提督の下で、鹿島が苦悶にも似た表情に端正な顔を歪ませていた。それは提督の目からはとても美しく妖艶で、提督の欲情を天井知らずに煽るものだった。
「……ていとくさ、っんっ…ていとくさんっ…ていとくさ、んぁぁぁ!」
提督が全身で与える快楽に思考が奪われ、普段から甘い声は、一段と高く甘美なものとなり提督を呼び続ける。提督が鹿島にキスをする度、愛撫をする度、中を穿つ度、その一つ一つ全てに反応し提督の自尊心を刺激する。
提督を傷つけまいとシーツを握っていた手はとっくに提督の背中に回り爪を立てている。提督も鹿島の首筋から胸元にかけてキスでマーキングし所有権を主張する。
「……ていとく、さん…いい、ですか?……かしまは…きもちいいですか…かしまでもっと…きもちよく、なって…んん…んくっ!」
提督はこの四年で鹿島の弱い所を熟知している。最初、鹿島は穏やかに繋がる事を好む。抱き合ったまま今日あったこと、思った事、感じた事を繋がったまま提督に聞いてもらうのだ。
頬を染めながら提督の上に乗る鹿島は、美しい胸が揺れる様を下から眺め、ゆっくりと思うがまま形を変えることを提督が好きなのも知っている。
自らの趣味と提督の嗜好を模索する内、鹿島の浅い部分は感度を高めた。耳もそうだ。二本の指を浅い部分に差し入れしながら鹿島の良い所、淫らな所を囁く。それだけで軽く逝っていまう。胸もだ。提督の舌が、指が、掌が触れる度に体を震わせ甘い声があがるのだ。項も、鎖骨も、臍も、内腿も、臀部も。提督の肌が、粘膜が這う度に。
提督は鹿島の弱い所を熟知している。浅いストロークに変調を加え、時折深く深く亀頭を奥まで押し当てる。
「ていとくさん…そこは…んんっ…あっ…ぅん…いい…いいです…ていとくさん……んぁぁ!」
鹿島のツインテールは解かれている。銀色の波打つ髪が鹿島の吐息に合わせて
「……ぁうぁ…ていとくさん…ていとくさん…キスを…キスを…ください…うぅ…」
背に回った鹿島の腕が提督を引き寄せる。艤装を展開していない艦娘はこれ程までに非力だ。提督は逆らわずに体を寄せ、すうっと通る鹿島の髪に指を滑らせ後頭部を引き寄せた。
鹿島らしい小さな舌が必死に伸びてくる。提督は躊躇なく迎え入れ吸い上げる。絡まった舌が繋がった唇を交互に行き来した。既にキスではなく舌という粘膜のまぐわいだった。溢れた唾液が鹿島の頬を汚す。お互いの鼻から鼻からふうふうと空気が漏れる。
足を絡ませ、下半身と口で繋がり二人はこれ以上は無いと言う程、お互いの肌を感じていた。シーツは二人の体液で湿け、絡みあった肢体がさらに溢れる汗、愛液を感じていた。
鹿島の口腔を犯しながら提督が腰を強く押し付けた。
「んんっ!ん~~~……」
小さなオーガズムの波は何度も鹿島を捉えていた。提督の背に回った鹿島の腕に力が篭り快楽を伝えてくる。
提督は鹿島の舌を開放した。唾液で唇の周囲を汚した鹿島が異様な色気を放っていた。提督しか知らない鹿島の嬌態。提督にしか見せない鹿島の痴態。
桜色に上気した鹿島の胸が呼吸で大きく揺れていた。手を伸ばし思うがままに蹂躙したい気持ちを押さえ、提督はもっと感じて欲しいと体位を変える。繋がりはそのままに足を交差させ鹿島の左足を持ち上げる。鹿島の体は柔軟だ。一八〇度以上の開脚も可能だ。持ち上げた左足を己の右肩に載せた。一般に松葉崩しと呼ばれる体位だ。後背位と同じく深い挿入が可能だった。後背位では既に逝かせていた。
「うぅぅ…あ、あたって…あたってますぅ……おくにぃ…あたって、あうぅっ!」
