約束通り決闘をしたブルーノとエレン。
激しい戦いの末、エレンはなんと負けてしまう。
だが、そんな2人の間にはもう憎しみも殺意もない。
互いを理解し、互いを分かち合うことが出来た2人だった。
いつもの川のほとり。エレン達が最近遊ぶとなると大体ここに来る。それもそうだろう。ここ最近、気温が高くなって来たからだ。
「さて、暑いから川で遊ぶのはいいのですが…。」
そんな中カレンはため息を吐いて、エレンの横にいる人物を見る。
「なんであなたまでいるんですかね?」
カレンが睨んだその先にいるのは藍色の髪のオオカミの耳が頭の上に生えた青年。ブルーノだ。
「いいじゃんか、減るもんじゃないし。」
「私のテンションが減ります。」
「エレン、君の妹なんか俺に対して冷たくないか?」
平たい石を勢いよく川に向かって投げる少年が1人。エレンだ。
エレンが投げた石はぴょんぴょんと何度か跳ねてから川へと落ちた。
「カレンはもともと人間に対して恐怖心が強いし、根っこからの狼嫌いだからね。」
「じゃあなんでクロと仲がいいんだ?」
クロもエレンに見習って平たい石を勢いよく投げる。が
チャポンッ!
「あ…また失敗した…。」
「クロ、僕がコツを教えてあげるからおいで。」
そういいエレンとクロは少し離れた場所へと移動する。
「クロさんは私の親友ですから別です!」
カレンはその辺の石を拾い勢いよく投げた。すると石は川をぴょんぴょんと跳ねてさっきのエレンよりも多い回数跳ねた後に音を立てて水面へと消えた。
「すげえじゃんか、俺も負けてられねーな。」
ブルーノも石を拾い、川へ向かって投げる。
するとブルーノが投げた石は水面を跳ねると言うよりも水上を勢いよく滑り、少し離れたところで沈んだ。
「それ、水切りって言いませんよね?」
「ああ、俺は水切りが出来ない。だけど、石ころ水上滑りなら出来る。お前もするか?」
「遠慮しておきます。」
2人が話していると向こうからクロの声が聞こえた。
「わああ!出来た!出来たよ!エレン!」
嬉しそうに声を上げるクロ、クロはそのままエレンに抱きつく。
「やれやれ、こんな昼間っからイチャイチャしちゃって。」
ブルーノは肩をすくめ、やれやれと言う。
対するカレンは
「……」
カレンはその光景を見て、何か言いたげな表情を浮かべていた。
「ん?どうしたんだ?」
するとカレンはビクッと肩をふるわした。
「な、なんでもありません!そろそろお昼ですから何を食べようか悩んでました!あなたも付いてきて下さい!魚を釣りますよ!」
カレンはブルーノの耳を掴んで、引っ張った。
「ダァァァァァッ!痛い痛い痛い痛い!わかった!わかったから俺の頭の上の耳を引っ張るのをやめろ!」
一方、
「カレンちゃんとブルーノ意外と釣り合いそうかも。」
「そ、そうなのかなぁ…?」
2人のやりとりを楽しそうに見るクロと不安げにみるエレンだった。
その頃、王国では…
「どういうことですか⁉︎これは、国民が決めたことですよ⁉︎」
声を荒げて反論する声が王室から聞こえてきた。ガイルの声だ。
「次期の国王は私がに決まった筈です!
それも!国民投票で!」
「口を慎めガイル、お父様の前だぞ?」
玉座の横に立っていたのは新たに次期国王を任命されたガイルの兄、ガイウス・カリバルクだ。
「これはお父様の方針だ、お父様はお前ではなく俺に任命したんだ。」
「兄さん…っ!国民の期待を裏切らせるのか⁉︎」
「これは王命だ、絶対的なものだ。
それに国民投票は、無くなったお母様が行ったものだ。だが、その責任者のお母様はもういない。お父様は俺の方が相応しいと言ってる。諦めろ。」
「ですがっ!」
ドン!
机を強く叩く音が聞こえた。玉座に座る大男がこちらへと睨みつける。その圧倒的な威圧感にガイルはおろか側にいたガイウスまでもが凍りつく。
カリバルク国王、ガイル・カリバルクとガイウス・カリバルクの父親だ。
「兄弟喧嘩は他所でやれ。ガイル。私はお前のようないつまでも甘い奴にこの国を託せん。」
「私が力不足と言うのですか…?」
「その通りだとも。これは命令だ、次期国王はガイウスに任命する。これは大臣たちとの会議でも決まったことだ。」
ガイルはただ項垂れるだけしか出来なかった。
「わかりました…。」
大きな怒りを鎮め、心に受けた敗北感を引きずるかのように「失礼します。」とカリバルク国王に頭を下げて部屋を後にした。
「クソッ!」
ドンッ!
