が知っていたもの。この数ヶ月の間の少年がこのヘックスという女性に抱いたもの。
母性というものを彼女に感じていたからだ。
腕に抱いた少年の頭を撫でながらヘックスも思い出していた。この数ヶ月間の出来事を。
見知らぬテロリストの汚い手より自らが助け出した少年を此処ブラックサイトに連れ帰ってきたこと。
少年の母親が既に亡くなっていること。
少年自身もまた世間では死んだ事になっている事などを。
生粋の愛国者であるヘックスは、助け出したそのままに、この天涯孤独となってしまった日本人の少年の身柄を引き取ったのだ。
大切な同盟国の生まれである少年を放り出すなど、彼女の持つ強すぎる愛国心が許さないからだ。
しかし本当にそれだけであった理由は、ある時を境にして変化する。
偶々、保護していた少年の就寝に付き合っていたとき、彼の少年の口より漏れた一言によって。
お母さん──。
お母さん、母親、それを他ならぬヘックスに対して少年は求めたのだ。
テロ容疑者と見なせば次々と問答無用に自分と同じ人間を処分してきた血まみれの女に、少年は母の温もりを求め来たのだ。
母親──それを自分に当て嵌めたとき、これほどそぐわぬ事もないと彼女は考えていた。
人を殺す仕事に就く、自ら進んでその仕事に就いていた彼女にとり想像の埒外にあったそれは、悩みなど無く仕事に励む彼女に僅かばかりの変容を与えていた。
その時はまだ彼女自身に自覚は無かったが、部下曰く、ヘックスは柔らかくなったのだという。
テロ容疑者と見なせば無差別無慈悲に殺害するだけだった今までに対し、テロリストとされている者であってもしっかりと相手の容疑を確認してから処分の判断を下すようになったのだ。
その変容はまるで、母として恥ずかしくないようにしておきたいという行動のようにも感じられる変化で、無差別無慈悲から、少しばかりの区別と慈悲が生まれていた。
そして、それが大きな波となって彼女自身が変わったと己を自覚したのは、そう。
「さぁ、良い子にはご褒美ですよぉ」
こういう事を、始めるようになってから。
「欲しいでしょう。おっぱい」
言うやいなやヘックスは少年と共にベッドへと転がり込む。静かな微笑みを浮かべる嬉しそうなその姿に、幾人ものテロ容疑者を愛国心に従い殺し続けて来た殺戮機械のような非情の女と=である事など、誰が窺い知ること適おうか。
母親を求め来る少年の望むままの姿。喜怒哀楽が殆ど無いに等しい女の中に如実に表れた変化は、彼女の部下で構成された荒くれ集団ながらもプロの戦闘員の部隊『カットスロート』でさえも動揺するほどに大きな変化なのだから。
少年とヘックスの二人分の重みに軋みをあげるベッド。ヘックスはそのベッドの上で少年を離し、上体を起こしたまま、自らのシャツを脱いでいく。
一枚しか着ていない青色のシャツが脱がされれば、その下はもう黒いブラジャーに包まれた二つの母性の象徴が実る胸部。
細身でありながらも引き締まった腹部と共に、その母性をも目にした少年の頬が赤く上気してくる。子供とは言え男。母を求めているとは言え男。少年の男の部分も煽り立てられるように反応を始めるのだ。
下着一枚を残した上体はそのままに、ヘックスは少年の手を掴み、囁く。
「でも、そんなに飲みたいのなら自分の手で取りましょうね」
「え、自分の手で?」
「そうよぉ。あなたのこの手で私の下着を取るの。いつも見せているのだから自分で出来るでしょぉ」
確信を以ての言葉は、母親として我が子に言い聞かせるかのように、優しく少年の耳を撫でる。
「赤ちゃんだって目の前に置かれたコップくらいは手で取れるんですよ。それともあなたはおっぱいを飲むときにいつもいつも私の手で準備してあげないと出来ないような生まれたての子ですかぁ?」
「う、うん、違う……」
「でしょう? だったら、この手で」
ヘックスが掴んだ少年の両手が彼女に引っ張られ、彼女の肩に当てられる。
肩に置かれた手はパーの形に広げられたまま、その小さな手の平にはブラジャーの肩紐が当たっていた。