当たってるんじゃない。当ててるんだ。腰をこれ以上は無理な位置まで押し付けた提督が、口をぱくぱくとさせる鹿島に聞こえない声で呟いた。艤装のない艦娘には聞こえない。鹿島がスキンシップで良くする事だった。
提督が腰を動かした。いつもと違う角度で男根が膣壁を擦り鹿島が喘ぎをあげる。抽送の度に最奥を叩き、その度に鹿島の口から喘ぎが上がる。あ、あ、あ、とも、うぐぅ、うぐぅとも余裕のない様子だ。時折すすり泣きに似た声があがる。つながった秘所がぐちゅぐちゅとリズミカルに淫音を奏でていた。
体位のせいで斜めに傾いだ鹿島の胸が揺れていた。正面から見るより斜めから眺める胸はいつもより大きく見えた。装甲艤装の上からでもはっきりとわかる大きく整った乳房。触れると柔らかく、それでいて張りがあり何度触れても飽きることがない。触れる前は美の女神を彷彿とさせ、一度触れてしまうと淫魔のように妖艶に提督の目と掌と心を引き寄せる。桜色の乳首と乳輪を口に含み転がすと鹿島は快楽に耐える様に提督の頭部を抱きしめ提督の愛撫から生まれる快楽を甘い吐息を漏らしながら必死に耐える。提督はそんな時、両の乳房に押し挟まれこのまま死んでしまってもいいのではないかと思ってしまう。
提督は右手で鹿島の左足を抱えたまま左手をその胸に伸ばし思うがまま形を変えた。男根の硬度が増し、亀頭の傘が膨れた。鹿島がだめ!だめ!と髪を振り乱しながら悲鳴を上げている。
提督も必死だ。腰を振る度、角度を変えて押し付ける度に媚肉となった鹿島の膣壁が、子宮口が提督の男根を逃すまいと締め付け縋り付いてくるのだ。大量に分泌される愛液と提督の淫棒と化した男根の先からにじみ出る愛液が淫肉同士の滑りを良くし、二人の快楽を天井知らずに増大させる。提督は鹿島を、この女に絶頂を与えるために必死でせり上がる射精感を我慢する。
「うぐぅっ!だめっ!だめです!ていとくさん!かしま!イキます!イッちゃいます!」
提督は鹿島の弱い所を熟知している。全身の愛撫に加え、膣の浅い部分で提督とコミュニケーションを図りながらの精神的な充足。ボルチオでの深い中イキ。どちらも二人の交合では必要不可欠なものとなっていた。
膣壁がぎゅうぎゅうと提督のペニスを締め上げた。宣言通りイク前兆だ。提督が鹿島の弱点を知っているように鹿島の提督の弱点を知っている。鹿島は深い絶頂の時、提督を道連れにする。それは決して逃れられない誘惑だった。
鹿島が涙を流しながら提督に両腕をおいでおいでするように伸ばした。目は焦点を結んでいなかった。必死で提督の場所を探しているようにも見えた。
提督は鹿島の左足を開放し鹿島に覆いかぶさる。自由になった鹿島の両足が蛇のように提督の腰に巻き付いた。伸ばしていた手は提督の背に回り強く強く抱きしめた。提督の体重が鹿島の体にかかりその分、鹿島の膣の最奥でペニスが子宮口に深くキスをした。
鹿島は深くイク時この姿勢を好む。提督は肘で鹿島にかかる体重の負担を軽くするよう努力するが、艤装を展開していない鹿島のどこにこれだけの力があるのかという程強く抱きしめられた。
一瞬鹿島が、あぁぁ!と声をあげた。
鹿島の膣壁が強く収縮し提督の精子を絞り出した。提督は抵抗せず子宮をターゲットに射精した。どくんどくんと精液が飛び出る度信じられない快感が背中の中心を駆け抜け脳を痺れさせる。
絶頂に耐える鹿島の顔は提督からは見えない。おそらく涎を垂らしながら必死に耐えているのではないだろうか。その証拠に提督を引き寄せる鹿島の四肢にかかる力が強くなり提督のペニスの先端が子宮口を突き破りそうだった。それが鹿島と提督の快感を引き上げる。
