俺ガイルヒロイン達とイチャイチャしたいだけのお話。 作:虚蝉
城廻先輩が俺に名前で呼ぶよう言ったのを思い出したのは、放課後出かけた日から一ヶ月くらいが過ぎた頃だった。
今日は先輩たち三年生にとって最後の日、卒業式の日だ。
この日までなにもなかったかといわれれば噓になる。
例えば、先輩に勉強を教えて貰ったりだとか、お互いのおすすめの飲食店を教え合ったりだとか、良くも悪くも仲のいい先輩と後輩の関係だった。
その関係は、確信を持って『友達』と呼べる関係になっていた。
「比企谷君、めぐりって呼んでくれるよね?」
彼女はそう問う。
実質これは都合3度目の問いだった。
「友達だからですか…?」
「うん、友達だから」
「わかりました。め、め…めぐり………先輩」
恥ずかしさの余り最後に余計な言葉をつけてしまった。
先輩はぶーたれているのか頬を大きく膨らませている。
なんかリスみたいで可愛い。
そして気がつけば先輩のことを可愛いと思うことが増えていた。
「まあ、今はそれでいいかな」
「え?」
俺がはて、と疑問を浮かべる前に先輩は俺の唇を唇でふさいだ。
「…先輩?」
「…っごめん」
先輩は袖で顔を隠し、後ろを向いて一目散にその場を去ってしまった。
俺は手に花束を持ったまま、呆然と立ち尽くすしかなかった。
俺が城廻先輩に連絡を取ったのはその日の夜だった。
『先輩、相談のって貰っていいですか?』
俺がメールを送ると数分後に返事が来た。
『めぐり』
これは多分めぐりって呼べということなのだろう。
ここは素直に呼んでおいた。
『めぐり、相談あるんだけどいいかな?』
『うん、話してみて』
無事許可を貰ったことでさっさと返信する。
『勘違いかもしれないけど好きな人が出来たかもしれないんだ』
『それで?』
それでって…。
『その人には多分他に好きな人がいてどうしたらいいかわかんない』
『あのさぁ…私前に恋愛経験ないって言わなかった?』
『あ、ごめんなさい』
『別にいいよ、まあ八幡のことだし』
めぐりに名前を呼ばれ心が少し昂揚する。
返信をしようとカチカチしていたら先にめぐりから追記があった。
『明日、駅前で一時に待ち合わせでいい?』
『大丈夫ですよ』
そう返事して布団に入ろうとした。
そんな時メールの受信を知らせるバイブが響いた。
俺はメールの差出人を見て少しの驚きを見せた。
差出人は雪ノ下だった。
『少し聞きたいことがあるのだけれど、電話かけてもいいかしら?』
律儀に聞いてくる辺りが雪ノ下らしい
『別にいいけど結構眠いから手短にな』
そう返信すると数分して電話がかかってきた。
[もしもし?]
俺からもしもしと聞いてみる。
[比企谷君??]
[ああ]
[そう、単刀直入に言うわね]
そうワンテンポおいて雪ノ下は本題を切り出した。
[私と付き合って欲しい]
…え?
[え?]
[耳まで腐ってしまったのかしら?私と付き合って欲しいと言ったの]
[いや、まてよお前何俺のこと好きなの??]
[告白してる時点で気がつきなさい]
[そ、そうか、そうだよな]
[それで返事は聞かせて貰えるかしら?]
[ごめんな、俺城廻先輩のことが好きだから]
[そう、でも1番じゃなくていいの2番でもいいわ、だからあなたの隣にいさせて]
[雪ノ下…]
[ごめんなさい、無理なお願いよね]
[なあ、今から会わないか?]
[えっ…?]
[ダメか?]
[いいえ、嬉しいわ]
俺は駅前で待ち合わせをする約束をして通話を切った。
雪の下が俺のこと好き。
その事実を俺の中で反芻する。
そしてほくそ笑んだ。
俺が駅前で待っていると、近くにつけた黒塗りの高級車から雪ノ下が降りてきた。
扉を開けたのは都築さんだろうな。
降りてきた雪ノ下はまるでシンデレラのように綺麗だった。
「綺麗だ…」
「そ、そうかしら?」
あなたに褒められて嬉しいなんて思う日が来るとはね、と言う雪ノ下。
「俺もお前から告白されるなんて思ってなかったよ」
「確かにね、私にも不思議だわ」
そう言ってクスクス笑う雪ノ下はとても美しい。
3月になったとはいえやはり夜は冷え込む。
「俺はお前のこと…」
「それ以上言わないで」
そう言って雪ノ下は俺の唇に自らの唇で塞ぎ込んだ。
勢いのつけられたキスは歯と歯が当たり血の味が混じる。
「雪ノ下…」
「お願い、2番目だっていい…。いいえ、何番目だっていいわ。あなたが望むなら誰だってあなたの女にしてあげる」
だから、と言葉を句切ってさらに追い打ちをかけてくる。
「由比ヶ浜さんはもちろん、そうね姉さんや一色さんはどうかしら??三浦さんとかもあなたみたいな人には可愛く写るでしょう??」
「雪ノ下…」
「まだ足りないかしら??川崎さんとか鶴見さんとかもあなたの好きなようにしていいのよ?」
「もうやめてくれよ雪ノ下…。俺の中のかっこいい雪ノ下を壊さないでくれ」
「…ごめんなさい」
「正直俺の心を動かしたのはお前と城廻先輩だけだよ」
「え、それって…??」
俺はその言葉には応えずもう一度雪ノ下の唇を奪った。
次は血の味ではなく、雪ノ下の味だ。
雪ノ下は驚きながらも俺の腰に手を回す。
「明日ここにまた昼の1時くらいに来て欲しい」
そういった時時計の針は12時を指した…。