※この作品はR-18です。

二次創作SS集   作:夜半の月

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天野こずえ先生作:クレセントノイズの二次創作。

羽崎拓×エイシェト

当方のあり得ないカップリングシリーズの一つ。

主人公である羽崎拓くんのお姉さんの心が閉ざされる時間・年月が、本作品の設定上、原作よりも大分と早くなっております。

拓くんは原作では優しい設定ですが、本作では恋敗れてショックを受けたばかりの幼い羽崎拓くんが荒ぶってます




クレセントノイズ
ソコニイル来訪者


 

 

 

 ソコニイル来訪者

 

 

 

 

 それは秋深まりし昼下がり。少年羽崎拓が11歳の時のことだった。

 

 学校の帰り道。拓が憧れていた近所のお姉さんが、拓の知らない男と公園で身体と身体を合わせているのを目撃してしまった。

 

 草むらの、外からは完全な死角となっている場所で、獣のように交接を交わす男女の姿。

 

 男が腰を押し出し、女が男を受け止めるという、男女が男と女の間柄にあることを示す行為その物。

 

 拓にとってそれは幼いながらも男としての嫉妬を覚える物、そして同時に男の情欲をかき立てる物であった。

 

 憧れのお姉さんが知らない男の人と体と体を合わせていた。

 

 男と女が愛し合う行為、セックスという行為についてまだよく分からない年齢ではあっても多感な年頃。

 

 それが男と女の感情を伴う何かだと直感で察し、幼い心は深く傷つき、屈辱と衝撃で塗りつぶされた。

 

 逃げるように家へと帰った少年は、自分の部屋で一人暗い感情に苛まれた。

 

 

 何故、どうして、お姉さんがあんなこと。

 

 知らない男の人がお姉さんの腰を抱き寄せながら。

 

 お姉さんは男の人の大きな物を挿れられて。

 

 

 声を上げていたお姉さん。あんな声、聞いたこと無い。

 

 濡れた声、息遣いは荒く、男の人の名前を呼んで頬を真っ赤に染めながら。

 

 

 どうして、どうしてあんなこと……。

 

 

 なに故と考えるほどに溜まりゆく澱み。

 

 黒くて気持ちの悪いなにか。

 

 湧き上がる憤りは解消することもぶつけ先も定まらないまま膨らんでいく。

 

 

 そうして答えの出ない疑問の果て、暗い感情で心が覆い尽くされた時のことだった。

 

 空から揺らぎ出てくるような声が耳に響いてきたのは。

 

 

“ほう、これはまたずいぶんと上質な……極上の負の感情ではないか”

 

 

 部屋の何処かから湧き出すかのような声が聞こえた。

 

 誰も居ないはずの部屋、自分だけの部屋に響く声音。

 

 それはとても冷たい、感情の籠もっていない物。

 

 

 やがて間を置くこと無く声と共に、フードの付いた白くゆったりとした服に身を包んだ。

 

 腰下まで届く淡い金色の髪を長く三つ編みに結い纏めた女が、天井付近から霞のように拓の目の前に現れたのだ。

 

 

 部屋の天井を背にして空中にふわふわと浮かぶ見知らぬ女。

 

 

 どこから来たのか。

 

 いつからそこに居たのか。

 

 何者なのか。

 

 何故空中に浮かぶなんてことができるのか。

 

 女自身にしか分からない事を朧気に思い浮かべた拓の目の前で、女は宙に浮かんだまま。

 

「お前の望みを叶えてやろう」

 

 と告げてきた。

 

 

 叶えてやる。

 

 何でも言え。

 

 欲望を、願望を。

 

 望みをつまびらかにするがいい。

 

 さあ。

 

 誘惑のような言葉、その女の言葉に誘われるようにして心の中に黒い願望が浮かび上がってくる。

 

 抑えようとしても抑えられない強い願望が暗い欲望となって心の奥底から滲み出してくるのだ。

 

 思い浮かんだのは、今日の出来事。

 

 今視たばかりの景色。見たくもなかった知りたくもなかったそれは。

 

 憧れのお姉さんが男とセックスを交わしていた光景だった。

 

 

 思い出したくもないのに思い出す。

 

 消してしまいたいのに消えることは無い。

 

 強烈に焼き付いてしまった記憶は小さな心を煽り、暗い想いを燻らせるのだ。

 

 

 お姉さんは気持ちよさそうだった。それはもう言葉に出来ないくらいの甘い表情。

 

 自分は男だ。男だけれどそれでも分かる。

 

 お姉さんは気持ち良かったのだろう……きっと。

 

 その感覚こそ女性にしか分からない物であっても気持ち良かったのだ。

 

 じゃないとあんな声と、あんな表情、男の人を前に見せるはずがない。

 

 

 じゃあ反対に。反対にお姉さんとエッチを交わしていた男の人はどうだったのだろう。

 

 憧れのお姉さん、肩の上で切り揃えられた淡い栗色の髪をいつも風にさわめかせているお姉さん。

 

 きれいで、穏やかで、もの静かな笑顔が魅力的な清楚な年上の女の人。

 

 そんなお姉さんとの、エッチ。

 

 きっと。それはきっと。

 

 子供の自分には思い至れるべくもない心地良さではないだろうか。

 

 

 もし、自分がお姉さんとできるなら?

 

 もしも自分が望み、お姉さんが自分を受け入れてくれたなら?

 

 そんなありもしないことを考えながらも拓は思う。

 

 できるなら……、もしも叶うのならば……したい。

 

 自分もしてみたいと思わず考えていた。

 

 

 どんな感じなのだろう。

 

 どれほど気持ちが良いのだろう。

 

 憧れのお姉さんに自分自身を挿れ、お姉さんと一つになって想いを育むというのは一体どんな感じ?

 

 

 男としてお姉さんとしたいという欲望。

 

 好きだからこそ願い、男だからこそ抱く浅ましくも素直な欲望が沸いてきた。

 

 

 そんなことは普段の拓なら絶対に考えたりしないこと。

 

 純で初心な少年がけして思い至ることは無い男としての想い。

 

 だが、恋破れた瞬間であったこの時、拓は抑えきれない暗いものに心を支配されていた。

 

 嫉妬心――という、どうにもならない負の感情に。

 

 お姉さんと男の人がセックスをしているのを見てしまっていたから。

 

 なまじお姉さんに憧れを抱いていたその憧れの深さを物語るようにして暗い情念は尽きること無く噴出していた。

 

 

 どうしてあの男の人だったのか。

 

 なぜ僕じゃないのか。

 

 どうして僕はお姉さんとできないの?

 

 自分もしたい。

 

 お姉さんと想いを交わしたい。

 

 

 暗い嫉妬と負の感情から派生し生まれてきた願望。

 

 思えども出来るはずも無い。それは叶わない夢幻の現実。

 

 だって、あの男の人と想いを交わしていたお姉さんは、きっと僕になんてさせてくれるはずも無いから。

 

 お姉さんからしてみれば、僕なんてただの子供だもの。

 

 だから願望は願望のままに叶うはずもないのだ。

 

 

 それでも今、拓は誰かと想いを交わしたかった。傷付いた心が誰かを求めようとする。我慢できない気持ちは癇癪のそれと同じ。

 

 憧れのお姉さんを知らない男の人に盗られてしまったという一方的で、そしてどうしようもない男としての気持ち。

 

 

 幼心の嫉妬と欲望。

 

 

 体を一つにして想いを交わしたい。それはどれほど乞い望もうとも叶わない望みだ。

 

 恋求める憧れの人が、けして自分に振り向いてくれることはないのだから。

 

 しかしどうあってもしたいのだ。

 

 できないと分かるからこそ想いは膨らみ、拓の心の中で大きくなっていく。

 

 理屈ではない感情的な黒い情動。

 

 男としての欲望が幼い心を破らんと鎌首をもたげる。

 

 

 したい、したい、どうしても。

 

 この暗い気持ちをどうにかして昇華したい。

 

 望みを叶えて昇華してしまいたい。

 

 それなのに、それなのにお姉さんと……お姉さんと僕はできない。

 

 それは叶わないんだ。

 

 

 じゃあ、それなら。

 

 誰がいる?

