※この作品はR-18です。

【完結】提督と艦娘   作:はのじ

18 / 23
わかりにくいので一話と二話のサブタイトル変更しました。
内容に変更はありません。


ゆでたまご理論

09

 

「はっちゃーん、おいーっすっ。今日も可愛いねぇ。……おっぱい温ったけぇ……柔らけぇ……はぁぁぁ……幸せぇぇ……」

 

 はちが教室に入った途端、胸に顔を埋められた。顔を埋めた少女は、はちの抱える大きな本を器用に避け、頬で、額で、鼻で、目で、耳で、時には舌を使い、五感をフル活用してはちの乳房を堪能していた。

 

 顔を埋めた少女ははちのクラスメイトだ。中高一貫の有名女学校。四月に二年生に進級したはちとは、都合五年目の付き合いが開始したばかりだった。

 

「もう、止めてください」

 

 はちは本を使ってぐいぐいと少女の顔を押し返す。少女が顔面の骨格を変形させる勢いで抵抗するが、奮戦虚しくおっぱいとの距離は絶望的になった。人は自分に無いものを求める。はちの胸の大きさ、形、柔らかさは少女が理想とするものなのだ。

 

「はっちゃんのおっぱいが大きいのが悪いの!」

 

「そうだそうだ!」

 

 教室にいる数人のおっぱいハンター達が賛同の声をあげた。このクラスにも持たざる者はいる。おっぱいハンターは蜜に群がる蜂のように、はちのおっぱいに引き寄せられる。

 

 はちはおっぱいハンター達を無視して席に座った。

 

 はちに続き、クラスメイトが挨拶をしながら続々と登校してくる。教室に、がやがやと雑談の輪が広がっていく。

 

「ねねっ、はっちゃん。例の電車の君とは順調なの?」

 

 最初のおっぱいハンターの少女が椅子を引きずり、はちの席の横に座った。

 

「……今日もデートしました」

 

 少女の目から、はちの表情は心なしかドヤ顔に見える。

 

「って、電車で会ってるだけでしょ?」

 

「デートです」

 

 断片的ではあるが少女は、はちに彼氏がいる事を聞いていた。未婚で彼氏もいない少女は、電車で出会い少女漫画のような展開で彼氏と付き合いを始めたはちの事を応援していた。

 

「え!? はっちゃん彼氏いるの!?」

 

 だがクラス変更してまだ数週間、誰もがはちの事を知っている訳ではなかった。

 

「聞いてないよー!」

 

「はっちゃん、ずっと男に興味なかったじゃん!」

 

「同性愛者(レズビアン)だと思ってた」

 

「このおっぱいを自由に揉みしだいている奴がいるのか!?」

 

「ほほう。だからあんなに大きいと」

 

「ふえーん。私のおっぱいがー」

 

 はちと仲良くしたい者、おっぱいハンター達、とりあえず騒ぎたい者達が、わいわいがやがやと、はちと少女の側にこれ幸いと興味津々で集まって来た。

 

 少女がはちにごめんなさいと目で謝るが、はちは気にしていない様子だ。一年の時も特段隠している訳でもなかったからだろう。

 

「付き合ってどれくらいなの?」

 

「百十二日目です」

 

「イケメンなの?」

 

「とても格好いいです(・・・・・・・・・)」

 

「どっちから告白したの?」

 

「はちからです」

 

 一問一答。次から次に質問が投げられ、はちは淡々と答えていた。

 

「もう揉まれた?」

 

「黙秘します」

 

「初体験は?」

 

「黙秘します」

 

「気持よかった?」

 

「黙秘します」

 

「なぁ! 本当はもうやったんだろ!?」

 

「黙秘します」

 

「やってないって言ってくれぇぇ!!」

 

「黙秘します」

 

 おっぱいハンター達は泣きながら質問していた。

 

 高校二年ともなれば、既に結婚している者もいる。このクラスにはいないが、他のクラスや上級生、早い者は一年次に、最早では中学在籍時に一五歳になった瞬間に結婚する者もいる。まだ焦る程ではないが、この手の話は男女問わず関心が集まるのは当然の事だった。

 

「どこの学校の人なの? 年下だったりして」

 

「社会人なので年上です」

 

「え!?」

 

 はちを中心にして、衝撃波が広がるようにざわりと空気が振動した。明らかに場の雰囲気が変わった。

 

「しゃ、社会人って! いくつの人なの!?」

 

「二十八です」

 

