このパーティーでダンジョンは間違っているだろうか 作:もっち~!
---シュウ---
僕を含む、不揃いなパーティー一行はオラリオの街に足を踏み入れた。
「どこに住むんですか?」
住処が気になるらしいカズマ。
「アクセルの街では、どうだった?」
「う~ん、馬小屋だったり、いわく憑きの屋敷だったり…」
「そうか…今、僕の下僕が予算内で借りられる物件を探している。広場で待ち合わせしている」
バベルという50階建ての塔近くにある中央広場に向かった。
「で、この街はアクセルと同じで、外周を塀で囲まれた円形都市だ。違いはこの塔と、塔の下に広がるダンジョンだ」
カズマ達に、彼女が来るまでの待ち時間で、簡単な違いを教えておく。
「クエストは掲示板に張り出されない。基本、ダンジョンで魔石とドロップアイテムを収集して、地上で換金するんだ。クエスト自体はあるけど、信用できるパーティーへ直接発注される」
「えぇぇぇぇ~、ダンジョンに行かないと、貧乏ってことですか?」
いきなりビビっているカズマ。
「それがいやなら、何か商売をするかだ。まぁ、カズマ達が決めてくれ。やりたいことのサポートはするが、方向性には関わりたくない」
僕に誘導されてと、結果責任を負わされるのは避けたい。
アクアは女神から水の精霊にされたショックを引き摺っている。ダクネスは、余韻に浸り、めぐみんは何故か僕の背中に貼り付いていた。彼女の乳房の感触が良いので、文句を言わずにオンブしている。
「で、モンスターだけど、魔石という石で動いている。考えようによっては、ゴーレムみたいな感じだ。で、倒すと、魔石とドロップアイテムと灰になる。しかし、倒す時に魔石を傷つけると、経験値と灰しか得られない。めぐみんの攻撃だと稼ぎ無しだ。ここ一番以外に使わせるなよ。いいな、カズマ!」
「それって、俺だけが攻撃陣ってことですか?」
カズマが不安げに質問してきた。攻撃の当たらないクルセイダーが問題だな。しかし、
「いや、そこの女神崩れも戦えるぞ」
近接攻撃をマスターしている元女神を指差しておく。
「で、ダンジョンは下層に行くほど広くなる。モンスターの出ない安全地帯は18階と50階だ。それ以外は出現するから、野宿の際は注意しろよ」
「野宿?そんなに広いダンジョンなんですか?」
「50階まで片道1週間くらいだ。まぁ、上級冒険者といわれる手練れなら、18階往復は1泊かな」
「えっ…上級でも1日で18階ですか?」
顔から血の気が引いていくカズマ。
「あぁ、シュウ!借りられたよ~」
仲間の声がした。この世界へと連れてきた女神のメイビスだ。
「どこを借りられたんだ?」
「豊饒の女主人の裏にある家。大家さんはミアさんだよ。なんでも別館にしようと思ったらしいけど、貸してくれるって。後、中庭で鍛錬していいそうよ」
あそこなら、食事の心配は要らないかな♪
「この方は?神々しさを感じますが…」
メイビスを見たアクアが訊いてきた。
「僕の下僕で、女神のメイビス。元聖書の神で維持神だったんだよ」
驚くカズマ達。
「聖書の神…女神だったのかぁ~!」
「世界によっては、男の場合もあるし、性別無しの場合もある。彼女は、こことは違う世界の神だ。で、今回、僕達の主神になってもらう。この街では、眷属を持つ主神がファミリアという組織を作れるんだよ」
「シュウさんじゃダメなの?」
僕の正体を、上司から知らされているアクアが訊いてきた。
「僕は地上では、神であることを否定している。だから、仲間に主神になってもらうんだ」
「いや、下僕に女神様って有り得ないでしょ?」
と、カズマ。ツッコミ処はそこか…