 

 

 誰がいるのだろうか?

 

 

 僕は誰を求めればいい?

 

 

 誰かいないのだろうか?

 

 

 この暗く悔しい気持ちをどこへぶつければ。

 

 ぶつける場所にぶつけてしまわなければ僕は壊れてしまう。

 

 胸の奥がぐちゃぐちゃになって僕は潰れてしまう。

 

 理不尽な憤りをぶつけられる相手は居ないのか。

 

 

 どこに。

 

 どこかに。

 

 

 思い悩んだ数瞬の後、少年はふと視線を上げる。

 

 

 目に飛び込んできた物、それは空中でたなびく淡い金色。

 

 

 お姉さんの短い髪とは正反対の長い髪。淡い黄金色の長い三つ編み。

 

 淡くきれいな薄い黄金色の長い三つ編みが、風も無いのに空で波打ちたなびいて……。

 

 

 冷たい瞳が僕を見下ろしている。

 

 どうしてこの人はこんなに冷たい目をして僕を見ているんだろう。

 

 

 そんな目で僕を見ないで。

 

 

 心の中で叫んでも、彼女は変わらず宙で三つ編みを揺らめかせながら僕を嘲笑ってる。

 

 胸が痛い、とっても痛い僕を見て楽しんでる。

 

 

 熱い嫌な気持ちだった。

 

 恥ずかしくて消えてしまいたい気持ちだった。

 

 そしてとても悔しい気持ち。

 

 

 憤り、屈辱、情欲、欲望、ない交ぜになった暗い気持ち。

 

 それをぶつけるにはお姉さんが必要で、でもお姉さんはいなくて。

 

 お姉さんがいたとしてもぶつけられるはずもない。

 

 

 もどかしい気持ちが膨らんでいく。

 

 

 悔しい、痛い、もどかしい、恥ずかしい。

 

 色んな嫌な気持ちたち。今にも弾けそうな。

 

 それでもただ、僕の前には長い金色の三つ編みをたなびかせながら宙に浮く女の人だけがいる。

 

 

 フードの付いたゆったりとした白い服に包まれていても分かる豊かな肢体。

 

 大きく膨らんだ胸元はそれは柔らかく温かそう。すらりと伸びた手足は背に映る月明かりに影を作り。

 

 両耳に付けられた三つにばらけた長細いイヤリングが光、右頬には一筋塗られたドーランが映える。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 ああ――なんだ、――そこにいるじゃないか。

 

 

 ――なにを難しく頭を悩ませていたのだろう。

 

 

 ――ここにいるじゃないか、僕の想いを欲望をぶつけてしまってもいい人が。

 

 

 お姉さんよりもまだ年上、二十代は半ばから後半くらいの大人の女の人。

 

 

 拓は暗い瞳で目の前の女の人を見て思った。「いる」と。

 

 最初から行き場など存在しようもないはずの荒れた感情のぶつけ先がそこにあった。

 

 

 

 ソコニ。

 

 ソコニイルジャナイカ。

 

 

 

 思い気づけば口に出していた。

 

 

 

 “アナタトエッチガシタイ――。”

 

 

 

 願望を欲望を、願いを告げられた女が返したのは、唯々侮蔑の色を湛えた蔑みの目だった。

 

「この私……エイシェトとまぐわいたいだと?」

 

 たかがちっぽけな存在である小さな人間の子供が?

 

「戯けたことを」

 

 

 エイシェトと名乗った女は冷笑すら浮かべていない、汚らしい物を見る目を拓に向けていた。

 

 侮蔑の感情がありありと見て取れるような瞳だ。

 

 

 無論拓には関係なかった。

 

 蔑まれようと、冷笑されようと、この時の拓には関係なかったのだ。

 

 欲望のぶつけ先、悔しい気持ちの捌け口として彼女を捉えていたのだから。

 

 

 名前も知らない女ではない、たった今名前も知った女エイシェト。

 

 名前を知ったからなのだろうか。更にこの女を求めたくなる。

 

 恋破れたばかりの幼い心は、その情動を静かに暴走させていくのみでけして留まる事は無い。

 

「エイ、シェト?」

 

 

 口にしてみるととても響きのいい彼女の名前。

 

「エイシェト」女の人を呼び捨てたのも初めてだった。

 

「……僕は……、僕はあなたと……したい――エイシェト……エイシェトとエッチがしたいんだ……」

 

 確認のように尋ねる拓を、エイシェトは一笑に付す。

 

「ふん……、さかしく汚らわしい地上の人間風情が己が身に見合わぬ大それた願望を抱くか」

 

 愚かで汚らしい地上の人間の幼子、子供故に純粋なれどもやはり愚物に過ぎない生命体。

 

 よりにもよって高次の生命体である自身と事もあろうに地上の人間の如く交わろうなどと望むとは。

 

 思い上がるにも程がある、身の程を知らぬ愚かさだ。

 

 負の心を吸い上げるという当初の目的を忘れそうなくらいに彼女の心中がさめていく。

 

 

 しかし、彼女の予想に反してその精神エネルギーは相当な上物でもあった。

 

 心が傷付いたばかりで痛々しくも傷により弱った新鮮な精神エネルギー、負の感情が思いのほかいい。

 

 分不相応な愚かな願いが意外にも純粋さに磨きを掛けたようだ。この数瞬の合間に。

 

 

 拓の持つ精神エネルギーは彼女にとって良い意味での想定外。

 

 彼女の永い時の中で今までに見たことがない最上質な物。

 

 諦めるには惜しく、しかしその願いを叶える為に己が身を差し出すなど馬鹿馬鹿しい。

 

 そも、エイシェトにとって人間ごときと人間の男と女そのもののように交わる等と、戯れにもならない唾棄すべき行為でしかなく。

 

 ならばどうやってこの極上なる負の精神エネルギーを吸い上げようか。

 

 

 逡巡していた。

 

 高次の存在であると自負する自身とは異なる無防備な弱者。

 

 脆弱なる人間の幼子。

 

 そう見下していた。

 

 

 見下されていた。羽崎拓はちっぽけな存在だと見下されながらそれに気付かず、思い至ることもない。

 

 そんなどうでもいいことに思いを馳せる必要も無い。

 

 何故なら、もう決めていたから。

 

 この暗い欲望、身勝手な願望を彼女に押し付け叶えるのだと。エイシェトとまぐわうのだと。

 

 

 憧れのお姉さんを奪われた悲しみ。

 

 男としての悔しい気持ち。

 

 自身を嘲り笑う女の存在。

 

 その女に対する当然とした憤り。

 

 

 捌け口を求めるわだかまり。

 

 湧き上がる情念はやがて不可思議な現象を呼び起こす。

 

 

 それは拓にとっての祝福の音色。

 

 女エイシェトにとっての恥辱と絶望の序曲。

 

 

 眩いオーラが無力な幼子の背に浮かび上がった。

 

「なっっ!?」

 

 エイシェトが驚きの声を上げる間にも一つ、二つ、三つ。

 

 六対となった十二のなにかの揺らめきが拓の背に現れる。

 

 

 ごう、吹き上がる強い風。

 

 

 一瞬ばかりながら吹いた強風はしかし部屋の文物には何らも影響を及ぼさず。

 

 まるでエイシェトだけに向けられたかのように、ただ彼女の髪や衣服を大きく煽り揺らがせた。

 

 

 吹き抜けた風に身体ごと大きく煽られたエイシェトの瞳に、幼子の背から眩しい何かが立ち上る瞬間が映った。

 

「な…にっっ……?」

 

 拓の背に揺らめく金色のなにか。

 

 顕現したそれは確かな形こそ形成しなかった物の、恐るべきエネルギーの奔流だった。

 

 六対十二に見える揺らぎは大きな重圧を彼女に加えながらエイシェトの思考を奪い、彼女の行動を完全に封じ込めてしまう。

 

「なっ、あアア――?!」

 

 なんだ――、これは一体なんだ、なにが起きている?!