「二十八!? 一回りも離れてるじゃん!? もしかして既婚者とか?」

 

「独身です」

 

「ちょ!? 二十八で独身って、それヤバいって!」

 

 おっぱいハンター達が、やばいよやばいよーと口々に呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 大戦の終戦から百年余り。復興は成った。新たなインフラの整備は進み、新しい技術、新しい文化、新しい価値観が花開き定着した。人々は心の底から笑えるようになった。戦前に比べ、生活レベルは同等か分野によっては上回っているものも少なくない。

 

 だがたった一点。戦前を遥かに下回る数字があった。人口総数だ。国ごと、地域ごとに差はあるが、世界全体で見れば人口は最盛期の半数以下となった。正確な数字は不明だ。当時の記録の多くが失われている。国土が丸ごと灰燼と化し亡国となった国もあるのだから。

 

 異常な数の男性が戦争に散った。国を、地域を、家族を護る為だ。または軍隊が強制徴兵した例もある。その多くが鬼籍に入ることになった。

 

 復興の中心はやはり男性だった。歩みは遅かったが確実に復興は進んだ。

 

 戦後二十年が経過し、恐れていたことが現実化した。世界中で人口に於ける男女比率が狂ったのだ。

 

 戦前、世界的に見て男女の比率は、105:100と男性が僅かに上回っていた。これは国別に見ても然程変わらない。この数字が戦後推定で、75:100に変わった。男女比3:4で男女の人口比が逆転したのだ。そしてこの数字にはマジックが隠されていた。推定ではあるものの、統計の結果を知る一部の国の首脳陣はそのマジックを知ってしまった。

 

 ここから世界は更に恐ろしい事態を迎えることになる。

 

 もう一度言おう。復興の中心は男性だった。その中核は生殖機能をとっくの昔に失った年老いた男性達だった。戦争は青年、中年、壮年と多くの男性を奪っていた。子供が数多く生き残っていたのは、人類が人類たる所以だろう。

 

 戦後二〇年。復興の中核を担っていた多くの老人が鬼籍に入ると、男女の人口比率は55:100まで変動した。この期間、大規模に減少した人類は食料難もあり、人口の増加に失敗した。これが人口の年齢ピラミッドをも狂わせ、世代年齢にボトルネックが出来てしまった。この事態が、人口増加の停滞と男女比の更なる変動を生み出してしまった。

 

 日本は様々な対策を実施し、人口増加政策の一環として海外からの移民を大規模に受け入れたが、男女比の変動を留めるには至らなかった。

 

 最終的に男女比は戦後六〇年目にして、30:100で下げ止まった。実に男女比、3:10と言う狂気の数字である。

 

 戦後百年余りが経過した現代。世代のボトルネックは解消し、人口もじわじわと増え続けている。男女比も徐々に改善され、33:100、つまり男女比1:3と改善の兆しが見えていた。男女比問題や人口問題は未だ、喫緊の課題ではあるが、時間の経過だけが最大の対策でもあった。

 

 しかし人類は時計の針を、制度を変えることで強引に進めることにした。様々な制度が変更されたが、最たるものが結婚制度だろう。従来の結婚制度はそのままに新たな結婚制度が制定された。ケッコンである。

 

 導入当初は、眉を顰める者も多かったケッコンも、世代交代が進み、現在はなんら問題とされていない。制度のみならず習慣や風習、文化、宗教観といった、普遍的なものと思われていた様々な価値観が塗り替えられた。ありえない話ではあるが、百年前の人類が現代へとタイムスリップした場合、大きなカルチャーショックを受けることは間違いない。

 

 深海棲艦の侵攻は多くの悲劇を生んだ。人を殺し、町を燃やし、国を滅ぼし、硬直していた人類の在り方すら破壊してしまった。

 

 深海棲艦は悪しきものである。しかし人類からたった一人、その一点を以って擁護する人間がいてもいいのではないだろうか。何故なら我々人類は、深海棲艦がなんたるかの謎を何一つとして解明していないのだから。

 

 

   民明書房刊 『戦後人類百年史 深海棲艦俺TUEEEEE』より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

11

 

 新しい価値観の一つとして、結婚相手の男性は若ければ若いほうがいいというものがある。交際相手の男性も同じだ。成人年齢は一五歳まで引き下げられ、条件が揃えば中学生で結婚は可能になる。勿論ケッコンもだ。

 

 女性余りの時代に於いて二五歳を超え独身を貫く男性は、非常に珍しく何らかしらの問題を抱えていると判断せざるを得ない。

 

