十代とカミューラは結婚済みです。
十代とカミューラシリーズというシリーズ物の一作ですが本編がまともに出来ていないので短いネタ作品から先に投稿です。
十代とカミューラの日常 蚊
十代とカミューラ 蚊
膝裏にまで届くカミューラの緑色の長い髪。
十代はそのとても艶やかで手触りがいい綺麗な髪を手櫛とヘアブラシを、そして自身の手指を以て梳かしていた。
彼はこうしてよく彼女に「髪を梳かしてちょうだい」と頼まれる。
「何で俺が?」とめんどくさがったりしたことはない。なにせ女が男に髪を触らせるのは、それだけその男を信頼し、愛している証だから。
尤もこの二人の場合は既に愛し合う男女が辿り着く終着点である夫婦という間柄なので信頼以前の話なのだが。
「どうしたんだよカミューラ?」
そうして髪を梳かしていた十代がふと鏡台に映るカミューラを見て声を掛ける。鏡越しに見る彼女も相も変わらず美しい。カミューラの美を表現するのに妖艶な美女という言葉があり、相手デュエリストからも「妖艶な美女」と言われたことも多いカミューラ。だがその美は十代一人の物であり、それは未来永劫に変わらない事。
実はそんな彼女、先ほどからずっと腕を掻いているのだ。
「蚊よ、蚊に刺されたの」
そう言って腕を見せるカミューラ。彼女が掻いていた部分には赤い斑点が出来て腫れている。
「うわ、ホントだ。でも、あんまり掻くなよ。皮膚が傷付いて血が出たり膿んだりしたら大変だろ」
「わかってるわよ。けどあんまり痒いものだからつい、ね」
十代が注意すると掻くのは止めたカミューラだったが代わりに指で擦り始めた。
余程痒いのだろう。後で薬を塗ってあげないといけない。
「よし、髪梳かすの終わったぜ」
「うふふ、ありがと♪」
ニッコリ微笑んだ彼女は自分の首の後ろに手を回すと両手で髪の毛を集めて頭の高い位置に上げた。
そしてぎゅっと搾るように持つと黒い髪ゴムを取り出して、集めた髪の根本の部分を縛り結い上げ、頭の後ろから腰の下まである一本の尻尾のような髪型に纏めた。いわゆるポニーテールという髪型だ。
(カミューラのポニーテール……いいな。それにうなじも……)
そのポニーテールの髪に指を絡めて撫で触りながら手指を絡ませる、潤い艶やかな見事なカミューラの緑髪、手指に絡みついては枝毛も無い長い髪はしゅるしゅると十代の指の股を滑り抜けていく、露わになったカミューラの白いうなじを見て思わず顔を赤くする十代。
実に健全な男の反応なのだが彼はその白いうなじの一部分にぽつりとある赤い点に気付いた。
「なあに十代。私の美しいうなじに見とれているの?」
自身の首の後ろを見つめ続ける十代にカミューラは妖艶に微笑む。
(キスでもしてあげようかしら?)
半ば本気。いやさ本気の本気でそう考えるカミューラに、十代は。
「なあカミューラ」
「なあに? キスしてほしいの? それともこんな真っ昼間にエッチでもしたいのかしら?」
「よろしくてよ?」などと冗談めかして言うカミューラだったがもし十代がそれを求めるのなら、彼女はいつでも彼にその身を委ねるつもりだ。
愛し合う──長い生の中で嘗て幼かった十代と愛し合った中世ヨーロッパの頃。あの頃よりカミューラは己が身は遊城十代という男の子の物であるのだという自覚を持っていた。
あの頃、幼い頃の事を、『時の魔術師』のカードの精霊の不思議な力で、中世ヨーロッパにタイムスリップし、自身と結ばれた日の事を思いだした十代。思い出したカミューラ。互いに忘れていた永遠の別離は、結婚を意識した頃より思い出していった。あの時から幾度愛し合ったろう。どんなにどんなに愛し合っても永遠の別離の寂しさは拭えず、子供を作ろう、結婚しよう、ずっと永遠に一緒に居ようと愛し合い続けた末に、一応の満足を見た。
それでも愛し合わずにはいられなかった十代とカミューラは、愛し合い続けた。
二人は世間一般の恋人達、夫婦達、愛する者達以上に、時間を埋めるためにも愛し、愛し、愛し抜いた。そんな毎日のある日の事なのだ。蚊がどうのといった話を始めたのは。
事実としてカミューラは蚊に刺されていた。血を吸う事に掛けては変な意味プロであるヴァンパイアたる彼女。
その彼女がよりにもよってそんな小さな蚊如き虫に血を吸われたのである。屈辱の極み。
十代に髪を梳かされ気分が良いというのに、折角の気分が台無しである。
