施設に来てから3週間が経った頃。
流石にショタ夏と楓ちゃんにも慣れて、友達のような関係を築きはじめていた。
「おい! 夜依。」
「なーに。なっつん。」
「そ、その呼び方はやめろって言ってるだろ。」
っと本人は言っているのだが、私には照れ隠しにしか見えないので、遠慮なく呼んでいる。
「いいから、早く要件言ってよ。」
「ちづにいが呼んでる。」
「ちーにいが?」
ちーにいと言った瞬間に不機嫌な表情になるショタ夏可愛い。
っじゃなくて、ちづにいことちーにいはこの施設で知り合った高校生の男の子だ。
ちーにいもまぁ、イケメンなんだろうけど。
谷本王子みたいな感じ? 優等生風というか。裏の顔ありそう、みたいな。
とりあえず、なっつんから聞いた場所へと向かう。
「あ、夜依ちゃん来てくれたんだ。」
「うん。何か用?」
「実は・・・・・・どうしてもこの娘が攻略できないんだ!!」
はい、ロマンスは起きませんでした。
ちーにいは、実は隠れオタクでしかもギャルゲーが大好き。
でも、攻略するのは超下手くそで、ギャルゲー攻略もする私に聞きに来るわけだ。
4歳児にしては豊富すぎるギャルゲー知識で攻略を手伝っているわけですよ。
「この娘はね・・・・・・超簡単だよ。デレデレだから逆に突き放せばいいの。」
「え、でもそしたら好感度下がっちゃうんじゃ。」
「デレデレキャラは初期好感度が高いから、好感度を上げると逆に何の変化もないんだよね。」
ちーにいに説明していると、後ろから視線を感じた。が、本人は隠れているつもりのようなので気付かない振りをしておく。
正体は気になって様子を見に来たなっつんだろう。
ギャルゲーの個別ルートに入るところまでを見届けると、私はわざとなっつんの方へと向かって歩く。
慌てて今来た風を装うなっつん可愛すぎか。
「何してんの?」
あくまでも気付かなかったフリをしてあげよう。
「別に」
ツンさえ可愛いとかもうね。
流石推しキャラ、こんなに関われると思ってなかった。
「また楓ちゃん呼んでる?」
なっつんは、悔しそうにうなずいた。
というのも、2週間目ぐらいの時に夏は楓ちゃんに『にーに』って言わせたかったみたいなんだけど(パパママ的なね)
それよりも先になぜか『やえ』っていう私の名前を先に言っちゃったのが相当悔しかったみたい。
「なんでお前の名前なんだ・・・・・・」
ぼやくようななっつんの独り言。
拗ねてるのか。
それともシスコンだから楓ちゃん盗られたと思ってんのかな。
「楓ちゃんアルバム見せてあげるから、元気出しなよ。」
盗撮。なんて犯罪まがいなことはしない。
堂々となっつんの許可を得て撮影している。
「それ、ボクが許可した奴だろ。」
「まぁ、そうですね。盗撮は犯罪ですし」
そんなやり取りをしていたら、あっという間に6歳になっていた。
(そろそろ・・・・・・だよね。)
楓ちゃんが病気を患ってしまい、その医療費はかなり高額。
そこへ医療費を出す代わりに、なっつんを養子にしたいと来るおじさん『谷本』
引き取られるはずのなっつんたちよりも、私の方が緊張してしまっていた。
「なんでお前の方が緊張してるんだよ。」
迎えが来たらしく、お別れの挨拶をするのにわざわざ来てくれたらしい。
「だって・・・・・・」
(このおじさんが女医に騙されたせいで、なっつんたちの人生狂わされちゃうんだよ。ってか、切実に楓ちゃん可哀想。)
今後を知っていたとて、6歳児の言うことなんか大人が信じてくれるわけはない。
それからしばらくは、何もできないまま悶々と何か策はないかと考えることが多くなった。