木枯らしが吹きすさぶ、ある秋の日の夜。俺は所属している天文クラブのOBで、現在中学生の先輩――星塚天音(ほしづかあまね)と一緒に、神社の裏山で天体観測をしていた。
「秋の夜空って明るい星が少なくて寂しいけど、こうして眺めていると風情があって良いですね」
「だよね。何たって、私のお星様がお目見えする季節だもん☆ しっかり見てあげないとアフロディーテ様に失礼だよ☆」
望遠鏡を眺めながら、先輩が嬉々としてどこかの星に熱い視線を送っている。おそらく彼女は自身の星座である星――魚座を見ているのであろう。
――全く、本当に星の好きな人だよ……俺もだけどね!
先輩の隣で俺も自前の望遠鏡を覗き込みながら数多の星々に目を凝らす。しかし、俺の星座である射手座は秋の夜空には映らない。
――だとすれば……
そんな中で俺が一目置いたのは『みなみのうお座』の中にある秋の夜空で唯一の一等星――フォーマルハウトだった。
――秋と言えば、やっぱコイツだよな!
ポイントを定めて俺はその煌きを凝視する。それはどこか物悲しい秋の夜空の中で、やはり特別な輝きを放っていた。
『………………』
そうやって、俺たちはどれほどの時間を星空に注ぎ込んでいたのだろうか。
ギュルルルルルル!!
ふと沈黙を切り裂くかのように変な音が鳴り響く。
「まさか……」
「ゆ、優くん、ちょっとトイレに付き合ってくれないかな……」
それは、紛れもなく先輩の腹部から出てきた警告音だった――
やや長めの山道を戻ってたどり着いた神社のトイレは男女共用で、小便器と和式の個室が一つずつ隣り合っている造りになっていた。
『あっ……』
しかし、問題はそんなところではなく別のところにあった。
「やだぁ、今時こんなトイレがあるなんて聞いてないよぉ~~」
「それ全面的に同感です。こんなトイレとうの昔に絶滅したと思っていたんですけどね……」
あろうことか、神社のトイレはくみ取り式の俗に言う『ポットン便所』だったのである。
――言うなれば、秋の夜空よりも物悲しくて薄暗いブラックホールだよな……
豆電球のほのかな明かりに照らされながらそんなことを考える。
「……よし!」
その傍らでは及び腰だった先輩がようやく意を決したみたいだった。
「優くん。私がうっかり落ちないように隣でしっかり見張っていてね」
「あ、はい」
俺は先輩に懇願される形で個室へと連れ込まれる。そりゃあ確かにこんなトイレだと、一人で使うのは心細いと言うものだろう。
――そういや以前、従姉妹の未衣ちゃんも初詣でこんなトイレを使ったとか言っていたなぁ……どこぞの男に見守られながらウンコしたって話だけどな!
親戚から聞いた昔話を思い出しながら、今の自分がその時の男と同じ立場にあることを自覚する。だとすれば、俺もまた先輩を見守ってやるのが筋と言うものである。
「優くん。絶対に絶対に、終わるまでそばに居てくれないと嫌なんだからね」
ギュム。
先輩は俺のチンコを一握りすると、ゆっくりと段を上って便器に跨りその美尻を露にしながら屈んだ。
――いいなぁ……長いスカートを全部膝上にまとめ上げてるから、尻が丸見えだぜ!
先輩の尻をまじまじと眺めながら俺はチンコを屹立(きつりつ)させる。
「う~んっ……!」
しかし先輩はそんな俺などお構いなしと言った具合に可愛いうめき声を上げると、その美尻からあまりにも不釣り合いな糞便を一気にブラックホールの中へとひり出したのである。
ブリブリブビビビッ!! ビリビリッ、ビリビリビチチッ!! ブバッ、ブリッ、ブリリリリリリ!!
先輩の下痢便が豪雨となって便槽の底へと落ちて行く。それは夏に見た時と一緒で、まるで茶色い天の川を見ているかのようだった。。
「はぁ~~~~」
プシャァァァァァァァ…………
溜まっていた老廃物を出し切って気が緩んだのか、先輩が恍惚とした表情で放尿を開始する。ツルツルの局部からほとばしっているそれは透明で、まるで彼女のピュアな心を現しているかのようだった。
「さてと」
クチュッ、クチュッ、クチュクチュクチュ!!
先輩が備え付けの木箱に置いてあった堅そうな紙で尻を拭き始める。どうやらここのトイレは便器だけでなくペーパーまでもが昭和テイストのようだった。
「もう、お尻がザラザラして変な感じ」
「ですよね。でも、これもある意味貴重な経験だと思いますよ」
「ふふっ、そうかもね☆」
先ほどまでの物怖じしていた姿はどこへやら、気が付けば先輩はすっかりポットン便所に跨ったままにこやかな表情を浮かべていた。言うなれば、もはやすっかり慣れてしまったかのように。
「……」
だから俺はあえて黙っておいた。そう、実を言うとこの神社にはこことは別に本殿の裏に新しくてキレイな男女別々のトイレ(個室は全部洋式&温水便座)があるという衝撃的な事実を――
帰り道。俺たちは冷たい風が吹く夜道を歩いていた。
「ごめんね優くん。また天体観測の日にお腹壊しちゃって」
「気にしなくて良いですよ。むしろ俺としては秋空に天の川を見つけたような気分です」
「えっ? どうして私がお腹を壊したことと天の川が関係あるの?」
「いえいえ、こっちの話です。それよりも、ほら」
先輩をうまくはぐらかしながら俺は夜空に指を差す。するとそこには先ほどと変わらぬ満天の星々が無数に散りばめられていた。
「また行きましょうね、天体観測」
「……そうだね☆」
俺たちは次の約束を交わすと、どちらからと言うこともなく互いの体を寄せ合いながら歩みを進めていた。彼方に輝く秋の星座たちに見守られながら――