※この作品はR-18です。

【完結】提督と艦娘   作:はのじ

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E7 手付かずです。

大東、酒匂、親潮、Iowa 、Saratoga 、Intrepid。

未所持多すぎて堀を睨んで丙以下にするべきか。

提督一年記念に甲に挑戦したいんですけどねぇ。(資源から目を逸しながら……


Please call my name

25

 

「本気で言ってるんですか?」

 

 俺は静かに問い質した。本気で言っているのなら全力で撤退する。もはや艦娘詐欺や宗教の勧誘と変わらないからだ。

 

 だが俺を見つめるはちのお母さんの瞳は、親しみは篭っていても狂気の色は見受けられない。撤退する必要はなさそうだ。

 

「冗談よ。お婆ちゃんの昔話は信じてるけど、流石に生まれ変わりなんて信じてないわ。驚いたでしょ?」

 

「驚いたというか……呆れました」

 

「ごめんね」

 

 手の平を合わせてごめんなさい。あっけらかんと笑う姿に力が抜けた。夫婦揃って気を抜くと何かしら仕出かしてくる。

 

「この写真を見るが良い。落ち着くぞ」

 

「いりません」

 

 ほらな。

 

「貴方の事を調べている内に、お婆ちゃんの話と符合する事が不思議と多くてね。本当、らしくなかったわ」

 

「偶然です」

 

 写真も何も残っていない。全ては祖母の思い出補正の入った口伝のみだ。大きな体、少し厳しい顔(・・・・・・)、そんな男性はいくらでもいる。他に何を調べて符合したかは知らないが全て偶然と先入観から来るバイアスが働いだけだ。

 

「そうね。仕事柄自分の目で確かめないと納得いかなくて。謝罪します。ごめんなさい」

 

 テヘペロっぽく謝ってるが、裏で俺の事を調べたのだろう。それこそ俺が知らない事、忘れてしまった事、先祖まで遡り徹底的に。丸裸にされてしまったと思っていいだろう。

 

 網元の仕事はもう気にしない方がいい。聞けばきっと教えてくれる。でもその時にはもう後戻り出来なくなる系だ。俺が気にする様にそれっぽい話を差し込んでくるのはその為だ。そう考えると網元の写真は微笑ましく思えるが、何かしらの地雷を仕込んでいる可能性もある。相手にしないのが一番だ。

 

「今日話したことは、はちは知らないからあの子には黙っておいてね」

 

 さらりと重い事を言われた。娘にも言わないことを今日あったばかりの男に言わないで欲しい。禄に知らない……いや、俺以上に俺を知ってるのか。だがそれは先祖を含む俺の履歴をテキストにした表層的な事だけだ。俺の内面の本質的な部分は知らないはずだ。なぜそこまで信用するんだ。

 

「じゃあ、どうして」

 

 俺なんだ。

 

「だって、はちの恋路を邪魔するなって、お婆ちゃんの遺言だし」

 

「それだけで!?」

 

 驚いたが予想外の答え過ぎて嘘臭く感じた。先祖の莫大な隠し財産が見つかったとか、俺が隠していた世界を変える不思議な力の存在が知られてしまっただとかの方が納得がいく。勿論そんなものはない。

 

「それだけじゃないわ。勘よ。女の勘」

 

「そんな軽い話でいいんですか!?」

 

 もっと乱暴な理由が出てきた。散々調べた挙句に最後が女の勘とかもう無茶苦茶だ。

 

「あら、女の勘は馬鹿に出来ないわよ? お父さんを勘で選んで正解だったし、網元の家も普通にやってただけじゃ、とっくの昔に潰されてたわ。女の勘って貴方が思っているより馬鹿に出来ないのよ?」

 

 種明かしとばかりにはちのお母さんはウィンクを一つ。勘か……。俺もここぞと言う時の勘に助けられた口だ。考えた末にどうしようもなくなり、勘で選択肢を選んだ時、結果的に良い方向に進んできたように思う。共感出来る部分はあるが、娘の人生を左右する選択肢を勘で決めるのはどうなんだとも思った。

 

 はちのお母さんは、それにね……と続ける。

 

「娘には幸せになって欲しいじゃない」

 

 貴方の事本当に楽しそうに話すのよ、と語る姿に謎の諜報活動に携わる者の凄みはなく、そこには娘の幸せをただただ願う一人の母親がいた。その姿を見て体の中心に、どしんと太い何かが突き刺さった気がした。覚悟が決まったと言ってもいい。

 

「網元もいいんですか!?」

 

「……儂ははちを信頼している。そのはちが選んだ男だ。何の不満がある?」

 