 この場合、経済的な事情や容姿については問題とは考え難い。前者は政府のセーフティネットが、後者は個人の能力も加味されるからだ。

 

 教室では、はちへの質問が続いていた。はちを心配しての事でもあった。

 

「真逆とは思うけど犯罪者じゃないよね?」

 

「窃盗(スリ)を二回、強制わいせつ(痴漢)を五回捕まえて警察から感謝状を貰っています」

 

 電車内の事であるが、事件は、はちの目の前で起きた。内、はちを狙った痴漢は五回だ。警察が感謝状を贈るにあたり、当然身元照会はされている。

 

「ど、同性愛者だったりして……」

 

「遠慮せず、はちの事を堂々と見て触ってもいいと思うんです」

 

 はちが両の掌でゆさりと胸を持ち上げ、寂しそうに呟いた。「すげぇ……」おっぱいハンター達のごくりと喉を鳴らす音が生々しく響いた。

 

「もしかして独身主義者とか? 男女関係なくそういう人は一定数いるからね」

 

「今まで女性に縁がなかったそうです」

 

 えぇぇ? と疑問の声が上がった。今時そんな男性がいるだろうかと。

 

 聞き手に回っていたクラスメイト達が、わいわいがやがやと隣同士で疑問を口にしていく。

 

「性格が歪みまくっているとかじゃね?」

 

「いやぁ、聞いてる限り優しいらしいよ?」

 

「性癖が異常だとか……」

 

「その需要は一定数あるからねぇ……」

 

「顔面偏差値が壊滅的だとかは?」

 

「はっちゃんが格好いいって言ってた」

 

「イケメンで優しいとかどこの都市伝説だよ。それで二十八まで独身とかますます意味不明」

 

「あの大手重工業の技術者(エンジニア)だって」

 

「へぇ、四月に出世したんだ?」

 

「一人暮らしだそうよ? その気になればいつでも同棲出来るね」

 

「なんで独身なんだ!? 一体何が問題なんだよ!?」

 

「分っかんねぇー!」

 

 はちを囲むクラスメイト達が頭を抱えた。この時代の価値観に逆らう存在は少女たちの理解を超えていた。

 

 その時、ガラリと音を立てて教室の扉が開き、一人の少女が入室した。部活動の朝練で遅れてきたのだろう。しかしこの少女が、はちを囲む少女たちの疑問を解決することになる。

 

 少女は盛り上がっているはちの彼氏の話を聞くと開口一番。

 

「あれ? 私その人見たことあるかも? てっきり親戚の人だと思ってた」

 

「なんだってー!!?」

 

 少女が利用する電車は、はちと同じだった。朝練がない日、たまたまはちと話題の男性を見たことがあった。

 

 はちを囲む少女達が食いついた。入れ食いだ。

 

「どんな人だった!? イケメンだった!?」

 

 イケメンと聞いて少女が首を捻った。

 

「ん? イケメン? あれが? イケメン? んん??」

 

「イケメンじゃなくて、格好いいってはっちゃんが言ってた」

 

「うーん。ゴリラみたいにごっつくて超怖い顔してたよ」

 

「それだ!!!」

 

 クラス全員の心が一つになった瞬間だった。容姿は独身の決定的な理由に成りづらい。だが無いとも言い切れない。最低限納得できる理由が判明し少女たちは胸を撫で下ろした。

 

「いやぁ、この喉に刺さった小骨が取れたスッキリ感がたまんないねぇ」

 

「なんだよー。一目惚れって言ってたじゃん。はっちゃんは蓼(たで)食う虫だったかー」

 

「蓼って何よ?」

 

「知らん」

 

「まぁ恋は盲目と言いますし」

 

「趣味嗜好は人それぞれ。惚れた病に薬なしさ」

 

「はい! 解散! かいさーん!」

 

 少女たちが三々五々、はちの周囲から自分の席に戻っていく。はちのことを知ることが出来、目的は果たされたと言ってもいい。既婚者はいないが彼氏持ちは多い。元々はちの彼氏の事は興味の対象外だったのだから。

 

 クラスメイトが周囲から去り、はちは少しだけほっとした。騒がしいのは余り好きではない。はちは静かな環境が好きだった。会話はなくとも好きな人の顔を見ているだけで幸せな気分になる。しかしもっと幸せになれる方法がある事も知っている。好きな人と色んな事を体験したい(・・・・・・・・・・)気持は人一倍だった。ホワイトデーでは急ぎ過ぎて失敗してしまった。

