「……………………」
7月7日、午後7時。2時間後に学校の先輩と七夕デートの約束を取り付けていたにも関わらず、俺は塾の補習授業で問題用紙との戦いを余儀なくされていた。
「先生。いくら何でも80点以上を取るまで帰らせないってのは酷じゃないですかね?」
俺は現在繰り広げられている過剰な居残り補習についてやんわりと直訴する。
「……優太君。他の子たちはその80点以上を取ってとっくに帰ってるのよ? つまり、あなたの知恵と努力が足りないだけの話でしょ?」
しかし、塾の講師――数野礼美(かずのれいみ)は手厳しい正論とともに俺の訴えをねじ伏せてしまう。
「そ、それは……」
「分かったら口を開く前に脳を動かしなさい。今日は合格点に届くまで絶対に帰しませんからね」
「は、はい」
結局、何も言い返すことが出来ずに俺は補習の続きを余儀なくされてしまうのであった。
――くそっ! 今日はいつになく本気だぞ、このオバサン!
先生に心の中で毒づきながら再び忌まわしい問題用紙に目を通す。だがそこには結構な難問がそろっていて、本日既に4度実施されていた模擬テストでいずれも50点台に終わっていた俺が80点以上を取れそうには思えなかった。
つまり、これからデートを控えている俺にとっては間違いなく『詰み』の状況だったというわけである。
――マズいな……だけど、どうにもならねーんだったら…………
俺は意を決して先生の不意を突くかのように立ち上がる。
「すみません、ちょっとトイレに行ってきます」
「あら。逃げるにしては随分と古典的な手段を使うのね? まさか、この私がすんなり行かせてあげるとでも思っているのかしら?」
「ですよね。だったら……」
予想通りの反応を受けて俺は待ってましたと言わんばかりに先生へとあるものを投げ渡す。それは、俺がこの塾に通うためにいつも利用している自転車の鍵と自宅の鍵を束ねたキーホルダーだった。
「ソイツを先生に預けておきます。これなら逃げないって信じてもらえるでしょ?」
「……なるほど、いかにも君らしい大胆な発想ね。いいでしょう、行ってらっしゃい」
「恩に切ります」
俺は鍵を使った人質作戦で許可を取り付けると、堂々とした足取りで先生と二人きりになっていた教室を後にした。
「…………」
ズボンの内ポケットの中に、自宅と自転車のスペアキーを束ねたキーホルダーを忍ばせた状態で――――
「はぁ~~」
男子トイレの中。小便器へと放尿しながら俺は色々な感情の入り混じった安堵の息を吐く。
迫り来る尿意から解放されて落ち着いたのはもちろんのこと、これで忌まわしい補習から逃げ出せるんだと思うと息つかずにはいられなかったのである。
――悪いな、礼美先生……でも、今日だけは勘弁してくれよな!
オシッコを済ませた俺は刻一刻と近づいてくるデートタイムに胸を躍らせながら洗面台で手を洗う。正直なところ後ろめたい気持ちは渦巻いていたものの、こればっかりは本当に譲れなかったのだ。
「……」
そんな俺が気を紛らわせたい一心で備え付けの消毒スプレーを両手にすり込ませていたその時であった。
――カツン、カツン、カツン……
トイレの外からハイヒールの足音と思しきものが聞こえてきて、反射的に耳を研ぎ澄ませる。
――おいおい、まさかこれって…………
今日は既に他の受講生や講師たちは帰っているはずだから、自ずとそれは――
「うぅっ、早くしないと」
「――――っ!」
聴覚が捉えたその艶めかしい声音に俺の予感が確信へと変わる。
間違いなく、その足音の正体は先ほどまで二人きりになっていた礼美先生その人だったのである。
「………………」
程なくして先生の足音が女子トイレの方へと移って行く。
――このチャンスを逃すような手は……ないっ!
