本話は本編ではありません。
鏡に映る白い裸身。肌は汗でしっとりと濡れ、乾く間もなく次から次へと染み出し玉となって流れていく。背中から二本の太くたくましい腕が回され、一本は形の整った大きな乳房に、そしてもう一本の腕は、艦娘であっても、女型として一番敏感な部分に。
右腕が円を描くように乳房をこね、潰す。何度もねぶられ、赤く充血した乳首が二本の指で捻られ、痛みにも似た鋭く甘い官能が脊髄を走る。
「ぃあぁ……くぅぅん」
掌が乳房を支え、二本の指が乳首をつまんだまま上に上がった。柔らかな乳房は、美しいラインを崩すことなく繊細な和菓子のように持ち上げられた。二本の指が乳首を開放し、甘やかな痛みから開放される。しかし直後にぬるりと温かさに包まれ、ころころと唾液にまみれた粘膜に弄ばれる。背後の男性が首を伸ばし乳首を口に含んだのだ。性的な刺激で充血した乳首はしこりを持ち、時々硬く鋭い歯がすれ違い、指が与える刺激とは質の違う快感が脊髄中枢を駆け巡り、びくりと体が勝手に跳ねてしまう。
「あっ、あっ、いぅ、いぃ、ひぐっ」
自分の声とは思えない嫌らしい声が喉の奥から出てくる。制御できず指を噛み少しでも喘ぎの音を小さくしようとしても、腕は背後の男性の首に回されている。体の大きさが違う。背後の男性は少女の負担を小さくしようと大きな体を丸めていた。
少女が首を回した。乳房を片手で支え、身を乗り出した男性の顔が、夢中になって乳首に吸い付いている。それだけで胸の奥、子宮の奥が熱を持ち、ぐねぐねと膣壁が蠢動する。
「ぐっ」
思わぬ動きに男性の唇が乳首を開放した。少女は男性が欲しくなり背後に回した腕に力を入れ、男性の首を引き寄せた。
少女は男性の胸に背を預けている。横を向いた少女の唇が男性のそれを繋がり、唾液が交換され少女の喉がくっくっと唾液を嚥下した。舌同士が絡み合い唾液が途切れることなく口腔に充填されていく。
「んぅ、んふぅ、ふぅんっ」
僅かな唇の隙間と鼻孔で酸素を取り込む。僅かなりとも離れたくなかった。男性が再び胸を愛撫した。それだけではなかった。今まで休めていた左手で少女の陰核を撫で回した。
「あぁぁっ! ていとくっ だめぇぇ! いっくぅっ!」
少女の首が仰け反った。首元から胸元が一気に赤く染まった。三度目の絶頂。少女の体を気遣い、休憩をとりながらの愛撫で少女の気が昂ぶった結果だ。少女は繋がったまま、ペニスの抽送のないまま絶頂した。
快楽と幸福感が綯い交ぜになり、自然と涙が眦から流れる。視界は光がぱちぱちと弾け、腰から上の自由が効かず、びくっびくっと不随意の痙攣を起こす。背中から太く逞しい腕が包むように少女を支えた。少女は甘える様に全身の力を抜き、温かい胸に背中を預けた。
「ていとく……すきです……はちは……はちは……ていとくがだいすきです……」
「――」
はちの大好きな太い声が背中から聞こえた。
■
「おい」
「……はい」
高圧的な声が聞こえた。提督の声だ。声を聞いたはちの体がぶるりと震えた。弛緩した体に力が入った。戦場でもベッドの上でもどこにいても提督の声だけははっきりと聞こえる。
「お前は
「……です」
「聞こえない」
「提督のはちです……」
「もう一度」
「はちは、はちは、
女ではない。艦娘だ。意思を持った戦う兵器。見た目だけは人間の女性となんら変わりはない。愛の言葉を交わすことも出来る。想い人と思うがまま交わい心を溶かし合う事もできる。だが女ではない。まがい物だ。鋼鉄の子宮は愛した男性の子を育めず、深海棲艦を沈める腕は子を慈しむ事も出来ない。