ガイルは悔しさのあまりに机を勢いよく殴った。
「何故だ…⁉︎最初はお父様も賛成した筈だ⁉︎なのに今更変更だと…?こんなの、国民が賛成する筈がない!」
兄の性格の悪さは国民の中でも有名である。家族思いな一面もあるが基本的に国民の意見は尊重しないような性格をしている為、ガイルの母はガイウスが国王になることを拒み、国民投票で次期国王を決めることにしたのだ。その結果ガイルが次期国王に選ばれることになったのだが…。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえる。ガイルは「入れ」とだけ伝えた。入ってきたのはアイナだ。
「調査の結果が出ました。ご主人様の推測は間違っておりません。」
「やはりか…。」
ガイルは森の方を見る。
(エレン……君の力を借りたい…。)
「いかがなさいますか?」
アイナは顔色ひとつ変えずガイルに聞く。だが、アイナのその表情はガイルが何を告げるのかを知ったかのような表情をしていた。
「決まってるさ、私が革命を起こす。
私がこの国を、いや、この世界のあり方を変えてやる!母の為にも…人の為にも…そして…。」
ガイルは再び森を見つめる。
「エレン達のためにも…。」
「決して簡単なことではないでしょう。国民は皆国王様によって獣人族へ偏見を持っています。」
ガイルは「ああ」とゆっくり頷いた。
「わかってるとも。私も、覚悟は出来たさ、国民のためなら死ねる。」
ずっと外を見るガイルの首筋からゆっくりと白い腕が伸びガイルを抱きしめた。
「その時は…私も連れて行ってください…。」
「いや、君には」
「私は、貴方が全てです。」
ガイルが振り返ろうとしたが、その重圧な一言にガイルは固まってしまった。
(そういえば…私とアイナはいつから共にいたのだろうか…?)
ガイルの首筋にアイナの吐息を感じる。
ガイルは首だけを向けて、近くにあったアイナの唇に、自分の唇を優しく重ねた。
それは私が15歳だった頃の話だ。
私には専属のメイドが就くことになった。
「初めまして、アイナ・キリサメと申します。」
その時の彼女は17歳。私よりも2歳年上だった。
「ガイル、ちゃんとアイナにご挨拶しなさい。」
その時からアイナの表情はあまり変わることはなかったのが強い印象として残っている。
「……こんにちは…。」
それが印象だったからか私は最初は彼女のことが怖かった。
だが、私が話している時にたまに見せてくれた笑顔は作り笑顔かほんとうの笑顔かは分からなかったがとても綺麗だったことを私は今でも覚えている。
それからしばらくして私が17歳の頃だった。私はいつものように朝のトレーニングとして外へ出かけた。トレーニングの内容は近くの山まで走って行き、剣術と弓術のトレーニングだ。剣術は素振りを100回し、弓術はすべての的の中心を射抜くまで終わらなかった。
そんな山を登っている時に私は女性の歌声が聞こえた。
「あれ?」
聞き覚えのある声だ。いや、聞き覚えのあるところが間違いなく良く聞く声だ。
「アイナ…?」
その声がする方向へと私は向かった。
たどり着いた先は水の澄んだ池だった。朝だったからか霧がかかっており、見えにくかったがそこには間違いなく水浴びをしている女性の姿があった。
だが、そのシルエットを私は疑った。
彼女には羽が生えていた。黒い翼が生えていたのだ。
「え…?」
「っ⁉︎」
彼女はこちらに気がついたのかこっちの方へナイフを投げた。咄嗟のことだったので避けることが出来なかったが、運良くナイフは頬を掠っただけだった。
「誰だ⁉︎」
向こう側から声が聞こえる。これ以上見ているだけでは何も起こらないと悟った私は姿を表すことにした。
彼女は顔面蒼白になり、震えた。
「お……王子……?」
彼女は私が近づくごとに後ろへと後退する。
それは今までに見たことがない彼女の表情だった。
アイナは徐々に後ろに下がっていくが、後ろは行き止まりになり、これ以上退がれない状態になった。それでも私は足を止めなかった。
「ち、近寄らないで下さい!私は…私は人間ではないのですよ⁉︎」
彼女は怯えていた。
今まで人間に対してのそっけない態度は彼女がそういう性格だった訳ではない。
彼女は人間に怯えていたのだ。
だが、恐らく彼女は生きる術として何かしらの方法で人間に変装し、今を生きていたのだ。
だから私は、そんな怯える彼女を…
「こ…これ以上近寄らないで下さい!さもなくば」
ギュッ
私は、抱きしめた。
「……え?」
「誰にも言わないよ…?誰にも言わない。
僕を…信じてくれ。君は人間を恐れてる。
信頼出来ないかもしれない。でも、信じて欲しいんだ…。」
「王子……。」
互いに池の中、アイナはその体に触れようとしたその時だった。
「王子〜!どこにおられるのですか〜?」
使いの声が聞こえてきた。
「アイナ!隠れて!早く!」
「は、はい!」
アイナはすぐさま服を手に取り、木の後ろに隠れた。
するとすぐに使いのものがやってきた。
「王子!何をされてるのですか?」
「いや〜すまないすまない。転んで怪我をしてしまって、傷口を洗おうと思ったら母上から頂いた私の大切な指輪を落としてしまったもので」
そういい王子は即座に外した指輪を見せた。
「指輪も王子も無事だったのですね。よかったです。王子、その格好ではトレーニング以前の問題です。戻りましょう。」
「ああ、わかったよ。」
そういい王子は池から出て、使いの元へと向かった。
「ところで…アイナさんを見てませんか?」
「ん?どうかしたのか?」
「はい…今朝から見てなくて…。」
「買い物ではないか?しばらく城で待ってみるといい」
それがあの日、私が知ってしまった彼女の秘密。そして、今の関係に至る理由。
そう、彼女は烏天狗だ。
今回も読んでいただきありがとうございます。光陽です。
少し内容がシリアス寄りになってきましたね。
ですが、この作品の2番目に大事な平穏は極力入れていきたいところです。
どうしても展開を重視すると平穏な場面を入れることが出来ないので難しいところです。
さて、今回はアイナの秘密を知れたところですが
おそらくアイナとガイルは髪の色を特に書いてなかった気がします。
この2人に関しては髪の色は想像にお任せします。
はい、今更感があって面倒なだけですごめんなさい。
最近はエッチな本をよく買うのですが内容によって好き嫌いが激しいいですね。
やっぱり純愛モノが至高卍
では、私はこの辺で失礼いさせていただきます!
次回もお楽しみに〜!