「とんだ記念日になっちまったな」
「え?」
薪に見立てた木の小枝を両腕に抱えながら野営地に戻って来た由良に提督が呟いた。
「ほら。この島に漂着した日が由良の提督になってちょうど五年目だったんだよ。バタバタしてたから言いそびれてな」
提督は水を張ったコッフェルに火に掛けながら続ける。
「……提督さん…覚えていて…くれたんですね…」
からからと乾いた音を立て、由良の腕から小枝が落ちていく。
「まぁな。つまらんもんだけど机の引き出しにプレゼント用意しててな。無事戻れたらで勘弁してくれ」
「……うれしい…由良も…由良もプレゼント用意してたの」
「おっと。ありがとよ。それも泊地に無事戻ってからだな」
目元を赤くした由良が提督の胸に飛び込んできた。
由良は艤装を解除している。今は艤装の展開前に身に纏っていた浴衣を切り裂き、パレオ付きビキニの様にして体に巻いていた。提督は由良の柔らかな肢体も相まって目を反らしてしまう。
「…はい…それと由良のプレゼントは今日の夜に渡せるから…」
提督の耳元で小さく囁く由良。普段折り目正しく丁寧でありながらフランクな性格な由良の色を含んだような囁きに提督はどぎまぎとしてしまう。
「よ、用意がいいな。俺と一緒で渡しそびれた口か。まぁ楽しみにしてる」
「はい」
提督から離れた由良の笑顔はいつもの無邪気なそれだった。提督はほっとした。ただでさえ目のやり場に困る姿をしているのだ。提督も朴念仁ではない。人間に似ているとは言え、艦娘と性行為が可能なのか。由良が艦娘だと分かっていても自制が難しくなっていた所だ。艦娘の、由良の足を引っ張る真似はしたくない。
提督は五年前に妖精さんを見てしまった。一五の夏だった。翌日には大本営に保護され由良と引き会わされた。それまで緑豊かな田舎の高校に通っていたただの学生だった。
鎮守府で一年、泊地に送り込まれて四年。提督と由良は二人三脚で今日まで生き延びた。先任の艦娘の戦果が華々し過ぎて目立たないが少しづつ深海棲艦の撃墜数を増やし、艦娘達の信頼を得てきたところだった。提督も由良と信頼関係を結べたと自負していた。
最前線の戦況が落ち着いたのはそんな時だった。水平線の彼方から連日現れていた深海棲艦の侵攻がぱったりと止んだのだ。海域のボスを倒した訳ではない。恐らくなにか戦略を変えてきたのだろうと提督会議で推測されたが、有効な策は出ず暫く様子見をする消極策が取られた。
近い段階で最前線に出撃することが決まっていた由良に、最前線を経験させるために提督と由良は軽い気持ちで最前線に赴いたのだ。航路の安全は確保されているはずだった。そこを突かれた。数の差に押され、友軍と引き離された。提督の乗艦していた護衛艦は被弾し轟沈。由良は提督を抱きかかえ、戦線を離脱。逃げるようにこの島に漂着したのだった。
手元にあるのは脱出時に辛うじて持ち出した緊急救命セットのみ。非常食、通信機、蒸留器、釣具、医療キット、信号弾、防寒シート、簡易テント、簡易工具セット、簡易調理セット、手回し式懐中電灯などがあり当面の生命の危機は回避出来た。
島は深海棲艦の勢力下にあるのか時折上空を偵察機が飛び、夜間の点灯は出来ない。調理は昼間に光のもれない島の中央付近で行っていた。
由良は脱出時に無理をし、燃料弾薬が底を突きかけていた。艤装展開は緊急時用に残しており、それでも短時間の展開しか出来ない。
提督と由良は仲間の救出を信じてこの五日間、二人きりの時を静かに過ごしていた。
■
「ちょっと待て!由良!服を着ろ!」
「浴衣は引き裂いたのでとっくに布切れになってますよ。ほら。ねっ」
体に纏っていた浴衣の生地を手にし、提督にみせた。由良は一糸まとわぬ裸体だった。
「それだ!それを…」
「提督さん。由良の事、好きですか?」
熱の篭った瞳で提督を見つめる由良は提督の言葉に重ねた。
「由良…何を…」
「由良は提督さんが大好きです。ほら。ね?」
由良は提督の手を取り、自らの胸にあてがった。由良の熱い程の体温と心臓が奏でる鼓動が掌から提督に伝わる。
どくどくと明らかに早まった鼓動は提督の返答を促しているようだ。艤装を解いた艦娘の生理は人間に酷似する。この瞬間由良の鼓動は提督の心臓と同じリズムを奏でていた。
提督はごくりと喉を鳴らした。
手回し充電式のLEDが柔らかい光を放ち由良の裸身を闇に浮かび上がらせていた。就寝用に使用している簡易テントは一人用だ。小柄とは言え由良が入り込めば手狭になる。必然二人の体は密着に近い状態だ。
由良の白い肌はこの数日で日に焼けていた。浴衣の生地を裂いて巻いていた境目が日に焼けた肌と白い肌のコントラストを強調し、暗がりの中にあって、得も知れぬエロスを醸し出していた。