男と女として対等の立場になれない。だがこの時、提督に抱かれる時だけは女として見て欲しかった。愛する者の子を育める女であると、勘違いさせて欲しかった。身も心も提督に支配された時、まがい物であろうと、はちは心の底から提督の女であると思うことが出来た。子を宿し育て慈しむ夢を見ることが出来た。
だからこれは、はちのわがままだ。儚く、幸せで、まがい物の夢を見る為の。
「見ろ」
ベッドの前にある大きな姿見。鏡は裸の二人を映し出している。提督の胸に背を預け、提督の軽く開いた太腿に大きな臀部を乗せ、無毛の性器をさらけ出し、大きく脚をひらいたはちの姿を。
はちは提督の精を三度受けた。一度目は口淫で。一滴残らず飲み干した。二度目と三度目は膣で受けた。繋がってから一度も抜かれぬ陰茎と膣口の隙間から愛液混じりの精液が染み出している。包皮がめくれた陰核は小さく膨れ赤く充血している。
「いや……」
「見ろ」
顔が羞恥で熱くなる。鏡に映るはちの肌も朱に染まっていた。提督の大きな体にすっぽりと体を預け、二人は陰部で一つに繋がっている。膣口が大きく広がり、怒張した提督のペニスにぱくりと食いついている。受け入れれば受け入れるほど馴染んでいく提督のペニスは愛おしく、恐ろしい。
はちに子を授けるため健気に頑張るペニスが愛おしい。
はちの痴態を引き出し提督の目に晒すペニスが恐ろしい。
はちは姿見から目を逸した。
ペニスに突かれる度に、喘ぎ、反応し、求める。はちのあさましくも淫らで淫猥な、提督に見られたくない姿はもう取り繕うことは出来ない。しかしはちが、淫らに喘ぐ度、求める度に、提督の興奮を引き出し、はちを求めてくれる。見られたくない。でももっと見て欲しい。相反する二律背反。しかしそれすらも提督の一言で。
「見ろ」
「……はい」
簡単に支配された。違う。はちの身も心も支配して欲しい。
「言え。どんな顔をしている?」
鏡に映るはちの顔。
「……ていとくと繋がっているのが嬉しくて泣いています」
「他には?」
「……ていとくが中にいるだけで気持ちよくて……だらしなくよだれを垂らしています……」
「まだあるだろ?」
「……頭がふわふわして……とろとろになって……えっちな顔をしています……」
「はち……」
「……ていとくにはちの全部を見てほしくて……ていとくがもっと欲しくて……はちはもうぐちゃぐちゃです……」
膣口と膣壁が広がった。提督のペニスが限界まで膨らんだのだ。
「きゃうんっ……あっ、あっ、いぃぃ……」
提督の親指が陰核を軽く撫ぜ、二本の指がペニスを挟む位置に添えられ、左右に広げられた。陰唇の伸びて広がり、愛液まみれの襞が鈍い光を反射する。
「今からここに射精する。一度じゃない。二度、三度、四度、五度。何度でもだ」
「あぃっ、はっぃい……」
感度が上昇したはちは、体を震わせながらかろうじて返事を絞り出す。
「子宮に精を受けた女は子を宿す。俺の精液はお前を孕ませる」
「はら……む……」
「そうだ。お前は
「ていとくの……こ……」
「違う。俺達の子だ」
乳房を弄られ先端を刺激される。陰核と性器に鋭角な快感が走る。
「あぃっ…んっ、あっ、ぁいぃぃ……」
「お前は今日、戦艦を三隻沈めた。大きな戦果だ。
「はぃひぃぃっ! はっ、孕みますぅっ! はちはっ、はちはっ、提督の子をっ! はち達の子を!」
「いくぞ」
■
「あっ、あっ、あっ、だめぇぇ! まっしろにっ……ていとく! はちイキますっ! またイキますぅぅ!!」
後背位で貫かれたはちの腰から頭頂までが弓の様にしなった。肌は連続の絶頂で元の白には戻らない。爪が強くベッドシーツに食い込んだ。はちは頬をベッドシーツに擦り付けながら、絶頂を提督に知らせる為だけに声を絞り出している。それが提督を喜ばせると知って。そこに普段の、びんびり、おっとりとした口調はない。はちを知る者が聞けば驚く程の声量だった。
