詩織ちゃん
「たっだいまー♪ スペルマいっぱいかけて来たわよ♪」
このタイミングでうちの何でも屋の最後の一人。色んなところで問題発言をしてくれる愛河内ニチモさんが帰社してきた。
今の発言一発で、詩織ちゃんがドン引きである。普通の常識人ならば誰しもがドン引きだろうな……。
「ニチモさん、それがあなたの個性であることは、十分承知しておりますし、否定はしません。ただ、今もしこの場にお客さんが居て商談の最中なら、今の一言で取引中止確実です」
それにこの子の今日の案件はワンちゃん探し。まさか、探し出した犬にスペルマ掛けて来たとか言うんじゃないでしょうね。
そんなことをされていたら、損害請求されるよ。
「ニチモさん、依頼は?」
「性交、性交っ! きちんとワンちゃん探し出して来たわ!」
成功の字が違う気がするのは気のせいだろうか?
トリガーハッピーズ時代から軍是さんと仲が良いので、ハイタッチしている。
依頼主は、余程大切に可愛がっているペットだったらしく、報酬に色を付けてくれて50万も頂いたらしい。
私の日雇い時代の4~5ヵ月分の給金が一発か。相変わらず信じられないな。この街の基準は何で動いているんだろう。
「あれ? おじさん、こちらのお姉さんは?」
「あ、ああ、ニチモさんにはまだでしたね。ご紹介します。私の昔馴染みで長谷川詩織さんと言います」
……。
……。
……ん? 詩織ちゃんもニチモさんも何も言わない。
あれ? 私、なにかまずいこと言ったかな?
「む、昔、馴染み、おじさまの」
詩織ちゃんの顔がトマトみたいに赤くなっている。ニチモさんも。
「キャー、おじさん大胆♪」
なんて言ってるし。へ? 私、本当に変なこと言ったかな?
キリキリキリッ!
こ、この音は、軍是さんの義手が伸びる音?!
「あのさあ、おじさん。一定以上の年齢の男女の昔馴染みって、そういう関係だったとも捉えられるわけでさあ。なに? そんな話を私に聞かせて死にたい訳? 童貞だったってのは嘘だったってことでいいんだよねええッ!」
私はバッと背後を振り向いて誤解を解く。そういう風に見られるとは予想外だったあーッ!
「ち、違います軍是さんっ! 軍是さんと出逢うまで誓って私は童貞でしたッ! 詩織ちゃんとは身や心を温め合う関係でその──」
今度は反対側から硬い金属物を充てられた。ごりっと音がする。これ拳銃だよね。え、エクスさん?
「それ、弁解になってないんだけど私たちのこと舐めてる? おじさん、私も少しばかり的当てしたい気分になってきたよ。至近距離から」
軍是さんは分かるけど、なんでエクスさんまで怒ってるの? へ? 私は何もしてないのに。
顔真っ赤だった詩織ちゃんは、この凶行にオロオロしてるし、ニチモさんは修羅場ー♪ とかって楽しそうにしているし。
どうしてこんなことになってんのおおおお?(ムンクの叫び)
◇
「あー、要するに詩織さんとは安宿で止まってて、身も心も温め合う関係ではあったけど、それは詩織さんの心を守ってあげる為で、別に下心があった訳じゃないと」
「お、男として、そりゃなかった訳ではありませんよ? 男ってそういう生き物ですから。でも傷ついた女の子にそんなことすると思いますかこの私が」
断固として言い切る。それはもちろん男ばかりの場所で過ごして来たのだ。少しばかり詩織ちゃんに女を感じたことはある。だが舐めるな。私は身も心も傷ついていた詩織ちゃんに。
家族に捨てられるような仕打ちを受け、自殺までしようとしていた詩織ちゃんに、劣情をぶつけるようなクズでは断じて無いッ!