 

 この少年の背に立ち上るあの揺らぎは。

 

 この少年から発される強大で暴威渦巻くエネルギーは何なのだッ。

 

 

 自身の力を遙かに凌駕するであろう絶大なる力の唐突な出現に。

 

 エイシェトは知らず知らず、己でも気付かない内に、四肢と思考を凍り付かせてしまう。

 

 彼女の思考を塗りつぶした物、立ち去る――逃げようとすら出来ない程の思い、強い“恐怖”に彼女は意識を支配された。

 

 

 そうして無防備な隙だらけの女となってしまったエイシェト。

 

 怯えながらただそこに浮かんでいるだけの彼女。

 

 それは今、この瞬間においては最悪を引き寄せてしまうだけの愚行であった。

 

 

 仕方の無い話だ、彼女を責める者などこの場に誰かがいたとして皆無だろう。

 

 零の場に極限が現れたのだから。単純に彼女には運が無かった。彼女は運命に見放されていた。

 

 彼女は捕らえられるしか無いのだ。

 

 

 逃げず、また逃げられずにいるその女を見逃すほど、理不尽な力を顕現させた少年は甘くないのだから。

 

 目の前で立ち尽くすように浮かんでいた女の手を拓は掴む。

 

 ガシッ。

 

「ひぃッ……!」

 

 小さな悲鳴、目の前の女が発した声。先ほどまでの余裕を匂わせていた嘲りようが嘘のような怯えの感情。

 

 見ればその美しい美貌は恐怖に歪んでいる。

 

 囀る女を導くように引き寄せながら、拓は彼女をベッドへと押し倒す。

 

 とさ――。

 

「あうっ……!」

 

 女の身体が倒れた音。無理矢理押し倒したにしては軽く。

 

 女という生き物は、大人であってもこんなにも柔らかく軽い物なのかと錯覚しそうなほどだった。

 

 白いゆったりとした女の衣服。その足下まであるスカートを拓は静かに捲り上げていく。

 

 するり、するぅ、と。

 

「ひ、ぃ……」

 

 女は抵抗しない。否、抵抗できない。抵抗できず声を引き攣らせるだけ。

 

 怯えた表情のまま小鳥のように囀りながら女はただ震えているのだ。

 

 抵抗しない彼女に対する遠慮や躊躇いは、今の拓には無い。

 

 元より遠慮する必要の無い相手。

 

 望みを叶えてやる、そう言ったのは誰でも無いこの女自身なのだから。

 

 それもこちらを嘲り蔑みながらの瞳を向けて。

 

 

 ダッタラカナエテモラワナクチャ。

 

 

 獲物となった女のスカートは少年の手で止まること無く捲られていく。

 

 足首から膝、膝から腰、腹部まで捲り上げられ。

 

 女のすらりと伸びた脚、程よく肉付く太股。

 

 大きく丸みを帯びたお尻と細い腰と。

 

 少しずつ露わになっていく女の肌。

 

「あぁ、や……っ」

 

 一部を除いた女の下腹より下の肌全てを部屋の空気に触れさせながら、拓は最後の一部を暴く為に、彼女の下着を引き下ろし脚から抜いていく。

 

 肌に擦れながら摩擦に丸まりするすると脱げていく下着。白い純白の下着は綺麗で手触りはいい。この女によく似合っている。

 

 それだけにただ脱がせてしまうだけというのが酷く残念な行為に感じた。

 

 下着を穿かせたまま、下着の上から彼女の股間に口づけて。布越しに割れ目を舐め、吸ってあげたらどうだろう。

 

 そうしてあげたら、怯えている彼女も少しは気を落ち着かせ、或いは公園で男の人にされていたお姉さんのように怯えないまま僕に対して従順になるかも。

 

 そんな彼女の股間を僕は優しく舐めてあげたい。

 

 優しく舐めて彼女の股間の味を味わいながら、彼女を気持ち良くしてあげるのだ。

 

 

 怯えている彼女を征服する欲望と、彼女に優しく気持ち良くしてあげたいという彼本来の持つ優しさの表れ。

 

 同時に二つの感情がせめぎ合った……そんな気分だった。

 

 

 するすると降りていく下着。丸まりながら脱げていく白い布。

 

 やっぱり、この上からこの女の股間を舐めてみたかったな。

 

「っ……っひ」

 

 下半身を丸裸とされていく過程にあっても彼女はと言えば唯々無防備のまま恐怖に喉を引き攣らせるだけ。

 

 今は怯えてるこの女の人は僕が股間を舐めてあげたらどんな反応を見せてくれるかな?

 

 下着の上から優しく舐めてもいいし、直接舐めてもみたい。

 

 脱がしちゃった今はもう、直接になっちゃうけれど。

 

 

 女は、エイシェトは動けない。拓から立ち上る大いなるエネルギーを前にして心身を竦み上がらせたまま。

 

 彼女の眼前にいる少年の姿をした強大なる存在、強大ながらも確かな人間の子供の気配を持つ少年が。

 

 自身の下腹を裸にさせていく、裸にされてしまう様を目で見、肌で感じさせられながらも動けない。

 

「これが、女の人の……、エイシェトの……」

 

 

 縦に一筋の亀裂が入り、哺乳類の雌性外部生殖器の一部。交接器と分娩道とを兼ねる拡張性に富む粘膜性・筋肉性の管で、上方は子宮に連なり、下方は外陰部に開口。

 

 肉芽、クリトリスが可愛らしくついている。超常の存在と言っても、人間の女性と肉体的には何ら変わらないのだ。

 

 

 隠されていた彼女の股間が露わにされた。

 

 拒絶することも叶わないままに下着を脱がせられたエイシェトの前で、少年は自然に自身の衣服も脱ぎ始めた。

 

 エイシェトは半裸だが、男の自分は全て脱いでしまわなければ。男と女がまぐわうのはそういう事だ。

 

「――っっ?!」

 

 女はやはり動けない。

 

 服を、シャツを脱ぎ捨て。続きズボンを下ろし、下着も脱ぎ去って生まれたままの姿となり。

 

 子供らしい大きさ、それでいて雄々しさたくましさをうかがわせる彼の男を見せ付けられながらも。

 

 エイシェトは硬直した身体を動かすことも、逃げることもできない。その絶大なる力の前に怯え切って。

 

 

 拓は見る、女を見る。明らかな違いを。お姉さんとの違いを目に入れる。

 

 肩の上で切り揃えられた栗色の髪を風にさわめかせていたお姉さんとは違う。

 

 三つ編みにして一つに束ねられている、腰下まで伸びた淡い金色の長い髪を。

 

 高校生であるお姉さんの幼さを残した容貌に比して、妙齢の大人その物な女の容貌を。

 

 

 エイシェトという女は確かに美しくあった。が、そもそもそこに刺激を受けての今ではない。

 

 至極単純だ。

 

 したい。

 

 交接を交わしたい。

 

 交わりたい。

 

 女という物を知り、味わいたい。

 

 そんな情欲だけが今の拓を突き動かしていた。

 

 拓を高ぶらせ、拓の傷に触れてしまい、生贄となったのが偶々この女だっただけ。もし他の誰かであっても今の拓を受け入れてくれるのならば誰でもいいのだろう。

 

 でもこの女が現れた。自分の前に立ち、態々望みをと言った。だから思いのままにこうしている。

 

 暗い負の感情。同時に純粋で澱みのない気持ち。

 

 幼くも素直な心が生み出す暗い欲望が、男としてのやるせない悔しさをぶつけるべき女を。

 

 自分の行き場の無い欲望をぶつけると決めた女を目にしながら、拓はベッドで仰向けになったままの女の両脚を左右に開いて。

 

 脚の間に身体を入れながら、彼女の両脚を引き立たせ抱え持つ。

 

「ひい――っ!」

 

 両脚が持ち上げられる、膝を折り曲げさせられ、膝だけをベッドの上で立たされながら。

 

 彼女の膝の間に割って入ってきた小さな体躯に、彼女は恐れおののく。

 

 

 たかが人間ごとき。

 

 脆弱で下等な存在だと見下している人間ごときに無抵抗のまま。

 

「ここ」

 

 エイシェトは犯されるのだ。

 

 この幼い少年の欲望に。

 

 幼くも強大に過ぎるその力を目覚めさせてしまった代償として。

 

 誰が悪い?