 不満はないが一抹の寂寥。写真を握っている手が僅かに震えていた。散々人を振り回してくれたのは、まだ娘でいて欲しいと子離れが出来ない男親ならではの軽い嫌がらせだったのかもしれない。

 

「俺は漁師になりませんよ?」

 

「いいわよ。弟もいるし。跡を継いでなんて言わないわ」

 

「平凡な家の出です」

 

「一流企業の出世頭なんでしょ?」

 

「金持ちでもないですよ?」

 

「身の丈に合った生活をすればいいじゃない。困った時は頼ってくれていいわよ。むしろ頼りなさい」

 

「年齢が一回り違います」

 

「それははちに聞いて。他にあるかしら?」

 

 自分は御家に相応しくないですよと否定的な言葉を繋げていく。はちのお母さんはそれがどうしたのと肯定していく。しかし俺ははちとの繋がりを拒否している訳でもなく、はちのお母さんもそれを理解している。この会話はただのすり合わせに過ぎない。

 

 はちのお母さんは手の平を合わせ、ぱちんと音を立てた。

 

「無いみたいね。さておき、事情があって時間がないの。場所を変えたのもそのせい」

 

「プランBだ」

 

 そう言えば言ってたなぁ。すっかり忘れてた。

 

「もう何をするかは分かっているわよね?」

 

「見合いですね」

 

 見合いは強制的な意味合いを持つ。避けるには国外逃亡くらいしかない。口頭での合意でも成立はするが、見合いほど強制力はない。これは絶対に逃がさないという意思表示でもあり、納得の上でもあるが俺は見事に誘導されてしまった。

 

「仲人は俺等が兼任しよう」

 

「俺の親族がいませんよ」

 

 網元の提案に異議を唱えた。

 

 見合いに厳密な規定はない。地方によってやり方は少しづつ違う。だが最低限の形式はある。洋と和で別れるが、和の場合、庭のある落ち着いた和室が必須になる。他にも顔合わせする男女は別にして、仲人一組、そして男女の親類に類する後見人と認められる者が立ち会わなければ見合いとして成立しない。

 

 深海棲艦が様々な物を破壊した結果、見合いも何となくこうだろうと試行錯誤の結果、形から入りいつの間にか強制力のある今の形に納まった。人類繁栄は今でも喫緊の課題だ。

 

「儂がする。先程儂の事を『おとうさん(お義父さん)』と呼んだろう? 何も問題ない」

 

 見合いは地方によってやり方が少しづつ違う。家によって変わる事もあるだろう。あるのか?

 

「待たせたわね。はち、入りなさい」

 

 障子がすぅ、と開いた。

 

 床の間があり畳敷き。座卓に座布団。てっきり着物を着ているものだと思っていた。着物の着付けは準備も手間もかかる。勝手な俺の思い込みだった。

 

 真っ白いドレス。胸元を白いモールで飾るようにポンチョに似たストールを羽織り、この時ばかりはいつもの大きな本ではなくカバーのついた文庫本サイズの本を持っていた。

 

 制服を着ていたはちは年齢より幼く見えていた。成人年齢は迎えていたが甘い容姿と舌足らずな口調が先入観というフィルターを通して、知らず子供扱いしていたのは否定出来ない。

 

 今のはちはどうか。ドレスの生地が薄いのか体のラインがはっきりと見えている。胸が強調され普段より大きく見え、腰は驚くほどきゅっと括れている。そのせいで胸同様に肉置きの良い臀部もセックスアピールを醸し出し得も言えぬ色香を放っていた。

 

 とろんと潤んだ瞳。頬と目元を朱に染めた様は大人の艶を感じさせ……ふわっと鼻孔によく知った香りが届いた。

 

「はち……飲んだわね」

 

「……待っている間緊張したので……グリューワインを少しだけ……」

 

 少し呆れ顔のお母さんに、照れた笑みで返すはち。

 

 慣習的に飲酒は二十歳からが望ましいが、はちは既に成人しているので法的には何も問題はない。うん。問題はない。

 

 はちは座卓をはさみ、俺の正面に座った。ふうと可愛くも大きく息を吐き出すと、表情を真剣なものに変えた。座る位置を少し後ろにずらし三つ指をついて頭を下げた。

 

「はちははちと言います。はちと呼んで下さい」

 

 それは初めて出会った時、はちが最初に口にした言葉。何がどうなってか自己紹介と告白を兼ねていたらしい。母親との会話で誤解は解けたのか解けていないのか。ただ、今の俺はこの言葉の意味を知っている。ならばこの言葉に対する俺の答えは。

 

「はち。俺の名は……」

 