「さあ、その紐に親指を引っ掛けてみなさい」
「えっと、こう……かな」
誘導に従う少年の親指が、彼女のブラジャーの左肩側の紐の下へと差し込まれた。
「左だけじゃ駄目よ。右も」
「う、うん」
続き、右肩の紐の下へ。そうして伸ばされた小さな手が両の紐を捕らえると、彼女は続けて指示を出す。
「そのまま外側へ引っ張って頂戴。そうすれば紐が肩から抜けますからね」
「分かった」
指示を受けた彼の小さな親指と人差し指の間に挟まれた紐が左右へと引っ張られ、腕から抜かれていく。
紐が落ちれば布が下がる。
布が下がれば拘束されていた胸部の布も同時に下がり、それは豊かな母性が解放される事を意味していた。
「……」
膨らみの頂点に色付く桜色と、その突端が、少年の目に止まる。ヘックスがこのブラックサイトに居る時にはいつも飲ませてもらい、口に含むその場所は、変わらぬ美しさを誇り、彼の目を釘付けにさせている。
口を開こうとする少年。彼はこれを目の前に出されると自然に引き寄せられるかのように吸い付いてしまうのだ。子が母を、母性を求めるのは本能。本能は幼子を突き動かそうとする。本能の赴くままに欲しているのだ。だがしかし、それはすんでの所で止められてしまった。他ならぬ母──ヘックスの手で。
「ストップ。ついでですからね、もう少し行きましょう」
「もう少しって……?」
「無用な物を取り払ってしまうんですよ。さあ今度は私に抱き着いて、私の背中に手を回しなさい。下着の生地に沿ってですよぉ」
「……うん」
これから飲もうと意気込んでいたところを止められ不満げに戸惑う少年は、小さな体躯を彼女の大人の身体に重ねるようにして押し付け、抱き着きながら、己の手をその布地に沿わせつつ彼女の背へと回していった。顔に当たる豊かな膨らみの柔らかさと温もりに目を細めながら思う。この先になにがあるのか? 少年はヘックスの背を隠す長い髪を掻き分けていく。柔らかく艶のある髪の毛が小さな指と指の隙間を滑り抜けていく感覚が伝わる。
この感触を味わう先で辿り着いたのは、左右反対に回していた自分自身の手の指だ。ヘックスの髪を絡みつかせながら右手と左手の指が触れ合っていた。これでどうするのだろうか? 自ら抱いた疑問に答えを出したのは、やはり少年を包み込むような母の言葉であった。
「上手上手。そこに、私の下着のホックがありますね?」
指に絡まる髪の下。布越しに沿わせた手には彼女のブラジャーのホックが当たっていた。
「あるよ」
「それを外してください」
「外す、の?」
「ええ外して頂戴。出来るでしょう?」
出来るか出来ないかで言えば勿論出来る。少年は子供とは言え、たかがホック一つも外せないような幼児ではないのだから。
「うん」
了承の意を伝えたときにはもうホックは外されていた。全ての拘束力を喪ったブラジャーが、パサリと落ちる。
既に拘束を解かれていた張りのある胸部にはこれといった変化は無し。ただ彼女が無用と言った物、ブラジャーだけが取り外されたそれ以外には。
少年は背に回していた手を離す。指に絡まっていた髪の毛が解けていく。その際に何度か彼女の髪を撫でてみてはそのほつれを直していた。
「よく気の付く良い子ですねぇ」
自身の胸の狭間に押し付けられていた少年の頭を慈しみを持ち撫でるヘックス。
「僕がやった事だから」
「そう、良い子良い子。そんな良い子のご褒美をいつまでもお預けにしておくのはお母さん失格ですからねぇ」
言うや、ヘックスは少年の手をぽんぽんと叩き、もう良いですよとだけ伝えた。
「……」
もういいという彼女の言葉に、改めて手を離し彼女の身体の前に戻した少年は、そのままヘックスの左乳房に吸い付こうとして今度は自らが自らを止めた。あれほど欲していた物に対して抑制を掛けたのだ。ヘックスからして見れば妙な事である。彼は幼い。幼いからこそ欲望に忠実で、自分という母を求める事に於いては抑制を効かせることはほぼ皆無だというのに。
「あら? おっぱい要らないの?」
であるが故に彼女は尋ねていた。自らを律する意味とはと?