「そうか?僕の下僕には女神が多いけど♪」
「さすが、エロ神様…」
アクアがぼそっと言った。ま、ここにいてもしょうが無いので、住処に移動を開始した。豊饒の女主人とは、この街の中で一番人気の酒場である。美女揃いのウェートレス、旨い食事、てんこ盛りの量が自慢だ。少し高いのか問題ではあるけど。
そのお店は西のメインストリート沿いにある。西地区はファミリアに所属していない労働者とその家族の住む家が多い。なので、割と静かめな地区ではある。豊饒の女主人に隣接する道を入り、暫くすると、今回の住処の入り口が現れた。間口は狭そうではあるが、ウナギの寝床タイプらしい。
入り口を入るとダイニングがあり、奥にはキッチンがあるそうだ。ダイニングの左手のドアを抜けると、踊り場に出た。左手には中庭へと出られる扉があり、中庭の向こうには豊饒の女主人の裏口が見えた。踊り場の右手には2階へと上る階段が有り、奥にはトイレや洗濯場や風呂があるそうだ。そしてトイレだけは、各階のほぼ同じ位置にあるそうだ。
2階に上り、右には一番大きな部屋があり、そこは僕の部屋のようだ。その隣に2番目に大きな部屋があり、そこはメイビスの部屋で、残りは眷属用になるらしい。で、2階は僕以外は女性専用で、カズマの部屋は3階になると言う。
「こんな豪華な家に、初めから住めるだなんて…」
カズマ達が感動している。
「で、賃料はどうだった?」
「月100万で食事代は別。預かっていたお金で10ヶ月分一括で払ったら、12ヶ月でいいって」
この世界のミアさん太っ腹母さんのようだ。
「う~んと、後、ファミリアの設立はしてきたわ。あとで、眷属のリストを出さないとね」
カズマ達の背中にステイタス表を浮かび上がらせて、羊皮紙に転写させていく。
「う~…この戦力じゃ、5階まで行けないでしょ?」
彼らのステイタス表を見たメイビスが、唸る。僕もそう思う。カズマ以外、攻撃力が無いし。たぶん、アクアとめぐみんだと、魔石はゲットできない予感だ。どうするかな…
「カズマ、1週間後に潜る。それまで剣の腕を上げておけ。めぐみんは魔力を使わない方向の戦い方を考えろ」
「アクアは?」
カズマに訊かれたが…
「運が無い…これだと、魔石はゲットできない予感だ。アクア、お前はここ一番以外、回復専門だからな!」
魔石が手に入らないと、金が稼げない現実。この世界の冒険者のつらい現状ではある。金がないと、良い装備や服が買えない。一番の問題は、飯が食えないのだ。
「当面の資金は僕が出す。アクアへの融資だ。いずれ返して貰うからな。まぁ、返せ無い場合は、身体で払って貰うよ♪」
嫌そうな顔のアクア、嬉しそうな顔のダクネス。ダクネスは戦力外と考えようかな…まぁ、盾としては使えそうだけど。階層主クラスの攻撃でも無傷で済みそうな値だし。攻撃が出来れば、楽なのになぁ~。世の中うまく行かない。よくアクセスの街で、生きてこられたな、コイツらは。
「誰か、援軍で呼び出すか」
どう考えても、仲間を多少呼び出さないと、ダメなレベルである。こいつら、アクセスの街では、めぐみんの爆裂魔法で凌いでいたのか?この街では、めぐみんすら戦力外な予感だ。ダンジョン内であんな魔法を使えば、天井が崩落して危険が一杯である。
「誰を呼び出しますか?」
メイビスに訊かれた。
「う~ん…2軍クラス以下だな。強いやつだと、カズマ達が鍛えられないから。そうだな、剣士はアスナ、高火力でエミリア、リトル、ポーターにちはや、子守りで朱音、留守場でラムレムでどうかな?」
「高火力過ぎる留守番よね。まぁ、メイドは多いほどいいかな。わかりました。呼び出します」