 

 最も愚かだったのは、この羽崎拓という名のパンドラの箱を開いてしまったエイシェト自身だろう。

 

 彼女は、その代償を払わなければならいのだ。

 

「ここ、だよ、ね?」

 

「あ……!」

 

 自分が発現させている暴威を緩めなけければ、彼女を怯えさせたままとなってしまう。怯えた女性とまぐわうよりも、優しく自然のままにまぐわいたい。拓は拓なりに愚かな女──エイシェトとのまぐわいを、心地の良い物にしたいと考えていたのだ。

 

 そんな考えを彼女に身体で教えるべく、力を発現した名も知らぬ力を緩める。

 

 瞬間戻るエイシェトの手足、肉体の感覚。ただしそれは彼女に恥辱と怖れを与える誘い水でもあった。

 

「ここ、なんだよね?」

 

 彼女の股間に華開く淡紅の割れ目。ひくひくと蠢いていて拓が見る限りとてもとても綺麗に思える赤みがかった鮮やかな桃色。

 

 優しく舐めてあげようと思った。唾をいっぱい塗りたくって、指で肉芽を優しく優しく撫で擦りながら、彼女を気持ちよくさせてあげてみようと思って居た。

 

 だけど、それよりも男の欲望が勝ってしまったのだ。でも、だからこそ優しくしてあげよう。最初は痛かったとしても、その後は優しく動いて、優しい、優しい、エッチを、この女の人にしてあげたいんだ。

 

 怖がらせてしまっている分だけ、優しくしてあげないとね。

 

‟女の子には優しくしなさい”

 

 学校の先生も言っているし、怖い声、音が聞こえた時、僕だって誰かに優しくしてもらいたい。

 

 だからいま、僕がこの女性を、エイシェトを怖がらせてしまっているのなら、僕が優しくしてあげないといけないんだ。優しいエッチをいっぱいしてあげて、もしも疲れたのなら僕のこのお布団で寝させてあげて、起きたらまた優しくエッチをする。エイシェトに気持ちのいいエッチをいっぱいしてあげたいなあ。

 

 決定的にズレた考えを持ってしまっている拓は、それに気付きながらも強大な力に、力酔いをして考えが固定化されてしまっていた。

 

 さあ、始めなくちゃ。僕とエイシェトの気持ちのいい時間を始めなきゃ。二人で一緒に気持ち良く、心地よくなって、一緒にお布団で寝よう。

 

 小さくも強大と捉えてしまった存在を前にして、恐怖と緊張で薄く開いてひくつく彼女の割れ目に、雄々しく猛った彼の男が添え当てられ。

 

 ずっ――と、男が差し挿れられた。

 

「いぎィ――ッッ?!」

 

 静かだが確実な挿入。前戯も無くの挿入。エイシェトは今生まれて初めて自身の膣に男の挿入を受けたのだ。

 

 股間の身中を押し割りながら進み挿れられきた、幼さに隠されていたたくましき男が、エイシェトの膣肉を確実に押し割りながら奥へ奥へと挿入っていく。

 

「はあっ、あっ……、ああっ! アァァ~~ッッ!!」

 

 みち、みち、とエイシェトの膣は割れ目から内部に向かって閉じていた状態から開かれ引き裂かれていく。

 

 拓のたくましい男がエイシェトを犯しゆくのだ。

 

 もし拓に知識があれば彼女のクリトリスを擦り撫で、気持ち良くさせてあげる方法もあったろう。

 

 もしそれなりに知っていれば指で膣を解してあげたりも出来たろう。

 

 だが、僅か11歳の拓にそれを求めるのも無体な事。拓には方法論・知識として、結合させてから彼女を気持ちよく、そして心地の良いセックスのひとときを送るしか持ち合わせがないのだ。

 

「あ゛ッ、あ゛、あ゛あああ゛ァァァ―――――ッッ!!」

 

 身体の芯の内を逆向けに削られていく、肉を擦り上げられていく感覚。

 

 エイシェトは恥辱を味わいながらもそれに気を遣る余裕すら失い、一人の女として悲鳴を上げて喘いだ。

 

 

 刹那、ベッドに押し付けられる彼女の頭。背が浮き、拓の小さな身体を挟み込む両脚は伸び、エイシェトの豊かな身体が硬直する。

 

 男を挿入させられた“女”の反応。

 

 エイシェトの‟女”としての自然な反応。

 

「あ……、入って、いく……」

 

 ぬ゛るる……じゅぶううう。

 

 自然に、そうなるのが当たり前のようにして、拓の男はエイシェトの肉の割れ目に挿っていく。

 

 気持ちいい……。物凄い気持ち良さだ……。自分の男をエイシェトの肉の割れ目に挿れていくだけで味わえる得体の知れない快感。

 

 幼い少年が初めて味わう女と一つになる快感だった。

 

 我慢しがたいほどの快感は、エイシェトの膣肉の内部を割り裂きながら奥へと進んでいくほどに、暴威的に強くなるようで。

 

 エイシェトという女の素晴らしい味と心地良さに、彼の性的欲求は高みを目指して邁進するのだ。

 

「ぎッ、い゛ッ、イイ゛―――あっ、あっ」

 

 女の股間、その真芯を縦に開いた割れ目。

 

 子供の知識としては大凡。男としては本能的に分かってしまったそこへ、自分の男を宛がい。

 

 躊躇いなく差し入れていった拓は、彼女の中の軟らかい肉と、その温かさと湿り気を感じながら、先端から首まで。

 

 首までから竿へと止まること無く埋め込んでいく。

 

「ふ、ううう……きゅって、なってる……締まって、る」

 

 侵入させていく男根に絡み吸い付く肉の割れ目。

 

 奥までまだ空いている割れ目の内側が、初めて挿れられた異物を拒絶するかのように窄まった。

 

「ダメ、だよ……僕は、貴女とエッチ、するんだ」

 

 肉の圧迫を強めの挿れ具合で無理矢理押し開ける。

 

 奥に挿れてしまいたい、エイシェトの奥を堪能したい欲望を添えて。

 

「は、ううッッ……、うくぅぅぅ~~~ッッ!!」

 

 する、している。いままさにエッチを……セックスという行為に及んでいる。

 

 嫉妬心、悔しさ、黒い感情をぶつけようと決めた相手。お姉さんとはまったく関係ない女。

 

 しかし彼女を求めずにはいられない情欲を、拓は彼女に擦り付けていく。

 

「あ゛ッ、ァァ゛ッ……ッッ」

 

 口許よりこぼれ落ちる様に濡れたエイシェトの声音が響く。

 

 立てさせられている両の膝の先をつま先に掛けてまで張り詰めさせながら伸ばされながら、彼女はぴくっ、ぴくっ、と両の脚を痙攣させていた。

 

 意識的ではなく反射的に反応した身体。

 

 本来必要としない男女のまぐわい。エイシェトたち振夜の来訪者には必要のない行為。男と女、その性別があるだけだ。

 

 幾千、幾万、幾億。永劫に等しい終わる事なき彼女の生で初めて受けた男からの交わりが。

 

 男を挿れられているという感覚が、自然な形で彼女の喘ぎを誘い出す。

 

「あっ、ああっ……ッッ、あッ!」

 

 濡れた声と共に結合部の内部が、深く交わり始める拓とエイシェトの股間は水気を帯びさせ。

 

 彼女の内部から蜜を、彼の先端より先走りの液を滲み出させてはしっかりと濡らし合っていく。

 