 話題はいくらでもあった。会話が途切れることはない。例え途切れてしまってもはちと二人の静かな時間は苦にもならない。心が安らぎ穏やかな気持ちになれる。つまりはいつもの二人だった。

 

 俺たち二人を見ていた網元夫婦はうなずき合った。それを横目に見て俺は来るだろうなと思った。

 

「母さん、後は若い二人に任せるとしよう」

 

 網元がドヤ顔で最後を締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 出ていく二人と挨拶を交わし、俺ははちと見合いを続けた。だからあの二人がどんな話をしていたか知らない。俺の今後の生活に直接関係ある内容だったとしても、離れた二人の声が聴こえるはずないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

26

 

「これから忙しくなるな」

 

「そうね。お邪魔虫には退場してもらわないと」

 

「これで諦めると思ったのだがな」

 

「流石のダイヤモンドグループね。しぶといわ」

 

「家の用意もな」

 

「任せて。海軍払い下げのいい資材があるのよ。寝室の防音もばっちりよ」

 

「若いからな。これでナニがあっても大丈夫だ」

 

「孫の顔を早く見たいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

27

 

 その女性は一軒の家の前で腕を組み、開いた両の脚でがっしりと大地を掴んでいた。

 

 楽しげな笑みを浮かべている。一見、天真爛漫。しかし違う。瞳に強い力が宿っていた。勝利を疑わない目だ。

 

 明るいブランの髪の頭頂からぴょこんと一房の遊び毛が飛び出している。頭部の両サイドは小さく団子状に丸められ、チャームポイントの一つとなっている。チェックのミニスカートから伸びた脚はロングブーツに包まれ、覗き見える白い肌が目に眩しい。

 

「家に伝わるケッコン指輪も用意したのニー、見合いを断られるなんて思っても見なかったネー!」

 

 女性はこの春に留学先のイギリスから帰国し、日本の大学に入学したばかりだった。とある企業の大きなプロジェクトを、企業を代表して体の大きな男性が紹介するニュース番組を見た時、女性は体に電撃が走り抜けるほどの衝撃を受けた。

 

 一目惚れだ。

 

 女性は持てる力の全てを総動員した。独立独歩の信条をかなぐり捨て、百年前から続く力ある家(ダイヤモンドグループ)のコネクションも利用した。

 

 幸いな事に男性は二十八にして未だ独身だった。女性は運命を確信した。見合いの話を持ち込むまであっと言う間だった。

 

 だが予想外の事態が発生した。婚約を理由に男性が見合いを断ったのだ。

 

 婚約の相手は百年前から付き合いのある(・・・・・・・・・・・・)、女性のよく知る阿羽戸家の令嬢だった。

 

 女性の生家と阿羽戸家は、高祖父(ひいひいお爺さん)を同じとする遠い親類関係にあった。ケッコン制度がない時代から仲睦まじく三人で夫婦生活を営んでいたと口伝で伝わっていた。

 

 その後、阿羽戸家は漁業を生業にする網元に、女性の生家は海運を主とする一大グループに成長した。

 

 一時茫然自失となった女性だが、彼女は諦めなかった。日本にはケッコンという制度がある。まだまだ彼女のターンは終わっていない。

 

 女性は獲物を見定めた猛獣の様に挑戦的な笑みを浮かべた。今まで男に興味はなかった。しかし今の女性は違う。狙った獲物は決して逃さない。

 

 一度決めたら絶対に引かない。何故なら百年前に深海棲艦と命を賭けて戦ったご先祖様に申し訳ないからだ。いや、それだけではない。自分が自分であるからだ。高祖母の生き写しとまで言われ、名を受け継いだからには、負け戦を勝ち戦にしなければならない。何より一生に一度の恋と決めている。ここで引けば惚れた男は二度と手に入らない。

 

 女性の肺が大きく膨らんだ。口が大きく開いた。決して負けない。引かない。前進し、勝利あるのみ。Go Ahead!!

 

「私は食らいついたら離さないワ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                原作:艦隊これくしょん

 

 

 

 

 

                    (完)




あとがき。

とりあえずこれにて一旦〆ます。
ちゃんと落ちたはず。

当初の構想では、もう少しエロ多め(プライベートビーチスク水羞恥セックス、等)の予定でしたが、頂いた感想で路線変更。R-18の需要は間違いなく満たさない事でしょう。


この章を伏線とプロローグ的な世界観の説明にする予定でした。続いて学園ハーレムエロラブコメとか微エロジュブナイルとか書こうと思ってましたが、諸事情により断念します。

また何か書く機会ありまたらお付き合い下さいませ。

何はともあれ読了ありがとうございました。
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