一瞬とも永遠とも感じた快楽に終わりが来た。気がつけば提督の耳にはぁはぁはぁと荒い息の音が聞こえた。提督の喉から出ていた。全身から汗が滝のように吹き出し、同様に鹿島の汗と混ざり、得も知れぬ気持ちよさを感じた。
鹿島の四肢から力が抜けていた。提督は肘で体重を支えながらしばらく鹿島と抱き合っていた。
やがて動き出した鹿島がくすんくすんと鼻を鳴らし甘える様に頬をすり寄せてきた。しばらく鹿島の好きにさせ、鹿島が納得した頃に提督は腕を立て鹿島と目が合う位置まで上体を持ち上げた。
「提督さん」
鹿島は笑顔だ。目元は赤く、涙の跡が見えたが提督にはとても美しい汚してはいけない神聖なものに見えた。
「提督さん。わたしは、鹿島は提督さんが大好きです。愛しています。えへへ」
鹿島の告白。提督の心はズキリと傷んだ。鹿島の告白に、心が物理的に形を成し傷つき、出血しているようにズキリズキリと悲鳴をあげる。
提督は鹿島を愛してはいけない。そんな資格はない。何故なら提督は鹿島を……
今までは曖昧に頷くだけだった。だが提督はもう決めた。決めたのだ。ならば今日だけは言ってしまおう。
「……俺も…鹿島を愛している…」
「!!……うれしい!提督さん。ありがとう。うふっ」
鹿島が提督の頬を引き寄せ、熱く優しいキスをした。
提督は咎人だった。これは
提督は四年前から、今日に至るまで罪を重ね続けていた。
■
「あら...ほほう...?なるほど。鹿島幸せそうね」
アッシュブロンドの髪を後ろで束ね、アップにした女性が鹿島に声をかけた。細いフレームの銀縁眼鏡の奥に翡翠色の瞳が見える。装甲艤装は鹿島と酷似しており、大きく違うのはプリーツスカートかタイトスカートかという所だろう。鹿島のような少女らしさは少なく、女教師といった風体である。
香取型一番艦、練習巡洋艦の香取。鹿島の姉である。
鹿島は酒保に備え付けられた喫茶店でミルクティを飲みながら、午後に控えた教導の資料を確認していた。時々何かを思い出す仕草で顔を頬を染め、幸せな笑顔を浮かべていた。その姿に見惚れた喫茶店のスタッフがトレイを落としたりしているが、艦娘が喫茶店を利用する時にはよくある風景だ。
「あ、香取姉。やっぱりわかっちゃうかしら。えへへ」
「それはもう。遠くから見てもとても幸せそうでしたから」
泊地は深海棲艦との戦いの最前線である。本土の鎮守府とは違い
香取、鹿島共に提督の下、本人だけが旗下に収まり日々泊地で活動しているが、高雄や摩耶の様に深海棲艦の生息地まで出撃し戦う事は無いとは言わないが少ない。彼女達の主任務は艦娘の教導だ。建造されたばかりの艦娘や、他の泊地から移動してきた艦娘の練度の向上や連携、泊地に特化した艦隊運用、つまり生き残る確率を上げるため、艦娘を指導している。
彼女達は弱くない。むしろ様々な兵装を扱い熟知し慣熟しているため最前線に出たとしても一級線を張れるだろう。しかし新たに泊地に赴任した艦娘をそのまま前線に放り込むわけにはいかない。彼女達はその特性から艦娘の教導にうってつけの人材だったのだ。
実際彼女たちが教導を始めてから泊地での轟沈率は著しく低下していた。
「うふふ。提督さんがね。愛してるって言ってくれたの」
「あら。それは羨ましいわ」
香取の提督は寡黙だった。態度では示してくれるが言葉では言ってくれない。その分、愛の交換は激しいものとなっていた。
「あ。時間だ。香取姉、わたし行くね」
「準備は万全のようね。いってらっしゃい」
香取は鹿島を送り出した。香取の教導はもう暫く後だ。ゆっくりとお茶を飲んでから移動する事にした。
