※この作品はR-18です。

二次創作SS集   作:夜半の月

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おじさん×エクスプローダー

とくになにもないですが。


虐める奴は虐めてる人の名前なんて覚えてない

 

 

 

 虐める奴は虐めてる人の名前なんて覚えてない

 

 

 

 「はあ、はあ、はあ、畜生、なんだってこの俺がこんな目に」

 

 蒼井省吾は逃げていた。殺人者から逃げていた。そいつは一人暮らし、親戚にも見放された省吾の家に今日やってきた。

 

 胸は小さいようだが良い女だった、右目に大きなモノクルを掛け、腰まで届く黒い髪の大人な雰囲気の女。鋭い目つきがたまらない。

 

 あの目つきをひいひいと泣き叫ぶ目つきにしてやりてえ、早速家の中に入れ、ヤッてやろうと考えた。話も聞かずに一方的に。

 

 省吾はそういう人間だった完全に墜ちた畜生だった。だからこそ虐めていた、虐めるのに都合の良い田山薫を虐めていたのだ。

 

 別に誰だって良い、自分の憂さ晴らしが出来るのならば。それが偶然にも田山だっただけ、それなのになぜ俺はこんな目に合ってる。俺は社会の底辺じゃ無い。ゴミ共じゃ無い。社会の上位者に君臨しているものだ。

 

 彼は一つ大きなミスを犯していることに気付かなかった。彼の言う社会とは、高校生社会であって、大人の社会で通用すべき話しでは無いこと。

 

 ああ、そう言えばもう一つミスを犯していたな。それは、田山薫という男子生徒を虐め殺しておいて、自分に何の制裁も無いと思いきっていたところ。

 

 

 パンっ

 

 

 乾いた音がする。それと共に、左脚に激痛が走った。左膝を撃ち抜かれたのである。

 

 

 パンっ

 

 

 もう一つ乾いた音。

 

「ギャアアアアアアっっっ、いでえ、いでえよおおっっっ!!」

 

 もう片方の膝も撃ち抜かれた。まるで機械のように寸分違わず中心を。いずれにしてもこれでもう彼は逃げることも出来なくなった。

 

 彼が家に招き入れた人間は。冷たい目をしたまま拳銃を取り出すと、彼に向けて発砲したのだ。本物の拳銃だ。最初の一発は態と外した威嚇射撃。狩りの始まりの合図だ。

 

 彼は直ぐに気付いた、この街に根を張る殺し屋だと。この街はそんな街なのだ。

 

 コツ、コツ、コツ。殺し屋の女が歩いてくる。い、嫌だ、俺は何もしてないのに死にたくねえよォ! 虐めをするものなど虐めたことその物をわすれてしまうもの。それが省吾にも当てはまっていた。残念ながらそれだけの話しだ。

 

「お前にチャンスをやろう。最初にして最後のチャンスだ」

 

 ち、チャンス?!

 

「昔、お前が虐めていた生徒の名を言え。それだけでお前は生き残れる」

 

 む、昔虐めていた生徒? そんなのいたか? いねえよな? よしココは思いついた名前を。

 

「か、川上真次!」

 

 苦笑いで、愛想笑いで、超絶美人で冷たい目を持つ殺し屋に告げた。瞬間、パンッ、乾いた銃声と共に、顔面を撃ち抜かれ、省吾の時は永久に止まった。

 

 

 

「一文字も合ってない、か。虐めをして、虐め殺すなんてことが平気で出来る人間てのは、皆何かしらそういうものなのかもしれないな」

 

 近くで一部始終を見ていたおじさんは、手にしていた血文字の滲む紙を見る。

 

『○○復讐屋に依頼。蒼井省吾という男を殺して欲しい。但し田山薫という名を覚えていて反省していたら、見逃してやって欲しい。報酬は私の持つ全財産。すでに指定口座に振り込んである』

 

 お父さん、残念ながら犯人は一文字も覚えていなかったようだよ。虐めをする奴はみんなそうだ。

 

 虐めてる側の名前なんて覚えていないか、知りもしないのさ。そういう意味では復讐屋の方にも意味はあるんだろうな。救われない人の思いを救うっていう意味で。

 

「おじさん依頼完了したよ」

 

「そうか、いつもありがとうね。君たちばかりに働かせて、私は何も出来ない」

 

 エクスプローダーの頭を撫でるおじさん。優しく、優しく、髪を梳き通しながら撫でていく。

 

