あれから、数日後
私は何故かまた千夏くんと話している。
今度は全身傷だらけというか、手当された形跡がある。
(うーん。虐待でもされてるのかな?)
「千夏くん。言いづらかったら、言わなくていいけど。もしかしてお母さんとかから虐待されてる?」
私のその言葉に千夏くんの体がびくっと反応した気がした。
(やっぱりかぁ。でもな。近所って訳じゃないし。虐待じゃなくて躾です。ってシラを切られたらそこまでだしな。)
私は無言で考える。
(仮に私の家に来る? って聞いたとして、帰った時にもっと悪化する可能性や誘拐とか騒がれる可能性考えると安易に言えないし・・・・・・)
「ボクが・・・・・・」
「ん?」
「ボクが悪いんです。」
弱弱しい声で千夏くんは語り始めた。
「ボクがおかしな子だから、だからお母さんは僕を叩くんです。」
「ど、どういうこと?」
確かに無口で大人しい子だとは思うけど、虐待やイジメを受けているんだから、当然だと思うし。
それをおかしい。とは言えない。
「おかしい。って具体的にどんな感じ?」
「ボク漫画とかアニメとかの世界に入れるんです。トリップ? ってやつ」
「うーん。それが妄想とかの類なら確かにおかしい子認定されるけど、本当に出来るなら凄いし、羨ましいかな。」
いくら現実世界が嫌いとはいえ、そういうぶっとんだ非科学的なこと普通は信じない。
けれど、ここで私までこの子の言うことを否定したらダメだと思ったし、本当にそんな力があるなら、正直羨ましい。
「馬鹿にしないんですね。話すと皆馬鹿にするのに。」
「だって、それで困ることなくない? トリップした先のキャラとかが来ちゃうとかだと問題だけど、自分が行くだけならさ。」
千夏くんはハッとしたような表情をした。
言わなければいい。ということに気付いたみたいだ。
「今までは、じゃあ、一緒に連れてけよ。とか言われて、でもダメでした。」
「あ、一応試したんだ・・・・・・」
「でも、もしかしたら失敗してたのはその作品に皆、愛情を持ってなかったからかも・・・・・・」
「どういうこと?」
「お姉さんみたいに。作品への愛情があれば一緒に行けるかも」
「!?」
(そりゃ、行けるなら行きたいけど。マジ・・・・・・なのかな?)
「そうだ。まだお姉さんの名前聞いてなかった。向こうではぐれたら、アレだから」
「あ、あぁ。まだ名乗ってなかったっけ。黒羽夜依だよ。」
「やえ。さん?」
「うん。」
「それで、行く世界だけど。夜依さんの好きな作品でいいよ。」
どうやら千夏くんは本気らしかった。
「えーっとじゃあ・・・・・・」
仮にトリップ出来るとして、行きたい世界なんてたくさんある。
「迷ってるなら、今一番お気に入りの作品とかでいいよ。」
その一瞬千夏くんがはじめて笑った気がした。
この子こんな風に笑うんだな。って思った。
「じゃあ、"史上最強の弟子ケンイチ"って作品がいいな。」
「わかった。その作品の本とかある?」
「あるよ。電子書籍だけど」
「電子書籍か・・・・・・上手くできるかわからないけどやってみるね。」
そういうと千夏くんは表紙の上に手を当てた。
「あ、目を瞑ってた方がいいかも。」
「わ、わかった。」
言われるがまま目を瞑る。
ちょっとして頭痛と目まいのような感覚に襲われた。
段々とそれが酷くなっていく。
「着いたよやえさん。」
千夏くんの声に恐る恐る目を開ける。
トリップしたのかいまいちわからない。
目を瞑っている間にどこかに誘導されたのかもしれない。
「信じられない? なら見て回るといいよ。ただ・・・・・・」
電子書籍だから、漫画の1話の時間軸より前に来ちゃったみたいだけど。
と千夏くんは付け足した。