そして、当然ながらまだ10歳程度のなっつんが、このバカでかい会社の社長ということになる訳だが、
「え、今なんと?」
「だから怒ってない。なんで夜依が知ってたかは気になるけど色々何かしようとしたのは知ってた。」
妹も義父も失ったなっつんはやや過保護になったようで、っというか私まで失いたくなかった? なんてうぬぼれている訳だけど
どこへ行くにも何故か私を連れ歩くようになった。
そして、それは例の『拳聖 緒方一神斎』となっつんが出会うイベントにももちろん同行する羽目になる訳で、まぁ、コレに関しては手間省けて良かったけど。
「そっか・・・・・・」
不謹慎だけど、なっつんが怒ってなくてよかったと思う自分が居た。
「ぼっちゃんよろしいですか? この書類にサインを・・・・・・」
私たちの会話が途切れるタイミングを見計らって、弁護士近藤がなっつんに話しかける。
しかし、私は知っているこの弁護士が裏切者であることを
「ちょっと、その書類見ていいですか?」
「え・・・・・・いやだな。今まで一度もそんなこと言ったことがないのに、今日はどうしたんですか? お嬢様」
明らかに、近藤の様子がおかしかった。
そりゃ、そうだろう。
なっつん一人になってからは、私は今までの普通の子供のフリを止め。
大して役には立たないと思っていた現実時代の25年の経験が、まさかここで活きてくるとは思っていなかったのだから。
お陰様でなっつんから搾り取ろうとしていた奴らからは、頭の切れる厄介なクソガキ。
認定でもされていることだろう。
「そうだよ。夜依。」
それはここまでの話を知らなかったからだよ。
内心でそう突っ込んだところで、それを言う訳にもいかず。
「いや、ちょっと変な夢を見たから気になって・・・・・・何か問題でもあるんですか? 近藤さん。」
焦ってる様子の近藤になっつんも疑惑の目を向ける。
「い、いえ。(このクソガキ妙に勘が鋭いからな。)」
目を通すと案の定。
なっつんが死んだ場合、近藤とその一味に財産が入るようになるという感じのことが書かれている。
ノイローゼ気味のなっつんが、信用している前提でサインするってことか。
「なんですか。コレ。なんでなっつんが死んだら近藤さんたちにお金が入るんですか?」
子供の頃だったなら、ちんぷんかんぷんだったであろう内容。
だが、事前情報と25年生きた知識から理解できない内容ではない。
「な、何を言ってるんですか。お金の流出を防ぐための内容が書いてるんですよ。」
顔では笑顔を作っているが、目は笑っていない。
「近藤さん? どういうことですか?」
なっつんが問い詰める。
「ぼ、ぼっちゃんまで。私のことを信じていただけないんですか?」
大人が信用ならない。ってのは、女医で経験してるからなぁ。なっつん。
急ブレーキがかかり
「っあっぶな。なっつん大丈夫?」
「あぁ。」
「どうした運転手!?」
そして、運転手が銃向けてくるわけですね。
流石に銃はなぁ。
知っていたけど、説明のしようがない。
なっつん同様私も車から降ろされ手錠を嵌められる。
グルだと思られる男たちに囲まれているが、幸か不幸か先ほどの書類にはサインしていないから、なっつんを殺すことはしないようだ。
「さぁ、ぼっちゃん。この書類にサインを」
近藤が見せたのは先ほどの書類。
「!? 」
なっつんも騙されていた。と気付いたらしい。
「いやだ。」
「いいからさっさとサインしろ。」
ついに化けの皮が剝がれたのか、近藤も素に戻っている。
「サインしないなら、仕方ありませんね。貴方からもらう程ではないでしょうが、」
人身売買。ましてやこのルックスだ。
変態どもに高値で買い取られる危険がある。
「や、やめろ!!」
(って私もかい!)
「放してよ! 汚い手で触んな!!」
子供ながらに精一杯抵抗してみるものの、精々じたばたするのが関の山だ。
「やれやれレディーの扱いがなってないんじゃないか。みなさん。」
不吉な声が聞こえた。