鹿島は幸せだった。建造されてから九年。たった一人の提督と巡り逢い、二人三脚で今日まで戦ってきた。大破は何度もある。運が悪ければ轟沈していた。それでも提督の指示を信じて、今日まで生き残ったのだ。練度も上がり、今では簡単には轟沈しない。任務もやり甲斐があり、鹿島達の教導を受けた艦娘は多くが生き残っている。
そして、何より提督と結ばれ愛を確認する日々。四年前に初めて結ばれた。提督への愛を抑えきれなくなったのだ。
昔から多かったボディタッチをさり気なく増やした。任務の確認と言い張り提督の私室で二人きりになれる機会を既成事実化した。わざと転んで提督の胸に飛び込み胸を押し付けた。装甲艤装であるスカートの裾を数センチ上げ、床に
鹿島から襲う訳にはいかない。艤装を展開したままでは抱かれることは不可能だ。提督を殺しかねない。艤装を解除すれば到底男性である提督に力は及ばない。第一、提督から求めて欲しかった。努力の甲斐あって、結果鹿島は提督と一つになれた。獣のようになった提督に、前から後ろから何度も貫かれた。沢山の精を受けた。
事後、鹿島は感極まり嬉しさの余り泣いた。変な姿を晒さなかっただろうか。変な声を上げてなかっただろうか。体には自信があるが、提督は満足してくれただろうか。処女を散らした女の考えではない。恥ずかしくなった鹿島は提督の顔を見れなかった。
それから鹿島は週に二、三度のペースで提督に抱かれている。提督から預かった鍵で私室に入り、提督が来るのを待つのだ。提督は一度も拒絶すること無く、穏やかな繋がりの中、鹿島の話を聞き、何度も絶頂させてくれる。鹿島の弱いところは提督にとっくに知られている。抱かれる度に精を受ける度に、絶頂する度に提督への愛が深まっていくのを感じる。怖いくらいだった。
鹿島はこれまで提督の精を一滴たりとも体外に零したことがない。全て飲み込み、全て受け入れていた。これからも零すつもりはない。提督への愛を全身で示し続けるのだ。。
鹿島は幸せだった。
「鹿島、出撃いたします! 提督さん、見ていてくださいね」
■
提督は執務をしていた。消費弾薬、消費燃料、それに伴う補給申請、教導計画、教導報告、深海棲艦の生態観察およびデータ収集・集計、提督会議録の取り纏め、新規予算申請、作戦立案、etc、etc。
することはいくらでもあった。ルーチンワークとイレギュラーに発生する事案。余裕があれば鹿島も手伝ってくれた。だが今は艦娘の教導で不在だ。
提督は優秀だ。いや、優秀にならざるを得なかったと言うべきか。九年という歳月が提督を成長させた。泊地で戦う提督は一部を除き、皆優秀だ。日夜深海棲艦と戦い続けているのだ。無能は艦娘を轟沈させる。昔は鹿島を何度も大破させてしまった。轟沈しなかったのは運が良かっただけだ。
教導といっても深海棲艦と戦わない訳ではない。深海棲艦の生息する海域に向かうこともある。遠征教導中に遭遇戦に突入することもある。注意すべきはこの遭遇戦だ。
鹿島は強い。様々な武装で状況にあった行動を取ることが出来る。オールラウンダーと言ってもよい。だが遭遇戦は鹿島の長所を殺す場合がある。最適化された武装は敵が変わると意味を成さない事があるのだ。
提督は執務室に備え付けの無線を見る。不慮の事態に陥った時、戦闘になる場合など提督の指示を仰ぐ時に無線は繋がる。提督は艦娘と共に戦場には立てない。脆弱な人間では本当の意味で艦娘と共に戦えないのだ。
提督は震える手を無理矢理押さえ込んだ。鹿島を失うのが怖い。愛してはいけない女。艦娘鹿島。
提督の不手際で沈みかけた時も、不満の一つ漏らすでもなく、「次も一緒に頑張りましょうね」と落ち込む提督を慰めてくれた。