提督は必死の思いで目を反らした。
「俺は…由良の邪魔になりたくない…」
由良は艦娘だ。全ての提督に共通する想い。自ら戦うことなど出来ない。出来ることは傷つき帰還する旗下の艦娘が僅かでも戦い易くなるよう環境を整える事だ。心を、体を癒やしてやる事だけだ。
「由良を…由良を提督さんの、提督さんだけの女にして下さい」
提督の我慢の限界はそこで終わった。
提督の掌が由良の肌を這い回る。狭いテントの中では自由に動かせない。背中に回った手が腰から臀部を。折りたたまれた手は由良の乳房を。舌は同じく由良の乳房を這っていた。
由良は上になり提督の頭を腕に抱え、かつて感じたことのない感覚に耐えていた。
「…んっ…んふっ…ぁっ…提督さんっ…」
提督が由良の乳房を乳首を乳輪を口に含む度にちゅ、ちゅぱと水音がテント内に響く。提督の吐息が由良の肌を撫でそれだけで快感を感じる。身じろぎすると太腿に提督の勃起したペニスが時折接触し、提督の興奮が伝わり嬉しくなる。
「……提督さんっ…由良を…んっ…由良を好きに…自由にして…んっ…いいの…ね?」
「……綺麗だ…」
戦闘から帰還した由良は装甲艤装が傷つき一部肌を晒していた事がある。一見着痩せする由良だが、乳房は美しく整い提督は夢中になっていた。
「提督さん…キスを…」
由良も提督を食みたかった。舌で感じたかった。提督と顔の位置が合うように体をずらした。肌は汗ばみ、狭いテントの中で密着した状態でも動きに支障はなかった。由良に関しては。
「あっ!」
由良の太腿が提督のペニスを押し付けたまま動いたのだ。
「え?」
由良の太腿から腰にかけて熱い何かが勢い良く飛び出した。
どくんどくんとペニスが脈動するのを感じる由良。
「……すまん…」
「うれしい…由良で感じてくれたのね」
「……」
由良は本当に嬉しかった。愛する提督が由良との接触で達してくれたのだ。もっと気持ちよくなってもらう方法を考えていた。だが暗がりの中で伺い見える提督の表情は暗かった。気にする必要ないのに、と思いながらも提督の言葉を待った。
「……俺、その…初めてて…どうしたらいいか…」
由良は提督が鎮守府に赴任してからずっと側にいたのだ。悪所にも通わず、由良に尽くしてくれていた。提督が女性の体を知らないのを由良は知っていた。
由良は胸に暖かい想いが溢れるのを感じていた。提督は真正面から由良をいつも見てくれた。不安を与えぬよう気持ちを押し殺し由良を支えてくれていた。隠れて震え、泣いていたのを知っている。翌朝には素振りも見せず指揮をしてくれた。由良は提督を信じて戦うだけだった。
提督は自らは我慢し、由良に快楽を与えようと考えていたのだろう。だが初めての男性に可能なのか。ある意味完璧主義とも言える提督の考えが付き合いの長い由良には手を取るように理解できた。由良もそうだからだ。
女性の体は男性を傷付もし、元気づけもする。項垂れる提督に由良は優しく唇を落とした。
「提督さん。外に出ましょう。ね?」
■
テントの外は星明りが地上を照らしていた。海上の上にぽつんと残った無人島に灯りはなく、満天の星明りが由良の裸体を暗闇から浮き上がらせていた。提督の目には、一糸まとわぬ由良の姿は妖精のようにも女神のようにも見えた。
「提督さん。星が綺麗ね。ね?」
手を繋ぎ先を歩く由良がうっとりと星空を見あげる。
提督は田舎の山奥育ちだ。星空は嫌というほど見てきた。それでも今見る星空は今までみた空で一番綺麗だった。
「提督さん、ここに座って」
手頃な岩を見つけた由良が提督に座るように促した。二人で座って星を眺めるのもいいだろう。提督のペニスはまだ地面を向いていた。由良の裸体を見ても反応しない。精神的な問題で一次的に不能になっていた。
「しばらく星を見ていよう……おい何して……」
由良は提督の正面に膝を立てて腰を下ろし、提督のペニスを掴み口に含んだ。
「由良!そんなことはしなくてもいいから!」
「んぅ、ん、んふ、ん……由良がしたいの。お願い」
一度ペニスを口腔から出し由良は提督を見つめてお願いする。唖然とする提督に微笑むと由良はフェラチオを続行する。
「ちゅっ、ん、んんっ、んふっ、ん……」
一度提督のペニスの亀頭にキスを落とし、躊躇うこと無く口腔にペニスを飲み込む由良。提督を見上げ愛おしそうに微笑む。
「ん…ちゅぷ…んふっ…ちゅっ…んっ…」
むくむくとたちあがるペニス。由良の口からペニスの竿が溢れた。
「ん、かわいい。提督さん。元気になりましたよ」
口腔から取り出したペニスに頬ずりする由良。それだけで提督のペニスは硬度を増した。
「提督さん。由良も、由良も初めてなの。一緒に……一緒に……ね?」