この問い掛けに対しての少年の行動もまた素早い物であった。
「ううん飲むよ。でもちょっと……ヘックス、いいかな?」
少年の手が下方へと伸びる。そこはヘックスのズボンの留め具があるところ。
「ん?」
彼女は興味深げに少年の好きにさせてみる。すると彼は彼女のズボンの留め具を躊躇いもなく外してしまい、ジッパーまで下ろしてしまったではないか。
「あら、おませさん」
にっこり。微笑みを浮かべるヘックスは変わらず彼の好きにさせてみた。こんな幼子がなにをしようとしているのだろうかと不思議に思いながら。
少年の手は止まらない。ズボンの前を開かせて、四苦八苦しながらズボンを引きずり下ろそうとするのだ。それも下着ごと掴んで。
だからと、彼女も彼を手伝うように腰や脚を上げては、脱がされることを受け入れた。
「きれい」
「そう?」
「うん」
露わにされたアンダーヘア。その下に隠された立て筋は僅かに開いている。ヘックスは美しい。その美しさを更に凝縮したような場所が其処であるのだと、少年は幼心に感じ取る。
感じ取りながら彼はその湿り気を帯びた立て筋の上の方、ぷくっと外に突き出したような形になっている部分を小さな人差し指で撫でていた。
「んっ──」
ヘックスの声。間延びした常の口調には無い鋭い声音に、少年の胸がどくんと高鳴る。
あまり聞かない彼女の声だ。精々がおっぱいを強く吸い上げているときに零れるくらいで、いつも丁寧ながらも飄々としたとらえどころのない口調が彼女の特徴とも言えるのだから。
この声を耳にした事で、元より赤く色付いていた彼の頬が色味を増していき、突然彼に触られ走り抜けた痺れた感覚に、彼女も少年同様に頬を上気させていた。
「あ……、いきなり、どうしたの。こんな事をしたりして」
少年がここを触るのはこれが初めての事。この場所はそういった行為以外ではあまり触れる事のない場所なのだから、ヘックスの“子”である筈のこの少年の場合は当然の事だろう。
なにせ年の頃10つほど。こういう行為を知るにはまだまだ幼く、早すぎるが故に。
だがそんな彼女の思いに自分の思いを重ねるようにして少年は口を開いて主張した。こういう行為に至ろうとするその原因を。
「ここを触るとね、ヘックスが気持ち良くなれるってみんなが言ってたんだ。他の人なら怒られるだろうけども僕ならヘックスも怒らないだろうって」
「みんなって、カットスロート?」
「うん」
「英語、みんなの言葉、喋れるようになったのかしら?」
「ううん。こう、身体の動きで教えてくれた」
少年はズボンの留め具を外して、ジッパーを下ろし、股間を触るような身振り手振りをしていた。
時には怒るような仕草も交えながら、少年自身を指差しては怒りを静める感じの動作も合わせて。
怒る仕草や怒りを収める様子を表す相手というのは勿論自分の事であろうとヘックスは気づく。
教えたのは自らの部下である荒くれ集団であり、P・O・O──アメリカCIAの準軍事工作担当官で構成された部隊、カットスロート。アフガンでもイラクでも持て余されるような始末に負えない者達。戦闘狂いの暴力的思考が殊更に強く、普通の戦いでは満足の出来なくなった者達。そうでありながらも、ヘックスという女性には忠実なる猟犬達である。その猟犬達は事もあろうに彼女の“子”に対して、大人の何かを教えていたのである。
別の意味でも本当に始末に負えない者達だと彼女は彼の説明を聞いて思うのだった。
「子供になにを教えているのかしらねえあの人達。本当に困った人達」
「でも、気持ち良くなれるんでしょ?」
「ええ、そうねぇ。確かに気持ち良くはなれますねぇ。いまの場所以外にも、この立て筋全体の何処を触られても大体気持ち良くなれますよぉ」
彼女は少年に脱がされた事で露わとなった自分自身の下半身、特に股間部を指差してはなぞる仕草をする。
知識として識ってしまっている以上は説明しない訳にも行くまいと、張り付いたような笑みで教えるヘックスに少年は。
「あのね、それじゃ、おっぱいを飲んだ後に、僕が触ってあげる」
もじもじ。頬を上気させて言う。こと大人のお話。照れ臭いこともあるだろう。
だがヘックスが気持ち良くなれるというそれを以て、少年は勇気を出しているのだ。
「……」
そんな少年にヘックスは、濁ったような黄土色の瞳を僅かばかり大きくした後、良い子良い子と眼前の少年の頭を撫でた。
「良い子」
「えへへ」
「良い子良い子……。良い子だけれどおませさん。えい」
「あっ」
そうして恥ずかしげに笑っていた少年の身体を引き寄せては、彼のシャツを強引に脱がせていた。
こうなればもう彼女の側としてもどうとでもなれという話なのだ。
「アハアハ。アハハハ。そういう事だったら一緒に裸になっちゃいましょうね」
「え、僕も?」
「そうですよぉ。お母さんと赤ちゃんは一皮剥けば裸なんですからねぇ。ほら立って下さいね。下も脱がせちゃいますから」
「う、うん」
言われるがままベッドの上で立ち上がる少年。そんな彼のズボンを、彼が彼女にしたように下着ごと引きずり下ろすヘックスは、上半身だけを起こしていた体勢から一度膝立ちの体勢へ。
「ほーら、裸ん坊さん」