故にカミューラは十代に誘っているのかと問うた。誘ってくれているのなら熱く、熱く、熱いほどに熱く抱かれてつまらないことを忘れさせてくれる。心地の良さで包んでくれる。そう思ったから。
十代はいつもそう。カミューラを抱くことで二人一緒に愛を交わして小さな事を忘れさせてくれるのだ。その大きな愛でカミューラを包み込み。
だが、今の彼が言おうとしているのは全く別のことだった。その小さな事に起因することだったのだ。
「い、いや、キスもいいしエッチもしたい、このまま抱き倒してカミューラの事愛したいって気分だぜ? けど、けどそういうんじゃなくてだな……お前さ、首筋も蚊に噛まれてるぞって」
「ええっ!?」
慌てて首筋を押さえるカミューラ。確かにそこには腫れているような感触があった。
「なんでこんなところまで刺されるのよっ!?」
「い、いやいや俺に聞かれても……人の血を吸うヴァンパイアな分だけカミューラの血が美味しいとかか?」
「くうううっ! 蚊、蚊の分際で、この高貴なるヴァンパイアの貴婦人たる私の血を吸うだなんて生意気なっ、見なさいコレ!」
怒った彼女は興奮気味に十代の方に向き直ると大胆にも腰の目いっぱいまであるスカートのスリットから白いムッチリとした太ももをさらけ出した。
此処が部屋の中じゃなくて外だったら道行く男たちの視線を集めるてしまうところだ。誰の気分も悪くならないが、遊城十代という男子の気分は悪くなる。
カミューラは十代の物なのだ。誰にもその美しい肉体を視られたいとは思わない。女子を抜いて。
そしてその魅力的な白い太ももにも赤い点が付いている。
「あ、ココも噛まれてんのか?」
「そうよ、ココだけじゃないわ。ココもココもよ!」
見せてくれた右の太ももに二カ所。手の甲と腕にそれぞれ二カ所。首筋に一カ所の計七カ所も蚊に刺されていたのだ。
多いとは思うがこれくらい刺されることだってあるだろうと思う十代だったが、よく考えればずっと一緒にいて彼女ばかり蚊に刺されるのもおかしい。
基本的に二人は一緒にいる。寮にいたときだって、家にいるときはもちろん、買い物に行くときも出かけるときもデュエルのときも。寝るのも同じ布団で抱き合って寝ている。別行動を取る方が少ない。
それなのに十代はあまり蚊に刺されないのだ。まるでカミューラだけが狙われているかのように。
もちろん蚊が特定の人物を狙って血を吸うなんてことがあるわけない。
こうなるともう体質的な原因だけだ。知っているところでは太った人や汗っかきの人などは、それ以外の人と比べて蚊に刺されやすいということ。
ではカミューラは太っているか? そんなわけがないだろう。カミューラはとても痩せている。ふくよかなのはおっぱいとお尻だけ。
汗っかきかというと、暑い日は普通に汗を掻くがまあ平均的な方だろう。
あと思い当たるのは……
「やっぱしヴァンパイアだからとかかなあ?」
そう、カミューラは人間ではなくヴァンパイア。吸血鬼だ。
「それはヴァンパイアだって蚊に刺されるわよ。だけど私はそんなに刺される方じゃないわ」
「ん~、でもさ、それってカミューラがまだ中世ヨーロッパのヴァンパイアの社会で暮らしてたときの話だろ? それに多分カミューラが住んでたとこって日本よりずっと涼しいだろうし蚊も少ないだろ」
「ま、まあ、それはそうだけど……」
蚊は比較的暑くて湿度の高い地域に多い。日本の夏は高温多湿。彼女が住んでいた処よりは確実に暑い。
そして人間とヴァンパイアの違い。聞いたことはないがひょっとすると人間よりもヴァンパイアの方が蚊に好まれやすいのかもしれない。
人間の血が好きな蚊。同じく人間、というより十代の血が好きなカミューラ。
その十代=人間の血を吸うカミューラの血というのは蚊にとって凄く美味しいのかも……
「く、くぅぅ~ッ、誇り高きヴァンパイアの貴婦人であるこの私が蚊なんかに悩まされることになるなんてっ」
「まっ、とりあえずは虫除けスプレー買いに行こうぜ」
そして薬局にて一つしか残っていない虫除けスプレーをめぐってカミューラと、元全国大会優勝者のインセクトデッキの使い手がデュエルすることになるのだが、それはまた別のお話。
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
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