※この作品はR-18です。

黒獅子の翼   作:二重人格

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             作・東堂幸一
              不定期更新・駄文


プロローグ

 訳が分からなかった。

 さっき、というかほんの数分前まで愛機に乗って戦場を飛び回っていて、敵から国を守り切った。

 その後、ボロボロになった愛機でなんとか基地まで戻って、右の車輪が吹き飛んだものの、なんとか着陸した。

 いつものように目を閉じて、大きく息を吸う。そして目を開くと

 -建物の中だった。

 どう見ても着陸した基地ではない。壁は漆喰で白く、機体の右斜め前方、七メートルほど先には縦五メートル、横十メートル前後の木の引戸がある、天井は木、床は石で出来ているようで、小さな窓から差し込む光りをキラキラと照り返していた。

 少なくとも、基地内でこんな場所は知らない。

 とりあえず降りようと思い、立った所で気がついた。

 ・・・機体の傷が無い。

 何箇所も風穴を開けていた翼も、吹き飛んだ右車輪も、歪んだアンテナも全て新品のように元に戻っている。

 そして気がついた。

 機体が乗っている所が台のようになっていて、回りの床から高くなっている。

 そして、その台の回りに、縄が一周ぐるりと囲ってある。

 まるで博物館か何処かに展示されているかのようだ。

 困った。

 状況が理解できない、訳が分からない。

 どうしたものかとコックピットの中で立っていると、不意に引戸が開いた。

 一気に外の光が流れ込んできた。

 急な光に慣れない目に手をかざして光を遮りながら、光の中に立つ人物を覗いた。

 女だ、輪郭から見ると袴を履いているようだった。

 女が息を飲んだのがわかった。

 目が合った。逆光でほとんど見えない筈なのに、何故かそう思った。

 数秒の沈黙の後、先に口を開いたのは女だ。

 あの・・・とどこか頼りなさげな声に我に返った。

 見つめあった僅か数秒がひどく長いものに感じられて、けれど一度終わってしまえば泡沫の如く、心には言葉にし難い奇妙な懐かしさが残るだけだった。

 目が慣れた。女の顔を認識し、懐かしさの正体に気付く。

 北見一恵だ。幼馴染みであり、実家の隣に住む頑固親父の一人娘。

 俺の婚約者でもある彼女は、また一段と綺麗になって、まるで若返ったようだった。

 「一恵、ここは何処なんだ?さっきまで飛んでいた筈なんだが・・・」

 一恵は目を見開き、急に慌て始めた。

 もう一度、一恵?と声を掛けると、一恵はあうあうと変な声を出した後、ひゃぁぁ等と叫びながら戸の左へ駆けて行ってしまった。

 気が強く男勝りな性格の、まるで乳が付いた男のような一恵、それが今では遠くからひゃひぃ!だとか、へあぁ!という奇声と共に転んで地面を滑る音が聞こえる。

 遂には「お゙どゔざあ゙あ゙あ゙ん!?」という絶叫まで聞こえた。

 相当パニックになっているようだ、最後が疑問形なところに何ともいえぬ悲壮感が漂う。

 なんというか、どっと疲れた。

 ようやく戦いから帰還して、休めると思ったらこれだ。

 コックピットに倒れ込む様に座り、急激に迫り来る眠気を受け入れる。

 これは夢だ。

 目覚めたら、戦友達と盃を手に酒を飲もう。

 そんな、淡い期待を胸に、俺はゆっくりと目を閉じた。




 この度は本作「黒獅子の翼」をお読み頂きありがとうございます。
 初めまして、二重人格、もとい東堂幸一です。
 旭日の翼を読んでくれた方々とも、私は初めましてになりますね。
 さて、今回のプロローグ、「ナニコレ意味わかんない」って方も多いでしょう。
 えぇ、意図的にそうしています。
 でも恐らくこんな謎展開は長くても後2、3話で終わるのでご安心下さい。
 また、近いうちに設定も組んだ登場人物紹介も出す予定ですので、その時まで気長に待って頂ければ幸いです。
 それでは皆様方、今回は此にて失礼します。
 ここまでお読み頂きありがとうございました!
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