信頼は一日で成せるものではない。戦いは連日続き否が応でも戦いに慣れていく。失敗を繰り返しながらも経験を重ね、鹿島も提督を気遣い励まし、ともすれば落ち込む心を救ってくれた。
雪が積もる様に積み重なっていく互いの信頼。気がつけば五年。提督は鹿島を女性として見ている自分に気がついた。
大本営は行動に一切の制限を付けないながらも、艦娘を兵器として定義している。提督も戦う鹿島の心を乱さぬように自らの心に封をした。
この頃になると十分な信頼が結べたのか、鹿島の態度も変化し、すれ違う度に鹿島の体に触れる事が多くなった。提督は十分注意していたが心の距離が近くなった分お互いのパーソナルゾーンが狭まったのだろうと納得していた。
熱心な鹿島は就業時間を終えても、提督の私室に押し掛けてまで任務の確認を行った。提督とのディスカッションに夢中になった鹿島は、らしくもなく転び提督が何度も支えた。柔らかな鹿島の体にドキドキと心臓を早めながら。いけないと思いながら床に落ちた書類を拾う鹿島を何度覗き見たことか。
装甲艤装は艦娘の命を預かる装備である。少し短くないか?など提督の勘違いに過ぎない。もし指摘しようものならセクハラ問題だ。
提督の不摂生を気にした鹿島が材料を持ち込み手料理を定期的に作ってくれるようになった。装甲艤装とは違う私服に新鮮な気持ちになると同時に、季節柄肌面積が増えた鹿島をまっすぐ見れなくなってしまった。
極め付きは自分の不注意で鹿島の裸を見てしまったことだ。部屋をよく訪れるようになった鹿島の為に合鍵は既に渡していた。提督不在でも用事を済ませれるようにだ。もしかしたら鹿島は居るかもしれない。頭の片隅で思っていたにも関わらず、確認もせずに扉を開けてしまった。夏の暑い日差しで汗をかいたのだろう。シャワーを浴びバスタオル一枚で浴室から出てきた鹿島と鉢合わせしてしまったのだ。驚いた鹿島はバスタオルを落としてしまった。提督は目を逸らすことが出来なかった。余すことなく肌を晒す鹿島。提督はこれほどまで美しい女性を見たことがなかったのだ。我を取り戻した提督は鹿島に謝罪した。
鹿島は日を追う度に美しくなっていった。そして提督は鹿島を襲ってしまったのだ。鹿島の同意を得ること無く我が意のままに鹿島を蹂躙してしまった。強姦だ。
提督の執務室は完全防音になっている。どこかで計算していたのかも知れない。艤装を解除して執務室にやって来た鹿島。肌面積の大きな服を着た鹿島は、少し疲れましたと言って提督のベットで横になった。寝返りをうつ度に覗き見える下着と鹿島の女性としての様々な際どい部分。
提督は鹿島を組み敷き無理矢理純血を散らした。艦娘にも
艦娘は慈悲深い。艤装を展開すれば提督の力など蟻にも等しい。だが至近での展開は提督を死に至らしめる場合もある。鹿島は艤装を展開せず提督の暴行を耐えていた。信頼関係が壊れるなどと考えもしなかった。ただただ鹿島を自分のものにしたかった。それだけだった。
蹂躙し尽くし、獣欲を開放し終わってから漸く気がついた。鹿島が泣いていたのだ。暴行の跡が生々しい下半身を晒し、顔を手で覆い涙を流していた。
鹿島が提督に何かを言っていた。しかし己の所業の罪深さに打ちのめされていた提督には聞こえなかった。
天真爛漫だった鹿島はこの日を境に変わってしまった。
翌日、艤装を解いた状態で何事もなく執務室に現れた鹿島はこれまでより美しく見えた。
鹿島は執務室に来るなり提督の頬にキスをする。そして恋人のように接し始めたのだ。ひと目がある時はいつもの鹿島に戻った。二人きりでひと目が無くなると変貌した。