 禿げでデブ、六十前の中年。凡そ女にもてなさそうなこの男のこんな姿を見たら、世の若者が烈火の如く怒りそうなものだ。

 

「おじさんは表の仕事をしているじゃないか。それにおじさんには裏の仕事をする力が無い」

 

「私にも力があれば、君たちの助力が出来るんだがなあ」

 

「私が力じゃ不満足か?」

 

「そんなことないよ。エクスさんが力で私は嬉しいよ」

 

「ん……気持ちいい」

 

 おじさんは彼女エクスプローダーの長く艶やかな髪を優しく撫でてやる、すると何も掛けてない方の瞳も、モノクルを掛けている方の瞳も、気持ち良さそうに閉じる。

 

「私はおじさんが私の仕事を傍で見てくれているだけで力が貰える」

 

 世の男性には本当に羨ましい光景かも知れない。女性の方が、一般的なオーナーなら手に負えない恐ろしい殺人鬼・殺し屋のトップに君臨する女性でさえ無ければ。

 

「一つの命の値段が2000万、この男の命の値段など精々1万だと思うが」

 

 髪を撫でられながら辛辣なことを口にするエクスプローダー、そんな彼女を抱き締めて背中を撫でてあげるおじさん。彼女の顔は鬼灯のように真っ赤に染まっている。抱き締められるとは思わなかったのだ。

 

「想いの値段が2000万、するんじゃないのかな? 君の以前の言い分では。重い想いだよ。それだけ息子さんを愛していたのだろう」

 

「そうか……、そうかも、知れないな、──私は、わた、しも、おじさんを」

 

 中途半端に言いかけたまま、エクスプローダーの口が止まる。本当はその先が言いたいのに、言えない。口にするのが怖い。

 

(これが、怯え)

 

 おじさんを想うが故に知ってしまった感情は、彼女を更に強くするだろう。ただ、おじさんの前では弱くなってしまうかもしれない。おじさんに気持ちを伝えたいのに、怯えが邪魔をして伝えられない。おじさんには正式な婚約者である、相原軍是がいる。だからせめて愛人にでも……と。ああ、本当にエクスプローダー。最強の殺し屋と恐れられてきた女。

 

 お前は何を考えているんだ。中年の、禿でデブ、別に彼女は容姿なんて気にしない。おじさんのように、可愛らしい女の子なんて言ってくれて、本当に自分を怖がらないでいてくれる人であらば。殺気を向けても気づきもしないで、優しく抱きしめてくれる優しい優しい男性なら。……いや、それはおじさんだけでなければならないんだ。

 

 誰でもいいではない。おじさんではないと意味がない。おじさんが私を想ってくれるのならば、私は。

 

 もしもおじさんが私を抱きたいというのなら、私はおじさんに抱かれたっていい。淫靡なことには慣れているつもりだが、おじさん相手にそれを発揮できるとも思って居ない。

 

 どうせ、この優しいおじさんは、私のことを第一に考えてくれ、優しく抱いてくれるだろうから。

 

 ああ、本当に私は何を考えているのだろう。おじさんとはそんな関係で結ばれてもいなければ、愛情を伝え合った訳でもないというのに。

 

 私は雑念を振り払い、いつもの私に、殺し屋エクスプローダーに戻ると尋ねた。

 

「依頼人は?」

 

「恐らくもう旅立たれたよ。指定口座に2000万入れたと血文字で書かれていた」

 

「そうか」

 

 エクスプローダーは誰が死のうと、依頼人、オーナー、ターゲット、理由のあるものないもの、誰が死のうと眉一つ動かすことは無い冷徹な殺し屋だ。

 

 ただ、もし、おじさんが死んでしまえば、自分は後追い自殺をするかも知れないと、最近、そう考えるようになった。

 

 おじさんの命は金には換えられない。金に換えられない命の輝きを見つけてしまった。もし、彼に婚約者がいなければ、私は。

 

 おじさんが抱き締めてくれているように、エクスプローダーも彼を抱き締める。そうしてエクスプローダーは呟いた。

 

「いまの私とおじさん、傍目から見れば恋人同士に見えるかも知れないな」

 

 目を丸くするおじさん。エクスプローダーは冗談を言わない、最近は言うようになってきたがそれでも少ない。ならばコレは冗談ではないのだろう。彼女の本気の言葉だ。ならば応えてあげよう想うままに。この可愛らしい殺し屋に。

 

「私とエクスさんが恋人同士ならば、このあとはホテルか何処かで愛し合うのかな」

 