俺は一つ深呼吸をすると、迷うことなく桃源郷を求めて女子トイレへと侵入したのであった。
塾の女子トイレは、和式の個室が3つ縦並びになっている古風な造りになっていた。
――確か、男子トイレのリニューアルに費用をかけ過ぎた関係でこっちに予算が回せなかったんだよな……
人づてに聞いた裏情報を思い出しながら反射的に頬を緩ませる。
――おっと! そんなことよりも、今は……
俺は中央の個室に鍵がかかっていることを確認して、手前側の個室に入って鍵をかける。そして、すかさず床に這いながら隙間の向こうを覗き見る。
「……」
すると、俺の視界にこれで2度目となる便器に屈んでいる先生の生尻が映し出されたのである。
――へへへ。やっぱり礼美先生のデカ美尻は一味違うなぁ……
俺のチンコが先生の尻に欲情しながらムクムクとそそり立つ。
「んっ、くっ」
だが先生は俺の熱い視線に気付いていないのか、必要以上に艶めかしい吐息を漏らすとその美尻から実に汚らしい下痢便をひり出し始めたのである。
ブリブリブリブリブリリッ!! ブブビビビ!! ビリビリビッ、ビチャアッ!!
――す、すげえ!
それは、今日という日を象徴するかのような便器に降り注ぐ茶色の天の川だった。
「はぁ、はぁ……」
ジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロ…………
下痢便を出し切った先生が息を荒げながら放尿を開始する。その色合いは透明で、ある意味ではこちらの方が天の川を描いているようにも見えた。
――こ、こりゃたまんねーぜ……まさか礼美先生のウンコ姿まで拝める日がやってくるなんてな!!
しかも七夕という実に記念すべき日の夜という時間帯に、である。
「…………」
俺はこっそりと隙間に鏡を忍ばせて先生の局部をチェックする。
――やった……見えたぞ!
すると、そこにはオシッコをはしたない音で放出している先生の局部がハッキリと映し出されたのである。
――良いねぇ。マン毛びっしりで、大人のアソコって感じだぜ!
秘境を存分に満喫したところで鏡を引っ込めて俺は再び先生の尻に視線を戻す。
「……んっ!」
ブブゥ~~ッ、ビリリッ!!
隙間の向こうでは、ちょうど先生が大きなオナラを噴き出していたところだった。
――全く、相変わらずトイレの中だと自由奔放な女だぜ!
俺はこちらまで漂ってくる悪臭に顔をしかめながらも先生が尻を拭き終えて立ち上がるまでしっかりと見守り続けていた。
――でも……男として、そんなアンタから逃げちゃダメだよな!
そして、彼女が立ち上がったところで速やかにトイレを離れて『教室へと』戻ったのである――――
先生の脱糞現場を見てからの俺は、自分でも分かるぐらいに脳の中が冴え渡っていた。
その結果、5回目の挑戦となった模擬テストで俺は文句なしの100点満点をゲットしたのである。
「すごいじゃないの優太君! 君が100点を取るなんて、まさに七夕の奇跡だわ!」
「チッチッチッ、奇跡なんかじゃありません。先生の教えと俺の本気で成し遂げた必然の結果です」
感嘆の声を上げる先生に少しばかり偉そうな受け答えを披露する。本当は自分でも驚いているのだけれど、そんな感情を悟られたくないというのが正直な気持ちだった。
「それでは先生。帰らせてもらうので先ほど預けた鍵を返させてもらいます」
俺は必要以上に堂々とした態度で教壇に置かれていたキーホルダーを掠め取り、帰宅の途につこうとする。
「優太君、ちょっと待ちなさい」
だがそれは突然に目の前へと回り込んできた先生によって阻止されてしまう。
「どうしたんですか? まだ俺に何か用があるとでも?」
「ええ。一つほど、私でも分からない難しい問題を優太君に解いてほしいと思ってね」
心なしか先生の表情に淫靡な影が見えてくる。
「いいですよ。今の俺なら少々の難問ぐらいパパッと片付けてあげちゃいます」
しかし、俺はその真意に気付くことなく大船に乗ったような気持ちで安請け合いをしてしまう。
「ふふっ、頼もしいわね。じゃあ質問――」
ギュム!
すると先生は膨らんでいた俺のチンコをガッチリとつかみ上げ、心臓を突き刺すかのような眼差しでこう尋ねて来たのであった。
「あなた……さっきどうして私のお尻を覗いていたのかしら?」