「ヘックスぅ……」
衣服を脱がせて裸にさせれば、今度は彼の少年を抱き締める。
ぎゅっと強く抱き締めると幼い胸板に豊かな乳房が押し付けられて、少年の股間の物が即座に反応し反り立つ。
「……おっきくなった」
「そうですよぉ。お母さんとは言っても私とあなたには血の繋がりがありませんからねぇ。おっきくなっちゃう事だってあるんです。別に変な事じゃないので気にしないで下さいねぇ。そんな事よりもそろそろおっぱいのお時間ですよぉ」
ヘックスは膝立ちの体勢から少年を離しては、そのまま膝を折り曲げて正座になると、自身の膝をぽんぽんと叩く。
ここに座れという指示だ。少年は左向きで仰向けになる。温かく柔らかな彼女の膝の上へ。
そうして降り来た少年の身体。彼女の腕は彼の背中を支える形で固定され、上体を少し前屈みにさせると彼の頭を抱き寄せる。ようやくの事で授乳の時間と相成った。
「はい、おっぱいですよぉ」
差し出される左の乳房。少年の手がその大きな乳房を優しく掴む。
柔らかな弾力の中へと微かに食い込む小さな指は両手合わせて10。
乳房を捉えられたヘックスの顔には慈母の表情が浮かんでいる。
そんな彼女の乳房に少年の顔が近づけられていき、唇が開かれて、桜色の乳首が彼の口に含まれた。
「ん……、ん……」
少年の声。んくんく。ちゅうちゅう。少年は赤ん坊のようにヘックスのおっぱいを吸いゆく。
柔らかな乳房を掴みながら舌先で乳輪をなぞり、硬く尖る張り詰めたような乳首に唇を吸いたてて。
男がそういう行為に出るときのように胸を揉みし抱く事もなく、ただ両の手でしっかりと乳房だけを掴みながら。
お母さん、お母さん、きっと今この時に口を開けば彼はヘックスをそう呼んでいるだろう。
出ない母乳、出る事はない。当たり前だ。ヘックスは妊娠などしていないのだからして。
だが、それでも美味しかった。甘く広がり鼻腔を擽る彼女の匂いが。乳こそ出ずとも甘酸っぱく柔らかな彼女の母性が。
少年にとっての何よりの御馳走となっていた。
滑る舌、或いはさらりとした後味の残さない舌がヘックスの乳房を這い回る。
乳首の上を、乳首の下を、乳輪を撫で回しては、また乳の頭を、その頂点を搾るように。
「ふぁ……ぁ」
ヘックスの声。
「ふ、ぅぅ……あ……んっ」
吸われるおっぱいから出ないはずの母乳を吸い出されている感じがして、その気持ち良さに口を開いて呻く。
乳房を濡らす唾液の感触、舌が這い回る感触を味わわされながら。
「良い子、良い……子。は、あ……」
欲情に逸った男に吸われるような乱暴さはない。優しく扱われる心地良さだけがある。
乳飲み子のように、赤子のように、彼は吸い、ただ吸われるがままに彼女は身を任せる。
「ちゅう、ちゅう──」
「あふ、ぁ……そう、そんなに欲しかったの……可愛い子……、飲みなさい。私のお乳を……好きなだけ」
母を求める子への授乳──これはそれと同じ物だ。おっぱいは出なくとも。本当の授乳とはなっておらずとも。これは疑うべくも無く授乳であった。
「良い子……、良い子……。良い子、ですねぇ……本当に、良い子……私の子……、私だけの、子……」
彼女は少年への返礼として彼の頭を撫でる。血の繋がりこそは無い物の、確かな我が子である少年の頭を慈しみながら撫でる。
黒い短髪の中に指を這わせて、彼の頭皮に直接触れるかのように。
幼子は乳房を掴み、吸い。母はおっぱいを吸われる。其処にあるのは正しく母子の姿であった。
◇◆◇
プ……プルルルルル。
ある満月の夜。
衛星電話の着信音が、静かなブラックサイトの夜に響いていた。
「はい、もしもしぃ?」
電話の持ち主は無表情な顔のままに通話ボタンを押した。
「あら、これはご無沙汰してます」
通話はなされる。掛かって来た相手との通話が。電話の持ち主とその上司の通話が。
「すみません、仰る意味が」
電話の持ち主は無表情を崩すことなく通話を続ける。
「なるほど、オペレーション・アンダーシャフトは彼女に関する作戦でしたのね? 確かにココとは確執がありましたが、お尋ねのようなことは決して……、それに私も今は少しばかり任務に支障をきたす身の上ですので、お尋ねのような事をしている余裕も意味もありませんので。はい……ええ元気ですよぉ私の“子供は”……。はい、それでは」
短い通話はそれを以て終わりを告げた。
長くも短く。深くも浅い。そんな通話は特別なさしつかえもなく終わった。
「アハアハ。さすがねぇブラック課長。ココへ殺し屋をプレゼントしていた事まで全てお見通しだったなんて」
それまで無表情であった電話の持ち主は初めて笑う。どうでも良いとばかりの笑みであったが笑っていた。どうでもいい、本当にもうどうでもいい事なのだ。
「でも、でもそれはもうおしまい。私にはココ・ヘクマティアルに拘わっているよりももっと重要でもっと大切な、やらなければいけない事が出来たんですもの。大事な大事な子育てが私にはあるんですからねぇ。だから課長が御心配なさるような事はなにもないんですよぉ。これから先もずぅっと」
一児の母は一人呟き微笑みを浮かべる。
暗い微笑みでも、張り付いたような微笑みでもない、人間らしい微笑みを。