 せめて少しは痛みも引こう。お互いに。何せ拓自身が初めての行為。皮もまだ被っている。男としての皮が。

 

 はっきり言えば痛い。とても痛かった。ずるると向けるその瞬間は拓が絶叫を上げそうになったほど。

 

 だが、エイシェトの方がもっと痛い中、幼いながらも男である自分が弱音を吐くわけには行かず。

 

 結果としてずるりと剥ける瞬間を味わいながらもぐっと堪えて声を上げずの我慢を強いられたのだ。

 

 女の、しかも強気で勝気なエイシェトを前に弱音は吐けないのだ。

 

「は、ああッ、ぁぁ……っっ」

 

「もう、ほとんど入った」

 

 夢中で挿れて、気付けば竿は幹近くまで埋められ、拓とエイシェトの股間同士の距離を限りなく縮めていた。

 

 幹はあらん限り硬くなって、腰を押せば抵抗を受けながらも彼女の割れ目奥に通せる形となり。

 

 先端から竿、全体を締める柔肉も、猛々しい男を留めることなど出来ず。

 

 硬い男の進みに併せて左右に分かたれ押し開かれていった。

 

「あ゛ッッ……、あ゛ッッ……!」

 

 あらん限りの悲鳴と喘ぎ以外の声音を出せないエイシェトは、侵入の止まらない男によって秘肉の奥を開かれていく感覚に身体を強張らせた。

 

 地上の人間と質を同じくして語ることのできない彼女だが、彼女も女であることに変わりはない。

 

 地上の人間とは異なる存在の者であろうとも彼女は女なのだ。

 

 女である以上は己に挿入ってくる男を受けて平常で居られる筈も無し。

 

 ただ男が入ってくる。それだけでこんなにも心と身体を乱されるのだと生を受けて以来初めて思い知った。

 

 その相手が矮小にして脆弱と見下す人間の、それも年端もいかない子供。

 

 

 進み来る男。

 

 ぶちっ……悔しさも羞恥も浮かぶ余裕すら無いままに、彼女の奥で何かが破られる感覚と痛みが迸った。

 

「い゛ぎぃ――ッッ!!」

 

 膜を破られた哀れな女を前にして、それでも男は止まらない。

 

 平常時の正気なら或いは違ったであろう彼の対応は、いま彼女の処女を味わうことで益々彼女を求めようとしていた。

 

 大きなエネルギーの揺らぎが彼女を求めて旋律を奏で出す。

 

 前奏が終わりを迎える。

 

「っく、う、キツいな、エイシェトの、中、でも……いくよ」

 

 少し力む拓。腰を前に押し出す。最後の一押しを深く。

 

 

 ずっ――、最後の一刺し。

 

 ぐじゅう、っと、水と鮮血がエイシェトと拓の結合部から噴き出す。

 

 硬い男は幹を収め、その根元までを埋め込んでは拓とエイシェトの股間を隙間無く重ね合わせた。

 

「あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛~~~~~~ッッッ!!」

 

 第三者が聞いていればそれはそれは哀れに聞こえる、いや確かに望まぬ性交を強いられているからこその哀れな悲鳴を女は上げる。

 

 濡れた声、濡れそぼった結合部。強く擦りあげられた柔肉。

 

 溢れ出すのは愛液と、鮮血と。エイシェトは地上の人間に犯されたのだ。

 

 愛液に濡れた内部が深く押し開けられ、肉を割り裂かれ深奥が突き上がる瞬間を感じて滲み出す。拓との子の少年とのまぐわいに愛液は必要だ。

 

 奥までしっかりと挿れられた熱く硬い男を感じながら、認める認めないにかかわらず。

 

『あ、ああ……この、この私が……地上の、下等な種族の、お、男に、こ、この、様なッッ……ッああ』

 

 エイシェトは自身という女が、人間と呼ぶべきか否かは強大なる力を持つ少年、一応は人間の男と、一つになったのだと理解させられた。

 

 まるで股間同士で口づけを交わしているかのように、隙間無く重なる二人の股間はしっかりとくっつき合わされ。肌同士の温もりが伝わっている。

 

 それは拓の黒い欲望が実った瞬間、負の感情が求めたエイシェトという女を今この瞬間しっかりと手折ったのだ。

 

 

 永劫の生の中で初めて処女を喪ったエイシェト。

 

 彼女は伸び切らせた両脚をぴくぴく痙攣させながら目と口を大きく開いたまま「ア゛ッ…、あ゛ッ…、」と、かすれた声を上げている。

 

 処女を喪った喪失感や衝撃、脆弱? 否、強大な力を持っていた人間の子供に犯されてしまった怒りや屈辱は浮かんでおらず。

 

 ただ自身の秘肉の中へ、秘裂の中へと奥深くまで男を挿れられ、子宮の入り口に先を吸い付かされるままに、快楽と痛みと怯えを綯い交ぜにさせられて動けないでいただけだ。

 

 

 男に犯される女。永い生で何度も見た地上の人間の浅ましく卑しく、淫らで汚らわしい行為。

 

 それを我が身で味わわされながら、それその物が織りなす光景とほぼ変わらぬ状態に今置かれていることを実感しながら、彼女の心を支配しているのはなお恐怖と、そして不思議な事に心地よさだった。

 

 怖い。恐ろしい。自身を一瞬にして滅せる力の持ち主に犯されているのだから当然だ。でもなんだ。この心地よさは、あ、ああ、心地いい。

 

 初めはいつもの戯れだった。地上階の人間の負の感情を吸い上げる為のいつもと変わらぬ。

 

 だが、見つけた極上の精神エネルギーの持ち主は強大なエネルギーを内包した怪物であった。

 

 人間の筈、気配も在り方も人間その物の筈だというのに、それは我が身に余る化け物だったのだ。

 

 天上の住人たる自身を小さな存在だと言わんばかりに強大な何か。

 

 

 そんな物に魅入られてしまった自分はどうされてしまうのか。

 

 無意識に感じ彼女の思考や身体の自由を奪う恐怖に、彼女は唯々動けないでいた。

 

 動けない彼女、だが拓まで動かない訳ではなかった。

 

「エイシェトの中、入ったよ……わかるエイシェト、僕を感じてくれてる?」

 

 きゅ、きゅう。きゅううううう。

 

 中に入ったと口にして伝えると彼女の中は少しずつ窄まり、柔く静かに彼の男を締めてきた。

 

 恐怖と男に挿れられている今という状態に彼女の身体が反応したためだ。

 

 その彼女の女としての反応に拓は嬉しさが込み上げてくる。

 

 そして同時にまだ未熟な彼の男の男。その締め付けは気持ちよく、気持ち良くも痛かった。

 

 だがここで痛いなどと言えない。エイシェトを相手にするには、常に彼女の上に立つ必要があるのだから。

 

「凄い……、柔らかくって、温かくって……、とても気持ちがいい、よ……エイシェトの中」

 

 余裕な様子でエイシェトの膣内を味わう拓は、その細かいざらざらとした肉壁までもをしっかりと味わっていた。

 

 ざらざらと触れ心地のいい肉の中、たまらず拓は根元まで射し込んでいた男を、首の所まで引いてみる。抜けてしまわないよう首までしっかり挿れたままに。

 

 エイシェトの肉と自分を擦れ合わせてみようと思ったのだ。

 

「はあっ、はっ……、あっ…!」

 

 挿れるときは予告して、動かすときはなにも言わず。

 

 独り言のような言葉に乗せて静かに動かされた彼の男。

 

 奥まで入っている頬張ったような首のところが深奥から離れ、硬い男が彼女の秘肉を削るようにして抜けていく。

 

 この一連の流れに、エイシェトは女として喘ぐことしかできない。そう、いま、エイシェトは一人の女となっているのだ。

 

「ああ、凄い……気持ちいい……エイシェト、気持ちいいよエイシェト……すごく、気持ちが良い……」

 

 そのまま抜け落ちてしまうのかと思う静かでゆっくりとした自然な引き。

 