提督はわかってしまった。ストックホルム症候群にも似た自らの心を護る防衛本能が働いたのだと。艦娘にも心はある。人間より豊かかもしれない。その艦娘が心を病まないと誰が言えよう。
鹿島は思い込んでしまったのだ。あの日、鹿島は提督に暴行を受け犯され蹂躙されたのではない。恋人と幸せな初めてを迎えたのだと。
鹿島は壊れてしまった。提督が壊してしまった。それは今日まで回復することなく続いている。
他の提督には相談出来ない。提督という地位を利用して艦娘を思うがままに組み敷き、鹿島への抑えきれない獣欲を満たしているなど言えるだろうか。提督たちは艦娘と信頼を結び命をかけて深海棲艦と日々戦っている。立場を利用して旗下の艦娘を犯す提督の存在が発覚すれば彼らの信頼関係にひびを入れてしまうかも知れない。
他の提督が艦娘と男女の関係になっていると聞いたこともない。提督と呼ばれていても実質の仕事は艦娘のマネージメントだ。だが無償の愛を以て深海棲艦と戦う艦娘の一助となれる事は一人の人間として大きな誇りなのだ。足を引っ張るような行為など提督達も出来はしないだろう。
軍の綱紀の乱れにも配慮する必要があった。泊地で勤務する人間は大半が男性だ。我慢できず艦娘を襲う事件も一定数発生している。深海棲艦と戦うべき提督が、艦娘を恋人のように抱いているなどと知れ渡れば他の提督たちの信用にも関わってしまう。
言い訳だった。提督は鹿島に惹かれている。それこそ鹿島を汚してしまう以前から。そして昨日言ってしまった。「愛している」と。本心をもう隠せなかった。
だから、提督は罪を償うべきなのだ。大本営に出頭し罪を告白する。
泊地へは二度と戻れないだろう。最悪銃殺もあり得る。唯一、深海棲艦に対抗できる艦娘。大本営が深海棲艦と戦うために建造した艦娘を壊してしまったのだ。当然だった。
明日泊地を出立する。鹿島にはまだ言っていない。きっと驚かせてしまうだろう。だが仕方ない。提督はこれ以上罪を誤魔化すことは出来なかった。
「提督さん。鹿島戻りました。ふふ」
教導を終えた鹿島が執務室に戻ってきた。扉を締めた鹿島は提督の下に来ると頬にキスをする。鹿島は頬を染めていた。
「……あぁ。お疲れ様」
鹿島は艤装を解除している。疲れているだろうに提督の書類の決済を手伝おうとしている。
「……鹿島…明日、大本営に行くことになった…一人でだ…」
「え?この時期にですか?」
鹿島は手を止め驚いた。泊地の提督が大本営に向かう事は滅多にない。戦闘はほぼ毎日あるのだ。簡単には離れることは出来ない。鹿島の知る限り季節外れの時期に提督が泊地を離れ、大本営に行く理由は一つだけだ。
「もしかして…」
「……鹿島…
鹿島の知る情報と一致していた。これは間違いなかった。
「はい。わたし……鹿島は提督さんを待ちます。待ってます」
もっと渋るかと思っていた提督は素直な鹿島に訝しりながらも心の荷が降りてほっとしていた。鹿島を騙すようだがもう決めたのだ。
鹿島が提督の軍服の袖を指で摘んだ。
「少しだけ離れ離れになってしまいますね……海で…少し汚れてしまいました……少し綺麗に…待っていてくださいね?」
提督は今日も罪を重ねた。
■
大本営。
深海棲艦の侵略と同時に臨時で設立され参謀本部と軍令部のメンバーで構成される組織だ。艦娘は海軍に属する軍令部が開発した。一重に大本営と言っても海軍所属の提督が言う大本営とはこの軍令部を指す事が多い。
軍令部は深海棲艦が侵攻してくる以前から艦娘の研究、開発をしていた。建造方法は未だに公開されていない。そして提督の目の前にいる男性こそが中核となり艦娘を世に送り出した者だった。
軍令部総長。