 ひゅっと、息を呑む声が聞こえた。エクスプローダーからだ。自分で言っておきながら恥ずかしいのかな。本当に可愛い娘だ。おじさんは彼女を抱き締めたまま彼女の頭から、背中から腰へと流れる真っ直ぐな長い黒髪を何度も何度も撫でてあげる。夏の湿気分を含む髪は少し指に引っ掛かるが、それでも毛先まで通してあげられた。繰り返し撫でてあげている間に、さらさらとした艶やかさが戻ってくる。

 

 エクスプローダーは髪を撫でてくれるおじさんに身を預けながらも、おじさんの顔の前に自分の顔を持って行く。そして――

 

「ん――」

 

 小さな口付けを落とした。おじさんも驚いた。娘みたいな感覚で彼女に接していたらキスされたのだから。

 

 少し唇を啄み、唇は離れたが、エクスプローダーは不安そうな顔で。

 

「嫌、だったか」

 

 上目遣いで、問う。

 

 嫌か嫌じゃ無いか。二択を迫られればそれは。

 

「嫌じゃ、ないですよ、平静装ってますが、内心ドキドキしてます。え、エクスさんの様な美しい女性の口付けを受けられるなんて、あ、あってもいいのかって、ね、いや、はあ、びっくりしたぁ~っ、気が抜けましたよ、本当に、い、いきなりき、き、き、キス、しし、し、てくださるもの、ですから、ね、はあ、」

 

 男ならこんな美人にキスをされて嫌だというものはまずいないだろう。ましてや冷たさの中に可愛らしさも持つエクスプローダーからのキス。おじさんには断る事なんて出来ない。

 

「そ、そうか、」

 

 エクスプローダーの声は嬉しそうで、顔はリンゴのように真っ赤。まだ時刻は16時前夕方。事務所ではニチモが事務と受付をしている。

 

「少し、遠回りをして返ろう」

 

 エクスプローダーの提案に、おじさんは。

 

「私も、もう少し君と二人きりでいたいな」

 

 と返す。彼女は嬉しそうに微笑むと、おじさんの右隣に移動し彼の腕に自分の腕を絡み付けた。

 

 娘のようだと思い込んでいたエクスプローダー、どうも彼女は娘とはまた異なる異性のようだ。

 

 出逢う順番が逆なら私は今頃エクスさんと婚約していたかも知れないなあと考えてしまった。

 

 軍是さんにみつかったら怒られそう。

 

 一方のエクスプローダーもまた思う。私は以前の私より強くなったかもしれない。守る者を得た女は誰よりも強いと、昔誰かが言っていた。私の守る者、それは……おじさん、あなただ。

 

「エクスさん」

 

「ど、どうした?」

 

「事務員、必要だと思いますか?」

 

「ん、あ、ああ、そう、だな、私は事務の仕事は苦手だな。軍是もニチモも苦手だろう。私たちは今も殺し屋業はやることもあるが、一応元殺し屋。事務屋じゃ無いからな、おじさんは」

 

「日雇い作業をしていた私にまともな事務が出来ると思いますか?」

 

「いや、思わない。うちは元殺し屋と派遣業だけで事務職がいない……」

 

「……雇うか、心当たりが無いけど」

 

 

「ところで、明日は休みにするよ」

 

「ん? 明日は休業日では無い筈だが。なにかあるのか?」

 

「業務提携しているポーラさんたちにエクスさんのことを紹介しておかないと。現場で鉢合わせになって揉めたら大変だろう?」

 

「私は大変では無いが」

 

「そりゃ、エクスさんは圧倒的に強いから大丈夫だけど、ポーラさんたちが死んじゃうからね……」

 

 

 尚、死亡した若者、年齢不詳の遺体は、後日警察に運ばれていったが、普段からの素行の悪さゆえに、引き取りても無く、無縁仏として埋葬されたらしい。

 

 魚の餌にされなかっただけまだましなのかもしれない。

 

 

 

短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)

  • コードギアス
  • コードギアスR2
  • 此花トゥルーリポート
  • FF4×FF6
  • カオシックルーン
  • 学園黙示録
  • ルパン三世 ワルサーP38
  • 幕末風来伝 斬郎汰
  • ニードレス
  • ヨルムンガンド
  • 少女少年
  • 北の告発
  • サラダデイズ
  • クレセントノイズ
  • ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
  • ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
  • 遊戯王GX(十代×カミューラ)
  • 魔装機神(マサキ×モニカ)
  • 椎名君のリーズニングファイル
  • RAVE(ハル×絶望のジェロ)
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