提督の執務室に繋がる寝室は完全防音だ。音が遮断されていなければ、一晩で提督とはちの関係は泊地中に知れ渡ってしまう事だろう。
「いけっ! 孕め!」
提督は命令する。許可を得たはちは、これまで耐えに耐えてきた快感の堰を開放した。
「っあっ……は、はちはっ……孕みます……!! あぁぁいぃぃぃっくぅぅ!!」
同時に提督のペニスも限界を迎えた。はちが提督を道連れにしようと子宮口と膣壁で提督を押し包んだからだ。五度目とは思えない量の精液がはちの中に満ちた。
はちの絶頂は小さなものも入れると数え切れない。艦娘の体力は人間に比して無尽蔵だ。艤装を解除した時、例え疲労したとしても艤装を纏えば回復する。対して提督は人間だ。何度でも精を放つと宣言したが現実には不可能だ。はちと体を重ね、量も回数も増えてしまったが限界は当然存在する。
眼下で、はちが不随意の痙攣を起こしていた。艦娘と言えど疲労する。戦闘でも、セックスでも。
性器は繋がったままだ。提督のペニスは、これ程の精を放っても未だ硬度を失わない。抜くことはしない。はちが異常に嫌がるからだ。
提督は、はちを休めようと腰を掴んだ掌の力を緩め離そうとした。その手をはちが掴み引き留めた。いやいやと首を振っていた。はちが再開を求めていた。
「くっ!」
はちは提督限定で被虐心と被支配欲を持っている。それは戦闘指示を受ける艦娘の特性から来るものではなく、はち個人が持つ嗜好だ。提督のだけのはちになりたい。それを初めて肌を重ねた時に告白された。
はちと呼ばせるものそのせいだ。他者にはっちゃんと呼ばせ、提督にだけはちと呼び捨てで呼ばれる。名前でもはちの存在を縛る。そういう意味があるのだろう。
提督ははちの腰を掴み直し高く持ち上げた。
「あっ……んくっ……」
大きな体の提督と小さなはち。背後から貫く時、はちの臀部は高く高く持ち上げられる。提督が膝を突いても位置が合わない。腕に力の入らないはちの顔はシーツに圧迫され、胸は潰れて形を変える。行為の最中、はちの膝は宙空に浮き、ぶつかる腰の動きに合わせて前後に揺れる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
高まったままの絶頂のへ水位は、いとも簡単に天井に到達する。
小さなオーガズムの波はいくつも通り過ぎていた。ふわふわと鈍く鋭くを繰り返して。
はちは苦しみから逃れるように顔を上げて、喘ぎの呼吸をした。姿見の鏡にはちが映っていた。そこにいつもの可憐さなどなかった。苦しむの様に顔を歪め、しかしそこに苦悶などなく、肌は紅潮し、涙と汗と涎は、金の髪を肌と唇に張り付かせていた。だけど眼鏡の奥の瞳は、愛欲の興奮と奉仕の幸せで熱を持ち、妖艶に輝いていた。
愛しい提督に見せられる顔ではない。はちを目を逸した。しかし鏡に映るはちの顔の向こう。一心不乱に腰を振る提督の姿があった。大きな体の全身から汗を流し、ふっふっ、と小さく浅い呼気で息を整えていた。いつも冷静な提督が、何かを必死に耐えている苦悶にも似た表情で。瞳ははちを見つめていた。はちだけを見つめていた。それは、はちの体に、痴態に、嬌声に興奮し、熱量をもった瞳だった。
子宮が熱を持ち、膣は収縮し、子宮口が降りた。
鏡越しに提督と視線が交差した。はちは巨大な絶頂を迎えた。提督に絶頂の許可をもらう声を上げる間もなかった。
子宮口が亀頭に食らいつき、愛おしくキスをした。子宮壁はペニスを追い詰め、強く優しく包容した。意味を成さない、だけど互いを興奮させ喜ばせる喜悦の音色を二人の喉が奏でた。
