一方、その頃の犬夜叉とかごめ。意気揚々と現代から帰還。四魂の玉の欠片を奪った妖魔、逆髪の結羅を討伐しようとしていたのだが……。
二人は、道に迷っていた。結羅がどこにいるのか分からないのだ。
「おい! まだ分かんないのかよ!?」
犬夜叉が、苛立たし気に叫び声を上げる。怒鳴る相手は、勿論かごめだ。巫女の力で、常人には見えない結羅の髪を見ることが出来るはずの少女。
いな。筈ではない。実際、かごめは結羅の髪を見ることが出来た。
問題なのは、髪が見えても、どこに結羅がいるのかまでは分からないということだ。一応、髪の密度が高い所へ向かえば、そこに結羅がいるはずという推測を立ててはいる。だが、本当にそうかは分からなかった。
髪の密度をあえて高くしているところを作って、罠を張っているかもしれないからだ。
一方、怒鳴られた方のかごめ。こちらも苛立っていた。
「うっさいわねー! 私にも良く分かんないのよ!」
そう、犬夜叉へと怒鳴り返す。
「何だとー!! 役に立たねー女だな!」
「なによ!! 自分一人で結羅を倒して来たら! そんなに言うんだったら!」
口論を始める二人。
そんな時だった。その声が聞こえてきたのは。
「アアアアアアアアアアアアアアン! 気持ちいいいいいいいいい!!」
その声を聴いて、二人は気まずそうになる。
「なあ、女の嬌声だよな? 今のって。こんな森の中で宜しくやってるとは、いい度胸じゃねえか」
犬夜叉の指摘。
かごめの方は真っ赤だ。
「もう! 今はそんなことよりも逆髪の結羅よ!」
かごめが、誤魔化すように大声を出す。
「あいつがどこにいるかを、早く突き止めないと……」
そのかごめの発言は、途中で何かに気付いたかのように尻すぼみになる。
「何だよ? どうかしたのか?」
犬夜叉の問い。
「ねえ、今の嬌声……逆髪の結羅かもしれない」
「かもしれねえって何だよ! はっきりしやがれ、女!」
「だから良く分かんないのよ! 遠かったし! 反響してたし!」
「んだと! 使えねーなぁ!」
「良いじゃない! 兎に角、行ってみればわかる! 百聞は一見に如かずよ!」
「テキトーだな! おい!」
犬夜叉の突っ込み。だが、他に行く当てがないのも事実。このまま彷徨っていても埒が明かねえ。
こうして二人は、嬌声の発生源へと向かうことにした。
******
それからしばらくして。
犬夜叉とかごめの二人は、森の中にポッカリあいた谷。その縁に立っていた。縁から谷を見下ろすと、そこには巨大な髪の玉。どうやら、隠れ家のようだった。
「髪の玉……あれが結羅の巣ね」
かごめの呟き。その顔は猿のように真っ赤。耳まで赤く染まっている。
なぜ、かごめの頬が赤いのか。理由は簡単。
「ああああああああああああああああああんん! 気持ちいいいいい!!」
髪の玉から聞こえてくる、結羅の嬌声だ。
かごめは年頃の女子中学生。性に敏感なお年頃なのだ。嬌声など聞かされて、羞恥心を感じない訳がなかった。
一方の犬夜叉、こちらはゲンナリした様子。随分疲れているようだ。
その理由もまた、結羅の嬌声にあった。
「犬夜叉あああああああああああああああぁ! 早くうううううう!! 早く来てええええええええ!!」
夜の森の中。またも響く、結羅の嬌声。
それを聞いたかごめが、半眼で犬夜叉を睨む。
「犬夜叉……あんた、本当に結羅とは何もないんでしょーね!」
かごめの詰問。
「ねーよ! 何度言ったら分かりやがる! このクソ女!」
「へー。どーだか」
一方のかごめ。全く信じる気配がない。
「ねーって言ってんだろ!」
犬夜叉の叫び。
「だってー。あんたのこと呼んでるじゃない」
「知らねーよ! 大体会ったこともねーよ!」
「どーだか。逆髪の結羅って、胸も大きいし。顔も可愛いし。ミニスカにはスリットも入って生足出してるし。男って、そういうのが好きなんでしょ」
そう言って、かごめは自分の足を見下ろす。かごめが着ているのは普段着。ただし、ただの普段着ではない。結羅の生足を見せつけられた後に準備した、とっておきのミニスカだ。スカートの裾を織り込むことで、いつもより二センチほど、スカート丈が短くなっている。
私の生足だって、結羅には負けてないのに。
かごめはそんなことを考える。ちなみに、胸のことは考えない。圧倒的な戦力差があって、勝てる気がしないからだ。
かごめは、犬夜叉が乱暴でガサツなので嫌いだ。だが、だからと言って、それとこれとは別問題なのだった。
女には、女としてのプライドがあるのだ。
「だから知らねーって!」
犬夜叉の抗弁。それは最早、かごめの耳には入っていない。
かごめは、弓の発射準備をする。その心は、怒りで震えていた。
何よ! そりゃ確かに、結羅は美少女だったわ! オッパイおっきいし。谷間見せてるし! でも! 何で敵と出来ちゃってるのよ! バカ夜叉!!
あまりの怒り。それは、かごめの巫女としての力を大幅に増強。かごめの全身が青く光る。その光は、かごめが構える弓矢にも伝達。
「いっけー!!!」
かごめの叫び。同時に、弓を放つ。乾坤の一擲だ。青白い光を放つその弓矢は、レーザーのような高速で飛翔。残像を引きつつ、結羅の巣を直撃。
そのとたん、光のスパークが発生。青白い光が、髪の玉を覆う。いや、それだけではない。周囲に張り巡らされていた、無数の髪にも伝達。
そして次の瞬間。全ての髪が消滅した。
ごおおおおおおおおお!!
轟音が響く。発生源は結羅の巣。巣を支えていた髪が消滅した結果、巣の中にため込まれていたのだろう無数の白い何かが、地面へと落下していく。
「何あれ?」
白い何かをもっとよく見ようと、かごめが目を凝らす。そして次の瞬間、悲鳴を上げる。
「きゃ!」
その白い何かとは、髑髏だった。何千何万という無数の髑髏。それが地面へと落下していた。
「へー。すげー数の髑髏だな!」
これは犬夜叉の感想。彼は、髑髏を見てもどうじない。逆髪の結羅によって殺されたのであろう、無数の人々の怨恨になど興味が無いようだった。
「キャアアアアアアアアアアア!!」
と、少女の悲鳴が聞こえてくる。
発生源は、髑髏の雪崩のなか。かごめが視線をそちらに向けると、そこにいたのは昨日の美少女。逆髪の結羅だ。
自慰行為の最中だったらしく、両手を股間に突っ込んでいる。そんな結羅は、無数の髑髏と一緒に、仲良く地面へと落下中。
「いい気味。巨乳だからって偉そうにしてるんじゃないわよ!」
かごめは、昏い笑みを浮かべる。
轟轟と響く大音響。逆髪の結羅は、地面へと叩き付けられ、その上を無数の髑髏が覆う。
高さ数十メートルから落下したのだ。その上、後から落ちてきていた無数の骸骨。あれでは、とてもではないが助からないだろう。