艦娘の全てを知る男。戦えない提督。最初の提督。深海棲艦の天敵。
様々な渾名で呼ばれ、深海棲艦と戦える体制の殆どをたった一人の人間が築き上げたのだ。現在は軍令部総長となり軍令部のトップ。つまり提督の頂点に立つ男だった。
提督は軍令部総長に罪を告白した。鹿島を己の思うがまま抱いてしまったと。断罪をしてほしいと。
「ふむ。つまり鹿島君とは懇ろな関係になったと」
「いえ。そうではなく、私が彼女を無理矢理……」
「そういうのはいいから。抱いたか抱いてないかだけでいい」
「……抱きました」
「そうかそうか」
軍令部総長はニコニコしながら、引き出しから小さな箱を取り出した。
「この一二年、各地の提督からそういった報告が上がらなくてね。どうしたもんかと困っていたのだ」
軍令部総長は提督に小さな箱を手渡した。
「これを鹿島君に渡してあげなさい」
「しかし…あの…」
「君の行為は不問とする。さぁ戻ってさっさと渡してあげなさい」
軍令部総長は提督を執務室から追い出した。面白いくらいに勘違いしている提督が憐れでもあり、羨ましくもあった。
軍令部総長は、提督の会話に口を挟むこと無く静かに待機していた五人の少女に語りかけた。
「一二年。一二年だ。あれを一つ作るにもそれなりの時間がかかるんだけどね。本当なら待たせてしまうはずなのに。お陰でずいぶんと溜まってしまった。当初は五年を想定していたのに、これまで誰も報告に来なかった。どうしてだろうね」
「アンタがろくな教育もせず泊地に放り込むからだわ」
豊かな銀の髪を湛えた大人びた少女が答えた。
「仕方ないじゃないか。艦娘と自然な関係を結ぶために不要な情報は最小限に留めるべきだ」
軍令部総長は持論を展開する。
「そのせいで沢山の人が亡くなってしまいました」
袖口に赤いラインの入ったオーソドックスなセーラー服型の艤装を纏った少女が答えた。聞き様によっては上層部批判ともとれる発言だ。だが艦娘には汎ゆる行動が許されている。
「死なない戦争なんて、ただのゲームだよ。僕達がしてるのは戦争だ。結果的に被害は最小限に収まっている」
軍令部総長も現状がベストだとは思っていない。被害は最小限に抑えたとは思っているが、もっと他に方法があったかもしれないとも思っている。ある意味、現状は艦娘の意に沿った結果とも言えるのだから。
泊地の提督たちには期待している。軍令部総長も含めて鎮守府にいる提督は戦力として期待できない者が多いからだ。
軍令部総長旗下の艦娘の一人がぽつりと呟いた。
「最初のケッコンカッコ、ガチ、なのです」
■
泊地に戻った提督は軍令部総長の言うとおり鹿島に小箱を渡した。鹿島が埠頭まで迎えに来ており、その場で渡したのだ。
周囲には荷降ろしの為に居合わせた何人かの艦娘がおり静かにがやがやと声を上げていた。
「なんですかなんですかぁー?にゃしぃ」「今は作戦行動中だ。だが見学するにやぶさかではない」「レディとしてあこがれちゃうわ」「あーもう、バカばっかり!」「静かに。ここで見守りましょう」「イクもご褒美、欲しいのね!」
提督が手にしている小箱。鹿島はそれが何であり、どういう意味があるのか理解している。
鹿島は左手を提督の前に差し出した。
提督は小箱の中身を既に知っている。正体不明の物を鹿島に渡せないからである。人間の習慣と艦娘の習慣は違うだろう。だが左手を差し出す鹿島の意図は。
様々な勘違いを含みつつ、鹿島の左手薬指に指輪が嵌った。
涙を流す鹿島。その涙は提督が見た涙で一番美しいものだった。
「提督さん。わたしは、鹿島は世界で一番幸せな艦娘です」
流行りと聞いて、自分なりのR-18勘違いものを書いてみました。