これは、これだけは軍是さんやエクスさんが怒っていても、言い切ることが出来る。
「……。やっぱり、おじさんは、優しくて暖かいね」
エクスさんが拳銃を懐に仕舞いこみ。
「はあ~っ。まあねー、おじさんがそういう人じゃないことくらいわかってたけどさあ。昔馴染みなんて言うものだからつい過剰反応しちゃったよ。ごめん」
話が丸く収まったところで、最後に詩織ちゃんが。
「お、おじさまは、その、私のことを、女として見てたのですか?」
顔を赤くして、尋ねづらそうに尋ねて来るものだから。明るく諭す様に応えた。
「男ばかりの世界だったからね。そこに詩織ちゃんみたいな可愛らしい子が一緒に住むことになったらそれは意識もするよ。ただそこまでだ。私は詩織ちゃんのことを慰み者にしたくて助けた訳じゃない。詩織ちゃんに生きてほしくて、詩織ちゃんが生きてた世界とはまた違った世界があることを知ってほしくて、世界は辛いし、生きづらい、けれど、こんなにも美しいんだよって知ってもらいたくて、自由な世界を自由に生きてもらいたくて助けたんだ。そこに男のあさましい劣情の入る余地なんて無いんだよ」
「おじ、さま……」
瞳に涙を溜める詩織ちゃんを優しく抱きしめた。柔らかい身体だ。立派に成長した大人の身体だ。胸も大きく、腰も括れ、無駄な肉のついていない柔らかい身体。
震える背を撫で長い髪を優しく撫でてあげて、詩織ちゃんという女性を愛撫する私に、軍是さんも、エクスさんも、何もすることは無かった。
「結局、おじさんは、昔っからおじさんだったってことなんだ」
「そうだな。おじさんは変わらない。今も昔も」
貴女方、そう仰ってくれるのは嬉しいのですが、スリングと拳銃を私に向けてたんですよ?
「詩織ちゃん。ここに居るのはみんな強いけど優しい人たちばかりだから安心して。まあ、残酷でもあるけれどね」
「はい……」
私が身体を離してあげると、涙を拭う詩織ちゃん。
「改めまして。長谷川詩織です。事務仕事と表のお仕事しかできませんが、皆さん、よろしくお願いします」
よろしくー。
パチパチパチっ
みんなが拍手をする。あのクールなエクスさんも。
本当に温かいな。こんなに温かい場所が作れるだなんて、出来るだなんて、思ってもみなかった。情報屋のおじさんに感謝だね。軍是さんに、ニチモさんに、エクスさんに、みんなに感謝だね。
あ、情報屋のおじさんで思い出した。
「エクスさんテーザー銃とか受け取りに行かないと」
「ああ、表の仕事で使う用にだな。まあ、私ならテーザーでもゴム弾でも相手を射殺できるけれど」
「射殺しちゃダメダメ」
どうしてこう、うちの社員は物騒な発想ばかり……あ、そうか全員元殺し屋だ。私と詩織ちゃん以外。ああ、そうそう。
「あと、詩織ちゃんも久しぶりに会っていた方が良いだろう。覚えているかい? カレーのおじさん」
「はい! 覚えています! いつも温かいカレーを私の為に取っておいてくださった△公園のおじさんですよね?」
「そう、あのおじさんね、実はホームレス兼情報屋なんだよ。それもその界隈では結構有名な情報屋で、調べられない事は無いとも言われているくらい有名なんだ」
「そ、そんなに凄い方だったんですか? 私、カレーのおじさんって呼んじゃってましたよ」
「いいと思うよそれで。あの人、そんなこと気にするような心の狭い人じゃないから」
そんなこんな、色々と、主に私を中心としたトラブルに見舞われながらも、詩織ちゃんが正式に我が社に入社した。
いやでも、本当に事務員があと一人は必要なんだけど、どうしようか。どこかで拾って。って、事務員が落ちている訳でもなし。
高校生くらいの年齢の子からならアルバイトで雇えるんだけど。流石にみんなが言うお金の暴力をそう何回も使うわけには行かないし。
誰か良い事務員さんになってくれそうな子いないかな。詩織ちゃんがいるから一からでも教えられるんだけどなあ。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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コードギアス
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コードギアスR2
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此花トゥルーリポート
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FF4×FF6
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カオシックルーン
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学園黙示録
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ルパン三世 ワルサーP38
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幕末風来伝 斬郎汰
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ニードレス
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ヨルムンガンド
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少女少年
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北の告発
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サラダデイズ
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クレセントノイズ
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ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
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ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
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遊戯王GX(十代×カミューラ)
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魔装機神(マサキ×モニカ)
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椎名君のリーズニングファイル
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RAVE(ハル×絶望のジェロ)