「はぁ、はぁ・・・・・・つ、疲れたぁ。」
2人で猛ダッシュで公園まで逃げてきて、とりあえず一息つく。
(なんで、こんな目に・・・・・・)
「腕は大丈夫か」
「あーうん。少し痣になってるけど、大丈夫。」
「やっぱあいつ等ぶっ殺してくる。」
痣が出来てるって聞いて、また戻ろうとしたなっつんをなんとか引き留め。
「さっきの二の舞になるから! ちょっとトイレで冷やしてくるよ」
本当に大したことなかったんだけど、過保護になってるなっつんにそれは効かないので、公衆トイレで少し冷やして戻ってみたら、
なっつんがアイスを持っていた。
「おかえり」
「どうしたの。そのアイス」
なっつんの視線を追うと、道路を挟んだ向こう側に行列が出来ているお店が見えた。
女性客ばっかりみたいだけど、まさかあそこの?
(あそこのアイス・・・・・・だとしても、短時間じゃ無理だよなぁ。)
「もらった。」
「貰ったって誰に?」
買いに行こうとしていたら、ファンらしき女の子たちに声をかけられ
「あ、あの。さっきの彼女さん助けようとした姿カッコよかったです。」
と2人分渡されたらしい。
なっつんはむすっとしているが、せっかくなのでベンチに座っていただくことにする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
昔は、っというか、今も沈黙の時間は気まずいけど、なっつんに関しては慣れてきたような気がする。
視線を感じてなっつんの方を向くと
「!!??」
口元にクリームでもついていたのだろうか、舐められた。
意地悪そうというか、満足そうに笑うとなっつんは急に上機嫌になった。
(な、なんなの。今日はなっつん萌え死にさせたいのか。)
不覚にもドキドキしてしまったのだが、なっつんにはバレてしまっただろうか。
(それにしても、やたら今日のなっつんは積極的だな。何か変なものでも食べたかな。)
そんなこんなしている間に、もう夕方になっていた。
遠くに陽が沈むのが見える。
「あ、やっぱり・・・・・・あ、あの!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「黒羽先輩!」
「紅葉ちゃん?」
かけられた声に振り向くと、演劇部の後輩である紅葉ちゃんが居た。
紅葉ちゃんは、部活で知り合った女の子だけど、千夏くんとも知り合いらしく、そういう意味ではお互いの現状報告の仲介してもらっている。
「デートしているところすみません。どうしてもお願いがあって・・・・・・」
「とりあえず内容聞くよ。なっつんいいよね?」
「あぁ。もちろん。」
さらっと、王子モードになっているなっつんからも、承諾をもらったので話を聞いてみることにした。
「実は、新しく入った子たちが居るんですけど・・・・・・。」
相談内容はこうだ。
なっつん目当てに途中入部した女子部員が多数。
でも、私たちはもう引退しているので、来ないと判明し、すぐに退部。
残った一部は練習には参加しているものの、現在の台本が男装女性ものの話。
演劇の経験もなければ、一般の子の為ゲームや漫画などもあまり見ない為演じ方が
わからない。
相手役の女装男子は数少ない男子部員の一人がやるらしい。
「っで、表には立たずとも読み合わせで好評だった私がお手本を見せてほしい。と」
「はい、前に先輩に男装姿でリハしてもらったじゃないですか、その写真を見せたら誰このイケメン! って騒ぎになっちゃって」
「うーん。行ってもいいけど私たちは知っての通り受験生だし・・・・・・あ、そうだ。あと相手役はなっつんにお願いしたいかな。」
「夜依!?」
「どうせ一人行っても拗ねるでしょ。なっつん。」
私たちはもう部活を引退していたし、どこでここに居るかを聞いたかはわからないけど、お世話になった手前無下にすることも出来ない。
かと言って、私一人だけ部活に顔を出したらなっつんが拗ねそうだ。
「私は構いませんけど、相手役はその・・・・・・女装男子。ですが・・・・・・」
「なら、ちょうどいいじゃん。私が口説いているお手本を見せてあげよう。」
なっつんの表情が引きつっている。が、女装したなっつんを見れるチャンスなんて
もうないかもしれないし。
どんなシュールな台本か気になりはしたけど、予定を相談し後日部室に顔を出すことになった。
ちなみに家に帰った後滅茶苦茶怒られた。
逆ならまだしもって、それじゃあ普通じゃんなぁ。