 しかし引きは続けて挿りとなる。ギリギリまで引いての再挿入。彼女の最奥までの再挿入だ。

 

「はああっ――、ああ、う――!」

 

 挿入れば、また引き。引かれれば押し込んで挿入。頬張った先端は常にエイシェトの中で動かされて。

 

 彼女は静かに始められた彼からの抽挿に、女として自然なままに喘いでいた。

 

 嫌なくらい。否、味わい深いほどにエイシェトは自らは女なのだという事を味わわされる。

 

 その身体で、その思考で、エイシェトは女なのだと。

 

「あっ…、あうっ……、あ、ぁぁっっ」

 

 それは始め立てだというのにもかかわらず、あまりにも気持ち良く、心地よく、エイシェトを癒す。恐怖を鎮静化させるばかりか、心が拓を受け入れていくのだ。彼に身を任せたい、彼の抱擁を受けたい、と。

 

 気持ちいい……、心地いい……、どうしてだ……、どうしてこんなに……。

 

 こんなにも心地の良い物なのか。男と女のまぐわいという物は。

 

「ああっ、ああっ、あ―─」

 

 そして自然気付く。拓がエイシェトを気持ちよくさせている事に。

 

 強くも弱く、弱くも強く、けしてエイシェトを傷つけたりしないようにと優しいまぐわいに徹しているのだ。

 

 負の感情を吸い上げられようとしていたにもかかわらず、彼は私に優しくしてくれているのだ。

 

 自然、強張っていた身体の力が抜ける。このまま彼に身を預けてしまえば良いという感情が芽生えてくる。

 

「ああっ、ああっ、気持ちいい、気持ちいいっ、奥まで挿入って、私を、この私をっ」

 

 彼の名を知らないエイシェト。彼女は頬を赤らめ拓を見つめる。自分を気持ち良く、心地良くしてくれている男を。

 

 自分を気持ちよくしてくれる為の、優しいセックスを行ってくれるこの少年の名を、視線で尋ねる。

 

「拓……、羽崎拓……。それが、僕の名前だよ、エイシェト……」

 

 拓は本当に静かにゆっくりと前後に腰を動かして、優しく抽挿を繰り返す。抜ける寸前までから、エイシェトの子宮口までしっかりと挿れて。

 

 優しく、優しく、拓はエイシェトと一緒に気持ち良くなりたいのだ。その方がきっとセックスは気持ちがいいと思うのだ。

 

 エイシェトは願いを叶えてくれると言った。願いは叶っている。ならばその願いを叶えてくれた彼女の事もしっかりと気持ち良く。

 

 そうして一緒に気持ち良くなりたい。緩急付けて繰り返される抽挿にエイシェトの愛液が出て潤滑液となって二人のセックスの支えとなっていた。

 

 響く水音、淫らな音は、生のセックスが紡ぎ出す癒やしの音。拓とエイシェトのセックスは天上に届くほどに美しく、また艶めきときらめきを放っていた。

 

 男と女。拓は男。エイシェトは女。ならば抱き合わずに居る根拠は無い。抱き合わずに居られようか。

 

「あっ、あっ……、たっ……拓ぅっ、たくっ、わた、私っ……はっ、わたし、はっっ、は、ああっあ、気持ちいい、気持ち、いいっっ、ああっ!」

 

 挿入って、引かれて、拓は本能でそうしようと始めた抽挿で、彼女の割れ目の奥まで射し込んだり、手前に引いたりと繰り返しながら、彼女を気持ちよくさせつつ自分も気持ちよくなる。

 

「エイシェトっ、気持ちいいよエイシェト……、エッチ、気持ちいいねエイシェト……」

 

「あ、ああっ、ああっ! 気持ち、いいっっ!拓っ、どうしてこんなにも、気持ち良くしてっ、くれるのだっっ」

 

 ふと、布団を見る。エイシェトの腰まで届く長い三つ編み。淡い金色の髪がベッドに蛇のようにうねって広がっていた。

 

 その金色の長い三つ編みを手に取る拓。

 

 どうして? どうしてか。拓はエイシェトを気持ち良くさせて上げたいと思うから、それだけだ。

 

「長い、三つ編み」

 

 お姉さんの様な短い髪じゃない。

 

「私の、髪が、どうか……したのか」

 

 拓の変化、強大な力を封じ込めた事と、優しいセックスに、少し調子を取り戻したエイシェトは、自身の髪を持ち上げ、手より垂れさせているところを見て不思議に思い聞いていた。

 

 そんな彼女に拓は。彼女の長い三つ編みをベッドに寝かせる様に置きながら。

 

「ううん、なんでもない。エイシェトはエイシェトだって確認してたところ。それと僕はエイシェトを好きになったんだと思う、好きな女の子を……女の人を、気持ち良くさせて上げたいと思うのは……普通でしょ?」

 

 憧れのお姉さんは短い髪。エイシェトは長い髪。そのエイシェトと僕は関係を結んだ。セックスをしている。

 

 僕は、僕はもうお姉さんの事は忘れよう、良き思い出。これからも近所のお姉さんとして付き合う。

 

 そして拓は願いを叶えてくれた女性、エイシェトに惚れたのだろう。まだ未熟な精神が導き出した答えに過ぎないから確実とは言えないが、エイシェトに惚れた。これだけは言える。惚れた女を気持ち良く抱く。男の本懐を今彼は成し遂げているのだ。

 

「あっ、あっ、拓っ、少し、早くっ、なって、ああっ、ああっ、気持ちいいっ、心地良いっ、拓っ、何をするのだっ、何をしようというのだっ」

 

 結合部の動きが早くなるに増して、淫らな水も多く出ては彼女と彼の太ももを濡らしていく。エイシェトの肌には赤みが増し、汗が噴き出て、玉となった汗は彼女の艶めかしい肉体に沿って流れ落ちていき、シーツのシミとなる。

 

 拓はそんな淫靡なエイシェトを目に収めながら『美しいな』と感じ、益々腰の動きを加速させ、このまぐわいの果てを目指す。

 

「詳しくは知らないんだけどエッチの最後には射精っていうのをするらしいんだ。僕は惚れた女性であるエイシェトに射精したい」

 

「し、射精っ?!」

 

 無論、長き時を生きているエイシェトは知っている。まさか自分がその様な行為を受けようとは思ってもみなかったが。

 

 拓にとっては射精はお姉さんへの決別だった。短い髪のお姉さんに対して長い髪のエイシェトの髪を触ったこともお姉さんへの決別の意思。

 

 この射精を以てお姉さんへの決別とする。その相手はエイシェトを置いて他に居ない。自分が惚れた女を置いて。

 

「い、いいぞ、こんなにも、気持ち良くしてくれているのだっ、私に射精するが良いっ。こ、光栄に思えっ。私に射精を行う人間はお前が初めてなのだっっ、私とまぐわった人間もお前がはじめ、て、」

 

 心絆されていたエイシェトはこれを受け入れた。

 

 抽挿が早くなる。肉をかき分け、擦り上げる速度が目に見えて早くなる。

 

「あっ、ああっ、ああっ、拓っ、たくぅっっ」

 

 エイシェトの喘ぎも大きくなり、ベッドの軋みも同じく。

 

 夜も更けた振夜。振夜の来訪者にしてラビリンスの住人、エイシェトはその身に人間の精子を注ぎ込まれたのだ。

 

「で、出るぅぅっ、エイシェトぉぉぉっっ!!」

 

 どくんっ。どくんっ、どくんっ。

 

「た、拓ぅぅぅっあああああっっ!!」

 

 拓の腰がエイシェトの腰と重なり、投げ出されていたエイシェトの長い金色の三つ編みがベッドの振動に揺れ渦を巻いた。

 

 注入されていく精子はその全てが振夜の来訪者エイシェトの子宮へと入っていき、子宮口からどくどくと噴射され、彼女の胎内は白いどろりとした精子で満たされていった。

 

 拓の力に充てられた上での初めてのセックスに、力を失ったエイシェトは、拓のベッドに埋もれ寝息を立て始める。

 