一人の少年を拾った事で浮かべられるようになった慈母の微笑みを浮かべていた。
施設の彼女の部屋で眠る愛すべき我が子に向けて。
一人の準軍事工作担当官と、一人の武器商人の道が交差する事は最早無い。
「早く戻りましょうか。あの子が寂しがっているといけませんからね」
満ち足りた月の下で満足な微笑みを描く女性の目には、もう愛しい我が子の姿しか映っていないのだから。
「あの子におっぱいを飲ませてあげないと……。その後はあの子の望むように私を抱かせてあげて……。アハ、アハハハ……愛し子との子……、愛しい愛しい私の子供との子を儲ける……、私は母親を兼ねた母親になるんですねえ。こういうのって、なんていうのかしら」
魔女は母でもあり、そして尚深き母親となったのだから。
愛し子の望むとおりに、愛し合う夫婦にして、愛し合う母子にして、愛し合う母子の“子”の母になる。
それは幸せなるエピローグ。それは幸せなるプロローグ。母子が望み、そうするのだ。
幸せなる日々へと向けて。
『ヘックス……、何か知らないけれど用事は終わったの? だったら早く戻って来てよ』
無線通信が入る。その無線機の無線とは、息子が手にしている無線機からの物だった。
『僕、待ちくたびれたよぅ』
さえずりの様なか細い声が無線機の向こう側から聴こえる。
母を待つ子の声。女を待つ男の声。妻を待つ夫の声。彼女はその声に益々笑みを深めて応える。
不安にさせないように、今すぐいくから待ちなさいと。
「待っててくださいねぇ。今から戻るからそれまでの辛抱。お母さんを待っててくださいねぇ」
『早く来てね……』
「はいはいゴメンナサイ、もう向かってますよ」
魔女とその愛し子は、最初の一歩を踏み始めた。
「私のかわいい寂しん坊さん」
この穏やかなる満月の夜に……。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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コードギアス
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コードギアスR2
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此花トゥルーリポート
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FF4×FF6
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カオシックルーン
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学園黙示録
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ルパン三世 ワルサーP38
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幕末風来伝 斬郎汰
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ニードレス
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ヨルムンガンド
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少女少年
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北の告発
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サラダデイズ
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クレセントノイズ
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ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
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ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
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遊戯王GX(十代×カミューラ)
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魔装機神(マサキ×モニカ)
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椎名君のリーズニングファイル
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RAVE(ハル×絶望のジェロ)