はちが子宮の奥の奥に熱い熱を感じた時、思考と視界は白く塗りつぶされた。刹那。我が子を胸に抱く幸せな二人の夢を見た。
■
「……んっ」
「目が覚めたか?」
はちが微睡みから目を覚ますと、熱が遠ざかった。胸にはちを掻き抱いていた提督が離れたからだ。寂しく思うのも束の間、頭に下に逞しい腕が差し込まれ、ぐっと身を寄せられた。はちは自ら提督の胸に顔を寄せた。
右手が知らず下腹部に添えられ、優しく撫でていた。提督はそれを見て何も言わない。
艤装を解けば艦娘の生理はヒトと殆ど変わらない。
子を宿すことは可能だ。だが産まれてくることは決して無い。艤装を展開する人の身でない体で子が育つはずなどないのだから。深海棲艦がいる限り叶う事のない幻だ。
はちの嗜好を満たす提督とのセックスは夢を見ることが出来た。提督と家庭を築き、子を育て、甘やかし、時には厳しく叱る幸せな夢だ。提督ははちの我儘に何も言わず付き合ってくれる。本来なら、孕め、など高圧的に言う人ではない。だがはちはとっくに提督のものだ。日々の確認は大事なのだから。
「なぁ、はち」
「はい。なんでしょうか?」
はちはすんすんと鼻を鳴らして提督の匂いを確かめた。
「二日に一度は流石に多いと思う。頻度を……」
「いやです」
はちは毎日でも構わない。問題は提督だが、はちは提督の体の心配はしていない。提督自身は知らないが、妖精さんが全力で体調の管理してくれているからだ。
深海棲艦と戦う為だと、妖精さんもノリノリだ。副次的な効果は嬉しい誤算だ。
提督の背中の向こうで妖精さんが親指を立てていた。
二日に一度の頻度も配慮をしているからだ。旗下の艦娘ははち一人ではない。多過ぎては色んな意味で問題だが、はちを含めて二人ならば提督の戦力として申し分ない。
「だけどよう……もう少し……んぐっ」
はちはキスで提督の口を塞いだ。この件に関して、はちは譲るつもりはなかった。いつもこれで有耶無耶になる。
提督が反応して嬉しくなるが、作戦開始まであと僅かだ。申し訳ないと思いながらも我慢してもらう。
「んっ……」
名残惜しく思いながらキスを終え、はちはベッドから降りた。私服に着替え自室に戻る準備をする。次に提督の前に姿を見せるのは艤装を展開した時だ。そこには、はちの子宮に宿ったかもしれない子はいない。
提督もベッドから降り、準備を始めた。着替えながら提督が言った。
「深海棲艦を早く倒さなきゃな」
「そうですね」
「今のペースだと……」
徐々に海域は取り返している。しかし時が経つに連れ深海棲艦の抵抗も大きくなっていた。勝利は容易ではない。
提督は意味があるのか指を折り計算している。はちはそれを見てくすりと笑った。
「提督がおじいさんになっちゃいますね」
自分で言って心が締め付けられた。艦娘は年を取らない。今のままの姿のはちが、年老いた提督を看取る。そんな未来予想図が頭をよぎる。提督が世を去った時自分はどうするのか。そんな事は分かりきっていた。
「いやいやいや。それまでになんとかしましょうかね、ばあさんや」
はちの想いを知ってか知らずか、提督はあっけらかんと笑っていた。
「ん、あはっ! うふふふ」
釣られてはちも笑ってしまった。
深海棲艦とは何なのか。艦娘とは何なのか。それははち自身ですら分からない。今はただこの笑顔を信じてついていくだけだ。
着替えを終えたはちは寝室の扉に向かう。そして扉を開く寸前でくるりと振り返り海軍式の敬礼をした。
「巡潜三型 二番艦 潜水空母 伊八改二 出撃しますね」
後背位→逆駅弁から駅弁→正常位に移行する予定が五千字超えたのでボツに。まぁ蛇足ですかね。