 そんな彼女の長い三つ編みを掴み何度も撫でる拓。

 

 お姉さんへの想いは振り切った。

 

 だが同時にこの振夜の来訪者への想いが産まれてしまった。さあ、どうしよう。

 

「時間はたっぷりある。これから考えよう。僕が惚れた女性エイシェト……貴女が何者であっても、僕は貴女を放さない」

 

 まずはエイシェトの衣服の胸部を盛り上げている大きなおっぱいを揉んでみたいな。

 

 そう思った拓は眠るエイシェトの衣服の下に手を入れて、その大きな胸を捕え、柔々と揉み始めた。

 

「うわぁ、柔らかい、温かい、大きいなあ」

 

 乳房に食い込む五指。柔らかいから簡単に形を変える。乳首もつまんでみたらエッチの影響か、硬く勃起していた。

 

 綺麗な胸。柔らかい胸。豊満で優しい感じのする胸にご満悦な拓は。

 

「んっ、んうっ、んっ」

 

 と、気絶したまま喘ぐエイシェトを優しく愛撫し続けた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「制服良し、カバン良し、洗顔も良し、じゃあ行ってくるよ!」

 

 何もない空間。正確にはベッドに声をかけた拓。ベッドの上に声をかけたのだが。

 

「髪が無し。なっていないぞ」

 

 そのベッドの上から、空中から注意の声がかかる。

 

「わーっ! 頭ぼさぼさだっっ!!」

 

「ふんっ、私が直してやろう」

 

 そう言って降りてきたのは、一人の女性であった。この羽崎拓の部屋に住み着いている女性。

 

 腰下まで届く淡い金髪の髪を長く一本の三つ編みに結わえ、フードの付いた白く袖もゆったりとした服に身を包んだ女性が拓の頭を優しく触った。大きく膨らんだ胸が拓の男心を擽る。両耳に付けられた三つにばらけた長細いイヤリングが光を帯び、右頬には一筋塗られたドーランが映える。とても美しい女性。

 

 彼女、名をエイシェト。ミイラ取りがミイラとなる様にして、拓の負の感情を吸い上げようとし逆に拓に威圧され、犯されてしまい。気持ちのいいセックスを行われた挙句膣内射精まで受けた、振夜の来訪者である。

 

 拓との力量差から拓には逆らえないと、言われるがまま彼と一緒に住み、日毎彼とセックスを行わされ次第に情が産まれていった仲。

 

 今では羽崎拓とエイシェトは恋人同士となっていたりするのであった。実に恐ろしきは子供の純粋さだろうか。

 

 拓のエイシェトが好きという気持ちに嘘偽りは無く純粋だった。

 

 それが証拠に力尽くで気持ちを向けさせ縛る様な事を拓はしなかった。

 

 エイシェトが拓の物になろうと考えたのは彼の純粋な愛情があればこそだからだ。

 

「ほら拓、じっとしていろ」

 

「は、はい」

 

 エイシェトの持つ櫛が、拓のぼさぼさだった髪の毛を整えていく。

 

「地上階では、男とは言えども身だしなみは大切らしいな。私には良く分からん感覚だが」

 

「ちょっとずつ勉強していけばいいよ。まあ、エイシェトはそのままでもきれいだけどね」

 

「き、きれいか、そうか。それはいい、な。拓に言われると心地良い……。しかし、私が勉強とは……、……ま、まぐわいのようにか?」

 

「え、エッチはもう勉強しつくしたし。後は子供を作るだけだと」

 

「私は子供を作られる前提の中出しを受けているのだが。人間の女は膣内射精を繰り返されていれば子が出来るのだろう? 拓は私を相手にそれと同じことをしていると思うのだがどうなのだ?」

 

「う、うん、そうだけど、でも、振夜の来訪者でも子供出来るの?」

 

「私は女だからできるのではないのか?はっきりとは分からんがな。これからもこなしていけばいずれは子を授かるやもしれん」

 

「こ、子供かぁぁ~っ」

 

「なんだ拓は私との子を望んでいるのか」

 

「それは、もちろんだよっ。僕とエイシェトの子、僕は欲しいと思ってるよ」

 

「そ、そうか……では、私も子作りを頑張ろうと思う。意識して子を望みお前からの射精を受け入れよう」

 

「僕の、子供を、僕の赤ちゃんを、エイシェトが産んでくれる」

 

「それがどうかしたのか」

 

「ううん、なんだかとっても嬉しくって、ああ、僕の赤ちゃんをエイシェトが産んでくれるんだ。嬉しいな」

 

「子を産むとは母となる事だったな。私が子をこのはらからに宿し産み、父となる拓と母となる私の二人で産まれた赤子を育てる……不可思議だ」

 

「そんな事ないよ」

 

「確かに、下等種たる人間どもはそうして繁殖しているのだった。私と拓もその一つにならんとしているという事だけの話だな」

 

 エイシェトはまぐわいとは愛を紡ぐ儀式と考えていたが、拓とは真剣に子を作る行為だとも考えていた。

 

 女である自身が子を作り、産む。

 

 自身が子を産む。

 

 考えたことも無かった。

 

 ラビリンスの住人にはそも子を産むという事その物が無いのだから。

 

 だが、拓から行われるセックスの果て。自身はこのはらからに子を宿す事になる。何となくだが確信めいた物があった。拓の旋律とエイシェトの旋律が絶妙に絡み合い、子を成すという。

 

 ラビリンスの住人が、振夜の来訪者が人間と子を作る。拓は男でエイシェトは女、男と女であるならば可能なのだろうとも考えながら。

 

 エイシェトの持つ櫛が止まる。

 

「さあ、これで髪も整ったぞ。早く行かないと遅れるぞ」

 

「あ、はいっ、では行ってきますっ」

 

「ああ、行ってらっしゃい……と、ちょっと待て、忘れてはならぬだろう。私たちの愛の証だ──ん」

 

 言いながらエイシェトは拓へ口付けを送る。塞がれる唇。

 

「ん、んんっ」

 

 受け入れる側の拓も口付けを交わす。深く、何度も啄み合わせながら。お互いの唾液を相手の唇に塗りこむ拓とエイシェト。

 

 学校へ行く前のいつもの事。二人の愛の証なのだ。暖かく湿った唇同士は熱く触れあう。

 

 きっかり1分間、口付けを行った二人は唇を離す。

 

「忘れてはならぬだろう。私たちの愛の証を」

 

「別にキスをしなくたって僕はエイシェトを愛してるよ」

 

 口付けで表し言葉でも愛を告げる拓に。

 

「わ、私も愛してるぞ拓」

 

 こちらも言葉で愛を告げるエイシェト。言葉で愛を告げることも重要なのだ。

 

「くっくっく、くすくすくす、まさか、よもやこの私の口から不出来な人間が口にする愛などという言葉が出てこようとはお笑いだ」

 

 自嘲するエイシェトに拓は首を振り伝える。

 

「エイシェト……それは、それはね。けして不出来な事じゃないんだよ、エイシェトは愛する事を知ったんだ。僕を愛してくれた……、それはとても尊い事なんだよ」

 

 拓は言うと名残惜しそうにエイシェトの淡い金色の長い三つ編みを触る、何度も何度も触り撫で。名残惜しさを強調する。

 

「エイシェト……」

 

 拓はエイシェトのこの金色の長い三つ編みが大好きで良く触っているのだ。彼女も好きに触らせている。自分の体の一部が好かれるのは気分がいいから。

 

「学校から帰ってくるまでの一刻の離れだ。あまり深刻そうに捉えるな。私は拓の部屋で時間を潰そう。帰宅後はお出かけだな」

 

 ポンっと拓の頭に手を置いて自分の三つ編みを撫でてくれるのと同じように、拓の頭を優しく撫でるエイシェト。

 

 別れとは言わない。離れという。離れるだけで別れてはいないからだ。いつも繋がっている二人は夫婦のような関係にあった。

 