 

 はちは反省した。反省を踏まえつつも、もう少し関係を深めてもいいのではと思案をした。急いではいけない。相手は一八だ。急いでもいい結果は出ないとなんとなく思う。時間はまだまだあるのだから。今のところ結果は上々だ。はちは今朝の出来事を思い出し、目を細め、抱えた本を大事そうにぎゅっと抱きしめた。

 

 本には一枚のメモが栞のように挟まれていた。

 

 その時、ホームルームを告げるチャイムが鳴った。担任教師が入室し手をパンパンと叩いた。

 

「はいはい。皆おはよう。席に座って。点呼とるわよ」

 

「はーい」

 

「阿羽戸」

 

「はい」

 

「井上」

 

「はーい」

 

「上田」

 

「はいはい」

 

  ・

  ・

  ・

 

 

 

 

 

 

 

 

11

 

 一八はぞぞぞと背筋を走る悪寒に体を震わせた。季節外れの風邪だろうか? 健康には人一倍自信があった。これまで大きな病は経験したことがない。気のせいだと一八は悪寒を無視することにした。

 

 相変わらず仕事は順調だった。仕事が認められこの四月に一段飛ばしに出世し部下も出来た。女性に縁が無いのは相変わらずだが、無理に結婚をする必要もない。圧倒的な少数ではあるが、生涯独身の男性もいることはいるのだから。同性愛者だったり、重犯罪者だったりはするが。

 

 一八は仕事の手を休め今朝の出来事を思い出した。

 

 はちから連絡先を教えて欲しいと懇願され断りきれずメモ用紙に住所と電話番号を記載し渡してしまった。

 

 友人としては問題ないが、異性としてはどうだっただろうか。はちとは歳の離れた友人として良い関係を築いていると思う。この年令まで女性に縁がなかったのは何か自分に問題があるのだろうと一八は思っている。付き合ってもいないのに、若いはちとこれ以上関係が続くのは、はちに迷惑をかけると思いながらも、一八自身、はちとの交流は心地よくこれまでずるずると関係を引き伸ばしてしまった。そろそろ潮時だろうか。

 

 淫夢の罪悪感もあり、一八は悩んでいた。嬉しそうにメモを受け取り、大事そうに大きな本に挟んでいたはちの笑顔を思い出し、なかなか決断もつかなかった。

 

「うーん」

 

 モニターから目を離し、椅子の背凭れを使って背伸びをした。

 

「おい、新海」

 

「あ、はい」

 

 上司が手招きをしていた。椅子から立ち上がり上司の元に向かった。部下に聞こえないない様配慮して内緒の話だろう。

 

 上司の前に立った。上司は言いにくそうにしていた。

 

「お前、もう二八だったな。結婚しないのか?」

 

「その、女性と縁がなくて」

 

「まぁ少々(・・)怖い顔ではあるが……仕事も真面目だしなぁ。縁がなかったってのも無くはないが……」

 

「はぁ」

 

「いやな、取引先がその歳で結婚してないのを気にしててな。何かお前に問題があるんじゃないかって言ってきた」

 

 上司はブラインドをつまみ窓の外を見ている。間近で見る一八の顔は慣れていても少々怖い。

 

「そこでだ!」

 

 上司は振り返った。

 

「部長がいい人を探してきた」

 

「いい人?」

 

「お前、見合いしろ」

 

 窓の外、晴れ渡った空からごろごろと季節外れの雷の音が聞こえていた。

 

 青天の霹靂。

 

 一八とはちの関係が変わろうとしていた。

 

 

 

 




あれ?
エロを書きたいだけなのに(汗


【蓼】たで google検索より抜粋
 イヌタデ・オニタデ・サクラタデ等の通称。道ばた・湿地に生え、夏・秋に、紅や白の穂状の花が垂れ咲く。葉・茎には辛みがある。
 「―食う虫もすきずき」(辛いたでを食う虫もあるように、人の好みはさまざまだ)


【ゆでたまご理論】
両手にベアクローを付けて攻撃力は倍。
いつもの二倍のジャンプで攻撃力はさらに倍。
三倍の回転力で合わせて攻撃力は一二倍。

りろんぶそうはかんぺきだ。


はち    :新海一八のみ
はっちゃん :その他


アクセス解析というものがありまして、ちょっと実験してみたいので次回の更新時にアクセス制限つけてみます。2,3日から一週間、もしくは次々回更新時には戻す予定です。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。