星明かりが日焼けのコントラストが眩しい由良の背中を照らしていた。由良は木に手を付き、提督に腰を突き出していた。
破瓜は一瞬だった。声を我慢した由良の太腿を一筋の血が流れた。
自信のない提督に、由良は自らの秘所を指で開くことで場所を教えた。秘所からは愛液が糸を引いて垂れ落ちていた。
「うぅぅ……」
提督と由良の喉から同時に声が漏れた。提督は気持ちよの良さから。由良は痛みで。
一瞬の抵抗、後は驚くほどすんなりと。ぬるぬると暖かくペニス全体を締め付ける由良の膣壁。提督は挿入しただけで射精しそうになった。
「…んぅ…提督さん…いつでも…なんどでも……由良の中に…」
「すまん由良。自分の事しか考えていなかった。しばらくこのままで……」
提督は痛みに耐えているであろう由良の事を失念していた。由良はいやいやをするように首を振った。
「…違うの…初めてなのに…痛いはずなのに…提督さんのが…気持ちいいの……提督さんのを包んでいるのが……奥に当たっているのがわかるの……」
「……気持ちいいのか?」
由良は余裕が無いように声を上げずに頷いた。
提督は由良に言われるがまま挿入しただけである。技術など最初からありはしない。自らの技術で由良が感じているなど思えるはずもない。
「……動くぞ?」
木に爪を立て由良は頷いた。提督は恐る恐る腰を腰を引き、突き入れる。たった一度のストロークが歯を食いしばる程気持ちがよかった。
「…ぅぅ…」
顔の見えない由良が小さく呻いた。提督はもう抑えられなかった。
由良の腰を掴み無我夢中で腰を動かした。
五回。それが二度目だった。
「……出てる…うれしい…ていとくさん…もっと…もっと出して…由良で…気持ちよくなって…」
由良の励ましに因るものか、気持ちに余裕が出来たのか、提督のペニスは固いままだった。
「…あっ、あっ、ていっとくさん……ゆら…きもち…いいですぅっ…」
ぱんぱんと腰同士が当たる音が鳴り響き、由良の喘ぎと提督の荒い息遣いが音をかぶせた。
由良も提督の動きに合わせて腰を押し付けるように動かしていた。痛みは本当にないのだろう。
由良の背中に提督の額から汗が滴り落ち一つに混じった。一〇回、二〇回、三〇回。提督は夢中で腰を振った。技術など考えていない。ただただ目の前の由良に感じてもらおうと己の欲望を受け止めてもらうと、それだけが思考を占めていた。
「……あっ、だめ…あしが…たって…られない…」
提督は由良の右足を持ち上げた。広げられた股に深くペニスを突き入れた。
「…ふかいです……うっ、あぁぁ…」
片足になった由良は立っていられない。膝が崩れその場に崩れそうになった。提督は逆の足を抱え、由良の体の向きを強引に変えた。
艤装を展開した艦娘を人間は持ち上げることは出来ない。重量は到底人間が耐えられるものではないからだ。しかし今の由良は、一糸纏わぬ由良は、提督の力で簡単に持ち上がってしまった。
こんなに小さいのに、こんなに軽いのに。
提督は弱音一つ吐かず深海棲艦と戦う由良の軽さに愛おしさを覚えた。
由良の両足を抱え、繋がったまま向き合った。由良は目の前の提督の姿に一瞬驚き、そして微笑んだ。バランスを取る為か提督の背中に両腕を回し、舌を差し込むキスを自ら行った。
「…すきです…好きです…提督さん…愛しています…」
「…俺は由良を愛していいのか…?」
キスの合間に告白を受けた提督。提督は艦娘を愛していいのか。艦娘の足枷にならないのか。愛した女を戦場に送り込めるのか。
「…愛してください…んっ…これからも…んふっ…いつまでも…ずっと…」
キスを終えた由良が正面から提督を潤んだ瞳で見つめた。
「…ね?」
「…あっ」
■
「提督さん、救助隊です」
艤装を解除しても人間より目がいい由良が六人で編成された艦娘艦隊を見つけたのは、日が昇って直ぐの事だった。
由良は昨夜の情事が幻だったかのように一切の形跡を残さず、艦娘由良として艤装を展開していた。日焼けの跡は消え浴衣を裂いた布切れはどこにも見当たらなかった。
信号弾を打ち上げ、念のため艤装を展開したのだ。
「助かったな」
「はい」
もう手は繋げない。艦娘の力は提督の骨を簡単に砕いてしまう。
提督の目にも艦娘の姿が視認出来た。
「由良、すまん。昨夜の事は内緒で頼む。士気に関わる」
提督と艦娘が男女の関係にあるなどと知れ渡れば、立場を利用したと思われ泊地の提督、スタッフの士気に影響しかねない。
「はい、提督さん。その代わりにこれからも由良をよろしくおねがいしますね」
由良は提督の表情から信頼と愛を感じた。由良はこれからも提督を信じて支え愛していく。たった一文字にその想いを込めた。
「ね?」