「うん、それもそうだね」

 

 エイシェトの三つ編みを手放しカバンを持つ拓。

 

「行ってくるよエイシェト」

 

「行ってらっしゃい拓」

 

 名残惜し気にエイシェトと身体を離した拓は、次に、机の上に置かれている写真盾を見て。

 

「行ってきます、姉さん──」

 

 呟いて部屋を出ていく。

 

「拓の姉、か……」

 

 エイシェトは机の上にある写真立てに写る少女の姿に、安らぎと、恐怖の、二種の感情を抱いた。

 

 あれはそう。一年前の事。家族が増えたんだよと、とある施設へ連れられて行き少女を紹介された時。

 

 かつて拓に感じた恐怖と同じ物を感じ取ったのだ。あの旋律は忘れえない。そして安らぎの旋律も。

 

“エーちゃん”等とも呼ばれた。今ではエーちゃんが普通になって居る。外見年齢も実年齢もこちらの方が年上だというのにな。

 

 拓曰く、お姉さんは私が拓の下へと来訪する少し以前に心を閉ざしたのだという。だからか、純粋な子供らしい安らぎと、純粋がゆえに発言する恐怖の二つの旋律を感じたのは。そして拓同様に強大なる力の持ち主であることも纏司であるからこそ気づけた。

 

 時々しか会えないが、拓の姉とはそれ以降も会っている。拓の姉はエイシェトの事を『たーくんのお嫁さん?』と、関係も知らないはずなのに的を射た発言をしたことがある。

 

『は、はは、姉さん凄いや。エイシェトは僕のお嫁さんだよ』

 

『やっぱりー! たーくんの事、よろしくお願いします』

 

 まるで幼児な拓の姉の言動に戸惑いながらも、エイシェトは。

 

『あ、ああ、任せてくれたらいい……、むしろ、私の方が任されているのだがな、この身は日夜拓に抱かれているのだから』

 

 と、おかしな面会をしたこともあった。

 

 ともあれ、纏司エイシェトは普通の人間が相手ならば十分に過ぎるほど強大な力の持ちぬしだが、拓や拓の姉といった自身よりもはるか上の力の持ち主の前では弱小者に過ぎない。それは拓やその姉の旋律に充てられて分かっている。

 

 いったい彼らは何者なのか。私と愛し愛され、日毎肉体同士を重ね合い、愛し合う羽崎拓という少年は何者なのだろうか?

 

「私は拓の子を産む……、拓と子を育み育て、永劫に愛し合うだけ……、余計な事を考えても詮無き事でしかない」

 

 部屋の外に出た拓のお祖父ちゃん行ってきますという声が聴こえ玄関の戸が開く音が聞こえた。

 

「……ふん、しかし本当に不思議な物だな。この私が天上のラビリンスではなく地上階に住み。人間と一緒に暮らしている……拓を人間のカテゴリーに含めても良い物かどうかというところはあれど、私は人間と暮らしている。まあ、ラビリンスでは最下級に位置する私一人消えたくらいで騒ぎにもならんが、な」

 

 ただこの生活も悪くない。何よりも、愛する羽崎拓と一緒に居れるだけでもう何も必要としない。

 

「愛……そのような無粋な感情を知ることになろうとはな。だが、愛を知った事に後悔はない。羽崎拓に愛を受けるこの纏司(エンジェル)エイシェトは幸せだと声を大にして言えるのだから」

 

 窓から見える愛する人、羽崎拓が登校する後姿を見遣りながら、エイシェトは長い三つ編みを払い微笑むのだった。

 

 

 

 

「エイシェトさんや」

 

 がちゃ。部屋の扉が開き、眼鏡をかけた老人が入ってくる。

 

 ふわふわとベッドの上に浮き漂っていた私を見る。

 

 浮いている事に特に驚きは見せず、ゆらゆらと揺れる私の長い三つ編みを視線で追っている。

 

 彼は私が人間ではない事も知っているし、寿命の存在しない特殊な力を持つ存在纏司だとも知っている。彼だけではなく彼の妻も。

 

 その上で孫、拓の嫁として迎え入れてくれている。拓に似て優しい老人だ。否、拓が祖父に似たのか?

 

 故にこの老人の、我が夫となる拓の祖父という事は、このエイシェトにとっても祖父となる老人の前で、宙に浮かぶという行為は、今更な話であった

 

「どうかしたのか?」

 

「いいえ、お茶を煎れたから、ばあさんと三人でどうかと思うてな」

 

 年寄り三人、静かにお茶タイムと行きませんかな等と冗談を放つ柄でもない祖父。

 

 年寄りというが、この三人で一番の年寄りは私なのだがな。人間は脆弱で一瞬しか生きられない生き物ゆえに仕方が無いか。

 

 ……くくく、その脆弱であるはずの人間に強大な力を持つ者がいて、その人間、羽崎拓に敗れ子を産まされんとしている私が言えた事ではない、か。

 

 それに今の私は、この生活を望んで受け入れている。拓の子も私は産みたい物と思って居るし、私は羽崎拓という男を愛しているから……。愛し、受け入れ、子を成そうとしているのだから。

 

「お茶、どうするかな?」

 

「……いただこう」

 

 私の返事に老人は、祖父は、にっこりと微笑んで部屋を出る。

 

 繰り返しになるかな、彼の老人、いや老夫妻は拓とエイシェトの、私たちの関係を知っている。

 

 子を産む、責任を取る、そんな話を老夫妻ともした。

 

 私が人間ではない事も。天上はラビリンスの住人、纏司である事も打ち明けた。

 

 そのうえで私は受け入れられている。拓の、孫の嫁として。

 

 幼くはあっても拓は立派な男の子だ。エイシェトさんと夫婦となる意味、分かるね?

 

 そう諭し、拓と私の婚姻を認めてくれた。子供が出来た、赤ちゃんが生まれた時は、子供の拓には育てるのは難しいが、大人のエイシェトさんや儂らがいるとまで言ってくれた。

 

 理解が良くていい人間なのだろう。良い人間、か。脆弱なる人間を、いい人間と感じるとは、私も変わったな。

 

「……」

 

 私は部屋を見渡した。

 

 拓の机に机に置かれた姉の写真。椅子。電気スタンド。

 

 ブラウン管テレビに、絨毯に。本に。六角錐を半分にした形の出窓。

 

 四段のタンスがベッドの足元にあり、ステレオがその上に鎮座している。

 

 そしてベッド。日夜私が拓に抱かれているベッド。拓とエイシェトが抱き合うベッド。

 

「見慣れたものだな……、この部屋も」

 

 今や拓の部屋ではなく私の部屋でもあるこの部屋は、もう数年来見てきた。

 

「もう、何年も私は拓と居るのだな」

 

 愛する拓と何年もの時間を共有し……。

 

「ふふ、良い物だな。愛し合うというのも」

 

 ただ、人間の拓には寿命があり、纏司の私には寿命が無い。

 

「それでも、私は……、拓が寿命に倒れても、拓だけを愛し抜く」

 

 覚悟はできている。疾うに。

 

「エイシェトさ~ん。茶が冷めちまうぞぉい」

 

 部屋の外からお祖父さんが読んでいる。

 

「今行くー」

 

 おっと。いかぬな、早く行かなければ。冷めた茶は美味しさが落ちるからな。

 

 

 




エイシェトと無事結ばれてからは元の優しい拓くんに戻ってます。

短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)

  • コードギアス
  • コードギアスR2
  • 此花トゥルーリポート
  • FF4×FF6
  • カオシックルーン
  • 学園黙示録
  • ルパン三世 ワルサーP38
  • 幕末風来伝 斬郎汰
  • ニードレス
  • ヨルムンガンド
  • 少女少年
  • 北の告発
  • サラダデイズ
  • クレセントノイズ
  • ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
  • ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
  • 遊戯王GX(十代×カミューラ)
  • 魔装機神(マサキ×モニカ)
  • 椎名君のリーズニングファイル
  • RAVE(ハル×絶望のジェロ)
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